ダンジョンをとあるチート持ちが攻略するのは間違っているのだろうか 作:しろちゃん
鎖の音が激しく打ち鳴らされている部屋で、複数の冒険者が一人のヒューマンに声を掛ける
「ディックス、やっぱり止めた方がいいって」
「そうだぜ、モンスター1匹ぐらい別にいいじゃねぇか。それでアイツらを敵に回したら割に合わねぇ」
焦った声色の団員にディックスと呼ばれた男は、
「馬鹿かてめぇらは!!喋る
「お、落ち着けって、今アイツらを敵に回したら【イシュタル・ファミリア】も着いてくるんじゃねえのか?それにモンスターに似ている人間だって話もあるしよ、そこん所も考慮に入れてだな」
「うるせぇ!!グダグダ言いやがって!!!結局はビビって手が出せないだけだろうが!?」
苛ついた様子でディックスは赤い槍を鎖の音源である黒檻の中に突き刺した。黒檻の中にいた蠢く何かが絶叫するが、苛立ちが収まらないディックスは気にせず吠える
「モンスターに似た人間だぁ!?ふざけんじゃねえぞ糞が!!!オラリオの
咆哮と共に赤い槍を突き刺す威力が増し、檻の中から鮮血が舞う。回りの団員が止めようとする中、一人の男神がディックスの背後に現れた
「ひひっ、荒れてんなぁディックス」
背後を振り向き様に舌打ちをしたディックスは、苛立ちを隠さないまま、その男神に問いかける
「お帰りなさいませイケロス様。それで肝心な事は聞き出せたんですよね?早くコイツらの目を醒まさしてやって下さい」
ディックスが指差すのは、先程自分を止めた団員達だ。丁寧な口調とは裏腹に、その瞳の奥には憎悪が渦巻いている
「真実を、【ヘスティア・ファミリア】に居る女は、俺達が何時も狩っている
、嘘が見抜ける
男神は、ひひっ、と笑うと、その場に胡座を掻き顔を俯かせる。今まで見た事の無い主神の様子に動揺する団員、長い沈黙の後男神イケロスは初めてとも言える真剣な表情でディックス達を見つめた
「嘘が見抜けなかった」
「ッ!?」
何かを言おうとしたディックスだったが、口をパクパクさせるだけで言葉に出来ない、それだけの衝撃が彼を襲ったのだ。そしてイケロスが続けて何かを言う前にディックスが口を開いた。
「それはどう言うことだ主神様よぉ!!嘘が見抜けなかった!?あんた達
ディックスは何かを振り払うように赤槍を檻の中の何かに思い切り突き刺し、響く悲鳴を越える程の怒声を室内に吐き出し、自信の主神を睨み付けた。
「何なんだアイツは!?何なんだアイツらはッ!!!どうして化物を助けられる!?どうして他の奴はなんも言わねぇ!?どうして、どうしてだ!!!教えてくれよイケロス様!!俺はどうすれば!?」
「落ち着けディックス」
錯乱したように教えを請うディックスの肩に手を置いたイケロスは、愛する子供を安心させるかのように話し出した。
「聞け、何も恐れることはない。今からアイツの対処法をお前に教えよう」
その姿は普段とは検討も付かないほどの、正しく
「黒鐘 色を味方に付けろ」
「そんな事はわかってるよウラノス、問題はタイミングだ」
はやる気持ちを抑えられないとばかりに言われた言葉に、黒いローブの男は呆れ口調で返した。いや、気持ちはわかる。あのウラノスが子供のようにソワソワする程の衝撃が、手元にある紙媒体には存在するのだ
「う、うむ確かにそうだが。報告書には僅か5日で
「いや、恐らくそれはウィーネが人形だからだ。他の者達を認めさせるには慎重に慎重を重ねるぐらいで丁度いいと私は思うのだが」
「あ、あの~?」
二人の弁論が加速する前に声を掛けたのは桃髪のギルド局員だ。ひきつった笑みを張り付かせた彼女に、顔を向けたギルドの真の主と黒衣の男は、さも当然の様に口を開いた
「いや、二人で話し込んでしまってすまないミィシャ君。是非とも君の意見を聞かせてくれ」
「そうだミィシャ・フロット。お前の意見も聞かせなさい」
「え~」
期待に満ちた眼差しを二人から向けられたミィシャは心の中で盛大に叫んだ
どうしてこうなった!!
いや、確かにあの子を助けたのは私だよ。でもあの時は色君の阿保が勝手に私の机の上に置いていった
それなのにこの二人、あれから妙に私を信頼してくるし。あの子の仲間の事も全部ぶっちゃけて来るし。ひょっとして私、すごーく不味いことに片足突っ込んでるんじゃ・・・
「どうした、ミィシャ?」
「うひゃ!?あ、い、いえ、その、作戦を思い付いたんですけど、聞きます?」
「ほぅ、流石はミィシャ君だ。オラリオの
え?なにそれ私聞いてない
いや、確かに情報料が払え切れなくて【ヘスティア・ファミリア】の動きを纏めて安全に冒険が出来る地図を売ってたし、それを手に入れる為に上層から中層で活動している冒険者達が情報を横流してくれて、その中でも安全そうな情報を他の情報と交換したり売ったりして切り盛りしたお陰で、
て言うか
「それで、作戦と言うのは?」
「その前に一つだけ聞かせてください」
ウラノスの言葉を遮ったミィシャは何とか心を落ち着けた後、緊張した面持ちで二人を見詰めた。
「なんだミィシャ、言ってみろ」
少しの沈黙、意を決して自分が、どうしても掴めなかった情報の有りかを聞き出す為に口を開いた。
「色君はどこから来たんですか?」
「「・・・」」
や、ヤバい地雷だった?
「い、いやー何となく気になったから聞いただけでそこまで「一度しか言わないから良く聞きなさい」あ、はい」
予想外の雰囲気に誤魔化そうとしたミィシャだが、ウラノスの一言で強制的に黙らされる。そして、フェルズから聞かされた言葉に驚きの声を上げた
場所は19階層、通称『大樹の迷宮』
木肌で出来た壁や天井に張り巡らされた発光する苔の光の中、通り行く冒険者に攻撃を仕掛けた2Mにも及ぶ巨大な猪形のモンスター、『バトルボア』はその体をひしゃげながら、まるでボーリングの様にモンスターの軍勢に突っ込んだ
「リリ様!!そろそろ後退して下さい!!!色様、前衛お願いします!!」
「わかりました!!」
「あいよ!!」
リリが『バトルボア』を吹き飛ばした後、直ぐ様春姫が叫び、その声に従いリリと色が入れ替わる。『大樹の迷宮』を駆け抜けていく【ヘスティア・ファミリア】は現在、この階層全てのモンスターが生まれ落ちたと思われる程の『
「前方からデッドリー・ホーネットとガン・リベルラ合計126体、来ます!!!」
「色、アレやるよ!!」
「何時でも良いぜ!!」
命の声により、ずっと前衛でモンスターの相手をしていたベルが叫び、前衛に追い付いた色もそれに答える。ベルの右腕からは、周りのモンスターの叫び声の中、一際目立つ程の
「ファイアボルトォオオオオオ!!!」
進軍の
「広がれ!!」
しかしそこに風の支援が挟まれる。色の風に包まれた【ファイヤボルト】はお互いを高め合うかの如く、威力と範囲が激増。空中にいた
「後方からバグベアー、バトルボア、ホブ・ゴブリン、!!計182頭来ます!!」
「わかりました。命様、そろそろポイントですので詠唱をお願いします。リリ様とウィーネ様は命様のサポートを!!」
「了解です!!」
「わかりました!!」
「うん!!」
「ヴェルフ様は魔砲で迎撃をお願いします!!」
それを受け取ったヴェルフは弾丸を見た後「いい、チョイスだ」と呟き、素早く
「潰れろぉ!!魔砲【サンダー・ジャイアント】!!!」
放たれた黄色の魔弾は上空で爆発、そこに現れたのは雷の巨人だ。巨人は大きく右腕を振りかぶり、下にいる
「よーしよし、中々の威力だ。一点攻撃と広範囲攻撃を両立させるっていう
「ヴェルフ様!?魔弾の評価は後にして、命様のサポートに回ってください!!あッ!?ウィーネ様が!!」
春姫の焦った声がする方向、そこには銀の槍と大盾を構えるウィーネが雷を逃れた三匹のモンスターに囲まれていた。
囲んでいるモンスターは『リザードマン』、屈強な三体の蜥蜴の戦士が雄叫びを上げながら、
『ルォオオ!!』
「たぁ!!」
振り下ろされた花の
『オオオッオオオオ!!!!』
『シュラァアアアア!!!!』
仲間を倒され激昂した残り二体のリザードマンが、大盾を前にして素早く迎撃体制に入ったウィーネに襲いかかる。
「やぁ!!!」
咆哮を上げるリザードマンにウィーネも負けじと叫び返すが、何処か可愛らしい印象だ。しかしその行動は的確に、一体目のリザードマンと同じ様に正面のリザードマンを突き殺した
『ガアアアアア!!!』
そして三体目のリザードマンは槍の弱点である攻撃した後の隙を付き、側面から
「うりゃ!!!」
『ゴブッ!?』
繰り出されたのは上段蹴り、モンスターとしての
「お見事!!流石はウィーネ様です。しかし
「えっと、夢で教えてもらったの」
「夢、ですか?」
聞き返す春姫にウィーネは無邪気な笑顔で答えた。
「うん!一人でいっぱいいっぱいモンスターを倒す夢なんだよ。寂しいなって思ったら、いっつも色が向かえに来てくれるんだ!!」
その言葉になにか言おうとした春姫だが、命とベルに声を掛けられ、中断される
「春姫殿!!詠唱終わりました」
「春姫さん!予定してたポイントに着いたよ!!」
「ッ!?わかりました、
「任された!!」
色と春姫の会話が交わされた後、命が【フツノミタマ】をポイントに放った。重力結界の範囲から逃れている【ヘスティア・ファミリア】の団員は、詠唱を始めた春姫以外、色の指揮の下、命を守るために動いている
「ヴェルフとベル!!前方の敵は任せた!!」
「わかった!!」
「任せろ!!」
「ウィーネは二人が漏らした時の
「まかせろ!!」
「リリは俺の近くで最終防衛線だ、油断するなよ!!」
「するわけないでしょう!!」
そして春姫の詠唱が終わり
「リリ、こっちに来い!!飛ばすぞ!!!」
「了解です!!!」
【ウチデノコヅチ】がリリルカ・アーデを包み込んだ
「いっけぇええええええええええええ!!!!」
「いっきますよぉおおおおおおおおお!!!!」
光を纏ったリリは色の【
「ルゥアアアアアアアア!!!!!」
轟音、いやその表現すら生ぬるい程の音量が『大樹の迷宮』に響き渡り、【フツノミタマ】が放たれていた場所には巨大な大穴が空いていた。
「ここで、あってるんだよな?」
「た、多分」
「リリの、
「リリスケ、愛着持ってくれてるのは嬉しいんだが、そこまで落ち込むなよ」
ヴェルフに慰められてるリリは、orzの形で項垂れている。道はあった、泉の中の横穴に。何時もなら細い道がある場合、色のベクトル操作で無理矢理道を広げて
「はぁ・・・いっそのことココもぶち抜きますか?」
「だめだよ!?あれはもっと下層でやろうって言ったよね!!今回出来たのは今が夜で人が少ないからだから!!!」
「わ、わかってますよ。冗談ですからそんなに慌てないで下さいよベル様」
焦るベルに苦笑いを浮かべるリリ、しかし視線が明後日の方向を向いてる辺り割りと本気だったのかもしれない。
「色、
「あの
「本当!!わーい色大好き!!」
「俺も大好きだぞ!ウィーネ!!」
「うぅ、色様だけズルい」
抱き締め合いながらグルグル回りだした二人を羨ましそうに見詰める春姫、そんな彼女は現在命と一緒に皆の荷物をバックパックに詰め込んでいる。じゃんけんで負けたのだから仕方がないのだ
「皆様、荷物が詰め終わりました!!」
「命さん、春姫さん、ありがとうございます。それじゃ、行こうか」
そうしてベル達は泉の中に身を沈めた。
水面から顔を出した【ヘスティア・ファミリア】は数え切れない程の視線に晒された。視線の主は敵意を隠さず、彼らに奇襲を仕掛ける。
「
「【ファイヤボルト】!!」
「魔砲【フレイムブラスト】!!」
『『『『『『『!?』』』』』』』
そして逆に奇襲を受けた。
爆炎と轟音の中、訳も分からず逃げ惑う者達。
そもそも、『
そうして奇襲を仕掛けられた敵意の主は、色の
『『『『『『『すみませんでした!!!!』』』』』』』
全員総DOGEZAしていた。
「いやぁ、悪い悪い。ベルが敵意を感じるって言うからつい
「確かに悪いとは思うけど色だってノリノリで同意してたじゃん。僕だけのせいにしないでよね」
ジト目で見てくるベルをあえて無視しながら目の前にいる
そう、
「で、お前らなんなの?ミィシャさんに
「お、俺達は
先頭に立っているリザードマンが何処かビクビクとした感じで説明してきた。余程先ほどの攻撃が効いたらしい。いや、ミィシャさんに、この先に居る者達を殺すな、とも言われてたから威嚇で打っただけだからね?誰一人として傷つけて無いからね?
「へー、そうなんだ。それじゃよろしくお願いします」
「・・・・は?」
そう言って差し伸べられたベルの右手をリザードマンは何度も瞬きながら見た後、自信の右手とベル右手に視線を交互に行き来させている
「なにやってんだよ、握手も知らねぇのか?」
俺は無理矢理リザードマンの腕を取り、ベルと握手させた。唖然とするリザードマンと少しムッとするベル。どうやら無理矢理握手させた事がお気に召さなかったらしい。
「あ、あなたタチ、ワタシ達が怖くないの?」
聞いてきたのは金翼の
「貴方達はリリ達の敵じゃないのでしょう?だったら怖がるだけ無駄じゃないですか。それにこのタイミングで
リリの言葉で、金翼含めるその場に居る大体のモンスターがリザードマンと同じ様に唖然とした。何か間違った事でも言ったのだろうか?
「イ、イヤ、ソレハ可笑シイ、オ前タチハ人間ダ。モンスターヲ恐レナイナド」
「どうでもいいけど、こっからどうすんだ?クロは何か聞いてないのか?」
「ド、ドウデモ・・・」
ガーゴイルの言葉を一刀両断したヴェルフが俺に聞いてくる。何て言うかさっきのはちょっと可愛そうだろ、ほら、見てみろアイツの顔をこんなん(´・ω・`)なってんぞ
「いや、俺も詳しく聞いてないんだよ。お前らどうしたいの?」
「・・・・・・・・ゥ」
「ウ?」
リザードマン達はまるで何かに耐えているみたいに肩を震わした、周りのモンスターも同じ様に肩を震わしている、どうかしたのだろうか?
「宴だぁぁあああああああああ!!!!!」
「「「「「「うおおおおおおおおあ!!!!」」」」」」
その日、感極まったモンスターの歓喜の声が20階層の『未開拓領域』に響き渡った。
「それでね。皆がわたしの名前を決めるために喧嘩してたから神様がメッてしたんだよ!」
「あの人達を止めれる人がいるのか!?そりゃすげぇ!!」
「お前達を私達が信用すると思っているのか?今までの人間は」
「なーに宴の場で難しい事言っちゃってんですか、ラーニェ殿ぉ。それよりお酒を飲みましょう!!飲んでパーと騒ぎましょうよ!!!」
「い、いやまて!?わかったから、わかったから無理矢理飲まそうとするな!?」
「まったく、誰ですか命さんに酒を飲ませ過ぎたのは。あ、わざわざ注いでいただいてありがとうございます、フォーさん」
『ウォ!』
「お、モンスターの癖にいい酒飲んでるな。グロス、お前は飲まないのか?」
「バ、馬鹿ヲイウナ、ドウシテ人間ナドト」
「聞いてよヴェルフ、さっきグロスったら嬉しそうに」
「イ、言ウナ!フィア!?」
「でハ、私も歌いましょうか。この宴に彩りヲ添えられるように」
「それじゃあ
「おいコラ駄狐!!なんでその羽帽子持って来てんだ!?ダンジョンで使う必要無いから、家で大切に保管してただろぉが!!」
「落ち着いてくださいミスター・色、せっかくの宴ですので多少は多目に見られては?」
「いや、でもあの羽帽子、結構大切な物なんだよレッド」
「悪りぃな、あいつ等も・・・オレっち達も、色々あってさ。ここに人間が来るかもしれないって聞いて、みんな神経質になってたんだ」
「あぁ、その気持ちわかります。僕達もゴライアスを複数相手にする前なんか神経質になっちゃって」
「それは・・・わかりたくねぇな」
「クロっちもありがとな。あんたがウィーネを見つけてくれなかったら、そして保護してくれなかったら多分こうはならなかった」
その場に出されたダンジョン産の
「何言ってたんだ?俺はウィーネを保護なんてしちゃいねーよ、あとクロっちは止めろ」
「保護してないってどういことだ?クロっち達はウィーネを家で預かってたんだろ?」
ニックネームを変えそうにないリドに、やれやれと肩を竦めた俺はウィーネの方向を指差しながら答える。
「ウィーネはもう俺達の
「!?・・・・」
目を見開き、沈黙したリドは暫くした後改めて俺に向き直り、土下座した。
「この度は俺っち達の同胞を受け入れてくれた事、本当に感謝する。これからもどうかその気持ちを忘れないで欲しい」
「お、おい!?そういうのいいから!!大体こんなことは俺の世界ではよくある事なんだぜ。モンハンとかドラクエとか、エグゼの飼育ウイルスだってそうだし」
「これはまた・・・予想の斜め上を遥かに越える展開になっているようだ」
あたふたする俺の後ろから掛けられる中性的な声、振り向くと黒衣を纏った不気味な人物が立っている。コイツも
「フェルズ、来たか!!」
リドが気安く腕を振るい、その人物は俺の隣に腰掛けた。因みに他の団員と
「やぁ黒鐘君。私はフェルズ、君とはずっと話をしたいと思ってたんだ」
「お、おう。黒鐘 色だ、よろしくなフェルズ」
握手をした手に違和感を感じて少しだけどもったが、フェルズはそれほど気にしてないらしく、そのまま話を続けた
「君は、
「おい、どうしたフェルズ?」
何やらブツブツ言い出したフェルズにリドが問いかけるが、尚も下を向いている。かと思えばガバッ!と此方を向いて、その勢いで捲れた
「頼む!!どうか
その絶叫とも言える大声は宴に参加している全員に届き、黙らせる。シン、と静まった空間の中、頭を下げる髑髏の人間に俺はこう返した。
「おう、任された」
そこにいた『彼女』はあたかも
いくつもの刺し傷や切り傷が体に走り、真っ赤な衣服は施された拷問を物語るように全身からの流血で真っ赤に染まっている。
両翼を鋼鉄の杭で貫かれた一匹の
「・・・逃げ、テ」
血だらけの
そして
「引っ込んでろ三下がぁあああああ!!!!」
彼女の周りを旋回していた『デットリー・ホーネット』全てを、一撃で砕いた黒い怪物が、待ち伏せしていた冒険者をも吹き飛ばし、磔の
「え?」
「あぁもうクソッ!酷ぇことしやがって!!!」
「こんなもんか。どこか痛い所はあるか?」
「イ、イエ大丈夫です」
「よし、動けるならあっちの方に向かってくれ、そこにリド達が居るはずだ」
その人物はとある方向に指をさし、簡単に指示した後、黒いガントレットを開閉させながら攻撃の余波で未だに土煙が収まらない一角を睨み付ける
「おいおいおいおい!!このタイミングで来るのかよぉ!!!いちいち俺を苛つかせやがって!!お前は一体何様のつもりだ!!」
土煙から出て来たのは
「俺の名前は黒鐘 色!
そうして鴉と【
因みにダンジョンは下になるほど岩盤が堅くなるので、今の色の【テンペスト】でも19階層をぶち抜くことは出来ません。