ダンジョンをとあるチート持ちが攻略するのは間違っているのだろうか 作:しろちゃん
「うわあああああああああああ!!!」
「ひょえええええええええええ!!!」
場所は12階層、立ち込める霧が辺り一面を覆い、足先を見るのも難しい中、
「は、春姫様!!詠唱、詠唱を早く!!!」
「むむむむ無理です!!無理でございまする!!」
「しかしこのままではリリも春姫様も殺されてしまいますよ!!何とかできませんか!?」
「そ、そんな事言われましても!!!」
『『『『『『『『ギィャアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!』』』』』』』』
「「イヤアアアアアアアアアアア!!!!」」
追いかけてきてるのは『シルバーバック』『インプ』『ハードアーマード』『オーク』等、彼女たちだけでは到底立ち向かえないようなモンスターばかりだった。その全てが二人だけに向かって行く。
「春姫様、リリにいい考えがあります」
「い、いい考えですか?」
「はい、まずあそこで寝ている色様に突撃します」
「はい」
「モンスタ―が色様に群がります」
「はい」
「その隙に春姫様が【ウチデノコヅチ】を詠唱します。どうですか?」
「・・・・・・・完璧な作戦でございます」
「それじゃあ行きますよ!!」
「はいッ!!」
走る、走る、走る。二人の少女は自身のファミリアの副団長を躊躇なくモンスターの囮にすることを決めた。
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「意味ないでございますぅぅうううう!!!!」
「どうしてこんな事にぃぃいいいいい!!!!」
二人は思い出す。こんな事になったきっかけを・・・
朝早く、早朝訓練を終えた【ヘスティア・ファミリア】の冒険者達は、何時もの様に主神が用意してくれている、大テーブルに置かれた朝食を食べていた。しかし、数日前とは少しだけ朝の風景に違いがあった
「ですからッ!!あんな訓練はもうお止めになって下さいと
「だぁかぁらぁ、何度も言ってんだろ?あの早朝訓練は必要なものなの、春姫ちゃんもばっちし【ステイタス】上がってんだから何の問題も無いだろ?」
「ありますッ!!て言うより毎回生死が掛かった訓練なんて問題あるに決まってるじゃありませんかッ!!」
それは
「うわぁ、まだやってるのかい、あの二人」
「凄いですよね、今日も春姫さんが回復してからずっと言い争ってますよ。あっ神様、食器洗うの手伝います」
「むむむむむむ」
そんな二人の言い争いは、最初の方はヘスティアも入れたファミリア全員で止めていたのだが、何日も毎回やっていると止める者も出て来なくなっていき。
「あのなぁ、俺の国にはこんな言葉があんぞ、郷に入っては郷に従え。もう春姫ちゃんは【イシュタル・ファミリア】じゃなくて【ヘスティア・ファミリア】何だから、こっちの方針に従おうぜ」
「【イシュタル・ファミリア】でも他のファミリアでもあんな残虐非道な行いを訓練とは呼びませぬッ!!郷に入っては郷に従え、と言うのであれば、色様こそ常識の郷に従って下さいッ!!!」
「はぁ、面倒くせー」
「話を聞いているのですか、色様!!」
「むむむむむむ」
ヒートアップしていく二人の言い争いを止めようとする者が居たとしても
「あ、あの、春姫殿?少し落ち着かれては?」
「命ちゃんは黙ってて!!!大体命ちゃんも命ちゃんだよッ!!なんで止めてくれないの!?今日だって私、
「す、すみません」
「むむむむむむむ」
このように飛び火するので、余計に誰も声を掛けなくなっていた。
「【イシュタル・ファミリア】とのゴタゴタが片付いて、今日からダンジョンだってのに本当にこんなんで大丈夫なのか?なぁリリスケ・・・リリスケ?」
「むむむむむむ」
「どうしたんだ?ファミリア全員の【ステイタス】なんか見て」
「む?えーとですね、皆様の【ステイタス】の伸びとリリの【ステイタス】の伸びを見くらべてたんですけど・・・」
「ん?どれどれ・・・」
「ちょっ、いきなり取らないで下さい!!」
【ステイタス】が刻まれた紙を奪ったヴェルフに必死に手を伸ばすリリだが時すでに遅し、ヴェルフは自身の【ステイタス】と他の
ベル・クラネル
Lv.3
力:E421→E447
耐久:D552→D581
器用:E410→E422
敏捷:B721→B755
魔力:F351
幸運:H
耐異常:I
黒鐘 色
Lv.3
力 :G254→G264
耐久:C689→B701
器用:H198→G215
敏捷:F322→F328
魔力:C681→C699
耐異常:I
祝福:H
ヤマト・命
Lv.2
力 :G200→G208
耐久:F386→F390
器用:C604→C615
敏捷:F318→F320
魔力:A812→A837
耐異常:I
ヴェルフ・クロッゾ
Lv.2
力 :E460→E481
耐久:E487→D505
器用:F331→F339
敏捷:H192→G201
魔力:I81
鍛冶:H
サンジョウノ・春姫
力 :H101→H144
耐久:H187→G232
器用:I56→H103
敏捷:I23
魔力:E403
「おぉ、俺もそうだったけど、やっぱり早朝訓練やりたての春姫はすげぇな。ヘスティア様曰く、生存本能を刺激されて本来以上の
リリルカ・アーデ
Lv.1
力:E411→E420
耐久:D513→D530
器用:F366→F371
敏捷:D500
魔力:E423
「・・・低くね?」
「ウッ!!・・・」
春姫との口喧嘩を終えた色が、ヌッと後ろから紙を覗き込み、率直な感想を述べる
「リリさ、サボってるでしょ?」
「い、いえいえ、決してそんな事は・・・」
手をブンブンと横に振るリリに顔を近づけ
「そんな事は?またまたぁ、筋力もE行ってんだし、そろそろ腕立て伏せぐらい出来てもおかしく無いと思ってんだけど?」
「む、無理ですよ。命様の魔法だって日に日に強くなっていくんですから。そりゃリリだってもっと【ステイタス】を伸ばそうと頑張ってるんですよ?でも皆様と違ってリリには才能が無かったみたいで、これが限界なんで・・・す」
その言葉に色は三日月の笑みを浮かべる
「何ですか色様、な、なんか怖いですよ、その笑顔・・・」
「リリはもっと【ステイタス】を伸ばそうって思ってるんだよな?」
「へ?そ、そりゃそうですよ、リリも【ヘスティア・ファミリア】の一員ですからね。出来ればLv.2にだってなりたいぐらいです」
「そのためには、どんな事だって出来るよな?」
「勿論です・・・あっ、ちょっ今のは」
「ヘスティア!!言質は取ったからな!!実行すんぞ!!」
声を掛けられたヘスティアは溜息を吐きながら了承した。その姿にベル、ヴェルフ、命の三人はまた始まったか、と見守り、結局早朝訓練を止められなかった春姫は頭に?マークを浮かべる。
「いったい何を実行するんですか!?」
「なぁ、リリさ」
「な、何ですか」
「サポーター止めね?」
「・・・は?」
そして冒頭に戻る・・・
時は夕暮れ時、空を飛んでる黒い鳥に馬鹿にされながら、ボロボロになった二人の少女は鐘楼の館に帰還した
「ただいま、帰りました」
「・・・グスッ・・帰りました・・グスッ」
遅れて
少女二人はボロボロの体を引きずりながら、大きな机の下に綺麗に並べられている椅子を適当に引き、腰かけ、突っ伏し、一言だけ漏らした
「「色様殺す」」
「お帰り二人とも、ほら、晩御飯か、お風呂どっちにするんだい?」
「「ご飯をお願いします」」
白銀と純黒、対4つの小さな鐘を頭に着けているロリ巨乳の女神に二人そろってご飯を頼み、この日の特訓は終わりを迎えるのだった。
『リリルカ・アーデ育成計画』
1日目
モンスター討伐数 18体
春姫詠唱回数 1回
「さぁ、今日も張り切って行こう!!」
「「・・・・」」
「お、おー!」
「ふぁ、なぁクロ、流石に朝早いんじゃないのか?」
時刻は午前4時、場所は昨日と同じくダンジョン12階層、そこに集まっているのはベル以外の【ヘスティア・ファミリア】の冒険者達だ
「ヴェルフ、昨日も言ったけどあれはチュートリアルなんだって、今日からやる本番は朝早くから夜遅くまでずっとだな・・・」
「でもよ、その二人、立ったまま寝てんぞ?」
「「ZZZZZZ」」
隣を見ればリリと春姫ちゃんが立ったまま鼻ちょうちんを浮かべていた、それに対して容赦なく【
「ZZZ・・・ハッ!!」
「あ、あれ?ここは何処でございますか?」
眠気が吹き飛んだであろう二人に人差し指を立てて、向き直った。
「それじゃあ今日から本番の『リリルカ・アーデ育成計画』について詳しい説明をします」
「いきなりなんですか!!リリ達は今起きたばかりですよ、まだ何の準備も・・・あ、あれ?」
「そうでございます!!
叫んだ二人は自身の完璧な装備姿と全くない疲労に困惑した。
「準備の方は【
「「逆に安心出来ませんけどッ!?」」
「それじゃ改めて『リリルカ・アーデ育成計画』の内容を話します」
「「普通にスルーしないでくださいッ!!」
声を揃えて突っ込んで来る二人を華麗にスルーして話を進めていくことにする
「まず一つ、リリの
「昨日も言いましたけど、おかしくないですか?リリは
「でも【
「そりゃそうですけど、その後【ウチデノコヅチ】が切れてからはずっと追いかけられる事しか出来なかったですけどね!!」
「次に2つ目」
「無視ですかッ!!」
ウガー!!と組み付いて来るリリをほっいて、次に春姫ちゃんの方に指を付きつけた
「春姫ちゃんは昨日みたいに逃げてばかりじゃなくて。【ウチデノコヅチ】をちゃんと発動させる事」
「・・・・・・そもそもあの妖術はあまり見せていいものではございません。【イシュタル・ファミリア】に居た時でも、慎重に慎重を重ねて使って来たのです。それをこのような開けたところでポンポン使うなどとてもとても」
目を逸らし、しっぽをフリフリしながら言い訳してきた春姫ちゃんは。
「まず、この12階層は上の階層よりも霧が濃くて【ウチデノコヅチ】が発動してても解りづらい。たとえ見られても、中層の入り口からこんな離れた所に来るのは下級冒険者だし、それなら俺の【
俺の一言に動いていたしっぽの動きを止める。
「ヴェルフ殿、もしかして春姫殿の【ウチデノコヅチ】より色殿の【
「そんな事言い出したら【
「た、確かに」
「こら、そこの二人、ちゃんと話聞けよ?」
「あ、はい、すいません」
「すまん」
何やらコソコソ話している二人にもビシッ!と指を突き付け説明を続ける
「次に3つ目、
「えっと、それはどう言う事ですか?」
「まぁ、このあたりの説明は後で二人だけにするから安心しといてくれ。それじゃリリは『きんに君1号』を構えて、あ、春姫ちゃん今日からは始まる前に詠唱しちゃダメ、昨日みたいに俺を囮に使おうとするのも無しな。え?何、理不尽?あのね、冒険者っていうのは常に理不尽と戦わなくちゃダメなんだぜ。それじゃあ始め!!」
「「ちょっまっ!?」」
止めようとしてくる二人を無視して、俺は容赦なくモンスター避け用の『
『『『『『『『『グォォオオオオオオオオオオオオ!!!!』』』』』』』』
「うわあああああああああああ!!!」
「ひょえええええええええええ!!!」
昨日と同じように二人は走り逃げ回る。しかし、昨日と違う事が一つだけあった
「わ、
「春姫様!?」
それは春姫の腰に着けられている黒い棒状の魔剣『鈍刀・重:2式』がある事だ。その魔剣はヴェルフがLv.1用に作った物で『鈍刀・重』よりかは遥かに軽いが、それでも着実に春姫の体力をそぎ落としていき、ついに限界が来たのか、地面に膝を着けてしまった。
「足手まといの
「そんなこと出来る訳無いでしょう!そんなことしたら、リリは・・・リリはッ!!」
「リリ様?」
リリは春姫を庇いモンスターの軍団の前に立ちふさがり、自分の思いの丈をぶつけた。
「春姫様が亡くなった後に一人でこの地獄を受ける羽目になるじゃないですかッ!?」
「・・・グスッ」
「あっ!?ごめんなさい、冗談ですから泣かないで下さい!!ていうか泣いてる暇なんてないんですよ!?」
『『『『『『『『グォォオオオオオオオオオオオオ!!!!』』』』』』』』
「ッ!?」
迫りくるモンスター達、その先頭に居るのは『インプ』が三頭、後続にはまだ余裕がある。
追い詰められた
「春姫様!!リリが隙を作りますから詠唱をお願いします!!」
「で、でも」
「早く!!」
「は、はい!!」
急に雰囲気が変わったリリに、ビクつきながらも春姫は詠唱を始めた
「【――大きくなれ。其(そ)の力に其(そ)の器。】」
「はぁああああああああ!!!」
リリは背中に装備している大槌を両手で持ち、自身の体を隠すように前方に構え、栗色の髪を激しく揺らしながら『インプ』へ向かって突撃していく
『ギィッ!?』
『ギュッ!?』
急に反転し、突進してきた大槌に、追いつくために速度を上げていた『インプ』達は成す統べなくぶつかり、吹き飛ばされた
「【数多(あまた)の財に数多の願い】」
「どっせぇぇえええええええい!!!」
『ギャッ!?』
一匹だけ躱していた最後の『インプ』を横薙ぎで叩き飛ばし、痛む腕に歯を食いしばりながら、後続の『オーク』5体を睨みつけた
「【鐘の音が告げるその時まで、どうか栄華(えいが)と幻想を】」
『『『『『グォォオオオオオオオ!!!!』』』』』
絶対に勝てない。あの二人に会う前の少女ならそう諦めていただろう。しかし、今の彼女にはそんな絶対は存在しない
「【大きくなれ。神撰(かみ)を食らいしこの体。神に賜(たま)いしこの金光(こんこう)】」
「全く、本当どうしてリリはこんな相手と敵対しているのでしょう?」
その言葉とは裏腹に、少女の口元には笑みが浮かんだ。
ずっと後ろで見て来たのだ。白髪の少年が、黒髪の少年が、お互いを認め。何処までも何処までも高め合っていく瞬間を。そんな少女が二人の中に自分も入りたいと思わない日は一度も無かった
「【槌(つち)へと至り土へと還り、どうか貴方へ祝福を】」
「まぁしょうがないですよね、だって
思い出すのは初めて100以上のモンスターに囲まれた時の記憶。その時、一人の冒険者として白と黒の少年と共に戦えた高揚感がどれほどのものだったか。
「【――大きくなぁれ】」
「リリだって冒険がしたいんです!!」
もう一度、いや何度でも、今度こそあの二人の隣でちゃんと肩を並べて戦いたい。そう思いながら
「【ウチデノコヅチ】!!」
「ダァァアアアアアアアアアアアア!!!」
『『『『『グォォオオオオオオオ!!!!』』』』』
迫りくる『オーク』に向かって
『リリルカ・アーデ育成計画』
2日目
モンスター討伐数 79体
春姫詠唱回数 5回
to be continue・・・
初めて春姫ちゃんを喋らしたのでちょっと不安です。