ダンジョンをとあるチート持ちが攻略するのは間違っているのだろうか   作:しろちゃん

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原作からの変更点


リューさん→色君 

【ヘスティア・ファミリア】の団員→怪物進撃(デス・パレード)

 命ちゃん≠命ちゃん


第12話 VSアポロン・ファミリア

激しい剣舞の音が鳴り響く中、兎を思わせる少年は、ただひたすら剣姫に自身の獲物を振るっていた

 

ガキィン!

 

もう何本目に壊れたか解らない短剣(ナイフ)を捨て去り、少年はすかさず腰に持っていた予備の短剣(ナイフ)を取り出し、切りかかる

 

「もう休憩にしよ?」

 

「もう少し・・・お願いします!」

 

凄まじい速度の銀閃を繰り出しながら話しかけてくる憧れの人の提案を、否定するかの如く、少年はナイフを振るった

 

「たっだいまー!ってええ!?まだやってるの!?今日は休憩を挟むって言ってたじゃん!」

 

市壁内部に繋がる階段から駆け上がってきたティオナは、左肩に背負った大型のバックパックを下ろし、ベルに向かって怒るような口調で喋り出す

 

「アルゴノゥト君、2日間戦いっぱなしは、いくら何でもやり過ぎだよ」

 

「うん、私もそう思う」

 

剣を下ろしアイズも同意する。前に訓練した時もそうだったが、この少年は自身の限界以上に無茶をしている、まるで何かに追われる兎みたいに

 

「はぁ、はぁ・・・解りました、それじゃあ少しだけ、回復薬(ポーション)を下さい」

 

そう言う少年に二人は渋い顔をした、10分程寝るか、回復薬(ポーション)を呑むか、少年はこれまでずっとこんな事を休憩と言って続けていたのだ

 

「ングング・・・ふぅ、それじゃあ、お願いします」

 

「ほ、本当にやるの?アポロンの所と戦う前に体壊しても知らないよ?」

 

「どうして、そこまでするの?」

 

問い掛けてくるアマゾネスの少女と憧れの人に少年はナイフを構えて答える

 

「これぐらいしないと多分、間に合わないので!」

 

言うな否や少年は、二人の第一級冒険者に切りかかった。

 

「・・・ふぁぁぁ、夢か、あ、おはよう色」

 

「ベルさんや、俺が言うのもなんだけど、ちょっと緊張感無さすぎじゃね?」

 

「今まであまり寝てなかったから凄く眠いんだ。そうだ、この戦いが終わったら、色にお願いしたいことが有るんだけどいいかな?」

 

「ベルが俺にお願いって珍しいな、俺に出来る事なら何でもするぞ」

 

「ん?今何でもって言ったよね、それじゃあ・・・」

 

白い少年、ベル・クラネルのお願いを聞いた黒い少年、黒鐘 色(くろがね しき)は深い溜息を吐きながら了承した。

 

「色」

 

「なんだよ、まだ何かあんのか?」

 

「・・・任せたよ」

 

「・・・応、任された」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『では(えいぞう)が置かれましたので、改めて説明させていただきます!今回の戦争遊戯(ウォーゲーム)は【ヘスティア・ファミリア】対【アポロン・ファミリア】、形式は攻城戦!!両陣営の戦士達は既に戦場に身を置いており、正午の始まりの鐘が鳴るのを待ちわびております!』

 

ヘスティアとアポロンはそれぞれ無言で映像を映し出された鏡を見ていた、しかし周りの神々はざわつき、あるものは目を擦り、あるものは夢ではないかと頬を抓った

 

「お、おいマジかよあれ」

 

「信じられねぇぜ、頭イカれてるんじゃねぇのか?」

 

「もう諦めてるんだろ?」

 

「くくく、いやぁ、やっぱおもろいわぁ、あの子」

 

「ね、ねぇヘスティア?あの子達本当に大丈夫なの?」

 

「・・・」

 

ヘファイストスの言葉にもヘスティアは無言を貫く、しかしその頬には一筋の汗が流れていた

 

『な、なんてことでしょう!!恐らく【ヘスティア・ファミリア】全員が城のすぐ近くに陣取っています!!こんな事があり得るのでしょうか!!』

 

「おいおいなんだありゃ、モルドも運が無かったな、【ヘスティア・ファミリア】の連中、試合を諦めやがったぜ」

 

肩を叩いて来る冒険者に【ヘスティア・ファミリア】に全財産を賭けたモルドは溜息を吐きながら、憐れむ様にその冒険者に向いた

 

「運が無いのはテメェらと【アポロン・ファミリア】の方だ、見てみろ、【ヘスティア・ファミリア】に賭けた連中の顔を」

 

「お、おい何言ってんだよ、お前らもどうしてそんな顔してやがる!」

 

冒険者が言われた通りに賭けを行っていた酒場を見渡すと、そこにいる【ヘスティア・ファミリア】に賭けた者達は全員安堵したような、いや、あるものは前祝と称してエールを頼む者までいる。その者達は皆等しく、18階層で色達と戦った者達だった。

 

「あいつらの通称は伊達じゃねぇんだよ、まぁ見とけ、勝ち目が無くて、あんなことをするような奴らが怪物進撃(デス・パレード)なんて名乗っちゃいねぇさ」

 

モルドの言葉と同時に鏡に映っていた映像が激しく乱れ、次に映ったのはあり得ないことに、隆起した地面が城門を突き破っている光景だった。

 

『な、なんだぁぁぁ!!!開幕の合図とともに【アポロン・ファミリア】の城前が地面によって吹き飛んだァァぁ!!』

 

「な、なぁ言っただろ?」

 

「・・・・」

 

騒がしい酒場が一瞬で静まり返るような映像、それは【ヘスティア・ファミリア】の【アポロン・ファミリア】に対する反撃の狼煙、その一つに過ぎなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヘスティアがわざわざ受け取って来てくれた、最早懐かしいと思える学校の制服に身を包んだ俺は、降り注ぐ瓦礫を反射しながら進んでいく

 

「それにしても派手にやったね、色」

 

「前の時は街の中で使えなかったからな、そのお返しだ」

 

俺が最初にした攻撃は、実に単純なもので、地面を蹴り飛ばす事だ。しかし向き(ベクトル)を操作して出来た規格外な地面の大砲は、【アポロン・ファミリア】の城門を物の見事に吹き飛ばした。その結果出来た、足元にある大穴を避けながら歩いて来るベルの腕は、リンリンリンと音を立てながら光り輝いている。

 

「それじゃあ僕は街の中で、神様と一緒に散々追いかけられたお返しかな?」

 

約5分間程、【英雄願望(アルゴノゥト)】により、予めチャージされ続けたファイヤボルトを躊躇なく半壊した城にぶち込む

 

ドゴォォォォォン!!

 

正に無慈悲な一撃は、俺のために用意されてたであろう大量の避雷針も、この日のために強化されていたのであろう頑丈そうな城壁も、その殆どを開戦から僅か30秒で蹂躙した。

 

「おっとそうだ、これを試してみようと思ってたんだっけ」

 

ポケットから、いつかリリから貰った、鉄の塊を取り出し、学園都市第三位の少女の様に構え

 

超電磁砲(レールガン)っと」

 

何気なしに打ち出された弾丸(鉄の礫)は、当たり前の様に音速の三倍を超えて、壊滅状態の元古城を真正面から最後尾まで貫き、止めを刺した。

 

「なに、また新技?ズルくない?」

 

「新技じゃなくて魔法の応用だよ応用、悔しかったらベルもなんか考えてみなって」

 

「むむむむむ」

 

「えっと、もしかして自分達は要らなかったのでは?」

 

「駄目だぞ、あいつ等の強さを信頼しても油断だけはするな、足元救われるぞ」

 

「そうですよ命様、今までの経験上こういう時は・・・」

 

「リリ、あそこだ」

 

「はい!」

 

俺の合図とともにリリが魔剣を振るう、岩陰に見えていた【アポロン・ファミリア】の残党が慌てて此方に出て来た。

 

「色、他の団員は?」

 

「俺の風でも警戒したんだと思うが結構散らばってんな、数は20ぐらいか」

 

「それじゃ僕が居なくても大丈夫だよね、ちょっとあの人と決着を着けてくる」

 

ベルは崩れた城のただ一点を見ている、どうやって凌いだのか、そこには、ほぼ無傷の人物が一人だけ立っていた

 

「ベル・クラネルゥゥゥゥゥゥ!!!!」

 

鬼の形相で此方に波状剣を構えてくるそいつは、恐らくヒュアキントスなのだろう、ベルは静かに緋色のナイフを構え、走り出した。

 

「それじゃ、何時もの言っときますか」

 

走り出したベルの方向とは逆方向、隠れている事が無駄だと悟ったのか、次々と現れる【アポロン・ファミリア】の団員達に俺は叫ぶ。

 

「悪ィが、こっから先は一方通行だ。 侵入は禁止ってなァ!大人しく尻尾ォ巻きつつ泣いて、無様にもとの居場所へ引き返しやがれェェェ! 」

 

 

 

 

 

 

『なんだなんだぁ!これはまさかの展開!!【ヘスティア・ファミリア】が【アポロン・ファミリア】を圧倒している!!』

 

 

「な、なぁヘスティア、ベル君は一体どれくらいの潜在値(ちょきん)をしていたんだい?」

 

目の前の光景に戦慄するヘルメスがヘスティアに震える声で聴きだした

 

「なんだいヘルメス、何時もと態度が違うじゃないか?」

 

可愛らしく首を傾けるヘスティアだが、その後ろの光景は、Lv.2のベル・クラネルがLv.3のヒュアキントスをまるで子供を相手にするかのように、あしらっているという想像を絶するものだ、とても目の前にいる小さなロリ巨乳の女神を可愛いとは思えない。

 

「ヘスティア、本当の事を教えてくれ、ベル君はLv.3になったんだろ?」

 

「惜しいねヘルメス、ベル君は残念ながらLv.3になってないよ」

 

「う、嘘だろ、だったら「ベル君は『敏捷』以外SSSSってだけだよ」・・・は?」

 

聞き間違い思ったヘルメスは詰め寄ろうとして、人差し指を立てたヘスティアに止められた

 

「Lv.3になったのは色君の方さ、全く地上の子の成長スピードは本当に凄いね」

 

「お、おい冗談だろ、君の所の黒鐘君はつい半月前にLv.2になったばかりじゃないか!?頼む、頼むから冗談だと言ってくれヘスティア!」

 

しつこい男神をあしらいつつ、女神ヘスティアは自分の子供たちが戦っている(えいぞう)を見下ろした。

 

開戦から10分、後に最も速く終わったことで有名とされる【ヘスティア・ファミリア】が最初に行った伝説の戦闘遊戯(ウォーゲーム)、通称、『一方的な蹂躙(ワンサイド・デスゲーム)』は、その戦いが終わるまで残り5分を切っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「凄いですね色さん、37階層と同じように攻撃が全く当たっていません」

 

「あぁ、お前にはそう見えんのか?」

 

「え?どういうことですか?」

 

【ロキ・ファミリア】のホームで狼人(フェアウルフ)の青年はエルフの少女にめんどくさそうにしながらも、

律儀に解説する

 

「そんなんも解んねぇのか馬鹿エルフ、いいか、鴉は、【ステイタス】を更新してんのに37階層と全く同じ動きしてんだぞ」

 

「えっと、それって・・・本気になればもう決着がついてるって事じゃないですか!?」

 

突然叫び出したレフィーヤを見て話を聞いていた他の団員が口々にベートに質問する

 

「だったら黒鐘君は【アポロン・ファミリア】相手に遊んでるって事かな?」

 

「なんじゃ、せっかく骨のある奴だと思ったのに、がっかりだのう」

 

「止めろガレス、まだそうと決まった訳じゃない、それでお前の見解はどうなんだ?ベート」

 

質問されたベートは無言で鏡の中に映し出されている色を見て思い出す、それは37階層に潜ってしばらく経った頃の事だ

 

 

 

 

 

 

「本当にいいんだな?」

 

狼人(フェアウルフ)の青年は黒の少年に今まで何度もしてきた質問を繰り返し行った。

 

「対人戦の練習の事ですか?」

 

「ああ」

 

ベートの目を見た鴉と呼ばれた少年は、少しだけ考えた素振りを見せた後、指を立てながら喋り出す

 

「【アポロン・ファミリア】のトップはLv.3のヒュアキントスで、その下にLv.2とLv.1がいるんですよね?だったら、ここで対人戦を覚えなくてもいいですね」

 

そのあまりにも傲慢な言葉にベートは眉を寄せた

 

「テメェの力が規格外ってのは解るがな、一度痛い目見てんだろぉが、油断してんじゃねぇぞ!!糞鴉!」」

 

凄むベートに色は首を振りながら否定した

 

「い、いえいえ、油断と言うより効率的に考えた結果、やっぱり今は対人戦の技術の方より潜在的な経験値(エクセリア)を稼いだ方がいいと思うわけなんですよ」

 

焦りながら喋り出す色に、今度は話を聞いていたリオンが質問する

 

「今はという事は、後々対人戦を学ぶ相手がいるという事ですか?」

 

「あァ?だとしても間に合わねぇだろぉが」

 

詰め寄ってくるベートとリオンに色は薄ら笑いを浮かべながらこう答えた

 

「練習相手ならいるじゃないですか、それも一人や二人じゃなく、多人数で稽古をつけてくれる相手が、ちょうどいい所に」

 

「「?」」

 

 

『なんだこの動きは!?黒鐘 色がまるでモンスターかの様に【アポロン・ファミリア】の第三級冒険者を翻弄している!!』

 

その時の言葉の意味が今わかった気がした

 

「あァクソッ!あいつは遊んでもいねぇが本気でもねぇ!そういうことだ!」

 

「いっけぇ!色くぅぅん!!」

 

「テメェは何でまだここにいやがる!!」

 

「えぇ、だっていまギルドに戻ったら私捕まっちゃうよ?せめてこの戦いが終わるまで此処に居させて?」

 

「居させて?じゃねぇ!来い、今すぐギルドに連れて行ってやる」

 

「うそぉ!?ち、ちょっとまってって、ねぇ!?鬼!悪魔!」

 

ジタバタと暴れる桃髪の少女を担いで出て行った狼人(フェアウルフ)の青年を見ながら、【ロキ・ファミリア】の一同は皆同じ事を思った

 

(結局、どういう事?)

 

 

 

 

 

 

 

 

迫りくる波状剣(フランベルジュ)をベルは難なく叩き落していく

 

「クソッ!私はLv.3だぞ!?それを貴様はッ!遊んでいるのか!!」

 

攻撃をしては離れるの繰り返し、その単純なヒットアンドウェイはヒュアキントスがベルと戦い始めてずっと行われている事だ。そう、単純な行為、問題なのはそれを涼しい顔で行うベルの兎の散歩(ラピッド・ウォーク)をヒュアキントスが全く崩せないでいる事だった。

 

「ガッ!なぜ、グッ!貴様は一体何なんだぁ!」

 

緋色のナイフに腕を切り付けられ、足を蹴飛ばされ、顔をかち上げられる。兎の足音だけが聞こえる中、ヒュアキントスは解っていた、すでに自身が勝てないことも、手加減されてるということも。しかし、【アポロン・ファミリア】団長の意地が己の体を奮い立たせていた

 

「認めてやるベル・クラネル、お前は私よりも強い、だから勝負をしてくれないか?」

 

ヒュアキントスは最後の賭けに出る

 

「貴様が城壁を壊した魔法と私の魔法、どちらが強いか勝負をしよう」

 

それは本来ならあり得ない事だ、格上(Lv.3)格下(Lv.2)に勝負形式を頼んだのだ、しかしそうでもしないと勝てないと、ヒュアキントスの冒険者としての勘が告げている

 

「・・・」

 

無言でベルは立ち止まった、しかしその手はリンリンリン、という鐘の音(チャイム)の音と共に光り輝いている、恐らく受けて立つという事だろう

 

「【我が名は愛、光の寵児(ちょうじ)。我が太陽にこの身を捧ぐ。我が名は罪】」

 

それを見たヒュアキントスはすかさず詠唱を始める、何故ならその力を使っている所を自分が敬愛する主神が見て、話してくれていたのだから。

 

「風の悋気(りんき)。一陣の突風をこの身に呼ぶ。放つ火輪(かりん)の一投」

 

知っている、知っているぞベル・クラネル、その力は黒のゴライアスが現れた時に黒鐘 色と共に行った攻撃と同じ、時間が経てば経つほど威力が増すという《スキル》!

 

「――――来れ、西方(せいほう)の風】」

 

この勝負貰った、そんな短いチャージで私の魔法は破れん!

 

「ぬぅうううううううううううううんっ!!」

 

詠唱を終えたヒュアキントスは上半身をひねった。その姿は円盤投げ、相変わらず煩い鐘の音(チャイム)の音を響かしながら輝く腕を構えている兎に、右手に凝縮させた高出力の『魔力』を魔法に変え、発動させる

 

「【アロ・ゼフィロス】!!」

 

高出力の太陽が、ベルに向かって高速回転しながら飛来する、もう少し、もう少し、もう少しだ!近づいていく日輪にヒュアキントスの表情が勝利を確信し

 

「おーい、ベル!こっちは終わったぞ!」

 

「ファイアボルトォォォォ!!!」

 

無慈悲な掛け声と共に砕け散った

 

「馬鹿な、あり得ない、こんな事が・・・こんな事があってたまるかァァァァァ!!」

 

ヒュアキントスが最後に見たものは、砕け散る自身の魔法と自分の計算よりも遥かに大きい爆炎だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「く、この!」

 

「ちょこまかと!」

 

縦横無尽に駆け回りながら、色は【アポロン・ファミリア】を観察していた

 

「これでも食らえ!」

 

成程成程

 

「どうして!?死角から攻撃してるのに!」

 

ふぅん、そうしたらいい訳か

 

「こっのォォォォォオオ!!なんッ・・ぐふッ!」

 

よっしうまくいった、やっぱ質のいい練習相手が豊富だと覚えるの早ぇわ。

 

「何なんだ、何なんだお前はぁぁ!」

 

「あん?数日前お前らにボコボコにされた、雑魚冒険者ですがッ!!」

 

「ゴフッ!」

 

それを見た【アポロン・ファミリア】の団員は後ずさった、少なくない恐怖を覚えたのだろう、たった一振り、いや、かすった程度で人体が吹き飛んだのだ。

 

「大分覚えたしもういいか、ネタバレしてやるよ、三下ども」

 

そう言って俺は仰々しく両手を開き空中で三下(雑魚)共を見下ろした。

 

「お前らが知っての通り俺の能力は向きを操るベクトル操作と電気を操れることだ、さっき掠っただけで吹っ飛ばしたのは力の向き(ベクトル)を瞬発的に一転に集中したから、死角からの攻撃が避けれるのは、微弱な電磁波を常に飛ばし、その反射波をレーダーみたいに感知して360度の視野を得ているって訳だ、因みにこの電磁波にお前らの大好きな避雷針は無意味だ」

 

「な、何言ってんだ」

 

「おい、奴は風を使って飛んでるんだぞ!早く魔剣を使え!」

 

「解ってる!」

 

そう言われて魔剣を振るおうとするダフネを退屈そうに見る、そんな事をしても無駄だって

 

「な、何で!?なんで落ちないの」

 

「あのさぁお前ら、常識的に考えて何の対策もせずに真正面から戦う訳ねぇだろ?魔剣が発動するタイミングさえ解りさえすれば、そこで発生する風を操ればいいだけだ。つまり、360度の視界を得た俺にもう風の魔剣の小細工は通じねぇ」

 

淡々と説明していく俺に痺れを切らしたのか、一人の男の冒険者が叫んだ

 

「卑怯だぞ、下りて来やがれ!」

 

「いや卑怯って・・・まぁいいか」

 

呆れたように肩を竦めながら、地面に降り立った俺に向かって、男の冒険者が拳を突き出して来た、その動きを見切った俺は、素早く懐に入り中指を突き立てる。

 

「ゴパァッ!!」

 

その男をただのデコピンで吹き飛ばし、【アポロンファミリア】に向き直った

 

「あぁ、言っとくけどフェイントの類はもう効かないからな?お前らの攻撃は大体覚えたし、今の俺とじゃ根本的に立つステージが違う」

 

「な、なにを言ってるの?」

 

「いいこと教えてやる、お前らに足りないもの、それは!」

 

その瞬間俺の体は炎に包まれた、すべてを焼き尽くす圧倒的な火力は、しかし俺の反射の膜を破るには至らず、残りの【アポロン・ファミリア】を全滅するだけに留まる

 

「熱っちぃな!何すんだよリリ!」

 

「それはこっちのセリフです!色様、今全力を出そうとしましたね?」

 

「うっ、だって」

 

「だってじゃありません!!大体何を悠長に《スキル》や《魔法》の説明をしてるんですか!馬鹿なんですか!!」

 

「はい、馬鹿です、馬鹿ですいませんでした」

 

プンスカと説教をし始めたリリに俺は正座をしながら、ひたすら平謝りをしていた。

 

「全く、命様も命様です!色様の唐突な行動にリリじゃ反応出来ないから魔剣を渡したんですよ?もっとしっかりしてください!」

 

「えぇ!?自分ですか?」

 

おっと、矛先が命ちゃんに向いたようだ、今の内に待機していたヴェルフに予め決めておいた、ハンドシグナルで合図をする

 

(こっちは終わったからベルに合図してくれ)

 

(解った)

 

ハンドシグナルを確認したヴェルフはベルに向かって大声で何かを叫び、次の瞬間

 

「こんな事があってたまるかァァァァァ!!」

 

爆音の後に響いたヒュアキントスの悲痛な叫びで、この度の戦争遊戯(ウォーゲーム)は幕を下ろした。

 

 

 

 

 

 

ミィシャの足は震えながら階段を下りていた、着いた先は四炬の松明に照らされた祭壇、ギルドの最高トップ、ウラノスの所だった

 

「よく来たな、ミィシャ・フロット」

 

「は、はい、この度はおよびいただいて共栄至極、極楽浄土、えええええと、あの「ミィシャ・フロット」は、はひぃ、ごめんなさいぃぃ!」

 

土下座してくる桃髪の少女にウラノスは静かに言葉を掛ける

 

「お前はなぜ此処に呼ばれたのか理解しているか?」

 

「うぅ、【アポロン・ファミリア】の件をギルドに報告せず、勝手にダンジョンに向かい【ヘスティア・ファミリア】に加担した処罰だと聞いております」

 

ミィシャはベートに連れられて、帰って来てから、ロイマンに主神命令だと言われ、此処に来るように言われた時の理由をそのまま話し出した

 

「そうだ、お前はギルドの法を破り、【ヘスティア・ファミリア】に加担した、よって、厳しい処罰を与える」

 

「はい、何なりとお受けします」

 

頭を下げながらミィシャは思う。厳しい罰ってなんだろう、ひょっとして殺されたりとかしないよね、やだよぉ、助けてよぅ、しきくぅん!目を瞑り、処罰の内容をただ待っていたミィシャにウラノスから厳しい処罰が与えられた

 

「これまでの、そしてこれからの黒鐘 色の情報の提出および、監視を命ずる、どんな些細な事でも報告する様に」

 

「・・・へ?」

 

後にミィシャはこう思う、もしかしてこれは死ぬより厳しい罰なんじゃないかと。

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、快勝快勝、案外楽に勝てて良かったな!」

 

「色君、タケの国では勝って兜の緒を締めろって言葉があるんだよ、ボクもあまり言えた事じゃないけど、調子に乗らない様に」

 

「今の言葉で確信したわ。俺、いつか絶対命ちゃんの国に行く」

 

時々意味の解らない事を言う眷属の背中を見ながら、ヘスティアはアポロンに勝った後、去り際に言われた言葉を思い出した

 

「いいかヘスティア、一番近くにいる君は必ず膨れ上がった黒に全て飲み込まれる、此処で殺さなかったことを何時か後悔するよ」

 

ヘスティアは頭を振って考えを消した。どんな事が有ろうと色君は色君だ、この子は全てを飲み込むなんて事はしない

 

「お、おいヘスティア?大丈夫か?」

 

「あ、うん、ボクは大丈夫だよ、それより色君の方こそ【ステイタス】更新しなくて良かったのかい?」

 

「応、ベルと約束したからな」

 

そう言って身支度を済まして行こうとする色に、ヘスティアは流し目を送る

 

「色君も案外男の子っぽい所あるよねぇ、Lv.3になったばかりのベル君とLv.3になった時から【ステイタス】を更新せずに一騎打ちなんてさ」

 

含みのある言い方にカチンと来たのか、色はヘスティアの頭を掴み、乱暴に撫で始めた

 

「うにゃぁ、主神に何をするぅ!」

 

「うるさい、これはベルが持ち掛けて来た事だぞ?あんな馬鹿みたいな【ステイタス】を相手にわざわざ受けた俺はどっちかって言うと大人だっつうの」

 

「他の子達からしたらキミの【ステイタス】だって大概、わ、わかった、ボクが悪かったから許してくれぇ!」

 

「アイツと一緒にすんなッ!!」

 

色によるなでなでは、しばらく飽きるまで続けられると思ったが、唐突に思いついたかのように色が声を上げ、ポケットの中を探り出した。

 

「おっと、またこれを忘れる所だった」

 

「うぅ、色君のせいでボクのキューティクルが台無しだ、どうして「ホレこれ」・・・ん?なんだいこれは?」

 

色が持っていたのは四角い箱、上にリボンが巻かれていた

 

「日頃の感謝だよ。一人で摩天楼(バベル)に行った時に買っといたんだ、破壊された教会を見た時はもうだめかと思ったが、奇跡的に無事でよかったぜ」

 

「ありがと・・じゃない!そうだ色君、ボクが上げた割引券を君がロキに使ったのを忘れてたよ!いいかい今後は絶対、ぜぇぇぇぇぇたいに、そんな事をしちゃいけないよ!!大体あいつは「いいから、開けろ」アイタッ!うぅ、主神をチョップするなんて酷いじゃないかぁ」

 

グズグズ言いながらも色から貰ったプレゼントをヘスティアは開けた

 

「言っとくけど、この贈り物(プレゼント)が相当な物じゃないと、ボクの機嫌は治らないから・・・ね」

 

中身を見てヘスティアは固まった、その手の中にはベルから貰った小さな銀色の鐘と対照的な漆黒の鐘が、可愛らしい音を立てている。

 

「いつも付けてるのがそれだけじゃ飽きるだろ?だから偶にはそれに付け替えて、気分転換でもしてくれ」

 

「・・・」

 

小さな鐘、頭に飾っているそれを飽きたら替えろ、なんて他の神や眷属に言われたらヘスティアは事情を知らなくても怒っただろう。しかしこの異世界から来た少年は、本当に何も知ら無いのだ、神の事も眷属の事も、今までのベルとヘスティアの事も、そんな彼が自分に神も眷属も関係なく、純粋な感謝の気持ちで渡してくれた、この贈り物(プレゼント)を貰ったヘスティアは、何故だか無性に嬉しく思った。

 

「なぁ、色君」

 

「なんだよ」

 

「ベル君が居なかったらボクは君に惚れてたぜ」

 

「そりゃ、ありがとな」

 

ぶっきら棒に返事をした黒い少年をロリ巨乳の女神は聖母のように見つめていた

 

そうだ、どんな事があろうと色君は色君だ、たとえ世界中を敵に回したとしても、ボクだけはキミを信じよう。

 

 

 

 

所要期間 約13日

 

モンスター撃破記録(スコア) 56821体

 

桃髪のギルド職員一人が、死ぬ思いで作り上げたこの記録は、以後、世界の誰にも抜かされる事の無い世界最速鴉(ワールドクロウ)としてオラリオに刻まれることになる。

 

 

 

 

黒鐘 色

 

 Lv.2

 

 力 :I57→S999

 

 耐久:C687→S999

 

 器用:I21→S999

 

 敏捷:I17→S999

 

 魔力:D552→S999

 

 耐異常:I

 

 《魔法》

 

御坂美琴(エレクトロマスター)

 

・電気を自在に発生させる事ができる。

 

《スキル》

 

一方通行(アクセラレータ)

 

・範囲内の向き(ベクトル)を自在に操れる

 

・自身のステイタスにより能力増大

 

 

幻想御手(レベルアッパー)

 

・レベルアップまでの最適化

 

・レベルアップ時の【ステイタス】のブースト

 

 

 

 




次は短いかも

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