【明美サイド】
体が動かない・・・・・それに凄く眠い・・・・
お母さんっ!!
か・・・・よ・・・・・?
耳元で、娘の泣き声がする。
気のせい・・・か?
お母さん・・・・・・・お母さんっ。
ダメだ、何も見えない。私は、誰かにしがみつかれている。
しっかりして・・・お母さん、死なないでっ
加代の声・・・・・?ああ・・・・夢か。私は、加代の夢を見ているんだ。だから加代が、私をまだ「お母さん」って呼んでくれているんだ。
じんわりと視界が回復していく。私の視界に映っていたのは、暗い空と、泣いている加代だった。
加代・・・
【明美サイドエンド】
「お母さん・・・・・・・」
加代の瞳から涙がこぼれてくる。
「う、っく、ひっく・・・・お母さん・・・・死んじゃやだ・・・あ。」
ドラえもんはポケットから傷グスリ付き自動巻き包帯とお医者さんカバンを出していた。傷グスリ付き自動巻き包帯は怪我の部位を見つけると、明美の体にぐるぐると巻きつく。何とか出血を止めようとするドラえもん。
「今、救急車呼んだ。」
悟が急いで戻って来た。
(そっか・・・・私、トラックにひかれたんだっけ。大量の出血はそのせいか。あまりに突然で、わけがわからんかった。)「か・・・・・よ・・・・。」
「なに?」
「お前・・・が・・・・最初に、駆けつけてくれたのかい・・・・・?」
「それは・・・・。」
「そうだよ!」
「えっ!?(のび太!?)」
「そうだよ。加代ちゃんが一番最初に駆けつけたんだよ。無我夢中で誰よりも早く。」
(加代が、一番最初に駆けつけてくれたのか。なんか、凄い嬉しい。)
「それより、大丈夫なのっ?死んだり・・・しない?」
みんなの視線がドラえもんに集まる。
「・・・・分かんない。」
「ふぇえっ・・・・、お母さんが・・・・死、死んじゃ・・・・っ」
「あああ、ウソウソっ。死なない・・・・多分。」
「か、身体はバラバラだけど、意識はあるし・・・・」
「だってトラックにひかれたんだよ?死なないわけないじゃないっ。」
「君たちは(明美さんを)生かしたいのか、殺したいのか、どっちだ。」
「うう・・・・ひっく、っく・・・・・・」
「悪かったね・・・気づかなくて。アンタがそんな風に思ってくれてるんこと、私は気づけなかった。」
「・・・・・うん。」
「ドラえもん。」
「うん。」
治療が終わるとそのまま静かにその場を立ち去るのび太とドラえもん。
【タイムマシーンの出口前】
ドラえもんがタイムマシーンの出口に入ろうとしたその時、
「帰るのかい、未来へ?」
振り向くと、悟たちと一緒にいるはずの佐知子が立っていた。何故彼女は自分たちが未来から来たのか知っているのだろうか? 悟が何故母親を「妖怪」と呼ぶのか、今なら理解出来る。
「ええ。何故突然、何も言わず、引っ越しちゃったのか・・・。長い間の謎がやっと解けましたから。」
「加代ちゃんはこのまま明美さんの母親である祖母が預かることとなり、一時保護されることになります。」
「・・・・・・・。」
ドラえもんたちの言葉に佐知子は明美がトラックにはねられた直後のことを思い出す。
【回想:明美がトラックにはねられた直後】
「しっかりして、大丈夫!」
「ドラえもん、傷グスリ付き自動巻き包帯とお医者さんカバン。 」
「うん。」
「何でそんな奴助けるんだ。」
急いで治療を開始するのび太たち。
「しっかりして!」
「のび太・・・・・。」
それを呆然と見守る悟たち。
「なんでだ、理解できないよ!!!」
ドラえもんとのび太の行動に理解に苦しむ悟たち。
「気に入らないからって見捨てたら・・・・・僕たちも(明美さんと)同じになっちゃうよ!!!!」
「!!!」
「かわいそうだよ。 自分より大きなものがいないもの。よりかかってあまえたり、しかってくれる人がいないんだもの。だから、 時には誤解で怒ったり、八つ当たりすることもあるよ。」
「・・・・・・・・・・・・。」
【回想:終わり】
「あれが、アンタたちの強さなんだね。」
「違う。ときどき、理屈にあわない事をするのが人間なんだよ。」
「・・・・・・・・・。」
「それじゃあ・・・・また・・・・いつか・・・・。」
タイムマシーンの出口に入るドラえもん。そしてヘッドギァをつけるのび太。
「また(北海道に)遊びにきな!」
タイムマシーンの出口が閉まり、同時にのび太はその場から消えた。
変わり者だけど、アンタたちこそ本当のヒーローべさ。
こうしてドラえもんたちは元の時代へと帰って行った。