「男子は二人一組で競争だってさ。」
体育の授業でスケートの競争をするのび太たち。 のび太の相手はアイススケートの全国大会で優勝したチームのレギュラー鈴木でした。イヤな時間がはじまる。そう思ったのび太。
「まだ昨日のテストの事気にしてるの?」
「藤沼君に僕の気持ちなんか分かるもんか。」
「くよくよするなよ、のび太。君は立派に参加したじゃないか。」
ベンチに座り落ち込むのび太に藤沼は暖かい言葉をかけ続ける。
「なんで体育の授業でアイススケートなんてやるんだ。」
「北海道だもん、しょうがないさ。」
悟は頭を抱えるのび太に苦笑いしながら言った。
「のび太の番だよ。」
「分かってるってば、もう。」
怒りながらベンチから立つのび太。
「鈴木と滑るの野比だよ。」
「かわいそう!」
何人かの女子生徒がのび太を見ながらニヤニヤ笑いを浮かべている。のび太は周囲の視線など気にせず、急いでスタート地点に向かった。
「雛月、声かけてやればいいべさ。」
「・・・・・・・・・・・。」
加代が無視すると美里はつまらなそうな顔になり、のび太たちに視線を戻した。
「位置について、用意・・・・・ピイ!」
「は〜あ、やだな。やだやだやだ。みんなに何て言われるかと思うとさ。」
ホイッスルが鳴り、鈴木がすべりだす。がのび太はスタート地点で立ち往生していた。
「のび太、鳴ったぞ!!」
「分かってるってば、もう!」
怒りながら滑りだすのび太。しかし少し滑ると、突然立ち止まり、
「!!!」
「!?」
「おかしいぞ。今日はなんだか体が軽くなったみたいだ。」
とても小学五年生とは思えないスピードで鈴木を追い抜きゴールするのび太。例えるなら、ママチャリの横をパトカーが最高速でぶっちぎって行ったぐらいの違いだ。
「・・・・・・・・今の本当にのび太?」
「・・・・・・・・信じられない。」
「凄い。」
「すっげぇぞ!のび太!」
「・・・・・・・・・・。」
そしてのび太は悟達から揉みくちゃにされ、女子から黄色い歓声が上がった。その様子を遠くから伺う加代。
「よし、俺の番だ。」
悟は急いでスタート地点に向かった。悟の相手はアイスホッケーの全国大会で優勝したチームのレギュラー浜田でした。
「野比、一緒に滑ってみるべさ。」
美里が笑いながらのび太に言った。
「僕が!?」
「ふん、さっきのをまぐれ。柳の下に二匹目のドジョウは早々いないぞ。」
「ムカ!先生、僕やります。」
浜田の挑発にのったのび太は、悟と浜田が待つスタート地点に向かった。
「位置について、用意・・・・・ピイ!」
「ただいま!ねえ、ドラえもん聞いて。今日の僕なんだかおかしいんだよ。」
「何が?」
「走ると早いし、鈴木君や浜田君にスケートで勝っちゃうんだ。ねえ、変だろう?」
「ちっとも変じゃない。」
「???」
「いままで君は自分は何をやっても出来ない。頑張るだけ無駄。そう思っていた。だけど加代ちゃんの一件で何が何でも頑張るしかない。僕にできないことなんて無い。そういう思いが今日の結果を生んだんだ。」
「そうかなあ?そんなもんかな。」
「そんなもんだよ。」
「そうか、だとすると僕だってやれば出来るんだな。」