「スネ夫!出てこい!」
「・・・・・・・。」
玄関のドアを何度も力一杯叩くが返事がない。
「いないのかな?」
「・・・・・・・・。」
加代は無言で玄関のドアノブを引いてみる。
「!?」
「あれ?開いてる?」
玄関のドアが開いていることに驚くのび太と加代。家の中は静かで人のいる気配がしない。
「・・・・なに、この匂い?」
家の中にさまよう猛烈な甘酸っぱい匂い。ジャイアンの手料理を嗅いだ時の様なこの香り。のび太と加代は鼻を摘みながら大急ぎでスネ夫の部屋に向かった。
「スネ夫!」
勢いよく部屋のドアを開けると、スネ夫が後ろ向きで椅子に座っているのが見えた。
「おい、スネ夫!返せよ!」
「・・・・・・・・・。」
スネ夫に話しかけるが返事がない。
「スネ夫?」
どうしたのかと思いのび太はスネ夫の肩に触れる。すると
バタン
スネ夫の体は椅子から転がり落ちた。
「おい・・・・・。」
「・・・・・・・・。」
よくみるとスネ夫の体にはナイフが刺さっている。
「・・・・・・おい・・・・返事しろよ。」
「・・・・うそだろう・・・・やめろって。起きろよ!スネ夫!」
スネ夫は死んでいた。彼の周りにはハエなどの虫たちが群がっている。どうやら殺されてから何年もたっているようだ。だがそうなるとおかしい。本物のスネ夫が何年も前に死んでいたのなら、今朝までいたスネ夫は何者なのか。スネ夫の死体に呆然としていると、後ろで声がした。
「スネちゃま、ケーキ持ってきたざます・・・・・。」
スネ夫の母親は部屋の光景を見て呆然とする。手に持っていたトレイを落とすと、
「ああああああああああああああ!!」
悲鳴をあげた。
スネ夫の母の悲鳴で警察が家にやってきた。ひとまずスネ夫家の地下室に隠れるのび太と加代。
「ここは・・・。」
「すごいな、これ!」
部屋の中にはプラモデルやら怪獣の着ぐるみでいっぱいだ。はしゃぎだすのび太。
「悟君に見せたら喜ぶだろうな・・・・・。」
部屋の中を見渡していると、
「あっ、タイムホール!こんなとこにあったのか。」
部屋の隅に隠されていたタイムホールを見つけるのび太。
「これは・・・・・。」
「どうしたの?」
加代は壁に掛かっているある物に目を止める。すると加代はある言葉を思い出す。
ピンチになると、どこからともなく救いにきてくれる正義の味方・セルフ仮面。
でもその正体は・・・・・・。
「そうか・・・・・そうなんだ・・・。」
何かに納得する加代。その表情はどこか大人びて、それでいて切なそうに笑っていた。
「???」
「やっと分かった・・・・こういうことだったのね。」
「???」
すると加代はのび太の方を向くと、
「ごめんね、こんなことに巻き込んじゃって。」
「えっ!?あ・・・いや、別に加代ちゃんが悪いわけじゃ・・・。」
「分かってる。私が死ななかったから・・・歴史を変えたから、こんなことに・・・・。」
「どうして・・・それを・・・・。」
加代の発言に驚くのび太。すると
カチャカチャ。ドン!!ドン!!
地下室のドアが力一杯叩かれる。どうやら警察が来たようだ。
「もう、ダメだ・・・・・・。」
「のび太、これを・・。」
加代は何かを風呂敷に包むとのび太にそれを渡す。
「これって・・・・。」
「それと、これは三年間私たちが集めた事件の資料だよ。のび太ならきっと役立てもられるべさ。」
加代はポケットから小さな手帳を取り出し、のび太に手渡す。
「役立てるって・・・・・・。」
加代はそういうとタイムホールのスイッチを入れた。
「悟がまってる。さぁ、早く!!」
ドガン
部屋のドアが蹴破られる。
「いたぞ!」
「突入!」
「のび太が信じてくれたから。あたしは・・・まだ頑張れる。ありがとう、のび太を信じて良かった。」
そういうと加代はのび太を突き飛ばした。のび太の体はバランスを崩しタイムホールの入り口へと入っていった。のび太は加代に手を伸ばすが、その手が彼女に届くことはなかった。加代は最後にのび太に何かを言ったが、野次馬のせいで聞こえない。しばらくするとタイムホールの入り口が閉じた。こうして加代の手でのび太は無事に過去に送られたのであった。
私たちのやってることは間違ってるかもしれない・・・・でも私は信じる! のび太が自分で選んだ未来を。