ドラえもん のび太の僕たちだけがいない街    作:雛月 加代

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第九章:のび太のくせに生意気だぞ

「どうしょう、これじゃあ・・・いずれ見つかっちゃうよ。」

 

「・・・・・・・・・。」

 

「どうしょう・・・・・どうしょう。」

 

先程の一件で警官が町中に張り巡らされている。これではスネ夫の家に行くことが出来ない。慌てふためくのび太。するとジャイアンは何かを決心したかのように立ち上がる。

 

「俺が囮になる。おまえらさっさとスネ夫の家に向かえ。」

 

「ダメだよ、ジャイアン。死にに行くようなもんだぞ!」

 

「うるせえ、さっさと行かねえと見つかって殺されるぞ。」

 

「ダメだよ、ジャイアン!戻って来いよ!」

 

「・・・・・・・・・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「手強い相手だった・・・。」

 

そう言うと、ジャイアンはよろけながらその場に座り込む。

 

「すまねぇな・・・みんな・・・もうリサイタルは開けそうにねぇ・・・・。所詮、今まで人をさんざん虐めてきた俺様が・・・最後にヒーローらしい事をしようなんざ・・・ムシがよすぎたって事か・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大丈夫だよ。

 

武さん・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ドラえもん・・・静香ちゃん・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

ほら・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジャイアンが目を開けると、

 

 

 

 

 

 

 

 

「武!!武!!しっかりして!!」

 

「か・・・・よちゃん?」

 

「たけし血がっ・・・・!」

 

ジャイアンは大量出血していた。恐らく先ほどの戦闘で撃たれたのであろう。加代は急いでハンドバッグから包帯を取り出す。

 

「のび太も傷口おさえてっ!」

 

「・・・・・・・・・・・・。」

 

加代の言葉にのび太は無言のまま立ち尽くしていた。

 

「のび太!?」

 

「・・・・いいんだよ加代ちゃん・・・オレぁ・・・もう何をしてもムダ・・・だ・・・。」

 

「そんなっ!」

 

「それよりもよく聞け。二人とも俺のことおくびょうもんだと思うかもしれないけど・・・違うんだぞ・・・俺には動物的勘があるんだ。前にスネ夫の家に行った時、嫌な気がしたんだ・・・。敵がいる。いままでより強くて、凶暴な恐ろしい敵が。悪いことは言わねぇ逃げ・・・・」

 

「ジャイアン。」

 

「???」

 

「悟君は必ず僕たちが助け出す。だから・・・・何も心配しないで。」

 

「の・・・・のび太・・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ね?大丈夫でしょジャイアン。

 

私たちと武さんの願いはきっとのび太さんたちが・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

その言葉に笑みを浮かべる。

 

「のび太のくせに・・・・なまいきだぞ・・・・・・。」

 

心から安心したのかジャイアンは安らかに息を引き取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、ジャイアン・・・・・。」

 

「・・・・・・・。」

 

「ジャイアン?」

 

「・・・・・・・・。」

 

「そっか・・・・・もう、寝ちゃったんだね。ほら・・・そのまま寝たら風邪引いちゃうよ?」



 

着ていたジャケットを脱ぎジャイアンに賭けてやりながら、大粒の涙を瞳から流し続けるのび太。

 


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