「どうしょう、これじゃあ・・・いずれ見つかっちゃうよ。」
「・・・・・・・・・。」
「どうしょう・・・・・どうしょう。」
先程の一件で警官が町中に張り巡らされている。これではスネ夫の家に行くことが出来ない。慌てふためくのび太。するとジャイアンは何かを決心したかのように立ち上がる。
「俺が囮になる。おまえらさっさとスネ夫の家に向かえ。」
「ダメだよ、ジャイアン。死にに行くようなもんだぞ!」
「うるせえ、さっさと行かねえと見つかって殺されるぞ。」
「ダメだよ、ジャイアン!戻って来いよ!」
「・・・・・・・・・・・。」
「手強い相手だった・・・。」
そう言うと、ジャイアンはよろけながらその場に座り込む。
「すまねぇな・・・みんな・・・もうリサイタルは開けそうにねぇ・・・・。所詮、今まで人をさんざん虐めてきた俺様が・・・最後にヒーローらしい事をしようなんざ・・・ムシがよすぎたって事か・・・。」
大丈夫だよ。
武さん・・・・
「ドラえもん・・・静香ちゃん・・・・・」
ほら・・・・・・
ジャイアンが目を開けると、
「武!!武!!しっかりして!!」
「か・・・・よちゃん?」
「たけし血がっ・・・・!」
ジャイアンは大量出血していた。恐らく先ほどの戦闘で撃たれたのであろう。加代は急いでハンドバッグから包帯を取り出す。
「のび太も傷口おさえてっ!」
「・・・・・・・・・・・・。」
加代の言葉にのび太は無言のまま立ち尽くしていた。
「のび太!?」
「・・・・いいんだよ加代ちゃん・・・オレぁ・・・もう何をしてもムダ・・・だ・・・。」
「そんなっ!」
「それよりもよく聞け。二人とも俺のことおくびょうもんだと思うかもしれないけど・・・違うんだぞ・・・俺には動物的勘があるんだ。前にスネ夫の家に行った時、嫌な気がしたんだ・・・。敵がいる。いままでより強くて、凶暴な恐ろしい敵が。悪いことは言わねぇ逃げ・・・・」
「ジャイアン。」
「???」
「悟君は必ず僕たちが助け出す。だから・・・・何も心配しないで。」
「の・・・・のび太・・・・。」
ね?大丈夫でしょジャイアン。
私たちと武さんの願いはきっとのび太さんたちが・・・・。
その言葉に笑みを浮かべる。
「のび太のくせに・・・・なまいきだぞ・・・・・・。」
心から安心したのかジャイアンは安らかに息を引き取った。
「ねぇ、ジャイアン・・・・・。」
「・・・・・・・。」
「ジャイアン?」
「・・・・・・・・。」
「そっか・・・・・もう、寝ちゃったんだね。ほら・・・そのまま寝たら風邪引いちゃうよ?」
着ていたジャケットを脱ぎジャイアンに賭けてやりながら、大粒の涙を瞳から流し続けるのび太。