公園のベンチに腰を下ろし、周りを見渡す。ベンチの前には大きな川が流れていた。
「・・・・悟君の言うとうりだ・・・・ひとりぼっちでいるのがこんなに辛いなんて・・。」
のび太はあの時した会話を思い出す。
バカなの?
あんな言葉が懐かしい・・・。
涙に暮れていると、突然聞きなれた声がした。
「のび太!!」
「???」
「遂に見つけたぞ、のび太!!」
「ジャイアン!!」
静香ちゃんの死後、毎日のようにのび太をいじめるジャイアン。
「そこを動くなよ、のび太!!」
のび太に近ずくジャイアン、だが足を滑らせて川に転落・・・・
「わああああああ!!」
風が強いのか、川の流れが速い。どうにか近くの枝に捕まるジャイアン。
「ジャイアン!!」
のび太はジャイアンの腕を掴み引き上げようとする。
「のび太、やめろ。お前の力じゃ無理だ!」
「そんなこと言ったって、ほっとけないでしょ!!」
「お前も一緒に落ちるぞ!離せよ!」
「やだ!!頑張ってよね、ジャイアン。」
「のび太・・・・・・お前・・・。」
すると突然、のび太の隣に見知らぬ人が現れる。彼女はジャイアンのもう片方の腕を掴むと、のび太と一緒に引き上げる。
「ハァ・・・・・ハァ・・・・ハァ・・・。」
するとジャイアンはのび太を睨み、胸倉を掴んだ。
「本当なのか!?本当にお前が静香ちゃんを・・・!?」
「ち・・・違う、誤解だよ。」
「・・・・そうか・・・・。」
ジャイアンは力尽きたようにのび太の胸倉を離し、泣きながら抱きつく。
「のび太!!お前を疑ってた俺を命がけで助けてくれるなんて。なんて素晴らしい男なんだ!!」
「そんな大げさな。」
「いや!俺は自分が恥ずかしい。ありがとう、心の友よ!!」
のび太は女生の方を向き、礼を言った。
「ありがとう、助かったよ。」
「バカなの?一人で助けられるわけないべさ。」
「そんなこと言ったって・・・・・ん?・・・・・バカなの・・・」
顔を上げると、そこには懐かしい顔があった。艶のある柔らかな茶髪に三年経って更に整ったあどけない顔立ち。表情も柔らかくなってかつての陰が魅力として昇華されている。別れたのは二週間前なのに、彼女にとっては数年ぶりの再会である。
「久しぶり、のび太。」
「おふくろに見つかるな。その辺の漫画でも読んでろ。」
(ジャイアンって意外に親切なんだなぁ。)
「・・・・・・・・・・・・。」
ジャイアンの部屋に招待されたのび太と加代。しばらくすると加代は色々な事を話してくれた。あの事件の後、加代は明美の母親である祖母が預かることとなり、一時保護されることになった。それからオサムとカズが馬鹿やった話、ケンヤが他校の女子に告白されて大変だった話、ヒロミが他校の男子に告白されて大変だった話。するとのび太は気付く
「そういえば、悟君は元気?」
「・・・・・・・・・・・・・。」
突然空気が重くなり、加代から笑顔が消える。
「悟は・・・・・・・・・・。」
「よぉ!お茶持ってきたぞ。」
ジャイアンがお菓子とお茶をもって部屋に入ってきた。
「それがな、のび太。俺も少し調べてみたんだけど・・・どうやら静香ちゃんの部屋にあった交換日記が・・・・。」
「交換日記?」
「ああ。どうやら静香ちゃんは出木杉と交換日記をしていたらしい。」
「あ〜、そういえばそうだっけ。それがどうかした?」
「一番最後のページにのび太を馬鹿にする内容が書かれてあったんだ。」
ドキッ
「みんなはそれをお前がこっそり読み、激怒して思わず殺してしまったと思っているんだ。」
「ふっふ〜ん。のび太、見つけたぞ。まさか、ジャイアン家にいるとはねえ・・・・。」
ジャイアンの部屋をコッソリ覗くスネ夫。
「やっぱりのまま黙っているわけないか。きっと、これからドラえもんと一緒にタイムマシーンで犯人を探しに行くんだろうなぁ。でもそんなことされたら、こっちが負けだよ。よし!」
スネ夫の目が光る。
「邪魔してやる!」