ドラえもん のび太の僕たちだけがいない街    作:雛月 加代

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第二章:僕はのび太君の面倒なんて見たくない!

「いつもこうなんだ、ドラえもんと変わった世界へ行くと帰れなくなって、変な事件に巻き込まれてさぁ・・・・・もう、たくさんだよ。」

 

するとドラえもんが机の引き出しから顔を出す。

 

「ドラえもん、どうだった!?」

 

「・・・・・・・・・・・。」

 

「うまくいったんだろ!?早くタイムマシーンで静香ちゃんを・・・・・。」

 

「ダメだった。」

 

「何!?」

 

「必死に抗議したけど、やっぱり全然聞いてもらえなかった。挙げ句の果てに、そのことで刑罰を貰った。」

 

「そんなのありかよ!?それじゃあ、助けに行けないじゃないか!!無責任!なんとかしろ!なんとかしろ!」

 

「どうにもこうにもならないよ!こうなったのも君が勝手に歴史を変えたのがいけないんだろう!だいたい君という奴は・・・・・。」

 

「何だと!?君こそ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう、僕はのび太君の面倒なんて見たくない!」

 

「ああ、いいですよ!こっちだってお断り!!ドラえもんがいなくたって、僕は十分やっていけます。」

 

「!?言ったなぁ。それを言ったな!!僕は二十二世紀に帰る!」

 

ドラえもんは泣きながら引き出しを開ける。

 

「・・・・・・・・・・。」

 

どのみち、もう一緒にいられない。普通に別れるよりも、このほうがいいと考えたのだ。のび太は泣きながらその場に座り込む。ドラえもんも泣きながらタイムマシーンに乗ると未来の世界へと帰っていった。それがのび太が見たドラえもんの最後の姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

静香ちゃんが亡くなって二週間がたった。あの日からのび太がどこでもドアを使って静香ちゃんを殺したという根の葉もない噂が流れていった。すると、それを境にのび太の日常が一変した。

 

「・・・・またか」

 

のび太は教室のごみ箱に自分の教科書が無残に破かれ、捨てられているのを見つけた。それだけではない、毎日机には酷い書き込みがあったり、授業中ゴミを投げられる事もある。学校の誰もがのび太を無視し、のび太を避け始めた。それは学校だけにとどまらず、学校の外でもそうだった。今でも道を歩くたびに・・・・

 

「ほら、あの子。」

 

「ああ、あの・・・・・・。」

 

「新聞にも出てたって。」

 

「あんな小さい子がねえ・・・・・。」

 

人々はのび太の悪口を言い始める。しかし今ののび太には何の支障もなかった。なぜなら加代が受けていた虐待と比べたらかわいく思えるからである。

 

 

 

 

 

「のび太・・・・・。」

 

「ママ・・・・・・。」

 

のび太は学校の帰り道で母に(玉子)に会った。だがそこに会話はなく、二人は無言のまま家に向かって歩き出した。

 

「ママ・・・・。」

 

「のびちゃん、今夜はすき焼きよ。」

 

「えっ!?」

 

「どんな噂が流れても、ママはのびちゃんのこと信じてるわよ。」

 

「・・・・・うん。」

 

のび太はニッコリ笑った。

 

 


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