あべ☆こべ   作:カンさん

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第二十四話 アキバでの出会い

 ギリギリ遅刻は免れたものの、慌てて教室に入ったところを教師に見られてしまい、今後は余裕を持って行動するようにと注意されてしまったキョウ。

 午後の授業、ホームルームを終えたキョウは早速ひよりに誕生日パーティについて聞いた。

 

「嬉しいけど……良いのかな?」

「なにが?」

「いや、ぶっちゃけ私一番繋がりが薄い気がするし……」

 

 みなみはみゆきと親交があり、ゆたかはこなたと従姉妹。彼女たちが呼ばれるならともかく、誕生日が近いという理由だけで自分が呼ばれるのは如何なものか。そう考えての発言だったが、キョウはジト目で彼女を見てため息を吐いた。

 

「俺たちと友達。それで良いと思うよ?」

「でもなぁ……」

「それとも、迷惑だった?」

「う……」

 

 繋がり云々を気にすることに対しては一言物申すキョウだが、もしそれが行きたくないという本音を隠すための建前だったら?

 そうだとしたら自分の行いはただの押し付けであり、不安に思ったキョウはひよりに尋ねる。

 すると、彼女は呻くと視線を逸らした。

 

(男の子のシュン……とした顔! 素晴らしい!)

 

 ……どうやらキョウの表情に萌えただけらしい。

 描きたいという欲求に耐えながら、彼女は彼に言った。

 

「そ、そんなことないよ。じゃあ、お邪魔させていただきます……」

「! うん、分かった」

 

 途端、パアッと顔を明るくさせてこなたにメールで報告するキョウ。

 そんな彼を見ながら再び悶えるひより。

 

(ん゛~~~! その表情(カオ)もイイ!)

 

 今日も平常運転なひよりであった。

 

 

 第二十四話 アキバでの出会い

 

 

 かがみたち三人と共にこなたのバイト先に遊びに行くこととなったキョウ。一応ゆたか達にも声を掛けたが、それぞれ用事があるとのことで断られた。

 電車に揺られて何駅か通り過ぎて、秋葉原駅に辿り着いた彼らはこなたに電話をすることにした。

 

「でも、なんで時間ズらして行くんだろう?」

「色々準備とかあるんじゃないの?」

 

 ふと疑問に思ったことをつかさが呟き、それに対してキョウが答える。

 実際、キョウたちと別れる前のこなたは、何やら企んでそうな顔をしていた。

 よって彼らは、図書室で課題を消化させてから此処に来ている。……つかさだけヒーヒー悲鳴を上げていたが。

 そんななか、こなたに電話していたかがみが呆れたような声で返事をし、パタリと携帯を閉じる。

 

「どうでしたか?」

「問題ないみたいだけど、あそこで今月号のコンプとはがない? のコミックを買って来てだってさ」

「すぐに分かりますでしょうか?」

「まぁ、行けば分かりますよ」

 

 みゆきの懸念にキョウは問題なしと答えると、件の店に向かった。

 見慣れない風景にそれぞれ辺りを見渡していると、彼らに……いや彼に声をかける者が居た。

 

「すみません、一枚良いですか?」

「え?」

 

 キョウが振り向くと同時に、パシャっと軽い音が鳴る。

 それがカメラのシャッター音で、いきなり写真を撮られたと認識するよりも早く、別の者がキョウに声をかけた。

 

「すみません、こちらもお願いします!」

「え? え?」

 

 戸惑うキョウに構わず、再び鳴るシャッター音。

 ナンパで声をかけられることが多いキョウだが、このような形で迫られることがほとんどなく、彼は混乱していた。人が人を呼んだのか、それともキョウの恰好(学ラン)が何かしらのアニメキャラに酷似していたのか、いつの間にかカメラを持った複数人の女性たちに囲まれていた。

 右を見ても左を見てもカメラのレンズがこちらを捕らえており、彼の表情が変わる度に、体が動く度にシャッター音が鳴る。

 なんだこれ? とキョウが未知の体験に軽く恐怖を抱いていると、カメラから守るようにかがみが立ち塞がった。そんな姉の背中を見たキョウは、安心感を覚え……ることなく焦燥感にかられた。

 

「アンタら……!」

 

 凄まじい怒気を孕んだ声。確認するまでもなく、彼女は怒っていた。

 近くに居た女性のカメラをガシッと掴むと、そのまま力を込めてメキメキと悲鳴を上げさせる。

 放っといたらヤバいのでは?

 そう思ったキョウがかがみを止めようとし、しかし逆につかさに止められた。つかさはみゆきと共にキョウの傍に立って側面からのカメラのレンズを遮りつつ、彼に言った。

 

「キョウちゃん、大人しくしてて?」

「…………」

 

 穏やかな声でそう言うつかさだが……そこに優しさは全く無かった。

 少なくとも、逆らう気が起きないほど……怖い。

 

「何うちの弟勝手に撮ってんだコラ?」

「ひ……!?」

 

 かがみの気迫に顔を青くさせるカメ子たち。

 普通の女なら尻尾撒いて逃げるところだが、彼女たちは違った。

 

「そ、その前に『ボクは悪くない』って言って貰っても――」

「――は?」

「失礼しましたー!」

 

 と言っても、その違いは一秒経たずに無くなったが。

 かがみのドスの入った声に、蜘蛛の子を散らすかのように逃げ出してしまった。

 あっと言う間に人ごみの中に消えて行ったカメ子たちに、かがみはため息を吐くと手に持ったカメラを操作してキョウが写っているデータを削除した。と言っても、他のカメラには入っているのであまり意味のないことだが……。

 もう用はないと言わんばかりにかがみはカメラをポイっと投げ捨てると、キョウの手を取って件の店へと向かった。

 

「ほら、さっさと行くわよ」

「……やりすぎだと思うんだけどなぁ」

「なに言ってんの。危機感持ちなさい」

「そうだよ、キョウちゃん」

 

 かがみとは反対の位置に付いたつかさが、咎めるような声で彼に言った。

 普段の優しい姉とは思えないその態度に、キョウは困ったような表情でみゆきを見る。しかし彼女はただ苦笑して首を横に振った。どうやら、今回ばかりはみゆきもかがみたち側らしい。

 ため息を吐いて、とりあえず助けてもらったお礼を言うキョウ。

 

「……まぁ、ありがとう」

「姉として当然のことよ」

「うんうん」

 

 返って来たのは、聞き慣れた言葉だった。

 

 

 

 

 龍球伝説。WANTED! 実力派エリート迅。南斗の拳と言った()()()()ジャンプ作品から、アンソロジーやデータブック、同人誌まで揃っているアニメ○ト。まさにオタクの聖地とも言えるその光景に、初めて来るキョウたちは圧倒されていた。何度かこなたに付き合わされているかがみはそこまでではないが、やはり初見の人間にとってこの場所は衝撃的らしい。

 

「一人で来たら迷子になりそう……」

「たくさんの本がありますね」

「こなたさんが入り浸る訳だ……」

「お、あったあった」

 

 頼まれていた今月号のコンプを手に取ったかがみは、後ははがないのコミックだけだと捜索を開始する。

 しかし……。

 

「無いね」

「かがみさん。泉さんは確かにはがないとおっしゃったのですか?」

「そうなんだけど……」

 

 しかし、そのようなタイトルの本は無く、途方に暮れるかがみたち。

 手っ取り早く店員に聞いてみるか、とかがみが近くのスタッフに聞こうとしたその時。

 

「多分、あれだと思うよ」

「え? どれ?」

「ほら、あそこの」

 

 そう言ってキョウは一冊の漫画を手に取った。

 タイトルは「俺は友達が少ない」。

 それを見たかがみたち三人は首を傾げて不思議そうにしている。何故これが「はがない」? と。

 

「ひらがなだけを読むと、ほら」

「あ、本当です」

「キョウちゃん良く分かったね」

「普段こなたさんと話していると、こういう略称に耐性ができたから……」

 

 チャットをしていて「俺がいる」やら「ゆゆゆ」と言われて、その度に頭上にはてなマークを浮かべてはこなたに尋ねるキョウ。時々、彼女は別の世界に居るのではないかと思っていたり……。

 つかさから褒められながら、変な理解力が付いたなぁと内心苦笑し。

 

(あぁ……キョウがこなた色に染まっていく……)

 

 愛する弟が毒されている様を見て、複雑な心境なかがみであった。

 もし将来、キョウがアニメを見て「萌え~」やら「尊い……」と言い出したら、かがみは自分を抑えられる自信が無かった。具体的には、こなたに対する粛清的な。

 

 

 

 

「こんなんで、どうやって辿り着けって言うのよ……」

 

 こなたに頼まれた本を買い、彼女のアルバイト先に向かうかがみ御一行。しかし、かがみは心底呆れた声を出してこなたから貰った案内図を見ていた。

 分かりやすく言うと子どもの落書き。道であろう太い線が何度か折れ曲がっており、目的地であろう箇所に汚い字で『ここ!』と書かれている。誰が分かるかこんなもん。

 そして端っこにツインテールの女の子が火を吹いていた。何を目的に描いたのか知らないが、少なくともかがみには効果覿面だった。怒りボルテージ的に。

 

「あの、私一応調べてきました」

 

 そう言ってみゆきはプリントして来た地図を鞄から取り出した。

 

「流石ゆきちゃん!」

「準備良いですねぇ」

「確か……こちらですね」

 

 かがみに代わり、道案内を始めるみゆき。

 

「ここよね?」

「はい。ここの三階ですね」

 

 しばらく進むとあるビルに辿り着き、階段を昇っていく。

 そしてこなたから聞いていた店名が書かれているチラシがドアに張り付けられており、どうやら問題なく目的地に着いたようだ。

 先頭に立ったかがみがドアノブに触れ、扉を開けると……。

 

「お帰りなさいませ、ご主人様!」

 

 長い髪をアップにした、ウエイター姿のこなたが出迎えた。

 ノリノリなこなたに、かがみは頬を引き攣らせて、つかさとみゆきは物珍しそうな表情で彼女を見て、キョウは……。

 

「……ポニテ」

 

 一人静かにポニーテールに萌えていた。

 

 こなたに案内されて店の奥に向かう四人。広い空間に幾つかのテーブル席、個人席、パソコン、漫画等さまざまな娯楽物があり、彼女たちはテーブル席に通された。今は忙しくない時間帯だが、周りを見るとそこそこに人が居ることから人気のある店だということがうかがえた。

 

「最初の一時間は800円。ソフトドリンク飲み放題、駄菓子食べ放題。ゲームも無料で遊び放題だから!」

 

 一通りの説明を終えると、こなたはスタッフルームの奥へと消えて行った。

 注文票でも取りに行ったのだろうか。

 手持ち無沙汰になったキョウたちは、店内を見渡す。予想していたよりも落ちついた雰囲気で、リラックスできそうではあった。それでも此処は()()()()喫茶であり、彼女たちの知る喫茶店とは違う所がある。

 その顕著な所は、やはり店員だろう。一見普通のウエイター姿だが――女がウエイター姿という時点でおかしいが――それぞれ特徴がある。やはり、何かしらのキャラのコスプレなのだろうか。

 キョウがそんな風に思っていると、注文表を手に持ったこなたが彼らのもとにやって来た。……しかし、様子がおかしい。いつもの元気がなく、どことなく気だるげだ。

 

「らっしゃせー。注文何にしますかー」

 

 ……何というか、声も気だるげだ。

 友人の突然の変異に全員戸惑いを見せ、そんな彼女たちにこなたが小さな声で伝える。

 

「お店の仕様だから、気にしないで?」

「あ、そうなの?」

 

 どうやら、キャラに成り切っているだけのようだ。

 ほっとした四人はメニュー表を見て、とりあえずドリンクを頼むことにした。

 

「私メロンソーダ~」

「私はウーロン茶で」

「そうね……じゃあアイスコーヒー」

「俺はオレンジジュースでお願いします」

 

 四人の注文を聞いたこなた。しかしメモを取ることなくその場でしばし固まる。

 そんな彼女の行動を首を傾げる四人。

 硬直から解けたこなたは「かしこまりましたー」と言うと、来た道を戻っていった。そして、その先に居る店長らしき女性のもとに行くと……。

 

「多分全員カフェオレとかで良いと思います」

『ちょっと待てぇ!!』

 

 物凄~く適当に、盛大に注文を間違えた。

 思わずかがみとキョウが突っ込んでしまった。

 

「て、天真くん。それ本当に合っているの?」

「う~ん……多分」

「た、多分って……い、一応もう一回聞きに行って貰っても良いかな?」

「え゛~~。また私が行くんですか~?」

「そうだよね! 二回も行きたくないよね!」

 

 不遜というか何というか。見ているこっちがハラハラするようなやり取りが行われていた。

 こなたから注文票を受け取った店長が、再度注文を取りに来た時は気まずい思いをした。相手が申し訳なさそうにしているのが尚更……。

 無事、注文を受け取った店長は厨房の奥に入っていき、それを見送ったかがみはこなたをジェスチャーで呼びつける。他の客からの注文が無いからか、暇だったこなたは素直に彼女のもとに歩み寄っていった。

 

「なに?」

「何じゃないわよ! さっきのアレはなに!?」

「いや、だから店の仕様だって」

「どんな仕様よ……」

 

 訳が分からないと項垂れるかがみ。

 そんななか、こなたからアニメについて教わっているキョウはある程度察したのか、彼女に尋ねた。

 

「……今こなたさんがコスプレしているキャラって、結構ぐーたらしてます?」

「お、流石キョウくん察しが良いね。うん、さっきのはちょっとした小芝居だよ」

「見ているこっちは気が気ではないわ」

 

 心底疲れたように、かがみはそう零した。

 

「どんな設定のキャラなんです、それ?」

「えっと、天界学校主席で卒業した天使の男の子が修行で下界に来たけど、ネトゲと出会って駄天使化して課金のためにアルバイトをしている高校生ウエイター」

「設定盛り過ぎじゃありません? 堕天使って……」

「いや、駄天使」

「はい?」

「駄天使」

 

 ダメだ、意味が分からない。

 しかし、こなたでこうとなると他の店員はどうなるのか。

 気になったキョウは、こなたに聞いてみた。

 

「あの人のキャラは?」

「学校では非の打ちどころのない美少年高校生だけど、家に帰ると干物化してお姉ちゃん(お客さん)に甘えているという設定」

「……あのとんがり帽子を被っている人は?」

「魔法使いを自称しているけど、本当は高校生の中では超級の手品師。気まぐれで同級生の真似事をしているという設定」

「……あの、妙にこなたさんに似ている人は?」

「あー。あれは最近始まったアニメのキャラだね。確か凄い食いしん坊キャラで本を食べてた」

 

 なるほど、分からん。

 聞けば聞く程、ドツボにハマっていく気がして、それ以上聞くのは止めたキョウ。

 かがみ同様、疲れ切った様子で椅子にもたれ掛かった。

 

「いつもテーマに沿ったコスプレするんだけど、今日はあべこべな感じになっているね。皆思い思いにしているよ~」

「じゃあ、こなたさんも?」

「うん。気に入ったアニメだったから」

 

 妙に輝いているこなたに、四人とも苦笑していた。

 楽しそうに働いて何よりである。

 しかし、こなたはいささか難しい顔を浮かべて次のように言った。

 

「でも従業員が足りなくてね。あと一人くらい欲しいんだよ……チラ。

 他の店舗の人にヘルプを頼むときがあってね……チラ。

 できればアニメに寛容な男の子が良いなーって、チラリ」

「口でチラチラ言わんでください。やりませんよ、俺は」

「えー。ケチー」

 

 ブーブーとブーイングをするこなた。

 しかし、キョウの考えは変わらないようで、彼女の訴えに耳を貸さない。

 それに……。

 

「そもそも、親が許しませんよ」

「う、それはそうかもしれないけど……」

「はっはっはっ。泉さん、あまり強引に誘わないことですよ」

 

 どれほどキョウにコスプレさせたいのか、尚も食い下がるこなた。

 そんな彼女を止めたのは、トレーにドリンクを乗せて持って来た店長の女性だった。

 彼女はそれぞれドリンクを置くと、優しく諭す。

 

「コスプレはしたい者が、楽しみたい者がすれば良い。

 男の子のコスプレを見たいという気持ちは分かりますが、それでも……ね?」

「う……す、すみません」

「いえ。

 ご友人の皆さん。今日はごゆっくりどうぞ」

『あ、ありがとうございます』

 

 そう言うと店長は店の奥に帰って行った。

 それを見送ったこなたは、ふうっと息を吐くと。

 

「という訳で今回は諦めるけど、したくなったら言ってね?」

「って、反省しろこの馬鹿!」

「わーお。かがみんが怒った~」

 

 かがみの咆哮を聞いて、こなたはスタコラさっさと逃げて行った。

 

「まったく……」

「まぁまぁ、お姉ちゃん」

「泉さんも、本気で嫌がることはしませんよ。ねぇ、キョウさん?」

「まぁ……そうですね。俺が嫌だって言ったら別の服を用意しますし」

 

 そう言ってキョウはオレンジジュースを一口飲んだ。

 大勢の前でアニメキャラの姿で居る。さらに成り切って接客をする。

 流石に、それは無理だ。羞恥心で真っ赤になる。

 そう考えると、こなたは凄いのかもしれない。男装をして成り切っているのだから……。

 

「う~ん、そう? でもあのレンの恰好は露出高いと思うんだけど……」

「いや、俺は別に気にして――待って。何でかがみ姉さんがそのことを知っているの?」

 

 バッ! と視線を逸らす双子の姉妹。みゆきは何が何だか分からないご様子。

 しかし、彼女たちの行動で全てを理解したキョウは、瞳から光を消し、湧き上がる感情を抑えようとして……失敗する。

 

「死にたい……」

「いや、あの、キョウ? そこまで気にしなくても……」

「家族にコスプレしているのバレてた……」

「大丈夫! キョウちゃん可愛かったから!」

「つかさそれトドメェ!?」

 

 アニメや漫画に理解のあるキョウ。それらが好きな人間で、コスプレをする人を軽蔑したり差別をしたりしない。こなたの薦めでコスプレをしたし、本当に嫌だったら止めることもできたはずだ。

 それでも結局したのは、自分の中でも『楽しい』という感情があり、しかしそのことが家族にバレるとは思っておらず。

 つかさの可愛かった発言で、キョウは砂となって消えた。

 

「でも、何故お二人はそのことを知っているのですか? キョウさんの様子を見る限り、隠していたように見えますが……」

「あ、えっとね、こなちゃんが……」

 

「おーい、皆~。お菓子食べ――」

 

 

 

 ――いずみの気持ちを理解したキョウは、まるで獣の如くこなたに襲い掛かり、慌てて姉たちに止められるのであった。

 

 

 

 

「ふんふんふ~ん。今日はたくさん買ったな~」

 

 久しぶりに一人になった私は、帰りの途中行きつけの店に行って最近気になっている漫画を買いに来た。

 キョウくんに遊びに誘われたけど……まだお姉さんたちと会う決心が付かないんだよねぇ……。

 あの花見のことは絶対に話さないといけないし。キョウくんは別に言わなくて良いって言うけど……そうも行かない。あれは、私の不注意で起きたことだ。

 それに……変な話、私はあの時複雑な気持ちになっていた。

 友達のために誘わないといけない。でもそれ以上に……キョウくんには断って欲しかった。でも、彼は優しくて、私が困っているから、友達だから……たったそれだけの理由で……。

 本当に、あの時は愚かなことをした。

 だからこそ、彼のことを大切にしているお姉さんたちに言うのが……怖い。

 

「ズルいなぁ、私……」

「――どうしまシタ? こんなトコロでカナしそうなカオをして」

「へ?」

 

 そんな時、私は声をかけられた。

 若い……私と同じくらいの、妙なイントネーションのある声が。

 振り返ると、そこには金髪で背の高い外国人――って!?

 

「あ、え、と……」

「ン?」

「あ、あいむ、きゃんと、すぴーく、いんぐりっしゅ。OK?」

 

 キョウくんと陵桜に入るために勉強をした。けど、外国人と……英語を話せるかと言うと、私は全力で首を横に振る。

 物凄く拙い英語で会話を試みるが、目の前の外国人は首を傾げて不思議そうにしていた。

 あれ!? 通じていない? どうしよう!?

 

「ワタシ、ニポンごハナせます」

「え…………あれ?」

「もうっ! ニポンのヒトはすぐそうやってカイワをしないようにします!」

「えっと……ごめんなさい?」

「いえいえ! イイですヨ!」

 

 パワフルな人だ。目の前の女性を見て思ったのは、そんな在り来たりな感想だった。

 

「でもヨかったです!」

「え?」

「もうカナしいカオをしていません! ココではエガオがイチバン!」

「は、はあ……?」

「では、()()アいましょう! Goodbye!」

 

 そう言うと、彼女は風のように走り去っていった。

 ……一体何だったんだろう?

 急に声をかけられて、怒られて(?)励まされて(?)。

 でも……悪い気はしなかったかな。

 

「……うん? また?」

 

 また会いましょうって……どういう事だろう?

 ……言葉を間違えたのだろうか。うん、きっとそうだ。

 

 そこまで深く考えなかった私は、後にこの時の彼女の言葉の意味を知ることとなる。

 そう、ゴールデンウイーク明けに。




「えっと、天界学校主席で卒業した天使の男の子が修行で下界に来たけど、ネトゲと出会って駄天使化して課金のためにアルバイトをしている高校生ウエイター」
元ネタ:ガヴリールドロップアウト
「学校では非の打ちどころのない美少年高校生だけど、家に帰ると干物化してお姉ちゃんお客さんに甘えているという設定」
元ネタ:干物妹!うまるちゃん
「魔法使いを自称しているけど、本当は高校生の中では超級の手品師。気まぐれで同級生の真似事をしているという設定」
元ネタ:ダンガンロンパV3
「あー。あれは最近始まったアニメのキャラだね。確か凄い食いしん坊キャラで本を食べてた」
元ネタ:ひなこのーと

作者の偏見でこなたに似ているキャラをチョイスしました。
特にひなこのーとやばい。こなたが動いているように錯覚する。
もっとこなた増えろ。

あ、ちなみにアニメの放送時期とかは適当なのであしからず

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