一つ風が吹くと、潮の匂いと共に春を感じさせる生暖かい風が彼の頬を撫でた。 堤防に打ち付ける波が白く泡立ち、際限なく流れていく。
空に上がった太陽が海に煌くと少年の目を眩しく照らし、少年の記憶に女神と勇者と海賊の奇妙な海の物語を思い出され、少年は少しだけ頬を緩めた。
あの時は、一人の少女が少年と一緒だったが今その隣には誰もいない、ただ流れる海と空を飛ぶカモメ以外は少年一人である。
此処は冬木にある名もなき堤防の一つ。 たまに釣り人が竿を持って緩やかな時間を過ごしていき、タコなども釣れる隠れた名所でもあった。
そんな堤防を少年は釣り道具も持たず、ただ堤防沿いを一人で歩いていた。
目的は無い、ただあてもなく只時間を過ぎるのを待っているのみである。 つまりは時間つぶしなのであるが、これにある理由があった。
他の誰かから見れば笑う様な、けれどもマスターとっては深刻な悩み。 それは日々彼の心を突然に締め付け、砕こうとその茨を伸ばしてくる。
「_____」
少年が一つため息をついて顔を上げると、ついに冬木の港が見えてくる。 どうやら港の方まで歩いてきてしまったらしく、少年は無意識に中々遠くまで歩いてきてしまったことに苦笑する。
これまでの旅で、探検家も驚きな未開の地などを探検してきたおかげか少年は中々の健脚に成長しており、ちょっとやそっとじゃ足に疲れも感じなくなっていた。 無論、レオニダスブートキャンプのおかげでもあるだろうが。
この先に行くと、小さいながら灯台のある広い場所に着く。 先述の隠れた釣りの名所であるこの港はロマンチックな雰囲気を作り出すには絶好な場所であり、釣り人の他にも家族連れのお父さんや恋人たちにも好まれている。
そして雲一つない快晴と、春を感じさせる生暖かい風。 まさに文句の付けようのないお出かけと釣り日和。
この絶好のロケーションにこの日、この時間人が居ないということはまずないのだが……
「_____」
「……しかし、鯖しか釣れねぇな……」
この一人の暴力団風の男によって誰も近寄らぬ魔境へと姿を変えていた__!
ケルト最優の戦士とも言われる光の御子、ランサー、クー・フーリンである。 恐ろしくその性格を表しているアロハシャツを来たクーフーリンは釣竿を構えて暇そうに欠伸をしている。
が、流石はケルトの戦士、その釣竿を構える腕は一ミリも動かず、静かな巌のように風が吹こうが波が大きく揺れようが釣竿もまたその体の一部のように僅かも動かない。
その悟りを開いた剣士の様なクー・フーリンにマスターは素直に感心して、近くの自販機からコーヒーを買ってきてクーフーリンに投げ渡した。
「_____?」
「おう、ぼちぼちってとこだな。 マスターも奇遇じゃねぇか」
クー・フーリンはマスターからパスされたコーヒーを片手で受け取ると、持ってきていたバケツへと指を指す。
マスターが中身を見ていると、中身はランサーが釣った魚でごった返し小さな豊潤な海がそこに出来ていた。
「つっても、殆どサバなんだけどよ。 中にはタコもいるぜ」
「____?」
「おう、調査とやらが無い日は大体ここで釣りでもして過ごしているな。 あとは魚屋でバイトも少々」
思わぬサーヴァントの現実に溶け込んだ暮らしに少々面喰ってしまうマスター。 今までのサーヴァントを見る限り、現代社会に溶け込むなんて正直無理なんじゃないかとまで思っていたのでマスターは兄貴の兄貴っぷりにおもわず感動さえしてしまう。
「しかしなんだ、てっきり嬢ちゃんも一緒かと思ったが一人なんだな」
「……」
「あー……ま、そういう時もあるわな」
自分の問いに顔を曇らせて口籠る少年を見て、クーフーリンは苦笑いしながらこれ以上何も聞かずにまた海の方へと視線を移した。 こういう時に深く理由を聞かず、自分から話す以外に詮索もしないこのクーフーリンの人柄はマスターにとってはありがたかった。
その横に少年も座って同じように海を見る。 その後ろ姿はは親子の様であり、兄弟の様であり、仲の良い友人の様である。
「_____?」
「うん? 竿がけ? あぁ、いらねぇいらねぇ。こうやって竿と糸で海の動きを見るが好きなんだ。 まぁ大量に釣れるんならそれが一番楽しいがな……よっと」
クーフーリンの竿が
その神がかった鮮やかな手つきにマスターは思わず拍手してしてしまう。
「またサバ……っと。 なんだ、そんなに褒めてもらう様なことじゃねぇよ」
慣れた手つきで魚から釣り針を外すと、バケツに投げ入れる。 空から新入りが一匹増えたバケツの中は驚いた魚が所狭しと泳ぎ回っていた。
「_____?」
「ん? まぁ、趣味半分鍛錬半分ってとこだ。 だがこいつには自信があってな、カルデアでは最強の自負があるね」
そのクーフーリンの自信あふれる言葉に、マスターは苦笑したがこの小さな海と化したバケツを見る限りあながち言が過ぎるということでもないように思えた。
「_____?」
「あん? 師匠? ありゃあ竿と言うより槍で一突きって方が得意なんじゃねぇか? ほら、海女っていうんだっけか、あの恰好を師匠がしたら笑うしかねぇがな! ハハハ」
あぁ、そんなこと言ってもいいのだろうか。 壁にアンあり障子にメアリーである。 時にスカサハの場合は何処で聞き耳たてても不思議ではない。実際カルデアでクーフーリンは何回か軽口を叩いて刺されそうになっているではないか。
心配したマスターがクーフーリンにその意を伝えるが。
「なーに、流石に師匠の地獄耳も此処までは届きやしねぇだろ。 まったく年取ると耳聡くなると聞くがありゃあ相当年取らないとなれねぇなぁ」
_________ほう。
空間が割れたような音が聞こえたのはマスターだけだったのだろうか、誰かに見られているような感覚にマスターはうすら寒い物を感じると立ち上がってその場を後にしようとクーフーリンに別れを言った。
「____」
「なんだ、帰るのか? だったらこれ持ってけ」
「____?」
するとクーフーリンはバケツから何匹かの魚をコンビニの袋に入れて差し出した。 マスターが慌てて遠慮すると。
「いいってことよ、痛んじゃいけねぇから早く帰ってやれ。 嬢ちゃんによろしくな」
と、言って手をヒラヒラと振ってまた、竿と糸を見つめ始める。 これ以上は何も言う気は無いらしい。
どうやら見抜かれてたかなとマスターは少しだけ顔を曇らせると、魚を受け取り、クーフーリンの無事を祈りながらその場を後にした。
今頃マシュはなぜ自分がいないかと心配し探し回っているころだろう。 少年は少しばかりクーフーリンに勇気をもらいながら穏やかな日差しを浴びながら元来た道を歩いて行った。
雲一つない快晴に、春を感じさせる心地よい風が潮のにおいと共に心地よく頬に流れてくる。
カモメの鳴き声が寂しさを和ませ、波の音も加わって心を穏やかにさせるリラックス効果を生み出している。
まさに非の打ちどころのない絶好のロケーション。
午後の親子の散歩や、ご婦人の健康と美容のためのウォーキングに適したこの冬木の港は、しかし。
「どうした、竿が止まっているぞ。 クランの猛犬とも言われた男が情けのない、おっと十七匹目フィッシュ」
「なるほど、こうやって広大な海を前にして心を無にすると中々感じるものがある。 そういえばジナコも釣りが得意と言っていたな」
「なんでまたこうなっちまうんだ……」
その華麗さと美麗さも相まって、外国マフィアの取引現場の様な雰囲気を醸し出していた______!
「_____……」
「クーフーリンさん、それにスカサハさんに、カルナさんも。 皆さん奇遇ですね!」
その日マスターはマシュと一緒に港へ釣りへと来ていた。 昨日クーフーリンから貰った魚を見て、誰にも行先を告げずに一人何処かに行ってしまったマスターに顔を膨らませると同時に魚釣りに興味を持ったマシュをダ・ヴィンチちゃんが察知し、その日の内にダ・ヴィンチ製フィッシングロッドをプレゼントしたのである。
マシュの事で悩んでいる少年は最初は遠慮していたが、マシュの輝くような期待のこもった目に耐えられず結局一緒に行くことになった。 _マシュの上目遣いは少年に特大特攻なのである_
「マスターか、なるほど良い漁港だなここは。 あちらの海と違って海に生があふれている」
ダメージジーンズと黒いジャケット来た女性がマスターに話しかける。 例え何キロ離れていようが美人だとわかるその美貌と何処か武人の強さを持った威厳のある話し方をする女性はスカサハ、クーフーリンの師匠である。
先日のクーフーリンの悪口を遠く何千キロも離れたカルデアからしっかりばっちり聞きつけて即来日してきていたのである。
手には二本の釣竿を片手ずつ持ち、精密機械の様な一ミリも無駄のない動作で魚を釣り上げていく。 しかもまだ力の弱い魚は釣り上げた瞬間その竿を巧みに動かし指一本触れずにリリースしている、なのでスカサハのバケツには超大物というような魚がぎっちり詰っていた。 因みに竿は
「そこのバカ弟子が大言壮語にすぎる事を言っていたらしくてな。 時には弟子の鼻を折るのも師匠の務めということでわざわざワシ自ら出張ることになったのだ」
「嘘つけ、ルーン使って盗み聞きしてただろ……」
「何か言ったか? おっと十八匹目フィッシュ! ふ、どうしたセタンタまだ鯖が八匹しか釣れてはいないではないか」
「ほっとけ。 別にあんたと競うために釣りをしてるわけじゃねぇよ、向こういけ向こう」
「ふふ、負け惜しみとして受け取っておこう…十九匹目フィッシュ! 私に釣られない魚はいるか? ふ、いるはずもない、か」
「す、すごいですスカサハさん……」
釣られた瞬間自分からバケツに入っていくように飛ばされていく魚たちとテンションが上がっていく影の女王。こんなことに自分のキメ台詞まで使って良いのかと童心に帰っている大人のテンションに若干戸惑いながら、マシュとマスターは一人静かに海に糸を垂らしているカルナの横で釣りの準備をし始めていく。
因みにフィッシュとは当たりの意味です。 ヒット、ビンゴ、コーブラー等とお考えください。
「_____?」
「あぁ、マスターか。 別に横でも構わないが、俺の横では魚は釣れないかもしれん」
そういってただ海を見つめる男はカルナというサーヴァントであった。 インドの英霊であり、サーヴァントたちの中でも最強の名を争える男の一人である。
そんなカルナは麦わら帽子に薄着の服と言う季節違いの服装であったが、その陶器の様に白い肌に太陽が当たると、輝きを増して煌くので美しい。
「カルナさんは、あまり釣れてはいませんね」
マシュがバケツの中を見るとその中には、小さなカニがバケツで遊ぶようにハサミを鳴らすように開いたり閉じたりするだけで魚の姿は無かった。 技量的には他のランサー達と引けと取らぬ技量を持っているのだが、餌が悪いのだろうか? そうマスターが考えていると。
「あぁ、竿にかかるのはかかるのだが……」
カルナが竿の糸を引き上げると、そこにはフグがその体を大きく膨らましてカルナを睨んでいた。 中々の大物であり、素人では調理をするのは危険だがその身はたっぷりと詰まった様な外見をしていた。
「この魚ばかり釣れてしまう。 これで十回目のぷぎゃーだ」
「はい? ぷぎゃー?」
なんだか目の前の大英雄から聞こえる事のない単語が聞こえて、思わずマシュとマスターは聞き返す。 強さの基準が可笑しいインド神話だが、まさかインターネットが普及していて掲示板で煽り合いをしていたなんてことは宇宙が神の微睡であってもあり得ない事であった。
「……? オレの遠く親しい友人がモニターの中で釣りをする時はいつも言っていた言葉なのだが……違うのか?」
「多分、違うかと……」
「そう……なのか……」
なぜかショックを受けた様な声色で、カルナは目の前の釣れたフグから針を取るとそのまま海へとリリースしていく。
「______?」
「あぁ、膨らんだ姿がジナコに似ているので俺としたことが情が移ってしまったらしい。 人間と魚の知恵比べにこのような情をかけるのは相手にも失礼なのだろうが……こういう事だ、だから俺の横にいるとこの魚しか釣れないかもしれんぞ」
はてフグに似たジナコというインドの英霊何ていたかとマスターは思うが、どうやらカルナ個人の友人らしく英霊の座にはいないらしく、カルナはそう説明するとなにか懐かしむような目で海を見つめてまた竿を引いた。
またフグだった。
「_____……」
マスターが夕日と共に心地よい潮風に吹かれて少しだけ目を閉じる。 マシュ達が釣りに参加してからだいぶ時間が経っており、日も沈んできておりもうそろそろ釣りも終わりと言うことなのであるが、その頃になってもマスターは一匹もフィッシュできていなかった。
マシュは初めてとはいえ、つたないながらも二、三匹の魚がそのバケツに入っていたのだが、マスターはワカメと長靴ぐらいである。
何時まで釣れないマスターにマシュも励まそうと、近くの自販機まで暖かい飲み物を買いに行ってしまった。 経験したことがあるから任せろと胸を叩いて言い切った割にこの始末、マスターは自分が言った言葉に激しく後悔しながら竿を揺らして魚が食いつくのを待っていた。
「さて、と私はもうそろそろ戻るが……お主たちはどうするつもりだ?」
「______?」
「そうか、ならば行くぞバカ弟子。 船まで案内するがいい、明日も釣りに洒落込む予定だからな」
「こんなに釣ってどうすんだよ、加減しろ……俺の楽園を返せ……」
魚がこれでもかと言うぐらいに詰め込まれたバケツを持ちながら、ケルトの師弟二人はマスターに別れを言うとそのまま歩いて意気消沈しているクーフーリンと一緒に港から自分たちが拠点としている船に帰っていった。
船を知らないとなるとスカサハはどうやって来たのかマスターは気になったが、それを聞く前に姿が消えてしまいそれは叶わない。
とりあえず一匹釣れるまで粘るとマスターはいって竿を握りなおしたが、本当に釣れるかマスターには分からなかった。
「俺も、此処までにしよう。 マスターよ、例え魚が釣れなくてもそれはお前に非があるということではない。 単に魚の知恵が上回っていたというだけだ」
すると、先ほどまで永遠とフグを釣ってはリリースしていたカルナが、中々に傷つくことを言いながらカニと一匹のフグを入れたバケツを持って何処かへ歩いていく。
カルナからしてみれば、仕掛けが見破られているかもしれないから釣れなくても仕様がないと言いたかったのであろうが、カルナはその言葉には一言足りない。
ある人物にそれを指摘されてから自身は直そうと努力しているが、時折カルナの言葉で騒ぎが起こったりするのだ。
「それとマスター、お前がマシュに向けているその感情は至って普通だ。 そう自分を責め立てることは無い、自分が愛している者を何の躊躇もなく手放せるのはアルジュナぐらいしかオレは知らん」
「____……」
カルナの藍色を薄くした浅葱色の瞳がマスターを捉えた時、マスターはまるで自分が丸裸にされた様な感覚に陥った。 躊躇もなく自分の心の最奥をえぐり出されたマスターは反論しようにも口を魚のように開け閉めするだけで、空気が言葉の代わりとなって薄く細く音を鳴らし口から出ていくだけである。
「お前は彼女から向けられる特別な感情を自分自身へと向けた憎悪で塗り替えているようだが、太陽は自らが照らす者を選ぶ。 そこに太陽があるからではなく、照らすに値する者を太陽が選ぶのだ。 それを自分がたまたまそこに存在していているがために太陽に照らされていると思うことはおこがましいことではないか?」
「_____……」
「今度は一言足りすぎている? ……そうか、それではさらばだ。 特別ということは善ではない、自分と向き合ってみることだな、マスター」
ようやく絞り出されたマスターの言葉に、カルナはなぜだか嬉しそうな顔をするとそのままマスターに背を向けそのまま歩いて帰ってしまった。
そのすれ違いでマシュがコーヒーの缶を抱えてマスターの元へと戻ってくる。
「すみません遅くなりました。 皆さんの分も買ってきたのですが……どうも帰ってしまわれたようですね。 ……先輩? 顔が真っ青ですよ、どうかされたのですか?」
「____、____!」
不安げな表情をするマシュに、慌てて笑顔を見せてマシュから暖かいコーヒーを受け取るマスター。 受け取る際にそっと触れるマシュのすべやかな指の感触でさえマスターの心を優しく抉るには十分であった。 夕日が海へと飲まれていき黄昏は徐々に夜へと姿を変えていく。 港にいるのは二人だけであり、暖かいはずの春の風が冷たい心枯らす風となって二人を包む。
「……どこか痛むのですか? やはり帰ってダ・ヴィンチちゃんからメディカルチェックを受けた方が……」
「____……」
「しかし、後になって大事になっては……先輩は大事な私のマスターなんですから健康状態は」
「_____っ!」
「えっ……」
大声が港に響く、マスターは目の前で目を丸くしているマシュを見て自分が何をやったか自覚すると、更に顔を真っ青にしてマシュに謝り始める。
魚が釣れなくて、初めてのマシュに負けるのが悔しくて、というか餌食われるんじゃないかな。 と自分でもわからない本心をひた隠しにしながら、釣りのことを言い訳にしながら両手を合わせて頭を下げ続け、何とかマシュに許してもらおうとする。
対するマシュはその姿にらしくないと違和感を感じていたが、信頼する自分の先輩でもそういうことはあるだろうと無理矢理納得してマシュからもマスターに頭を下げた。
「い、いえ。 私も先輩の気を知らずに……すいません」
「_____!」
お互いの謝り合戦が際限なく繰り替し、このまま謝罪の言葉と下がる頭と共に日も沈むと思われた、顔を上げたマシュに映ったマスターが海に下げていた竿の糸が何かに引っ張られる光景を見て不意に中断される。
「せ、先輩! かかってますヒットしています!」
「____!」
その竿の曲がり具合を見るにかなりの大物、この日最後のラストチャンスを逃すまいと竿を引くが、獲物も負けじとマスターの体ごと持っていくように引っ張ってく。
「せ、先輩! お手伝いします!」
「____!?」
その様子にマシュも居ても立っても居られずにマスターの後ろから竿を握って一緒に釣り上げようと引いていく。 後ろから感じる柔らかい二つの感触にある意味マスターも立っていられなくなりそうになるが、そこは男の意地として我慢しそのままひっぱっていく。
「ah___……」
さすがの魚のほうも二人がかりの力に抵抗できないのか少しずつ竿に引かれ、リールにまかれて少しずつ陸へと近づいていく。 このままいけば大物をフィッシュを出来るであろうことは確実であった。
「ah____!」
「先輩、何か言いましたか!」
「_____?」
すると海の方から歌声の様な、叫びの様な声がマシュの耳に微弱な振動として入ってきて思わずマスターに確認を取るがマスターは前の力と後ろのマシュマロとの戦いにそれどころではなく、マスターの声でも無いことが分かる。
「Ah______!!」
「先輩、なんだか嫌な予感が」
「______!?!?」
だがその声は魚が釣られようとするにつれて大きくなってきており、不気味に思ったマシュはマスターに中止の進言をしようとするが時すでに遅く最後の力を振り、思いっきりと竿を引っ張り上げる。
そして
「これは……いやこの人はっ……!」
マシュが驚きの声を上げる。 それは魚ではない、ましてや人間でもない。 人間の様な長い髪と美しい肌と肌理やかな四肢を持っていてもその頭についている角が人間でない事を一目で分からせる。
それはマスターがある特異点で出会った此処にいるはずの無い人物____
「
「キャアアアアアアア!?」
______まぁ、清姫なのであるが。
マスターがいざ吊り上げてみるとそれは大物の魚でも何でもなく水着を着た蛇改めウツボ娘であった。
奇想天外、空前絶後な登場方法にさすがのマスターも女子みたいな叫び声をあげる。
「カルデアの連絡船の乗船も、飛行機の搭乗も禁止され、唯一禁止されていない海を泳いではや何日か……
どっちかというと
「まさかカルデアから泳いできたのですか!? 此処まで何キロあると……」
「そんなの愛と比べれば何の障害でもありません!」
「愛を万能の言葉にしないでください!」
「____……」
頼むから自分を挟んで会話しないでとマスターの声が切なく風に吹かれて消える。 この状況では清姫はマスターの家に泊まる事になりまたマスターとマシュが家の嘘を駆逐する作業が始まる。 マスターの両親は清姫が嘘が大の苦手だというと何の説明も求めずに只従ってくれるのだが、問題はマスターの妹である。 この前はいなかったから良かったのだが、その素直ではない性格は清姫との相性は最悪であった。
マスターはこれから起きようとしている災害と、これから起きようしているマスターの一部を抑え、ただ空を仰ぎ見る。 薄く見えてきたオリオン座から「ガンバ!」と一筋の流星が流れた。 他人事みたいに言いやがって。
_____マスターの明日はどっちだ。
あープロトアーサーあー(語彙崩壊)
あんなイケメン卑怯ですやん……ガチャっちゃいますやん……
それさておき、今回は釣り会。 元ネタはもちろんホロウのあのシーンです。
それと同時に二人の関係の状況に布石を打っておいておきます。 蛇足だとしても入れたいのです、すいません……
青い春ープロトアーサーの春ー(語彙崩壊)
誤字報告&感想、リクエストありがとうございます。 おかげではかどるはかどる。 お礼にケイオスタイド送りますね。
さて、次はリクエストにありましたアパッチ族のあの人の話です。 あくびをしながらお待ちくださると嬉しいです。
では楽しんでいただけると嬉しく思います!