カルデアの落ちなし意味なしのぐだぐだ短編集   作:御手洗団子

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魔法少女のカルデア奮闘記。

イリヤスフィール・フォン・アインツベルンとクロエ・フォン・アインツベルンは魔法少女である。

イリヤスフィール=イリヤは小学五年生、元気真っ盛りな銀髪赤目で貴族っぽい名前で召使っぽい人が二人いて、血の繋がらない兄に恋する何処にでもいる心優しき女の子である。

クロエ=クロはイリヤから生まれた、銀髪金眼でイリヤよりは艶っぽい小悪魔な性格で、イリヤ達と暮らしながらイリヤと同じ男を愛す罪深き女(自称)でイリヤと姉の座を奪い合う何処にでもいる女の子である。

二人は今カルデアで世界を救うための手伝いをしている。

本当は魔法少女の世界でイリヤはグランドマスターと出会い、共に旅をして魔法少女の世界とクロと親友の美遊を救い、元の世界へ帰還した……はずなのだが気付くとそこは知らない天井。 聞けばマスターと縁を結んだことで魔法少女としてのイリヤがこちらに召喚されてしまったらしい。 だが本体はちゃんと帰っているので安心してほしいとのこと。 しかもついでにちゃっかりクロもいた。

最初は混乱していたイリヤだが、自分たちのために全力を尽くしてくれたマスターとマシュのためにクロと共に世界を救うお手伝いをすることにしたのだった。 少女の笑顔は世界を救う。

 

さてそんな二人はなぜかカルデアの中でランドセルを背負い、廊下を歩いていた。

 

「よーし、これで今日のバベッジ先生のアリでもわかる算数講座おわりー!」

 

「もー、なんでこんなところまで来て勉強しなければならないわけー!」

 

「クロエさん知らなかったんですか? 勉強からは逃げられないんですよ」

 

イリヤのそばをくるくると旋回しながら喋るうさんくさい素敵なステッキはルビーという魔術礼装で、戦闘時はイリヤはこれを使って変身するのだ。 なおその性格はどこかの割烹着メイドを思わせるが、それは他人のそら似であろう。

それはそうと二人がカルデアでランドセルを背負っている理由、それはある人物が良かれと思ってマスターに一つの提案したのが発端であった。

 

 

それはイリヤとクロがカルデアに来てからしばらくたったある日の事である、ヴァン・ホーエンハイム・パラケルスス、通称Pがマスターにある提案をした。

 

「マスター、あの少女たちに勉強をさせませんか?」

 

「_____??」

 

「はい、彼女たちは私達英霊と違った形でここへ召喚された身。 私達とは違ってすでに完成された身ではあらず、その心と体はまだ成長途中にあります。 なので下手に命の危険に晒すということは人格への影響が懸念されます。 彼女たちは過去にいる私達とは違い様々な未来への可能性を持つ所謂発芽したての小さな芽なのです、私はその芽を摘ませるようなことはしたくない……」

 

「_____?」

 

「さすが、その通りですマスター。 彼女たちの命を守るためにも知識を付けさせるのです。 無論年相応の基礎的学問も学んでいただきます、どうでしょう? これならば彼女たちもここでの生活を有意義にできるはずです」

 

「_____??」

 

「はい? え、えぇまぁ彼女たちが聖杯の器ということにも興味がありますが……はい? 研究したいんじゃないか? まぁ……そうですね……」

 

とパラケルススの提案により、彼女たちには対サーヴァントの訓練に加え、様々な講座が用意されることとなった。

小学五年生からの基礎科目は勿論、レイシフト先で役に立つサバイバル講座、はたまた料理教室など様々な講座は皆すべてサーヴァントが講師として教壇に立ち指導する。

マスターが指定してるものと基礎科目は基本的に出席するのが決まりだが、その他の講座はイリヤ達自ら決めても良いことになっており、また他のサーヴァントも興味があるならば参加して良いことになっている。 __因みにアタランテのサバイバル講座は必須科目である_

イリヤが好んで通う講座は、ブーディカのお料理講座や、メディアによる闇の魔術に対する防衛術講座、マタ・ハリのスタイルアップ講座、牛若丸の兄上から喜んでもらえる101のこと。 などである。

クロの場合はメイヴの出来る女と出来ない女の違いはここだ!講座。 玉藻の殿方を射とめる料理百選。 ヘクトールの無駄に足の速い奴はこう煽る!講座。 ブリュンヒルデの愛する殿方の仕留め方講座などを好んで受講している。

なお清姫の愛する人の見守り方、酒呑童子の■■■■■講座、黒髭のオタクカルチャーの歴史、は諸事情より中止となりました。 ご迷惑をおかけして誠に申し訳ありません_ロマニ・アーキマン

 

「バベッジは確かに分かりやすいんだけど、蒸気音が気になるのよねー」

 

「というか、あの人……人なのかな? なんだか時々目がピカーン! って光るけど……」

 

「イリヤさん達はどれだけ凄い人に算数を教わってるか分かってないみたいですねぇ……いいですかーここの先生たちは一流の一流。 現代のお偉いさん方がいくらお金を積んだってできない経験をしているんですよー?」

 

「確かに……でもエジソンさんがライオンだって知らなかったよ……あとテスラさんと仲悪かったんだね……」

 

「まぁいっつも喧嘩してるしね、あの人たち……ってイリヤそれ何よ」

 

クロがイリヤが持っているカードに指をさした。 カードには、良くできました! と可愛くプリントされたシール(ダ・ヴィンチちゃん製)が張られており、イリヤのカードにはなかなかの枚数がたまっていた。

 

「あれ? クロ貰ってないの? ちゃーんと授業を真面目に受けて宿題もやるともらえるんだー。 7枚溜まるごとにね、マスターさんからなんでもひとつご褒美が貰えるの! この前なんかマスターさんとマシュさんとでピクニックに行ったんだよ、楽しかったなー……」

 

目を閉じてイリヤはしみじみと思い出す、レイシフトで景色が綺麗な草原へと飛び、マシュとマスター二人と手をつなぎながら辺りを散歩しながら自然の景色を楽しみ、お腹が空いたら大きな木の下で三人でお弁当を食べた。 どれもイリヤの好物ばかりで、びっくりするほど美味しかったし、どこか自分の兄を思い出す味だった。 お腹が膨れたら、みんなでお昼寝をすることになり、マシュはイリヤに膝枕を提供し、マスターは歌を歌いながらイリヤが寝付くまで頭を撫でてもらった。 マスターはイリヤが驚くほど上手く、何処で練習したのか聞いてみると、ファントム・ジ・オペラというサーヴァントのおかげだと言ったきり、マスターの眼はなぜか遠くを見ていたのでそれ以上は追及できなかった。 まぁとりあえず控えめに言っても最高の一日であったのだ。

 

「えー! それ私聞いてないんですけどー!?」

 

「クロさんは時々サボる、来ても寝てる、宿題は未提出という有様ですからねー、もらえなくても自業自得としかー」

 

因果覿面、ぶーぶーと文句をたれるクロだが完全にクロが悪いので、イリヤはフォローする義務もなくもうそろそろ次で二回目のお願いが出来る枚数に達する自分のカードを見て笑みを漏らしていた。

次は何をお願いしようか、またマスターさんにあの歌を聞かせてもらおうか、それとも時々着ているあのスーツで執事になってもらったりとかは許してくれるだろうか。 そしてマシュさんにはメイドの恰好を……あぁ妄想がひろがるプリズマ……

 

「イリヤさん、クロエさん、お疲れ様です。 授業はもう今日は終わりですか?」

 

とそこにマシュがやってきた、今は鎧を脱ぎ非戦闘服姿で、眼鏡姿が大変によろしい。

そうだ二人には眼鏡を追加でつけてもらおう! イリヤの妄想に眼鏡姿のマスターとマシュが追加された。 これで布陣は完璧である。 この戦い勝ったぞ!

 

「イリヤさん!? 顔が今にもとろけそうですよ!?」

 

「だ、だいひょうぶでひゅ……」

 

「それよりもマシュ! 私にもシールをよこしなさいよ!」

 

「シールですか? あれは品行方正、成績優秀者に渡される神聖な物。 欲しいと言われて渡すわけにはいかないのです」

 

「イリヤが十枚以上持ってて私が存在すら知らなかったって、どういうことよ! こんなの姉の面目が保たれないわ! いちまーい一枚ぐらいいいでしょ~?」

 

駄々をこねるクロにマシュは顎に手を乗せ考える、確かに一枚も持ってないのは可愛そうだが、無条件でシールを上げるのはルール違反である。 なによりがんばってきたイリヤに失礼だ。 散々考えた結果、手元にあるマスターへの書類を見て思いついた。

 

「ならば、この資料をマスターに届けていただきますか? そしたら一枚シールを……」

 

「なんだ、そのくらい楽勝じゃない。 早い者勝ちね! このシール、私が貰ったわ!」

 

「あぁちょっとクロ! ずるい! 私もシールが欲しいのにー!」

 

クロはマシュから資料を強引に受け取ると、目にも止まらぬ速さでマスターの部屋へと駆けて行った。

 

「もう! ルビー!」

 

「おぉ、面白くなってきましたねぇ!」

 

続いてイリヤが魔法少女へと変身_残念ながら変身パンクは省略された_し、クロの後を高速飛行によって追いかける。 道すがらカリギュラのスカートが高速飛行の際のイタズラな風によってめくりあがったが、全然嬉しくない(非ローマ)光景であった。

 

「あ、廊下を走ることは非常時以外禁止されています!空を飛ぶのも……行ってしまいました」

 

風のように走り去っていった二人に、マシュはただ佇み、ため息を漏らすだけであったが、何故だかあの二人に振り回されることはなぜか嫌いではなかった。 いままで自分に身近な人物はドクターロマン、所長だけであった。 それから()()()先輩が出来て、様々な英霊と出会い、自分の中の世界が広がった。 その中であの二人は、あるがままに子供である二人はマシュにとってはいつの間にか守るべき対象になった。 まぁ簡単に言うと彼女の中の属性に姉属性が芽生え始めているのだが、そのことにまだマシュは気付かない。 何時の日か姉属性に完全に目覚め、マスターを手玉に取るくらいの余裕と包容力が目覚めた時、その時こそ真のデンジャラス・ビーストが目覚めるであろうが、まだその時に至るまでには長い道のりが必要であった。

 

「ターッチ! 私の勝ちね!」

 

「はぁ……はぁ……お、追いつけなかった……」

 

「走りながら弓矢を撃ってくるとはなかなかクロさんも大人げないですね」

 

マスターの部屋までの競走はクロの勝利で終わっていた、勝因はクロから繰り出される投影による雨の様な矢による移動妨害である。

連射される矢は、イリヤの移動ルートを妨害し、強制的に変更させ、大きく遠回りさせた。 途中でクロが指を滑らせ通路上にいたクー・フーリンに流れ矢が飛んできていたがそこは光の御子、矢避けの加護でその矢はクー・フーリン(術)へと向ったが矢避けの加護で、更にクー・フーリン(若)へと飛んでいき、更に更に矢避けの加護で元のクー・フーリンに行きもう一度矢避けの加護、これを三回繰り返し、元のクー・フーリンに刺さることでようやく止まった。

クロはイリヤに比べて戦闘センスは勝っている様子で、その場で臨機応変に対応できる力はマスターからも時々褒められていた。

 

「ふっふーん、勝てばいいのよ。 勝てば! 」

 

「お、おのれー」

 

クロは勝利の笑みを浮かべながら、マスターのドアの前へと立った。 ドアには魔術を妨害する結界と共に指紋、声紋認証による厳重なロックが配備されており、その他に「用がある時はノックを」、「許可なき入室を禁ず」、「入った後で許可を取ることは許可を取ったことになりません」、「お願いだからベッドに入り込まないで」などと書かれている張り紙が貼られていた。

クロが鼻歌を歌いながらドアをノックすると、奥から誰かの足音が近づいてきた。 これで勝利はクロの者になるかと思われたが。

 

「マスター! 書類をとどけ……に……」

 

「あら、あらあら。 どなたかと思ったらクロエさんでしたか。 てっきり悪い虫がマスターを(かどわ)かしに来たのかと……」

 

ドアから出てきたのは素晴らしく大きい胸であった。 というかクロの身長だとその大きすぎる胸で顔が見えない。 だが逆に考えて胸で顔が見えない人物は限られていた。 そしてこのおっとりした声と、あらあらうふふな性格を含めると一人しかいなかった。

 

「ら、ライコー……さん」

 

「あ、頼光さん! こんにちは!」

 

「あらあらうふふ、イリヤさんまでこんにちは、もうそろそろ夕餉の時間だからこんばんは。 かもしれませんね。 うふふ」

 

「あ、本当だ。 あははー」

 

イリヤと頼光は笑い合うがクロは冷や汗を流していた。 イリヤは源頼光のスタイルとその性格に憧れており、すぐに懐いて互いに仲良くなったが、クロはそうはいかなかった。

確かに悪い人以外には誰にでも優しいし、その凄まじいまでの戦闘力と戦術眼は参考にしてあげなくもなかったが、ある日見た光景がある意味クロのトラウマになっていた。

 

それは模擬戦闘時にイリヤとクロとその場に()()()()居合わせた頼光が加わった時の話だった。

その日は二人ともすこぶる調子が良く最高得点を叩きだした、戦闘終了時にマスターが褒めて、良く頑張ったねと二人を抱擁しながら撫でてくれたのだ。 クロは気安く年頃の乙女を抱きしめるなとも思ったが、マスターから良い匂いもするし、まぁ許してやろうと体を預けようとした時にふと頼光が目に入った、否、目に入ってしまった。

その時の頼光のマスターを見る、あの自分の子供を見る様な慈愛と一人の男として強く見ている融ける様な情愛が入り混じった目と、自分たちに視線を移したときに一瞬映った様々な負の感情が真っ黒い液体となって渦を巻いた様な恐ろしい目が。

その時クロは思った、この女だけは怒らせては不味いことになると。 てかマスターはなんでこんな一つ対応間違ったらG(ジャイアント)・さらばになる人と契約してるの? と。

それ以来クロにとって頼光は天敵となっていた。

 

「あれ? マスターさんはいないんですか?」

 

「ええ、昼から金時と鍛錬に出かけているみたいですね。 また夕餉時に遅れなければいいのですけど……何か愛する息子(マスター)にご用でしたか?」

 

「は、はい。 マシュさんからマスターに書類を渡すように頼まれてて……」

 

「まぁ、偉いですね。 金時ときたらなにか頼みごとしようとするたびに姿をくらますのですから、二人の爪の垢を煎じて飲ませたいぐらいです」

 

そういって頼光はイリヤとクロの頭を撫でる。 イリヤは気持ちよさそうに目を細めるが、クロはいつ自分の首を捻られるかと気が気ではなかった。

 

「マスターはおそらく今はトレーニングルームにいるでしょう。 これは飴です、がんばってくださいね」

 

「はい!」

 

そういって頼光はマスターの部屋に帰っていった。 ドアが閉まった後クロから汗がどっと噴き出す。 何かあそこだけ雰囲気違くない? ルビーもなんだか一言も喋ってなかったし。 てかマスターいないのにどうやって部屋に入ったの? 疑問が次から次へと浮かぶがどれも考えないことにした、考えたくない。

 

「はぁ……死ぬかと思った……ってイリヤ?」

 

気が付くと、イリヤは姿を消していた。 ついでに手元にあった資料もない。 廊下を見ると廊下を全力滑走しているイリヤの後ろ姿が見えた。

 

「あっ、ちょっとずるいわよー!!」

 

「自分だってさっき同じことしたじゃーん! 勝負はまだ終わったわけではないぞ! 慢心したうぬが敗因よ!」

 

「おのれおのれおのれ!!」

 

「うーん二人とも口調が可笑しくなってますよー。 これはこれで面白可笑しいからアリですが」

 

またまた廊下での激闘が始まろうとしていた、ナイチンゲールが居れば埃が舞うからと無理やりにでも止めただろうが生憎、黒髭の部屋を消毒中で忙しく、この場にはいなかった。

 

 

 

「_____!!」

 

「おぉ、さすが大将! 記録更新だぜ! こりゃ俺も負けてられねぇな!」

 

ここはカルデアのトレーニングルーム、元々は選出されたマスター候補たちが使っていたルームではあるが、今はサーヴァント用に大改装され、鍛錬好きなサーヴァントや、暇を持て余し汗を流しに来るサーヴァントが利用していた。

無論マスターの鍛錬場にも使われている。 日々の失敗を許されれない任務においてマスターは最重要、自分が膝をくじけば全てが終わると理解しているマスターは自分の体を鍛える事も忘れなかった。

レオニダスや金時から効率の良い体の鍛え方を学び、食事にもエミヤ達が栄養価とカロリーを徹底して計算され、無理をしようものならナイチンゲールが殴って止める。 こうして皆から支えられて作られたマスターの肉体は、己の最上へと近づいて行っていた。 因みに細マッチョ体系で女性サーヴァントからの評判も良い。

まぁ隣で100㎏以上あるダンベルを2つも持って楽々上げ下げしてる金時たちにはどうやっても敵う気はしないが。

 

「ムァスタアア! 調子はどうですかな、このスパルタじゃないスパルタ式筋肉トレーニング方式は!!」

 

「_____!!」

 

「そうでしょう、そうでしょう! 健全なる筋肉は健全なる肉体に宿る! まぁ当時の私達からすれば準備運動みたいなものでしたが! 」

 

「_____!?」

 

「ゴールデンだぜ……」

夕飯の時間も近づいており、また遅れて頼光サマに雷落とされるのは勘弁だぜ、俺っち雷神様のハーフなのによ。 と各自がもう片づけ始めた時、なにか遠くから騒音が聞こえてきた。

 

「む? マスター、何やら勢いよくこっちに近づいてくる気配が……」

 

「あん? また廊下で馬でも走らせてるやつが……なんだぁ!?」

 

「_____!?」

 

ガラスを破って入ってくる影が二つ、思わず敵かと思い二人はマスターの前に出るが、その姿を見たとたん構えを解いた。

 

「マスターさん! 書類でへぶっ!?」

 

「マスター! 書類を持ってきてあいたぁ!?」

 

イリヤとクロがマスターに書類を届けるために空中で書類の奪い合いをしているのだが、まったく事情を知らない三人にとっては親方! 空で幼女二人がもみくちゃになっている! という文字だけ見ればサンソンをご紹介しますねと言われそうな状況である。

 

「おーい! お二人さん何やってんだー? ってあぶねぇ! 魔弾とか矢とかとばしてんじゃねぇよ!」

 

「ぬぅうん!お二人とも危ないですよ!! ここは筋肉を鍛える場、魔術とか遠距離とか関係ない場所です!」

 

「_____!!!」

 

二人の激闘はヒートアップしており、矢が魔弾が室内を滅茶苦茶にしながら書類を奪い合う事態になっている。 只々呆気にとられて見ていることしかできない三人はどうにか被害に遭わないよう、身を守ることしかできなかった。

 

「____っあ!!」

 

「っ! 貰った!」

 

その時イリヤの手から書類が滑り落ちる、クロはその隙を逃さずに書類を取ろうと手を伸ばした。

 

「させないっ______!」

 

すかさずイリヤも手を伸ばし、二人の手はほぼ同時に書類へと伸び_______

 

 

「ごめんなさい……」

 

「ごめんなさい……」

 

「ぷっクスクス……ぷふー!」

 

「全くもう!」

 

夕飯の時間、賑やかなカルデアの食堂で大きなたんこぶを作った二人と笑いをこらえている性悪ステッキはマシュのお説教を食らっていた。

カルデアのトレーニングルームは壊滅的でありしばらく使用禁止、廊下の三割がぼろぼろになる有様であった。 二人のたんこぶはそれを知ったナイチンゲールから賜ったものである。

結局書類も二つに破けて、読めたものではなくなった。

 

「全く、只の競走ならまだしも撃ち合いをしながらなんて! マスターが怪我をしたらどうするんですか!」

 

「______?」

 

「いいえ、マスターは甘いんです!」

 

珍しく強気なマシュにたじたじなマスター、傍から見れば尻にひかれた夫とその妻である。 怒られているイリヤは少し涙目で、クロもさすがに反省して俯いている。

 

「はぁ……全くもう、反省しているのでこれ以上はもう怒りませんが。 当然、シールは無しです」

 

「うぅ、ごめんなさい……」

 

俯く二人を見て、マシュが溜息を吐くとポケットからセイバーのイラストが描かれたシールを二枚机の上に置いた。

 

「え? これって……」

 

「代わりとして、廊下の掃除とトレーニングルームの補修を手伝うこと。 いいですね?」

 

二人の顔がみるみる内に明るくなった、シールを持って飛び跳ね始めた。 それを見てマシュも少し笑った。

 

「_______?」

 

「私も十分甘い? ……ふふっそうかもしれませんね。 あっ……」

 

マスターがマシュの頭を優しくなでる。 慣れない感覚に顔を赤くしながら次はマシュが俯いてしまった。

 

「_______?」

 

「わ、私にもご褒美ですか……いえ! 決して嫌では……はい、そのまま……」

 

なんか遠くから熱い目線を感じるがマスターは気にしないことにした。 気にしたくない。

しばらくしてイリヤがシールをカードに張り付けてからマスターの近くにやってきた。 マシュは真っ赤になったままだ。

 

「ま、マスターさん! これ!」

 

マスターの目の前へカードを持ってくると枠はすべてシールで埋まっていた、マスターへのお願い権が満たされていることを知らせたかったのだろう。

 

「______?」

 

「はい! それで今度のお願いなんですけど……えーっとこんな時どう伝えたら……ルヴィアさんの所にいた様なメイドさんの様な……」

 

自分が伝えたいことが上手く表現できないのか、記憶を巡って適切な言葉をひねり出そうとしているイリヤ。 マスターの方は次はショッピングかな? と考えていたが……

 

「えーっと! そうだ! 男のメイドさんになってください!!」

 

「_______」

 

食堂が凍った。 何名かのサーヴァントは席を勢いよく立つ。 何処かの女神の姉妹が邪悪な笑みをこぼす。 黒髭がカメラの用意をする。

 

_________マスターの未来はどっちだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




すまない……魔法少女とちょっとお姉さんっぽいマシュを見て見たかっただけなんだ……すまない……
ちょっとお姉さんぶったマシュ……いいよね……

誤字脱字、文章滅裂、ここ設定とちげーぞ! と言う所はバンバンご指摘ください。

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