カルデアの落ちなし意味なしのぐだぐだ短編集   作:御手洗団子

16 / 41
魔法少女のパラノーマルなアクティビティ

誰もが寝静まる夜中。 と言っても悪巧みをしているどこかのアヴェンジャーや、もともと寝る必要がないサーヴァントにはそれぞれ趣味の時間を作り長い夜を超えていく者達も何名かいる。

そんな中魔法少女であるイリヤとクロエは、マスターの部屋の前に来ていた。 理由はマスターの部屋に忍び込み、書類を改ざんするためである。 無理やり連れてこられたイリヤは寝ぼけ眼をこすり眠そうに欠伸をする。

 

「クロ、もう諦めて正直に言ってマスターさんに変えて貰えばいいじゃん……」

 

「何言ってんのよ、マスターに間違ってレオニダスのスパルタ式マッスル講座を希望しちゃったから消してくださーいって言うわけ? 恥ずかしすぎて死んだ方がマシよ」

 

「だからってなんで私を巻き込むの……」

 

欠伸をかみ殺しながらイリヤは部屋の扉のロックを開ける。 大体なぜクロは自分まで巻き込むのか。 何時ものことながら損ばっかりしている様な気分である。

しかも今は夜中、マスターが日々の訓練で疲れて寝ている所を忍び込むなんて迷惑にも甚だしい。 だが、夜中マスターの部屋に忍び込むことにスリルを感じているのは否定できなかった。 あとマスターの寝顔も見てみたいという欲求も、まぁ、あった。

 

「もう、ばれたらクロのせいだからね」

 

「大丈夫よ、そのためにイリヤがいるんじゃないの」

 

「もともと擦り付けるつもりだったの!?」

 

ドアのロックが解除され、ドアがゆっくりと開いていく。 かの王の剣から放たれる黄金の輝きを三秒は耐えるという重厚なドアだが、イリヤが持っているキーカードがあれば難なく開いてしまう。

 

「お、おじゃましまーす……」

 

「いいわね、手早く静かによ」

 

イリヤ達が部屋に入ると、部屋は電気が消されて真っ暗であり、部屋の隅のテーブルに置かれているパソコンの様な端末から漏れている僅かな光だけが唯一の光源であった。

二人の呼吸以外は聞こえないくらいに静かであり、 静寂と暗闇がイリヤの心を少し不安色に染めていく。 これでも小学五年生、不気味な所は苦手なのだ。

 

「あれ、マスターさん、いない?」

 

「好都合ね、さっさと探すわよ……」

 

クロエは気にせずにテーブルに向かい資料を漁っているが、イリヤは変に思った。 もう日付を超える時間なのにマスターは寝ていないどころか部屋にもいない。 部屋の妙な不気味さも相まって何か嫌な予感をイリヤは覚える。

まるで自ら蛇の腹の中へと入っていくような感覚。 部屋のドアが閉まる光景が自分たちを飲み込んだ蛇が口を閉めたようにも思える。

 

「クロ、やっぱり止めない? なんだか嫌な予感が……」

 

「此処まで来て帰れないわよ。 あっ、あったあった……この書類を……おろ?」

 

テーブルを漁っていたクロエがふと近くにあった端末に目を留める。 画面には暗視加工が加わって上から写されている自分たちの姿、リアルタイムで録画されているらしく、録画中を示すように赤い文字が点滅している。

部屋の天井を見れば高度に魔術的に隠ぺいされた隠しカメラが設置されている、自分がどこから見られているか分かって初めて認識できるほど強力である。

 

「あぁもう! 監視カメラがあるなんて、これじゃあ私達だってことバレバレじゃないの! 何とかして消さなきゃ……」

 

「というかなんで部屋の中に監視カメラがあるの……?」

 

クロエが何とかして証拠を隠滅しようと端末をいじくるがどうも上手くいかない。 録画自体は止まるが映像自体は巻き戻ったり早送りになったりとどうにも映像自体を排除できそうにない。 それでもあきらめずにいろんなところを押しまくると、ふと映像がある地点から再開し始めた。

 

「あら、固まっちゃった……壊れては無いわよね?」

 

「あれ、この映像ではマスターさんがいる……」

 

丁度今から表示されている時間を見ると、丁度今から一時間前ぐらいの映像である。 映像の中では、マスターはなぜか戦闘服に着替えており、その五分後に入ってきた金時と共に部屋を出て行ってしまっている。

 

「マスターが出て行ったのはかなり最近だったのね……危なかったわ。 でもなんで戦闘服?」

 

疑問に思いながら映像を見ていくと、その十五分後になぜかマスターの衣装棚からぬるりと源頼光が出てくる、髪の長さも相まって何処かのホラー映画のようである。来る、きっと来る。

頼光はマスターがいないことに気付くとなんだかプンプンと怒ったそぶりを見せながら、ほったらかしにされているマスターのベッドのシーツや毛布を綺麗に仕立て直して、部屋の掃除をしてからベッドの下をあさり、隠してあった女性サーヴァントのピンナップ写真集を灰にし、自分の写真を枕に忍ばせてから、また衣装棚へと戻っていった。

 

「……妖怪かっ!」

 

思わず突っ込みながら衣装棚の方へ振り返るクロエ、何の変哲もないただの衣装棚であるがさっきの映像を見た後では開けたらいけないパンドラの箱めいた雰囲気を醸し出している。 というかそもそも衣装棚の壁の向こうは廊下なのにどうやって入り込んでいるのか。

クロエがいっそ開けてみるかと考えたが、衣装棚の扉が「ギィ……」と一人でに動き出したので、衣装棚のことは頭から消し去って映像に目を戻した。

 

「あっ、静謐のハサンさんだ……綺麗だよね……」

 

次にその十五分後に映像に映ったのは静謐のハサンだった。 何も変哲のない壁の一部が突然回転したかと思えば静謐が中から入ってきた。 思わず忍者かとクロエがツッコミそうになるがよくよく考えると衣装棚から出てきた頼光の方が化け物じみていたので、何も言わずに映像を見続ける。

静謐はマスターがいないと分かると落胆したらしく、ベットに座り込む。 五分程度そのまま部屋を見回したり、足をプラプラさせて居たりしていたが、マスターがいないとどうにもならないのか、立ち上がって帰ろうとした。 とその時、部屋の隅に何かを見つけたのかカメラが映らない場所まで行ってしまう、丁度シャワー室の方だ。

 

「うーん? シャワー室にも何か仕掛けが……おぅ?」

 

しばらくすると静謐がカメラの範囲内に戻ってくる。 手には何かの布を握りしめており、静謐もきょろきょろ、そわそわ落ち着かない様子である。

 

「あれ? 静謐さん何を持ってるんだろう……?」

 

「どっかで見たことあるわね……シャワー室にいったから……タオル?」

 

「あー! 分かった! あれマスターさんの洋服!」

 

「あぁ! それよそれ! うわーまさかの少女マンガ的アサシン……」

 

静謐が手に持ってるのはマスターの私服であった。カルデアの制服と違い、マスターが就寝する時や、休日の時部屋で過ごすときに着る薄いTシャツである。 シャワー室から持ってきたということはマスターが戦闘服に着替える時に脱いで洗濯籠に入れていたものだろう。 静謐はマスターのТシャツに顔を近づけていき、しばらく躊躇しながらも何かを決心した様子でそのまま匂いを嗅ぐようにマスターのTシャツに顔を埋め始めた。

 

「うわー乙女よ、乙女が映っているわ……」

 

「静謐さん、私達より年上だけどね……」

 

Tシャツから顔を離した静謐は恍惚な表情で、またすぐにTシャツを抱きしめる。 そのままベットに倒れ込み、マスターの名前を呼びながら体をくねらせる姿は、妙に色っぽい。

いつもイリヤが見ている静謐のハサンはマスターの事はクールに「魔術師様」か「マスター」呼びなのに、この映像では顔を上気させながらマスターの名前を呼び続けている。 余りの乙女度にイリヤのスイッチが入りかけていた。

 

「な、なんだかすごい物見ちゃったわね……」

 

「静謐さんの隠れた一面を見ちゃったような気がする……」

 

その後、自分の汗で毒素がTシャツに移ってしまったことに気付いた静謐はおろおろとしながら、そのままTシャツを持ったまま回転する壁で消えてしまった。 途中で痙攣してたけどあれはなんだったの? と二人は不思議に思ったが特に気にせずに映像に目を移す。 最早当初の目的は何処かに投げ捨ててしまっている。

 

「あれ? これって私達?」

 

「ホントだ、じゃあこれで最後……ぴっ!?」

 

映像には、イリヤとクロエが忍び込んでいる様子が映し出されている。 のだが、その映像を見てイリヤが小さく叫び声をあげる。

部屋に入ってきた時は確かに二人であったはずなのに、彼女たちの後ろにぴたりと何者かが、くっつくようについてきているのだ。 イリヤは恐怖のあまりクロエに抱き着く。

 

「あわ、あわわわわわ! おおおおおお化け……!!」

 

「ちょ、ちょっとくっつかないでよ……! ってちょっと待って……この映像の通りなら……」

 

映像は、クロエとイリヤが端末の映像を除いている所で止まっている。 その間にも謎の人物はクロエとイリヤの後ろから一緒に端末を覗いており……

 

「今、この、部屋に、誰かがいる……!?」

 

「ぴ、ぴぃいいいい……」

 

「ちょっとくっつかないでってば!」

 

またくっついてくるイリヤに対してクロエが振り払おうとするが、どうも腕に当たる感触が何時ものイリヤと違う。 こんなにイリヤに胸があったっけ? と疑問が浮かぶが、その疑問はイリヤの一言で簡単に解消する。

 

「え、私、隣にいるんだけど……」

 

「はぃい? じゃあこの感触はな……に……」

 

二人は震えながらゆっくりと後ろを向く。 監視カメラのレンズに、二人の恐怖にゆがんだ顔が映し出される。 部屋に叫び声が木霊するがその声は誰にも聞こえることはなかった。

 

 

「______!」

 

「おう、今日もゴールデンな鍛練だったぜ! 中々足腰の使い方も分かってきたんじゃねぇか? あぁっとこの軟膏をやるよ、キズに塗ると効くぜ。 んじゃグッドナイト!」

 

金時に礼を言いながらマイルームへと戻るマスター。 あちこちが痣だらけである。 理由は単純、戦闘訓練の際に付いた傷である。 しかし、サーヴァントの指揮をしていたわけではない。 マスター自身が戦闘に参加する、つまりサーヴァントたちが何らかのアクシデントで戦闘続行不可、もしくは消滅した際に緊急脱出のために一秒でも長く生き残るための訓練である。 しかし訓練するたびに傷だらけになってしまうほどの過酷なその訓練は、マシュ達が中々に許可を下ろさない。 しかし少しでも足を引っ張りたくないマスターは金時たちに頼み込み極秘で訓練を行っている。

 

「_______」

 

部屋に戻り、マスターが来ていた戦闘服を脱ぎ始めると肌からは大量の汗が噴き出してくる。カルデア戦闘服は極地で対応できるように様々な魔術的な補助がかけられているが、その分他の礼装よりも体が締め付けられるような感覚と、脱いだ後の体の疲労感が激しい。 息を荒くしながらマスターは汗を流そうとシャワー室へと足を運んでいく。 礼装保管用のクローゼットから三人分の光る目がマスターを見つめていることにも気づかずに。

 

 

「ちょ、ちょっとマスター帰ってきちゃったわよ!」

 

「やっぱり、正直に出て謝った方がいいんじゃ……」

 

「正直……素晴らしい言葉です……」

 

「話聞いてないし!!」

 

ここはマスターの部屋にある礼装保管用のクローゼットの中、二人の少女と一人のサーヴァントが所狭しと隠れる様に入り込んでいる。 こちらも理由は単純、一緒に入っているサーヴァントに無理矢理入り込まされたのである。

 

「清姫さんはまだしもなんで私達まで、クローゼットに入らなきゃいけないの……」

 

「そうよ、常習犯の清姫と違って私達は初犯なんだから笑って許してもらえるのに!」

 

「それは……正直に申しますと貴女達と一緒にいれば旦那様(ますたぁ)に怒られなくて済むと思いまして……」

 

「「あ、あけすけ……!」」

 

ニコリとごまかすように笑う清姫。 結局のところ、イリヤとクロエの後ろに憑りつく亡霊のように張り付いていた謎の人物は清姫であった。 ストーキングスキルを駆使してイリヤ達と共に堂々と正面から入り、部屋を物色していた。 清姫的にはそのままイリヤ達には見つからずに、そのままマスターの部屋でマスターをお出迎えするつもりであったらしいが、イリヤ達に見つかったことにより計画変更。 叫び声をあげるイリヤ達の口を塞ぎ、クローゼットの中に押し込むとそのまま自分もそこに隠れ始め、マスターをのぞき見、もとい隠密的に見守ることにしたのだ。

 

「というか、マスターシャワー浴びているじゃない、逃げるなら今じゃない?」

 

「あ、本当だ。 じゃあ今のうちに……」

 

「逃がしません……!」

 

猫を捕まえる様に首根っこをつまんでクローゼットから出ていこうとする二人を引き戻そうとする清姫。 腐っても魔法少女、それぞれ魔力を使い飛び出そうとするが、清姫の凄まじい力でいくらやってもクローゼットからは逃げ出せない。 貴女筋力Eでしたよね……? そうしているうちに、シャワーの音が止み、シャワー室のドアが開く音がしたので、二人とも仕方なくクローゼットの中に隠れることになる。

 

「____??」

 

シャワーから上がったマスターが物音に気付き、クローゼットの前までやってくる。 ズボンは履いていたが、上半身は裸であり、引き締まった肉体が惜しげもなくイリヤ達の前に晒される。 しかも乾き切っていない肌と髪が相まって妙な色っぽさを醸し出している。

 

「わぁ……マスターさんって凄い体してたんだ……」

 

「着やせしているタイプなのかしら……確かに抱きしめられたとき胸板が固かった気がするわ……」

 

「あぁ旦那様(ますたぁ)ったら何て艶やかなんでしょう……あとクロエさんはその話を後で詳しく」

 

マスターの体を食い入るように見つめる三人。 清姫に至っては興奮して息が荒い。

 

「_____?」

 

「やばっ……」

 

すると不審に思ったのか、マスターがクローゼットへと手を伸ばしてくる。 別にばれてもマスターは笑って許すだろうが、清姫がいるとなれば別である。 子供のいたずらが大人のいたずらに変化するだけで対応はずいぶんと違ってくるのだ。 自分たちにも罰が下されるかもしれない。 クロエはなんとかしてマスターの気を散らそうと考えるが、クローゼットの中では手の打ちようがない。 完全なる詰みである。 もはやどんな言い訳をするか考えるしかなかったが、唐突にドアがノックされることによってマスターがドアの方へ向かっていく。 正に天の救いであった。

 

「あ、危なかった……」

 

「ふぅ、見つかるかと思ってしまいました。 でも旦那様(ますたぁ)から私を見つけるということは、私に求婚することと同義なのでは……?」

 

「もうやだこのバーサーカー」

 

うっとりとしながら妄想の世界に入る清姫に、なんだか学校の友人達を思い出すイリヤ。 あちらもある意味バーサーカーな連中ばかりだった。

 

「こんばんは、マスター。 傷の処置に参りました」

 

「______」

 

「ふむ、前回よりもだいぶ傷を負う量が減ったみたいですね。 良いことです」

 

そういってマイルームに入ってきたのは、天草四朗であった。 彼は、訓練によって負った傷を文字通り修復させるためにマイルームを訪れていた。 傷を治すだけなら、メディアやナイチンゲールが一番良いのだが、生憎この訓練は男同士の秘密の特訓である。 なのでそんな男のロマンを分かるサーヴァントだけが、マスターに密かに協力していた。

 

「_____?」

 

「ふむ、金時さんの軟膏ですか。 確かにマスターの体には効果がありそうです。 私の魔術と併用して見ましょう、それではベットに……」

 

マスターがベットでうつぶせになると、天草が金時から貰った軟膏を傷口に塗りながら、回復魔術をマスターに行使していく。 打撲痕に軟膏が塗られると、不思議とその部分だけが熱くなり、さらに天草の回復魔術で、まるで打撲痕なんてなかったのように、綺麗な肌になる。 すこしばかりくすぐったいが、マスターは全身に感じていた痛みが引いていくのを感じて、大きく息を吐く。

 

「な、何をやってるのかしら……あれ……」

 

「上半身が裸のマスターさんに、天草さんが乗っかってるね……」

 

「ま、まさか……旦那様(ますたぁ)が衆道に……!? こ、これがアイリさんが言っていたびぃえる空間!?」

 

「ママは何を吹き込んだの!?」

 

だが、その光景をなんだかイケナイ事と勘違いしているのはクローゼットの三人である。 突然始まった濃厚な空間に、イケないと思いながらも目が離せないイリヤ達。 爽やか系なイケメンの天草と、ぽややん系男子(イリヤ調べ)のマスター。 いったいどっちがどっちなのだ、どっちが有利でどっちが不利なのだ。 イリヤは頭の中でだめだと思いながらも妄想が止まらなくなって来ている。

 

『男の人は男の人同士で、女の子は女の子同士で恋愛すべきだと思うの……思うの……思うの……』

 

イリヤの頭の中で学校の友人がこちらにいらっしゃいと手招きをしている。 薔薇色の空間がイリヤの目の前に広がり、ゆっくり、ゆっくりとイリヤはその甘美?な世界の中へと引きずり込まれていく。

 

「それじゃあ、ズボンを脱いでください、そちらの方がやりやすいでしょうし」

 

「_____」

 

天草の言葉に従い、ズボンを脱いでいくマスター。 さらにクローゼット中は騒然とする。 ベルトを外していく音がさらにイリヤの脳内妄想を加速させる。

 

「あわわわ! どうしましょう! このままでは旦那様(ますたぁ)が前世の安珍様のように……いやそれはそれでありですが……イリヤさん?」

 

「だ……だ……」

 

「マスターがそっち系だって知れたらこのカルデア間違いなく滅ぶわよ……イリヤ?」

 

「だめー!!!」

 

業が深すぎる腐界から飛び出すように、クローゼットから叫びながら飛び出すイリヤ。 そのまま弾丸のように飛び出したイリヤは天草を突き飛ばし、マスターの胸にダイブし大声で言い放った。

 

「ま、マスターさんは小さい子が好きなんだからー!!」

 

「_____!?」

 

突然現れた魔法少女にロリコン発言されるマスター。 確かに小さい子は好きだが、それは世話をすることが好きなのであり、黒髭の様な扱いを受けるのは甚だ心外であった。

 

「マスターをびぃえるの道に引きずり込まないでー!!」

 

「____!?!?」

 

次に衆道疑惑をかけられていた事を知りさらに茫然とするマスター。 いったい自分の知らないところで何が起こっているのか、天草の方を見てもやれやれと首を振るだけである。

 

「お嬢さん安心しなさい、私はこう見えてもルーラーのサーヴァント。 そんなことはマスターにはいたしません」

 

「ほ、ほんと?」

 

「本当です、こう見えても私はあるサーヴァントとロマンスな空間になったこともあり……」

 

興奮しているイリヤをなだめる様に、目線を合わせながら話しかける天草。 なんだかんだで子供の扱いが上手いのである。 自分がとんでもない誤解をしていたと分かったイリヤは、ひたすら謝り続け、お詫びにとマスターの軟膏塗りを手伝うことになった。 これで一件落着である

 

「それで、貴方達はマスターの部屋で何をやっていたのです?」

 

「やばっ!?」

 

「しゃあっ!?」

 

「正座しなさい」

 

わけがない。 後ろでそろりそろりと逃げ出そうとしている清姫とクロエを呼びとめると、にこやかな笑顔でその場に正座をするように命令した。 哀れや哀れ、二人にはカルデア裁判が待っていることであろう。 因みにイリヤはマスターの軟膏塗りの手伝いをしたことで無罪放免となった。 そこ、贔屓だとか言わない。

 

 

「うぅ、なんで私がこんな目に……」

 

後日、クロエはカルデアの廊下掃除を命じられていた。 首には「私はマスターの部屋に侵入しました」と書かれている板をぶら下げている。 初犯と言う理由でルーラーたちから温情をかけられ軽い罰で済んだが、清姫の方は私財という名の旦那様コレクションを没収の上、レオニダスのスパルタ式筋トレ講座を強制受講させられている。 恐ろしや。

 

「周りの男たちからは笑われるし、女たちからはこの子もか……みたいな目で見られるし。 赤っ恥よもー。 やってらんなーい!」

 

板を投げ捨て、箒を捨て完全にサボりの体制に入るクロエ。 こんな序盤のシンデレラのような事をやってられるか、私はマタ・ハリ師匠の所に戻るぞと歩きはじめるクロエだが、その肩をがっちりと捕まえる筋肉がいた。

 

「クロエさんやっと見つけました! さぁ筋肉を鍛える時間です!」

 

頭から炎出す系スパルタ王、レオニダスである。 今日も躍動する筋肉が眩しく、熱気がむんむんとクロエに伝わってくる。

 

「えーっと、何のことでしょうか……?」

 

「何を言ってるのです! 私の講座を受講していたでしょう! ほらこの通り」

 

思いっきりひきつった笑顔を見せるクロエに対し、一枚の資料を開いて見せるレオニダス。 そこにはレオニダスの筋トレ講座の所にしっかりと丸をされている。

 

「あ……忘れてた……」

 

すっかりと資料を改ざんするのを忘れていたクロエは、全身から嫌な汗が流れるのを感じる。 ということはまさか……

 

「いやぁ! この頃は筋肉の重要性に気付いていただける人が多く感激の極み! さぁ貴方も一緒にレッツ筋トレ! 今日は清姫さんも一緒ですよ!」

 

「いやぁ! じゃないわよ! いやぁぁぁぁはなしてぇぇぇぇぇ筋肉だけはいやぁぁぁぁぁぁ……!」

 

レオニダスに引きずられながらトレーニングルームへと向かわされるクロエ、自業自得である。 彼女には筋肉を付ける以外の選択は残されていなかった。

 

______クロエの明日はどっちだ。

 

 

 

 

 




雑ですねぇ! 物語が実に雑ゥ! ということで今回もまたグダぐだになっております。 許して。

このごろ発売されたゲームのせいでまったく書けないのじゃ……

いやぁ、JDASLはかわいいですね。 あとアステリオスも可愛いというか尊い。

感想を書いていただきありがとうございます。 とてもうれしい思います、ネタもたくさん提供して頂いていて、とても感謝です。 これであと何年かは戦える。 多分。

誤字報告や文章改訂をして抱ける方々にはは本当にお手間を取らせて申し訳ありません。 なんとか少なくしていきたいと思っています。 ごめんさい。

それでは今回も楽しんで見て頂けると嬉しいです。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。