「いやぁ、本当にエミヤさんってお料理御上手ですよね、中華も作れるなんて!」
「本当だよなぁ、時々俺たちに間食作ってくれるし」
「掃除までしてもらうとなんだか申し訳ないがな」
「なんだかここのマスターがおかん呼びするのも分かる気がするな」
ここはおなじみカルデア食堂、大体物事の始まりはいつもここから。 今日はカルデア職員達の他に、 周りには何人かのサーヴァントも食事をしており、なんだか食堂が賑やかである。 因みに今日の昼食はエミヤが作った中華三昧である。
「そういや彼はどうしている?」
「今日の予定は確かシュミレーターで戦闘訓練中ですね。 相手はアーサーペンドラゴンとか」
「シミュレーターな、あとあの人アーサーじゃなくてアルトリアらしい」
「そういえばそうか、女性だからな。 しかしかの王がまさか女だったとは……」
「歴史家達がみたら発狂ものの光景を私たちは見ているのではないか?」
様々な英霊が集うカルデアでは歴史には無い意外な真実が、そこで歩いていたりする。 ある日本歴史好きのカルデア職員はかの織田信長がカルデアに来たとき真っ先に会いに行ったらしいがその後ぐだぐだになって帰ってきた。 是非もないよネ!
「そういや、白衣女史その首飾りは何だ?」
どう見ても研究職とは思えないほどの強面なカルデア職員が、白衣を着たカルデア職員にかかってた首飾りを指さした。 それは中々に綺麗な宝石がはめ込んであり、微弱でありながら魔力を感じさせた。
「これか、これは彼にもらったものだ、前に世話になったからと言ってな。 彼の魔力が多少入っているらしい。 まったく義理堅いというかなんというか……」
そういいながら嬉しそうな顔で首飾りを撫でる白衣のカルデア職員。 あんなに堅物な女が恋する乙女みたいじゃないかと周りのカルデア職員が驚く、サーヴァントさえ誑す人間誑しの一幕を見たような気がした。
「へぇ~……」
「ふぅ~ん」
「ほほーう」
「な、なんだその顔は! 止めないか!」
白衣を来たカルデア職員をなんだか良い物を見たという様な表情で見る三人。 なんだかんだで仲良しである。
「……んん?」
と、唐突に白衣を引っ張られる感覚がするカルデア職員。 なんだかこの前もこんなことが無かったかと思いながら振り返る。
「んん……? 誰だ?」
そこには一人の女の子がいた、長い黒髪に綺麗な青い目をしており、出ている所は出ている体であった、ここが学校ならばアイドルになれたに違いない。 年齢はマスターと同じくらいだろうか、なんだか落ち着かない様子で、なぜか男性用の魔術礼装を着ていた。
「うわぁ、可愛いー。 新人さんですか?」
「なぁ、アレどのくらいあると思う?」
「C……いやDか? なかなか」
二人の男子カルデア職員が、ひそひそと相手の胸を測定し始める。 男性用の礼装を来ているので胸がくっきりと浮かんでいる。
「先輩たち最低です」
「全くだ、それで君は? 新しい協力者かな?」
カルデア職員でも知らないとなると、冬木の女性のようにレイシフトでこっちに来た協力者だろうが、いったい誰なんだろうか。 話を聞こうとすると食堂の扉が勢いよく開いた。
「マスター! 此処にいましたか! 逃げても駄目です! さぁ着替えに行きますよ!」
「_____!!」
「駄目です! その恰好は適しません!」
そういって食堂に入ってきたのはマシュだった、先ほどの少女を捕まえるとそのままひっぱるように連れて行ってしまった。 残されたのは呆気にとられたカルデア職員四人組みである。
「なんだったんだ、今の?」
「さぁ? でもマシュちゃんがなんだか張り切っていましたね」
「先輩君以外の人間に張り切ることなんてあまりないから珍しいな……」
「そうだな、マスターである……マスター? マスター!?」
時はトレーニング室のシュミレーター、失礼シミュレーター室でマスターたちが戦闘訓練を行っていた時までさかのぼる。
シミュレーター室はサーヴァント達も実際に入って訓練することが出来る空間であり、時たまサーヴァント同士で腕試ししたり、サーヴァントが教官としてマスターを鍛えるために訓練を行ったりしている。 今日は後者で、講師はあのアーサー王伝説で有名なアルトリア・ペンドラゴンである。
「ここまでにしましょうか、日々成長しているようで何よりです」
「あ、ありがとうございました……」
「_______……」
訓練が終わり、マシュもマスターも肩で息をしてその場にへたり込む、騎士王の訓練は中々にハードであり、容赦がない。 ジャンヌダルクと同レベルかそれ以上のスパルタである。
「マシュもマスターとの連携が上達していますね、マシュが前に話していたようにアイコンタクトだけで分かりあえる日も近いのでは? 」
「そ、そうでしょうか……」
騎士王から褒められるに慣れていないのか照れくさそうにしながら水を飲むマシュ。 息を荒く、汗が光るマシュがいつもより色っぽく見えてマスターは横目でチラチラと見ながら水を飲んでいた。 大事な後輩をそんな目で見るわけにはいかないと思っているのだが、悲しいかなマスターも健全な男子であり、いけないいけないと思いながら見てしまうのがやめられないマスターである。 許してほしい彼も男なのだ。
「さてと、それでは食堂で昼食といきましょうか。 今日は中華メインということで中々楽しみなのです」
「ふふ、そうですね。 行きましょうか、先輩。 ……先輩?」
昼食の時間が近く、なんだか生き生きとしているアルトリアに苦笑しながらマシュはマスターを呼ぶが返事が無い。 不思議に思い振り返ると、そこにはマスターが胸を押さえ倒れ込んでいた。
「マスター!? どうしたのですか!」
「せ、先輩!! ドクター!! 先輩が!」
マシュが駆け寄り、ドクターに緊急通信を送る。 アルトリアもマスターを抱きかかえ状態を確認するが目立った外傷はない。 それならば何かの病気なのだろうか、しかしながらアルトリアには医療知識は無く、手の施しようがない。
「こっちにも確認したよ! 彼のバイタルが急激に変化している! 彼この頃こんなのばっかりだな!」
「早く回復手段を……せん、ぱい……?」
「これは……いったい……?」
アルトリアが抱きかかえているマスターを見て、マシュは小さく悲鳴を上げた。 髪の毛が伸び始めている、骨格も変わってきており、身長も縮んで行っている。 なんだか肉付きも良くなり、胸も膨らんで……胸も膨らむ!?
「どうしたんだいマシュ!? なんだかこんな展開前にもあったような気がするんだけど!」
スラリとした体、流れる様に綺麗な長髪、柔らかな肌。それは誰がどう見ても彼ではなく、今カルデアのマスターは_____
「はい、ドクター……先輩が、女の子に、なっちゃいました……」
彼女になっていた。
「はい……?」
「今の先輩は女の子なんですから、女性用の服を着用しなくちゃ……」
「_____……」
マシュに引きずられながら廊下を進んでいくマスター。 その体は完全に女性のものであり、男子用の制服を着ているせいで所々が強調されていた。 _主に胸や尻が_
しかしながら女の体でも、心は男なのだ。 女物の服を着るのは抵抗がある。 マスターにだってプライドはあるのだ。
とりあえずこんな時の
マスターをお守りするのは自分だと今回のマシュは張り切っていた。
「_____……?」
「はい、駄目です。 可愛くなった先輩は可愛い服装をするべきです!」
何か別な張り切り方もしているマシュに、マスターは若干不安を覚えながら、廊下を歩いていく。 いざとなれば女性じゃなくても大きめの男物の服を着れば良いことだと思い今はマシュに大人しくついていくことにしたらしい。
「おや、マシュ。 丁度良かった、今度の食材についてなんだが……ん? そちらのじょせ……い……」
すると向こうから歩いて来ていたエミヤがマシュとマスターに向かって話しかけてきた、どうやら今度の献立について相談があったらしいが、今のマスターの姿をみて絶句する。
「んなっ……り……」
「あ、エミヤ先輩この人はマス」
「凛!? なんで君がこんなところに居る!?」
「はい?」
「______?」
りん? どなた? と首を傾けるマシュとマスター。 どうやらエミヤの知り合いに似ていたらしい、エミヤの顔が真っ青になったり、曖昧な表情になったりして完全にパニックになっている。
「いえ、エミヤ先輩、この方はリンという人ではなく」
「人ではない!? まさか、英霊トーサカか!? 借金がかさみ過ぎたのか!? だからあれほど資産管理はしっかりしろと私はいったのだ!」
「エミヤ先輩落ち着いてください、この人はマスターです」
「マスター!? 何時の間に君はマスターになったのだ!? まさか過去のレイシフトで!? というかまた君は人のサーヴァントと契約を……いやあれは私が狙ってやったものだが……」
「ち、違います! 落ち着いてください! マスターではありません、あぁぁマスターですがリンという人ではないのです!」
「ど、どういうことだ……?」
ようやく落ち着きを取り戻したエミヤに事情を説明するマシュ。 いつもクールなエミヤのかつてない慌て様にマスターはよっぽどその人に因縁があったのだろうと思った。_真冬のテムズ川に突き落とされるとか_
「す、すまない私の知人に似ていたのでな……しかし似すぎている……君の母親の旧姓はトーサカだったりしないかね? まぁとりあえずだ」
コホン、と咳をしながらエミヤがマスターの後ろに回ると、何処からか取り出した髪留めでマスターの長い髪の毛をツーサイドアップに仕立てあげた。 マシュが詠嘆の声を漏らしながら目を輝かせる。
「うむ、この髪型がしっくり来るな……それでは私は厨房に戻ることにしよう、あまり出歩かない事をお勧めするぞ、マスター」
「髪型を変えるだけで、先輩の美少女率が三十パーセント上昇しました……流石エミヤ先輩……」
「___???」
何が何だか分からないままに、髪型を変えられたマスターは只々困惑するのみである。 あと美少女率って何?
「あーマシュさんだー! こんにちヴェエエエエエ!? 凛さんんんん!?」
「リン!? なんでこんなところにいるのよ!」
次に出会ったのは魔法少女の二人、イリヤにクロエである。 これまた二人の知り合いに似ていたらしく、イリヤに至っては小学生が出してはいけない声を出しながら驚いている。
「いえ、イリヤさん。 これはですね……」
「えー!? マスターさんなのー!? た、確かに凛さんとは思えない優しさオーラが出ているし……」
「でもいくらなんでも似すぎでしょ……」
「もしかしてグランドマスターのグランドマザーらへんは凛さんかもしれませんねー」
またリンである。 エミヤの焦り方と、イリヤの反応を見る限りどうやらとんでもない人らしいが、そこまで恐れられるとはもしかしてリンという女性は魔女か何かなのだろうか。 マスターはイリヤ達に聞いてみることにした。
「____?」
「ふぇ? えぇーっと厳しいというか、無茶苦茶というか……マスターさんの性格を全部反転したような……」
「でもツンデレだから、時々優しいのよね。 あとお兄ちゃんを狙ってくる泥棒猫その一」
「一言で表すならあかいあくまですかねー」
やはり悪魔か何からしい、今度メッフィーに聞いてみようとマスターは心の中で思った。
「でも、マスターが女の子になっちゃうなんて……でも可愛いわね……」
「だよねー……」
まじまじとマスターを見るイリヤとクロ。 なんだか目に怪しげな光が宿り、ニヤニヤと笑いながらマスターに近づいていた。
「ま、マスターさん。 可愛い服とかに興味はありませんか?」
「そうよね、せっかく可愛くなれたんだからそんな男物の服よりも可愛い服がいいわよねー」
手をわきわきしながら近づいてくる小学生二人組、マスターは身の危険を感じてマシュに助けを求めるが
「そうですね……しかし先輩のサイズに合う服がありますか?」
「そこらへんは任せて頂戴、丁度セイバーに着せようとした服があるから代用できるわ」
なんだかマシュもノリノリでマスターに服を着せようとしていた、しかもいつの間にか何処かの神代の魔術師まで隣にいて寸法を目測している。 まさにマスターにとっては四面楚歌である。 ギラギラと輝いている目に若干の恐怖をマスターは覚えた。
「フリフリ……はメイド服で見飽きているから、チャイナなんてどうかしら」
「はいはーい! 私は巫女さんがいいとおもいまーす!」
「あら貴方意外と剛の者ね、こんど私の衣装室に招待しようかしら」
「先輩はどちらが……あれ?先輩がいません」
「身の危険を感じて逃げたわね……」
たまらずその場から逃げ出すマスター、あのままいると写真撮影までされかねない。 とにかく見つからないように必死に走るマスター、なんだか体のあちこちが重い、主に胸とか尻とか。
「_____!?」
「おっ……っと! 中々鋭いタックルじゃねぇか大将! ゴールデンだぜ!」
ふと後ろを気にしてばかりで前への注意を怠ったマスターが曲がり角で現れた筋肉にぶつかってしまう。 このゴールデンな肉質なゴールデン筋肉を持つサーヴァントは一人しかいない、坂田
「あれま、お二人とも大丈夫ですか? ってまぁなんて少女漫画チック……ここに来てから重すぎる愛しか見てないタマモちゃんには潤う光景ですねー」
狐の耳と尻尾が生えた和服美人でありタマモキャットのオリジナル、玉藻が後ろから現れる。 美しい毛並が乱れるからと普段は一緒に歩くことを避ける玉藻であったが、昼食を取るために食堂に向かっていたところ金時とばったり会ってしまったので仕方なく共に歩いていた。
「大丈夫か、たいしょ……って大将じゃねぇ!? すまねぇ、つい大将かと勘違いしちまって……」
「どこからどう見ても女の子でしょうが……あれ? 貴女何処かでお会いしませんでした? なんというか月らへんで。 というか……うむむ……?」
慌てて、マスターを離す金時。 女性を抱きしめていたと分かると顔がゴールデン赤くなっている。 彼はこう見えても純情なんです。
「いや、金時さん。 そこのお方マスターですよ、多分ですけど」
「はぁ? 何言ってんだ? うちの大将は男だっつーの」
「いえ、外見こそ女性ですがこのイケ魂は確かに……」
「あら、あらあら。 どうしましょう、清姫さん。 我が子を抱きしめた悪い虫が見えた気がしたのですが……」
「浮気者は燃やしますが……この場合どうでしょう、事故のように見えましたが……」
と、今のマスターにとって一番出会いたくない相手のナンバー1と第一位が同時に来てしまった。 清姫と源頼光の宇宙的暗黒点コンビである。
清姫は興味がなさそうに見ているが、頼光の方は若干お怒りの状態で、なんだか背筋が凍るような視線を向けられる。 今までそんな頼光の視線を浴びたことが無かったマスターは知らずのうちに足が震えて来ていた。
「ま、まてまてストップだ頼光サマ! 曲がり角でぶつかっただけで怪我もしてねぇ、頼光サマが怒ることもねぇよ」
近づいてくる頼光に対してマスターを庇うように前にでる金時。 ゴールデン心意気である。
「……清姫さん?」
「嘘はついていないみたいですね。 確かに事故の様です」
「……はぁ。 ごめんなさい、うちの金時がご迷惑をかけたみたいですね、この子の母として謝罪いたします。 お怪我はありませんか?」
「うわぁ、あの変わり様……わたくしも人の事言えませんが、腹が黒いとかそういうレベルでありませんね……天然でやってますし」
誤解と分かると一転して大人しい女性としてマスターに接してくる頼光、その変わり様はまるで先ほどの怒りなどは初めからなかったようであり、それがマスターに若干の恐怖を与えた。
「さてと、昼餉に遅れてしまいます。 金時さんと玉藻さんもご一緒に如何ですか? そこにいる
ふと自分から出た言葉に困惑する清姫。 目の前の女性に向かって旦那様といったのはどういうことだ? 何故旦那様以外の人を旦那様と言って嘘にならない? 様々な疑問が清姫の頭の中で混ざり合い、小惑星爆発を起こし、一つの結論が出来上がった。
「マスターの匂い、マスターの髪、マスターの目。 違うのは性別だけ……これから導き出される答えは一つ……」
「_____?」
いきなり興奮しながらマスターに近づいてくる清姫。 もしかして自分の正体が分かったのだろうか、清姫はバーサーカーだが勘だけは妙に鋭い。 マスターは冷や汗を垂らしながら清姫を見るしかなかった。
「もしかして……貴女は未来から来た
「さすが清姫ちゃん、斜め上どころじゃない考え方をしますね……」
どうしてそうなったと言いたいぐらいの迷解答を出す迷探偵清姫。 流石はバーサーカーである、理屈何て無いに等しい。
「なん……だって……そりゃあオレっちが大将に見間違うわけだぜ!」
「______!?」
どうして納得できるのかとマスターが頭を抱える。 此処にはバーサーカーしかいないのか?
「いいえ、落ち着いてください。 その子は清姫さんの子供でありません」
と、ここで落ち着いた声で興奮する清姫と金時を鎮める頼光、さすがは源氏の棟梁である。 バーサーカーであってもその知性は失われて_____
「おそらく私と我が子との子供です!」
「わたくしもうご飯食べに行っていいですか?」
バーサーカーだった。 しかも思いっきり我が子との子供とか言ってしまっている辺り清姫より倫理的に危ない。
「ら、頼光サンとの子供!? つーとこいつも俺の大将ってわけか!?」
「いいえ、私の娘です!」
頼りのゴールデンも信じきっている。 というか彼って純情だよね。
なんだかさらにろくでもない事が起きそうな予感に、ただマスターはため息をつくしかなかった。
「あの子がマスターだったとは……」
「普通にカップ目測してた俺たちが馬鹿みたいだな」
「なんで男子っていっつもあんなんですかね?」
「知らん、私に聞くな」
ここはおなじみカルデア食堂。なのだが、昨日起こったマスターの娘争奪戦争のせいで半分が黒こげになっていた。 マスターの娘が召喚されたというバーサーカー二人の勘違いで起きたこの戦争は、カルデアの廊下と部屋の四割が壊滅するという大惨事になり。 今は戦争に参加したサーヴァントが責任を持って片づけている最中である。
「んで、どうしてマスターが女の子に?」
「どうも、インド神話を知ったどこかの人がラーマさんを女の子にしたくて、パラケルススさんの工房から盗んだらしいですよ」
「それで、またマスターが間違って冷蔵庫から持ち出してしまったと……」
「この前と何も変わってないではないか……」
なんだか似たような話を聞いたような気がしてため息を吐くカルデア職員。 因みに首謀者の黒い髭は第一級カルデア裁判にかけられることもなく、その場でマルタさんからボコボコにされた。 南無。
「でも、あの子の女の子姿可愛かったよな……」
「うむ、あの大惨事には堪えたが、その後のファッションショーも良い出来であった」
「あれ可愛かったですよね! ゲスト参加のアストルフォちゃんも可愛かったですし!」
「彼の方は元に戻っても続けられたけどな……最後の方なんか泣きながら着替えさせられてたぞ……」
しかしながら意外に似合っていたので、密かに写真を撮って保存しているのは白衣のカルデア職員だけの秘密である。
「じ、じゃあ俺はここで……」
「俺も」
「私、エミヤさんから食後のお茶のお誘いを受けてたんでした!」
「ん? どうしたお前達……?」
まだ半分も食べていないのに、白衣以外のカルデア職員が皆急いで席を立つ。 妙に思っていると、ふと白衣を引っ張られるような感覚を覚えた。
「あぁ……もしかして……」
なんだか全身をほとばしる嫌な予感を受けながら、後ろにを向くと。 一人の少女がいた。 髪と目が薄い赤色で、なんだか幼い印象を受ける顔とクリッとした目が可愛い女の子である。
なぜか男用の魔術礼装を着ており、涙目になりながら白衣を引っ張っていた。
「マスター! どこにいるのさー! あ、いた!」
と、ヒポグリフに乗ったアストルフォとマシュが食堂のドアを壊しながら入ってきた。
「先輩! 此処にいたんですか! 早く逃げますよ!」
「ますたぁ……ますたぁ……!!」
「どこいったのですかぁぁぁぁ? 遠慮せずに娘なのだから甘えていいのですよぉぉぉぉぉぉ?」
「あわわわ! もうこっち来てるよ! なんであの子マスターをマスターの娘なんて勘違いしているのかな!? 髪の色だって違うじゃん!」
「愛の力でしょうか!」
「オルランドじゃあるまいし!!」
だがマスターは断固として白衣を離さない。 なんだか恐怖のあまり幼児退行しているようにも見える。_それか道連れを求めているようにも_
「まて、また私か!? まてまて白衣ならいくらでもやるから!!」
「もー! 仕方がない! 一緒に連れて行くよ! よっこいしょ!」
「対ショック姿勢を! 今回は前回よりもハードですよ!」
「じゃあ連れて行くなよ!? ちょっとまて心の準備がいやああああああ……」
ものすごい速さで食堂から飛び出していくヒポグリフ。 可愛そうに、前回のバイクの時だって一日は何も食べられないほど酔ってしまったのに。 またこそこそと厨房へと隠れていた職員たちは手を合わせて合掌した。
「彼女はどうあがいても生き残れない運命なんだな」
「悲しいな……」
「でも、この状況って多分私達も前回と同じ目に遭いません?」
「……」
皆、そこで口をつぐむ。 言ってはならない事を口にしてしまったオペレータ担当のカルデア職員は自らの失態に気付き、青くなってしまった。
足音が近づいてくる、それも二つ。 しかし恐る恐る厨房から顔を出すと、そこには誰もいない。 通り過ぎてくれたのかと三人は安堵する。
「こんにちはぁ……」
「我が息子との娘を探しているのですが……」
誰もいないはずの後ろから声がした。 振り向くとそこには……
_________カルデアの職員の明日はどっちだ
余りにも長くなりそうなので無理矢理終わらせてしまいました。 ごめんなさい。
今回はTSものです。 デオンくんちゃんはどっちになるんでしょう?
感想、誤字脱字の報告ありがとうございます。 UAも増えてきてなんだか夢心地であります。 これからもがんばって行きたいと思います。
文章が見難いなどの意見もいつでも受け付けていますので気軽に感想にでもご記入いただければ嬉しいです。
あ、ネタもいつでもウェルカムなので、気軽にリクエストでもなんでもください。