カルデアの落ちなし意味なしのぐだぐだ短編集   作:御手洗団子

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夢をみる魔法少女。

イリヤスフィール・フォン・アインツベルンとクロエ・フォン・アインツベルンはそれはそれは可愛い魔法少女です。

どちらとも外国にお城を持ってそうな外国の風貌のお嬢様ですが、れっきとした日本育ちのお嬢様です。 なので文化も、感覚も日本人なのでした。

今はいろんな事情があってカルデアという人類を守るお仕事のお手伝いをしています。

 

「さぁさぁ座って座って! 愉しいお茶会の始まりよ! とぅうぃんくる、とぅうぃんくる、りとるばっと! うふふ気違いのお茶会なんていったらひどいんだから!」

 

「とぅ……いんくる?」

 

「時々何言ってるか分からない時あるわよね、あの子」

 

そんな二人は今日は不思議な女の子からお茶会に誘われていました。 まるで絵本の中から出てきたような素敵な女の子! 流れる様な美しい銀の髪、輝かんばかりの大きくてキラキラした目、片手には絵本を持ち、にこやかに笑う笑顔は花の様! 名前はナーサリーライム、カルデアに召喚されたサーヴァントの一人です。

 

「さぁさ、ここでは大人の気難しい話も、マナーも何もなし! 素敵なお菓子に美味しいお茶が勢ぞろい! 」

 

「でもお茶にお菓子っていってもなんにもないよ?」

 

煌く昼下がり、ナーサリーの部屋に入った二人は手を引かれるまま椅子に案内されるまま座りますが、可笑しいことがありました。 ナーサリーはお茶会だといったのにテーブルにはお菓子どころかお茶さえおいてありません。 ごっこ遊びの事だったのでしょうか、すこしクロエはがっかりしました。

 

「なんだ、ごっこ遊びだったら始めからそういってよね……」

 

「ごっこ遊び? 何を言ってるのかしら。 ごっこ遊びですってうふふ!」

 

「でも、テーブルには何も無いんだけど……」

 

「さてと、チェリーパイはお好き? カスタードは? パイナップルにローストターキーはお好きかしら?」

 

「なによもう、からかってるの?」

 

クロエが付き合っていられないとでもいうように、席を立ちました。 しかしナーサリーは笑ったまま、指をパチンと鳴らしました、その時でした。

 

「え……なに、これ……」

 

「え、え!? えー!!」

 

二人が瞬きをした瞬間、なんの変哲もない只の部屋はそれは王様が食事するような豪華なお城の部屋へと変わっていました。 只のテーブルは豪華な円卓に見事なテーブルクロスが引かれ、綺麗なティーカップが四つ置かれていました。

 

私はほかの女の子たちとは違うの。(I am not like other girls.)

 

「なな、これどうやって!?」

 

「どうなっちゃってんのよ……」

 

二人が驚く姿にクスクスと笑いながらナーサリーがいつの間にか持っていたベルを鳴らしました。 するとしばらくして執事の恰好をした男の人が部屋に入ってきました。

 

「って、マスターさん!? ひゃあああ! その姿!?」

 

「______?」

 

「ええ、お茶をお願いね。 そうね……ローズヒップ。それとお菓子のマカロンはカシス味でね」

 

入ってきた男の人はなんとカルデアのマスターでした。 執事の服を着たマスターは眼鏡をかけておりなんだかいつもとは違う雰囲気でした。 マスターはナーサリーの注文を受けるとお辞儀をしてからまた部屋を出ていきました。 二人には何が何だかわかりません。

 

「私、頭がおかしくなっちゃったのかしら……」

 

「ええ、そうだと思うわ。 でも実をいうと、素敵な人はみんな頭がおかしいのよ」

 

「わたしたちはイチゴ味が良かった」

 

「ひゅい!?」

 

イリヤが驚いて隣を見ると、またイリヤぐらいの小さな女の子が席に座っていました。 これまた銀髪に、クリッとした目が可愛い女の子。 なんだかナイフを持っているのが怖いですが、ナーサリーのお茶友達のジャック・ザ・リッパーちゃんでした。 名前が怖いけど可愛い女の子達なんです。

 

「じ、ジャックちゃん!? 何時からそこに!?」

 

「最初からいたよ? あなた達が気付かなかっただけ」

 

ジャックお得意の気配遮断でしょうか、良く見たら服装も何時もの薄着ではなく、ふりふりのドレスを着ていますし、緑の帽子もかぶっています。

 

「な、なんなのよここは……いったいなにしたのアンタ……」

 

「もう、好奇心旺盛なカキさんね。 セイウチさんに食べられても知らないんだから。 想像は世界を変えるの」

 

「いや、答えになってないわよ……」

 

もはや展開について来れなくなってきている二人、ふとドアがノックされたと思うと。 執事姿のマスターがケーキスタンドを持って入ってきました。 次はメイド姿のマシュも一緒です、ティーポッドを持っており、もちろん眼鏡つきでした。

 

「■■■■!?」

 

「ちょ、ちょっと落ち着きなさいよ! 鼻血出てるわよアンタ!?」

 

「だ、だってこのこうけいひゃ……」

 

余りの衝撃的な光景に少女がしてはいけない顔をしながら鼻血を垂れ流すイリヤ、落ちた血からは花が咲き始めています。

テーブルの置かれたケーキスタンドにはサンドイッチからクッキー、ケーキと美味しそうなスイーツが山ほど置かれており、マカロンもカシス味とイチゴ味が乗せてあります。

 

「わあ……! ありがとうおかあさん!」

 

「_____」

 

マスターはジャックに笑いかけながら、ナプキンとお皿を配っていきます。 その間にメイド姿のマシュは紅茶をカップに注いでいきます。 良い香りがクロエの鼻孔をくすぐります。 イリヤはあふれる鼻血でそれどころではありませんが。

 

「ありがとう、これはお礼ね」

 

全て配り終えたマスターとマシュを自分の顔まで近づけさせて、二人のほっぺにキスをするナーサリー。 褒美を受けた二人は、微笑みながら少女たちに礼をするとまた部屋から出ていきました。

 

「うわぁ……こんな漫画で見る様なお茶会私初めて……!」

 

「あら、イリヤとクロは貴族みたいだし経験済みだと思ったのだけれど」

 

「いや、私たちはどっちかと言うと日本生まれの平民育ちというか……」

 

貴族っぽい名前をしている二人ですが、血の繋がらない兄とメイドさんが二人いるぐらいの至って普通の家庭に生まれた二人でしたから、このような英国式のようなティータイムを体験するのは初めてでした。

 

「私たちお腹すいたー」

 

「そうね、先にも言った通りマナーなんか気にしなくていいから楽しみましょう!」

 

それからお茶会が始まりました。 甘酸っぱい紅茶はお菓子との相性は抜群で、お菓子は二人が食べたこともないくらい美味しいお菓子ばっかりでした。 どこかの鬼さんも誘えばよかったかなとイリヤが思うくらいでした。

 

「それで、結局ここはどこなのよ?」

 

ケーキを食べながら、クロエがナーサリーに尋ねます。 イリヤは紅茶のおかわりをメイドのマシュに注いで貰っておりまた鼻血を出そうとしていました。

 

「夢よ、子供たちの夢の欠片」

 

「夢ぇ? どういう事?」

 

どういう事か分からずクロエは顔を傾けます。 一方イリヤは口についていたお菓子の欠片をマスターから取ってもらい顔を真っ赤にして、湯気が出ていました。

 

「『全てのものは本来あるべき場所で見つかるべきで、普通は見つかるものなの』 ここは子供たちの夢が集まったところよ」

 

「ますますわけわかんないわよ!」

 

「世界が燃えてしまってから、子供達も燃えて、残ったのは子供たちの夢だけだった。 ここは子供達の夢の墓場なの」

 

ナーサリーがそういうと、部屋に一匹の蝶が入り込んできてテーブルに着いたと思うとそのまま羽を広げ、そのままテーブルの模様になりました。

 

「んなっ……!?」

 

クロエが驚きますが、ジャックとナーサリーは驚くこともなく紅茶を飲んでいます。 イリヤはマシュからまた紅茶のおかわりを貰っており見ていませんでした。

 

「此処は夢だもの、なんにも不思議じゃないわ。 子供たちが想像することは何でも起きるの」

 

「じ、じゃあこのお城みたいなところも、お菓子もお茶も、あのマスターたちも!?」

 

「そう、まぁこのお茶会は私が想像しているものだけど。 あのマスターとマシュはイリヤが想像している物……あの子の場合妄想って言った方がいいのかしら? 此処では子供たちが思ったことは何でも叶うの。 なんたって夢の中だもの」

 

「だからジャックのお菓子も……」

 

「そういうこと。 うふふ楽しいでしょ!」

 

愉しそうに笑うナーサリーですがその顔は少し悲しそうにも見えました。

 

「本当にここは不思議の国のアリスみたいなの! 上は下だし、後ろを向くと前だし、外が中だったのよ! 本当に……! でもあんなことが起きてから、夢を見れる子供はもう貴方達だけ……」

 

そこでクロエは思い出しました。 ここカルデアの外では地獄が広がっていることに、ここ以外に人間はいないということに。 此処が子供たちの夢の墓場という言葉にも納得がいきました。

 

「ごめんなさいね。 ただ少しさびしくなっただけなの、子供の夢が無いなんて悲しいもの……」

 

「ナーサリー……」

 

クロエは少し考え込むと、顔をパッと上にあげて言いました。 何か悪いことを思いついた顔です。

 

「つまり……この空間では想像が大事ってわけね! 見てなさい!」

 

「はい? 何の話をしてるの?」

 

一人話を聞いていなかった、イリヤが不思議そうにクロエを見ます。 クロエは少し邪悪な顔をしながらマスターとマシュに顔を向けるとなにやら念じ始めました。

 

「クロ? 何をして……」

 

すると、マスターとマシュの間になんだか妙な空気が流れ始め_______

 

「あぁ……いけません、メイド長……そんな皆様が見ています……んぅ……」

 

「______?」

 

「あぁ……そこは……いけません……」

 

「んなーーーーー!?!?! クロ! マスターさんとマシュさんに何をしたのー!?」

 

なんだか濃厚に絡み合うマスターとマシュに顔を真っ赤にして大声を上げるイリヤ。 小学五年生には刺激が強すぎます。

 

「ハーハッハ! 此処では妄想力が物を言うのよ! むむむ!」

 

クロエがさらに念じるとクロエの恰好が王様の姿になりました。 なんだが無駄にゴージャスです。

 

「な、なにそれー!? じゃあ私も……ぬぬぬ!」

 

それを見たイリヤが念じると、ポンっと出てきた煙の後に、自分が憧れていた魔法少女マジカル☆ブシドームサシのコスチュームの姿になりました。 とても可愛らしい姿です。 どこかの黒髭が見たら、まぁ30メートル以内に近寄れないように呪縛されていますが、卒倒することでしょう。

 

「す、すごーい! なにこれ!!」

 

まるで聖杯を手にしたような力にイリヤも興奮します。 呑み込みの速いイリヤはその後も剣を出したりステッキを出したりと自分が思うように物を創造していきます。

 

「ぐぬ、さすがイリヤ。 妄想だけは私の上を行くわね……だけど負けないわ!」

 

負けじとクロエもイリヤに対抗して様々な物を出していきます。_なんだか大人向けのものが多いですが_ しばらくすると二人とも対抗心が燃え上がったのか、背中に翼を生やして飛んでいってしまいました。 ナーサリーはそんな二人の姿を目をまん丸くして見ていました。

 

「満足した?」

 

そっとジャックが後ろから尋ねます。 口にはこれでもかというぐらいお菓子を詰めこんでいてリスみたいになっていました。

 

「______ええ、楽しいわ! とっても!」

 

外で暴れまわる二人を見ながら、ナーサリーはとても可愛らしい笑顔で笑いました。 子供の夢が帰ってきたような気がしたのです。 それはとても喜ばしいことでした。

 

 

 

 

「皆さん、夕ご飯が出来ましたよ。 食堂に……」

 

「_____?」

 

夕方になって、ナーサリーの部屋に皆集まっていると聞いたマシュとマスターがナーサリーの部屋を訪ねます。 しかし返事が無いので、二人は部屋の中へと入ることにしました。

 

「皆さん、ご飯で……先輩?」

 

「______」

 

「え? あっ、うふふ……なるほど、少しだけ寝かせてあげましょうか」

 

二人が見たのは、四人仲良くベッドで寝ている姿でした。 みな気持ちよく熟睡しており、なんだか起こすのがもったいないくらいの良い笑顔でした。

 

「おかあさん……」

 

「この装備なら……くろにぃ……」

 

「ぐふふ……次は二人に何のしゅちゅえーしょんを……」

 

「うふふ、楽しい、楽しいわ……」

 

マスターとマシュはお互いに顔を見て笑うと、風邪をひかないように毛布を掛けて、部屋からこっそりと出ていきました。

 

________彼女達によい明日がありますように。

 

そう祈りながら、マシュは部屋の電気を消して、お休みなさいと一言つぶやきました。




ネタであった、魔法少女たちのお話でーす。
途中またぐだってしまったのでちょっと展開が無理矢理になっています。 許して。
なので少し短いです、許して。

ナーサリが大人っぽいですが、子供同士だと子供は大人になるような気がして、こんなキャラにしてしましました。 許して。
ジャックちゃんかわいいよね。 でも当たらない。

誤字脱字の報告をしてくれる皆様本当にお世話をお掛けしています! 貴方達がいなかったらこの小説はもう……!

何時も感想を頂きとても嬉しく思っています! 嬉しすぎて涙出てくらぁ。
ネタなどは、どしどしお書き下ると嬉しいです。 出来る限り書いていきたいと思います。

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