ギルモア・レポート 黒い幽霊団の実態   作:ヤン・ヒューリック

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第九章 未来戦計画 後編

前回、未来戦計画についてその過程に伴っての計画ではなく、その過程の結果の果てにある未来こそが、本当の未来戦計画の目的ではないかという答えを出させて貰った。

 

将来起こりうる核戦争の中、荒廃した世界の中でも戦える兵士を製造する、というよりもそうした状況を作り、その中で荒廃した世界を支配するためにそうした世界であっても戦える兵士を作り出す。

 

彼らの目的とはすなわち、世界征服であった。

 

こちらの方がやや非現実的であるという意見もありそうだが、あらかじめ存在する世界を影から操るよりも、表舞台に立ち、明確に支配を行うほうが遙かに効率的である。

 

既存に存在する完成された世界を支配するというのは、正直非効率であり、いくらそれを影で操ろうが限界が生じる。

 

ブラックゴーストという組織は巨大ではあるが、それでも世界中を敵に回して征服するだけの力を持っているわけではない。

 

だからこそ彼らは00ナンバーサイボーグ達に反逆され、最終的にはその計画を頓挫させられている。

 

彼らは巨大ではあっても、絶対的な存在ではない。だが、初めから強者が自分たちしか存在しない世界であるならば話は変わってくる。

 

今ある世界を征服するのではなく、これからの未来、それも決して繁栄に満ちた世界ではなく、むしろその対極とも言える一つの終末を迎えた世界。

 

あまりにも救いようがない世界であるが、こうした世界であるならば支配するということは決して非現実的ではなく、極めて効率的に絶対的な支配権を有する事が出来る。

 

故に彼らはブラックゴーストなのであろう。黒い幽霊、そしてその黒き幻影を追い求め、暗黒な世界を作り出す為に活動していたのであろう。

 

実際、彼らはそうした世界を現実に作り出していた。それは後ほど語らせて頂くが、少なくともこうした荒廃した世界の中で全ての文明を一度リセットし、その上で新しい世界を構築することが、彼らの目的だったとすると、ブラックゴーストという組織の行ってきた行動に対して合理的な説明が成り立つ。

 

実際のところ、冷戦期の軍拡競争は現在とは比較にならないほど活発であり、余念が無く、最終戦争論などが呟かれていたほどである。

 

そうした危機を煽るには十分すぎるだけの環境はすでに整っていた。世界を滅ぼすだけの兵器は自分たちが開発する必要などなく、すでに用意されている。後はその引き金を押すだけ。

 

問題なのは、そうなった時本当に自分たちは生き残れるのかという確信であり、同時にそうした終末を迎えた世界の中でも本当に行動可能な兵士、あるいは生命体の開発である。

 

結論から言えば、ブラックゴーストもこうした「最終戦争」に対して確実に生き残れると判断出来るだけの確信は持てなかった。

 

故に、サイボーグ計画やミュータント計画が求められたと言える。

 

結果としてブラックゴーストが選んだのはコントロールが可能であり、現在進行形で利益が出るサイボーグ計画であった。

 

ロボットなども計画していたが、当時はまだAIやコンピュータの技術が未発達であり、自立可能でなおかつメカニズムを兼ねそろえた上での兵器として、サイボーグ計画が選ばれたのであろう。

 

次回は改めて、サイボーグ計画、それも00ナンバーサイボーグについての考察を行う。

 

 


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