ギルモア・レポート 黒い幽霊団の実態   作:ヤン・ヒューリック
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第十八章 その名は「ミュートス」 後編

前回にてウラノス博士がミュートス・サイボーグ計画に参加するまでの流れについて解説したが、今回は改めてなぜ彼らは神になったのかという結論に踏み込む。

ガイアが掲げた人を越えた神にも等しい完璧なサイボーグを作るという理想は、ある意味荒唐無稽な笑い話であったが、ここまでブラックゴーストが手掛けたサイボーグの中で、まともな成功例が表向きの首領たるスカールを除けば、00ナンバーサイボーグのみという厳しい現実があった。

幾度となく繰り返される中で、サイボーグ計画がミュータント計画と違い、凍結されずにあったのはその過程で産み出された人工臓器や兵器などの副産物が大きな収益を産み出していたからに他ならない。

本来成功に導くはずの技術が、いつの間にか本業と化していたのは皮肉というしかないが、逆に言えば当時のサイボーグ計画はいつ凍結されてもおかしくはない代物であった。

そこでガイアはそうした現状を打破する為にあえて「神に等しい」という言葉を口にしていたという。

「ガイアは神など信じていない、それどころか恐ろしいまでに非常な現実主義者であった。故にそんな彼が神々を作ってみないかと呟いたのは不思議で仕方がなかった」

ガイアの同僚であり、ミュートス・サイボーグ計画に携わっていたウラノス博士はそのようなコメントを残している。ギルモア博士もガイアは無神論者であり、信じるのは自らの頭脳だけであったという。

だがガイアは現実主義者であると同時にパフォーマーでもあった。一見荒唐無稽に見えるテーマを掲げたのも、それまでのサイボーグにあったイメージそのものを払拭させ、同時に自らが新しい計画をスタートさせることを喧伝している。

そしてミュートス・サイボーグ達が神となったのは現実的な理由があった。ガイアがブラウンの配下であった時から発見した人間性の喪失が機械化をスムーズにさせるという事実から、より高度な存在とすることでより機械的ではない超全的な人格を形成させることで、機械と人体をよりシンクロさせうるということである。

機械化を推し進めれば、喪失した肉体と人間性が精神を蝕む。あるいは機械化そのものが人体とリンクしないで機能不全に陥る。この事実からガイアはただ人間性を喪失させるのではなく、人間ではない神とすることで、より心理的なストレスを軽減させ、同時にシンクロ率を向上させるという「神格化」という技術を発案した。

人間であることが、サイボーグ化を妨げるのであれば切除すればいい。しかしそれは同時に人間にある高度な判断や柔軟な発想を失わせてしまう。だがより高度な機械化は精神を蝕む上に、肉体に負荷をかける。

だが初めから人間ではない存在であることを前提にすればどうであろうか。人間ではない、人を越え神にも等しい肉体を備えた存在であることを肯定した上でのサイボーグであればどうなのか。

ガイアが考えたミュートス・サイボーグ計画はそうした前提の元に立案された計画であった。

「彼の計画を聞いたとき、私はついにガイアが狂ってしまったのではないかと思った。そのような発想はあまりにも非現実的である。だがガイアにはもう一人の協力者がいた」

ガイアがウラノス博士を勧誘したのは生化学的、医学的なアプローチにて改造を施せる協力者を求めていたからである。実際、
ミュートス・サイボーグの稼働率と改造レベルは劇的に高い数値を出している。

そして、ガイアにはもう一つの切り札があった。

ブラックゴーストにて「非合法な実験のアウトソーシング」というビジネスを立ち上げた男、超能力にとりつかれた男、
ガモ・ウィスキーである。







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