ギルモア・レポート 黒い幽霊団の実態   作:ヤン・ヒューリック

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第十五章 後期型サイボーグ 後編

前回、後期型サイボーグの特徴について語ったが、その完成系とも言うべき存在が0013である。

 

0011と0012のような、人型を廃したサイボーグなどではなく、0010と同じく人間としての外見を有している。

 

戦闘能力も0010や009を超えた加速装置を有することで、サイボーグ兵士としては抜群の完成度を誇っており、00ナンバーサイボーグの完成系といってもいい。

 

しかし、後期型サイボーグの中で唯一0013だけがイレギュラー、というよりも異様さを放っている。

 

0010も一応人型ではあるが、彼らには電極人間という欠陥が存在した。互いに生きている内は近づくは無論のこと、手を取り合うことすら出来ない。

 

0011と0012に関してはサイボーグと呼んでいいのかすら分からないほど、人間性を廃しているが、彼らに共通し、同時に0013にもある共通点が存在する。

 

それはズバリ、欠落である。

 

0010はショートという欠陥を持ち、0011は肉体を失い脳のみを残し、0012に関しては精神そのものが歪んでおり、そして0013は言語障害があった。無論これは単なる偶然などではなく、むしろこの欠陥こそが彼らをサイボーグ兵士として選抜した理由である。

 

ブラウンら兵器派がサイボーグ兵士を製造する上で発見したのは、人間としての障害を有している人間ほど、機械化がスムーズになるという事実であった。人間として欠落している部分を有しているからこそ、元々の人間性を考慮する必要性が無い。

 

それどころかそれを補う、あるいはサイボーグ手術を行うことで改善させることも不可能ではないという事実をブラウンは発見することが出来た。

 

特にブラウンが熱心だったのは脳と肉体の分離である。0011や0012が人としての形を持たず、むしろ脳型コンピューターとして機能しているのは、この事実を検証するためであったからでもある。

 

人間という存在を構成するには、単に脳という中枢が存在するからではなく、様々な臓器や手足などが相互にバランスを取る形で機能していることが不可欠である。だからこそ安易な手術を行うことで人間としてのバランスや機能不全を起こすことに至ったわけだが、ブラウンは、人間性を喪失させる、あるいは欠如した人間、障害を持った人間を対象にすることで解決した。

 

あらかじめある肉体をいじくり回すよりもあえて欠落させる、あるいは喪失させることで従順させる。あるいは障害がある人間をサイボーグ化することで常人とさせることをブラウンらは発見したのである。

 

0011や0012が人間とはかけ離れた異形の姿になったのはすなわち、この事実を検証させることにあった。

 

0011は人間としての姿を奪うことで、元の肉体を戻すという条件を与えることで戦闘を行い、0012にはその執念を利用させることで00ナンバーサイボーグと戦わせた。

 

結果として0010、0011と0012は敗れたが、彼らの成果からブラウンらはサイボーグ兵士製造計画を復活させる事に成功した。

 

そして、その集大成として作られたのが0013であった。彼自身もそうだが、0011や0012の過程で生み出したロボット技術も並行することでより兵器としての完璧さを追求することにも成功している。

 

細かい潜入や破壊工作などは0013が行い、大規模な破壊活動や戦闘はロボットが担当することで全局面において活躍できるようにし、より完成度を上げることが出来た。

 

しかしこれが結果としてブラウンが完全に失脚する原因となった。0013は反逆し、自爆してしまったことでブラウンの面子は文字通り丸つぶれになった為である。

 

どれほど高度な改造を施しても、彼は人間性というものを理解していなかった。0013には0010や0011、そして0012ほどの強い支配が及んでいなかったというのもある。

 

0010らは人間性を無理矢理喪失させた異形の存在にすることで、人間に戻れるチャンスを与えることで直接的ではなく、より間接的でありながらも強い支配を施せたが、0013には自爆装置を搭載されていた以外にはそうした特徴は存在しない。

 

何よりも彼の存在は人間性を簡単に喪失出来ないことを雄弁に物語っているといえる。

 

「もし彼らの存在を知っていれば、僕らはきっと彼らと共に戦っていました」

 

009こと島村ジョー氏はそう語っていた。そして、彼らのような存在を生み出さない為に、ブラックゴーストとの戦いに対して闘志を燃やしたという。

 

次回はブラウンの後継者となったガイア博士とウラノス博士によって生み出された、ミュートス・サイボーグについて解説させて頂く。

 

 


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