ギルモア・レポート 黒い幽霊団の実態   作:ヤン・ヒューリック

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第十四章 後期型サイボーグ 中編

前回において、ブラックゴーストは「完全なるサイボーグ」の製造法を失ってしまったという事実について解説した。

 

ここから後期型サイボーグである、0010~0013までの後期型サイボーグ、00ナンバーサイボーグ達が脱走した後から製造されたサイボーグ兵士達の特徴について解説していく。

 

0010 プラスとマイナスの双子の兄弟。加速装置ならびに放電装置内蔵。

 

0011 多脚機動兵器型のサイボーグ。毒液ならびに加速装置を搭載

 

0012 ハウス型サイボーグ 

 

0013 高性能加速装置搭載。少年とロボットと対になったサイボーグ

 

まず彼らの最大の特徴は、001から009までにあった人間性の喪失である。喪失というよりも、切除という表現に近い。00ナンバーサイボーグが、どちらかといえば人間としての体と特徴はそのままにした上で、人間としての機能を強化し発展させているのに対して、後期型サイボーグ達はより兵器として特化しているのが分かる。

 

まず0010だが、プラスとマイナスの兄弟達に加速装置と共に、放電能力までを与えている。加速装置自体、00ナンバーサイボーグでも002と009にしか与えられていない能力であり、この能力そのものが従来の兵器の常識を覆し、戦局をひっくり返しかねないほどの力を秘めている中で、電気そのものを武器にするというのはやや過剰に思える。

 

そして0011に関しては人型ですらなく、外見そのものはロボットも同然であり、コンピューターの代わりに脳を利用し、レーザーや毒液などの武装と共に飛行能力と加速装置を搭載させており、まさしく兵器そのものである。

 

0012はその発展系であり、家という建築物そのものをサイボーグにしている。

 

ここまでで共通しているのは、とにかく彼らは人という形や型に囚われない、というよりも徹底した人間性を喪失させているところにある。

 

0010の場合、彼らは互いにプラスとマイナスの電極を有しており、接触することはショート、すなわち死を意味する。

 

0011は完全に機械化され、最終的には脳に宿る人格すら喪失させられ、0012に至っては建築物と同化させられている。

 

一応人型を保っている0010や0013を除けば、彼らは人間性そのものを奪われている。コンピューターの代わりに脳を使い、コンピューターには真似できない瞬時の計算能力と演算をなし得ているが、彼らの存在こそがブラウンらが出したサイボーグ兵士の答えと言っても言い。

 

ブラウンが導き出した結論は「人間性こそが欠陥」という身も蓋もない結論であった。機能不全や精神面での不具合が起きるのが人間性ならば、初めからそれを喪失させてしまえばいい。

 

人格すら破壊することでコンピューターには真似できない判断力と決断力を与え、最短の行動原理で効率よく戦わせる。

 

サイボーグである理由が大きく失われているように思えるが、これはブラウンにとってはある意味苦肉の策と言ってもいいだろう。結果としてブラウンは、ギルモア博士に出来た肉体と機械の融合を行うことが出来なかった。

 

故に、人間性そのものを喪失させ、完全に機械と置き換えることで不具合そのものを根底から打ち消したのである。

 

そう考えると、後期型サイボーグ達が何故ここまで00ナンバーサイボーグとコンセプトが違っていることが分かる。

 

肉体と機械を融合させ、あくまで人間としての機能と力を補助し、生物としての生存能力を維持させることであらゆる局面で機能するのが00ナンバーサイボーグだとすれば、後期型サイボーグは脳とそれ以外は機械に分け、あくまで脳を基幹としたほぼロボットに近い機械化兵士と言ってもいい。

 

実際、彼らの戦闘能力はある意味00ナンバーサイボーグ達を上回っている。単純な兵器としてのスペックだけならば明らかに後期型サイボーグの方が上であり、実際彼らは00ナンバーサイボーグを窮地に追いつめている。

 

しかし、それでも00ナンバーサイボーグに彼らは敗北した。兵器としての完成度は上であっても、勝利することは出来なかった。

 

この理由と共に、次回は彼らの中から生まれた0013についての解説を行っていく。


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