ギルモア・レポート 黒い幽霊団の実態   作:ヤン・ヒューリック

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第十二章 00ナンバーサイボーグ 後編

00ナンバーサイボーグはギルモア博士がブラックゴーストを倒す為に、改造され実験体となり犠牲となる人間を最後とする為に生まれた。

 

故に彼らは単なるサイボーグには無い、ある機能が搭載されていた。

 

それは自己修復機能である。

 

ある程度の損傷ならば、彼らは特別な修理をせずに自らの損傷を修復できる。尤も、あまりにも酷い損傷に関しては相応の処置、修理を行わなければならない。

 

だが、彼らには従来のサイボーグのように、人間と機械を組み合わせた安っぽいサイボーグではない。むしろ人体と機械が適度なバランスで組み合わされている融合体といっても遜色がない。

 

故に彼らには他のサイボーグにあった拒絶反応が無い。サイボーグ兵士製造において、この計画が実用化に至るまでには多くの技術的問題があったが、最大の問題は機械と人体との拒絶反応である。

 

人間の体、人体とは単に脳や臓器や手足で構成されているが、人間が人間たり得るのは一重に、人間としての体が存在するからに他ならない。

 

これは近年に入ってから発見されてきたことだが、人間の知能が発達した最大の要因はまず二足歩行が出来ることであり、それまで四本の足で支えていた体を、二本の足で支え、足が手となり様々な道具を使いこなすことで人間は他の動物とは比べモノにならないほどの知能を発達させた。

 

そして、人間の感情や知能というのは単に脳だけで機能しているわけではない。脳が大きなファクターであることは間違いないが、心臓を初めとする臓器などが複合的に精神、つまりは「心」を作っていることが近年まことしやかに叫ばれている。

 

いわゆる心の内臓起源説であるが、まだこの学説は正式に認められたものではない。だが、サイボーグ兵士達の多くが成果を上げつつも、精神面や機能不全に陥り、使用限界が短く耐久性に欠けていた。

 

故にガモ・ウイスキー率いるミュータント派が一時期ブラックゴーストの主流として機能していたわけだが、ギルモア博士は機械に人体を合わせるのではなく、単なる発達や機能よりも、調和を前提にした設計を行うことで、この問題を解決した。

 

身体機能をより強化する、規格外の人間を容易に作り出すのではなく、拒絶反応を初めから少なくした上で、同時に彼らの肉体に合わせた改造を行い、彼らの性格にも合わせた肉体とする。

 

00ナンバーサイボーグが多彩な能力を有しているのは、こうした能力と性格を結びつけることで精神面、メンタル面での拒絶反応をも考慮し、人間性を失うことなく、同時に彼ら自身が最大限のパフォーマンスを発揮できるように設計されている。

 

これが後に彼らが幾多もの戦いの中で生き残れた最大の要因であった。

 

こうしてブラックゴーストが作り出した「実用的なサイボーグ兵士」は誕生したが、彼らはギルモア博士と志を共にし、自らブラックゴーストから逃亡した。

 

ここから後期ナンバーサイボーグ、サイボーグマン、ミュートス・サイボーグ達との熾烈な戦いが始まっていくのだが、次回では改めて彼らと後期ナンバーサイボーグ達との相違点と、ブラックゴーストが彼らに何をしたのかを語っていく。

 

 


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