「やぁっ!」
剣型の煌式武装で斬りかかるシルヴィ。黒胡が斧でそれを受け止める。
「ななくん!」
「はぁっ!」
その隙に黒胡の懐に入り、星辰力を纏った拳で思いっきり殴る。黒胡は吹き飛んでいったものの・・・
「っ・・・堅すぎんだろアイツ・・・」
殴った手が痺れ、思わず表情が歪む。やっぱり《神の拳》無しは辛いわ・・・
「ななくん、大丈夫?」
「何とかな。次はもうちょっと星辰力を集めるわ」
「普通の拳型煌式武装は使わないのですか?」
リムシィが尋ねてくる。
「普通の煌式武装だと、俺の星辰力の量に耐え切れずに壊れるんだよ。勿論壊れないように力を加減することは出来るけど、それなら生身の身体に星辰力を纏った方が早い。何より加減する必要も無いからな」
「なるほど・・・だから七瀬は今まで、普通の煌式武装を使ってこなかったのですね」
「そういうこと。それより、向こうはどうなってる?」
俺がステージの反対側へと目を向けると・・・
「うりゃああああああああああっ!」
虎峰が白秦に殴りかかっていた。
「《木派》のトップ舐めんじゃねええええええええええっ!」
「落ち着け《天苛武葬》!?ここはアタシとアンタで白い巨人の双剣を押さえて、《聖騎士》がトドメを刺す作戦で・・・」
「人の苦労も知らずにふざけんなクソチビイイイイイイイイイイッ!」
イレーネの制止も空しく、虎峰の攻撃は止まらなかった。
「・・・あれはホントに虎峰なのか?何かキャラ変わってんだけど・・・」
「趙くん、よっぽどストレスが溜まってたんだね・・・」
「よく分かりませんが、《天苛武葬》は苦労人なのですね・・・」
俺達が哀れみの目で虎峰を見ていると・・・
『おーっと、黒胡が立ち上がった!まだまだやる気だーっ!』
夜吹の実況が聞こえてくる。見ると黒胡が立ち上がっており、斧を構えてこちらへ突進してくるところだった。
タフだなぁ・・・
「ま、仕込みは完了してあるけど」
俺が呟くのと同時に、黒胡の側で急に爆発が起きる。黒胡は後ろへ吹き飛ぶが、そこでもさらに爆発・・・
連鎖的に起きる爆発に、ボロボロになっていく黒胡。
「これ、《鳳凰星武祭》で黎兄妹が使ってた技だよね?ななくん、星仙術も使えるようになったの?」
「まぁな・・・と言っても、基礎を学んだだけだよ。《魔術師》の力をコントロールするのに、星仙術の使い方が役に立ったからさ」
元々星仙術は、《魔女》や《魔術師》の能力を技術として落とし込んで汎用化したものだからな。
逆に言うと星仙術を学ぶことは、《魔女》や《魔術師》の能力を学ぶことにも繋がる。俺は星露やセシリーから星仙術の基礎を学び、《魔術師》の力をコントロールする術を身に付けたのだ。
ちなみにこの技は基礎を修めた後、沈雲と沈華に教えてもらった応用技である。リーゼルタニアでも役に立ったし、あの二人にはマジで感謝だな・・・
「さて、そろそろ潮時か・・・リムシィ、頼む」
「了解しました」
リムシィの左腕が巨大な砲身へと変形し、砲口にエネルギーが集中していく。
「ルインシャレフ・・・発射」
ボロボロになった黒胡を、光の奔流が直撃する。黒胡はステージの壁に叩きつけられ、そのまま動かなくなった。
『な、何ということでしょう!?黒胡がK.O.されてしまったーっ!?』
叫んでいる夜吹。
『七瀬選手・リューネハイム選手・リムシィ選手が、まずはガーディアンを一体倒しました!残るは白秦のみです!』
「よし、終わったな」
後はアーネスト達がやってくれる・・・そう思って気を抜いた瞬間だった。
「危ないッ!」
アーネストの叫び声。俺達に向かって、何かが凄まじい勢いで飛んでくるのを感じる。
「「「ッ!?」」」
咄嗟に避ける俺達。だが・・・
「くぅっ・・・!」
「シルヴィ!?」
呻き声を漏らすシルヴィ。
慌ててシルヴィに駆け寄ると、シルヴィの脇腹から血が流れていた。どうやら避けきれず、脇腹を掠めてしまったらしい。
「大丈夫か!?」
「アハハ、平気平気・・・ちょっと油断しちゃって・・・」
苦笑を浮かべるシルヴィだったが、痛みを堪えているのがバレバレだ。何かが飛んでいった方向を見ると、ステージの壁に剣が刺さっていた。
あれって・・・
「白秦が持ってた剣・・・?」
「シルヴィアさん!?」
「大丈夫か!?」
虎峰とイレーネが駆け寄ってくる。アーネストは白秦を一人で足止めしていた。
「白秦が剣を投げてきたのか・・・?」
「えぇ、予想外でした」
口調が元に戻っている虎峰。
「恐らく黒胡が倒されたことで、白秦は七瀬達の方を危険視したのでしょう。ガーディアンとしての仕事上、危険な方を先に排除するように作られているはずですから。僕としたことが、そんなことに今さら気付くなんて・・・!」
「アンタのせいじゃねぇよ」
虎峰の肩に手を置くイレーネ。
「それより、いつまでもアイツを《聖騎士》に任せてるわけにもいかねぇ。アタシ達も加勢して、早いとこケリをつけねぇと・・・」
「・・・ふざけんなよアイツ」
怒りがふつふつと湧き上がってくる。あの野郎・・・
「絶対に許さん・・・」
「な、七瀬・・・?」
リムシィが恐る恐る声をかけてくるが、俺は前へと歩み出していた。
「虎峰、イレーネ、リムシィ・・・シルヴィを頼んだ」
「え、ちょ・・・七瀬!?」
虎峰が慌てて呼び止めようとするが、俺の歩みは止まらない。アーネストが俺に気付いて、白秦と距離をとってこちらへやってくる。
「七瀬!ミス・リューネハイムは!?」
「脇腹を斬られて出血してる。それよりアーネスト・・・ちょっと下がっててくれ」
俺はアーネストの横を通り過ぎ、白秦の前に立った。そして・・・
「・・・雷よ」
雷が迸り、俺の右手に集中して形を作っていく。
『ちょ、七瀬!?《魔術師》の能力を使うのはルール違反だぞ!?』
「・・・そんなのもうどうでもいい」
夜吹の声に冷たく返す俺。
「シルヴィを傷付けたコイツは・・・俺が潰す」
俺の右手に、巨大な雷の槌が形成された。白秦が剣を振りかざしてくるが・・・
「邪魔だよ」
槌を横に薙ぐと、剣が白秦の腕ごと吹き飛ぶ。俺は槌を振りかぶった。
「吹き飛べ・・・《雷帝の鉄槌》ッ!」
巨大な雷の槌を、全力で白秦に叩き込む。衝撃でステージに亀裂が走り、あちこちが割れていく。
「俺のシルヴィに・・・何してくれてんだあああああああああああああああッ!」
『ちょ、ヤバくね!?これマジで洒落にならなくね!?』
夜吹が叫んでいるが、お構い無しに力を込め続ける。
次の瞬間・・・白秦が爆発した。
「ッ!?ななくんッ!?」
遠くでシルヴィの叫び声が聞こえる。俺が爆発に巻き込まれたと思ったんだろう。
だが心配は無用だ。何故なら・・・
「もう・・・無茶しすぎですよ、マスター」
人型になった七海が、《神の拳》の力で俺を守ってくれているからだ。
「いくらマスターの星辰力が多くても、この至近距離で爆発に巻き込まれたら危ないんですからね?」
「・・・助かったよ。ありがとな、七海」
苦笑する俺なのだった。
どうも~、ムッティです。
シャノン「次回でこの章終わるの?」
そうそう。そろそろ次に進みたいし。
ただ、番外編とかも書いてみたいよね。
シャノン「そういえば感想で『七瀬×沈華が見たい』って意見もあったよね」
うん。そういうのを書いてみるのも面白そうだよね。
シャノン「なるほどねぇ・・・っていうか、執筆は進んでんの?」
・・・それではまた次回!以上、ムッティでした!
シャノン「あ、これ進んでないパターンだ・・・」