「そっか、美奈兎ちゃん達が案内してくれたんだね」
「あぁ、おかげで助かったよ」
腹ごなしを終え、まったりしているシルヴィと俺。
美奈兎達はトレーニングをするらしく、シルヴィが来る前にトレーニングルームへと行ってしまったのだ。
九美は『兄さんと一緒が良いですぅ!』とか言ってたけど、結局ニーナが引きずっていった。
「九美は良い仲間に巡り会えたみたいだな。チーム・赫夜は強敵になりそうだ」
「だね。ななくんのチームも、当たったら苦戦するかもよ?」
「それでも勝つよ。優勝するのは俺達だ」
たとえ八重や九美と戦うことになっても・・・絶対に負けられないからな。
俺が改めて決意を固めていると・・・
「いーや、優勝はアタシたちのもんだよ!」
「ん?」
背後から威勢の良い声が響く。振り向くと、四人の女子達が立っていた。
「いくら七瀬が相手でも、勝ちは譲れないからね!」
「おー、ミルシェじゃん。おひさ~」
「ちょ、軽くない!?」
中心に立っていた女子・・・ミルシェがずっこける。クインヴェールが誇るガールズロックバンド・ルサールカのリーダーだ。
「パイヴィ、トゥーリア、モニカまでいるのか。久しぶりだなオイ」
「久しぶりね、七瀬」
「元気そうで何よりだぜ」
「大きくなったね!」
それぞれ挨拶を返してくれる三人。それを見て、シルヴィがビックリしていた。
「え、ななくんルサールカと知り合いだったの!?」
「何度か四糸乃姉が実家に連れてきてたから、すっかり顔馴染みになっちゃって」
「あぁ、シノンか」
納得するシルヴィ・・・って、あれ?
「そういや四糸乃姉は?マフレナもいないけど」
「あぁ、あの二人なら・・・」
「あ、いたいた!ミーちゃん!」
「食べ物買ってきましたよ~!」
四糸乃姉とマフレナが、両手に袋を持ちながらやってくる。
「あれ!?なーちゃんとシーちゃん!?何でここに!?」
「学園祭デートしてるの」
シルヴィが四糸乃姉に説明する一方、マフレナが俺の下に駆け寄ってくる。
「七瀬さん!お久しぶりです!」
「久しぶり。マフレナは相変わらず天使だなぁ」
「ふぇっ!?」
俺が頭を撫でると、マフレナが恥ずかしそうに赤面する。
「いいかマフレナ、お前はミルシェ達みたいになっちゃダメだぞ?」
「は、はい・・・///」
「ちょ、七瀬!?どういう意味よそれ!?」
「ミルシェうるさい。今マフレナに癒されてんだから邪魔すんな」
「七瀬?モニカも癒してあげようか?」
「お前の本性を知ってて癒されるわけないだろ。この腹黒ロリ年増」
「酷くない!?」
「ハハッ、残念だったなモニカ!」
「トゥーリアも他人のこと言えないだろ。お前はミルシェと同じ類なんだから」
「なっ!?それは心外だぞ七瀬!」
「どういう意味よトゥーリア!?」
ミルシェとトゥーリアが言い合いを始め、モニカは凹み、マフレナは俺に頭を撫でられ赤面し、パイヴィはそれを見ながら黙々と食べている。
「・・・何このカオスな集団」
「ほとんどなーちゃんのせいでしょ」
溜め息をつく四糸乃姉。
「ほら、ミーちゃんとトリちゃんは喧嘩しないの。パイちゃんは皆の分も残しておいてね。モカちゃんとマナちゃんもこっちおいで。なーちゃんとシーちゃんも一緒にどう?」
「・・・シノン、本当に皆のお姉さんみたい」
苦笑するシルヴィなのだった。
*****
「え、じゃあアンタ達マジで付き合ってんの!?」
「まぁな」
ミルシェの問いに頷く俺。
「ちょっとシノン!?アンタ知ってなら教えなさいよ!?」
「ミーちゃん達に教えるなんて、全世界にバラすようなものじゃない」
「アタシ達を何だと思ってんの!?」
「手のかかる子供達」
「アンタはアタシ達の母親かっ!」
おぉ、あの四糸乃姉が大人のような対応を・・・
「うぅ・・・成長したね、四糸乃姉・・・」
「立場が逆じゃない!?私なーちゃんのお姉ちゃんだよねぇ!?」
「ほら見なさいよ!シノンだってアタシ達と変わらないじゃない!」
「おいミルシェ、お前らと四糸乃姉を一緒にすんな。しばくぞ」
「何で七瀬は急に態度が変わるの!?」
ギャーギャー騒ぐ俺達。と、マフレナがおずおずと手を上げる。
「えっと、お二人が交際しているのは分かりましたが・・・バレたらマズくないですか?シルヴィアさんはトップアイドルですし、相当なスキャンダルになるのでは・・・」
「ってことは、シルヴィアさんの人気暴落!?」
「モニカの時代到来!?」
「そんな時代が来たら、それこそこの世の終わりだろうよ」
「七瀬!?何か前より辛辣さが増してない!?」
涙目のモニカ。まぁでも、確かにそれは考えないといけないんだよな・・・
「アイドルである以上、熱愛が発覚したら少なからず影響が出るよな・・・」
「それはそうね」
俺の言葉に頷くパイヴィ。
「週刊誌に撮られて、坊主にしたアイドルだっているんだから。同じように週刊誌に載って、総選挙で三連覇を達成したアイドルもいるけど・・・あんなのは例外中の例外よ」
「その具体的な例え止めてくんない?それからシルヴィ、坊主だけは絶対止めてくれ」
「アハハ、流石にしないよ」
笑っているシルヴィ。
「私は・・・このままでも大丈夫だから。ななくんがいてくれたらそれで・・・」
「シルヴィ・・・」
「あ、ちょっとこのゴミ袋捨ててくるよ」
立ち上がり、ゴミを捨てに行ってしまうシルヴィ。アイツ・・・
「・・・嘘だよね、今のセリフ」
四糸乃姉が呟く。
「シーちゃんの性格上、コソコソ隠れて交際したくないんじゃないかな」
「俺もそう思う」
溜め息をつく俺。
「とはいえ、シルヴィの立場を考えると・・・」
「・・・トップアイドルも大変だよな」
トゥーリアが珍しく神妙な表情をしている。
「恋愛一つするにしても、これだけ気を遣わないといけないなんて・・・アタシらぐらいの年頃なら、恋の一つや二つしててもおかしくないってのに」
「え?トゥーリアも恋してんの?」
「・・・スマン。してない」
「トゥーリアはお子様だもんねぇ」
「モニカに言われたくねぇわ!」
「なっ!?モニカはお子様じゃないもん!」
言い合いを始めるトゥーリアとモニカ。コイツらホント仲良いな・・・
「でも七瀬、そろそろ真剣に考えるべきじゃないかしら?」
パイヴィがそんなことを言う。
「熱愛報道が出て、もう一年近くになるでしょ?このまま無言を貫き通すのか、それとも発表してしまうのか・・・一度シルヴィアと話し合った方が良いんじゃないかしら?」
「・・・そうだな。ちゃんと話し合ってみるよ」
パイヴィの言う通りだな・・・そろそろキチンとしておかないと。
っていうか・・・
「今さらだけど・・・ルサールカのリーダー、四糸乃姉かパイヴィの方が良くね?」
「ちょっと!?リーダーの座は渡さないからね!?」
涙目になるミルシェなのだった。
三話連続投稿となります。
シャノン「ななっちとルサールカは知り合いだったんだね」
そうそう。『初めまして』の設定にすると面倒だし。
シャノン「そんな裏事情言わなくていいよ!?」
とりあえずマフレナが可愛い。
シャノン「この浮気野郎・・・」
可愛い女の子を可愛いと言って何が悪い!
シャノン「開き直った!?」
それではまた次回!以上、ムッティでした!
シャノン「またね~!」