学戦都市アスタリスク ~六花の星野七瀬~   作:ムッティ

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風邪ひいた・・・


学園祭

 「凄い盛り上がりだなぁ・・・」

 

 感嘆の声を上げる俺。

 

 季節は春・・・俺は二年に進級し、《獅鷲星武祭》へ向けて特訓の日々を送っていた。だが、今日から三日間は完全オフとなっている。

 

 その理由は・・・

 

 「だって学園祭だもの。六学園全てが完全に開放される、何でもありのお祭りだよ?一般人が学園に入れるのもこの期間だけだしね」

 

 楽しそうに笑うシルヴィ。

 

 そう、今日から三日間は学園祭が行なわれるのだ。アスタリスクにおいて《星武祭》と並ぶ一大集客イベントとあって、どこもかしこも大賑わいである。

 

 そんな中、俺はシルヴィと学園祭デートをすることになっていた。

 

 「それにしても、よく休み取れたな。仕事の方は大丈夫なのか?」

 

 「大丈夫だよ。力ずくでもぎ取ってきたから」

 

 「いや、不穏な響きすぎて安心できないんだけど」

 

 休み取るのに力ずくって・・・

 

 「それより、十萌ちゃん残念だったね。楽しみにしてたのに・・・」

 

 「仕方ないだろ。身体の方が大事だよ」

 

 十萌は風邪をひいてしまったらしく、学園祭に来れなくなってしまったのだ。万理華さんが看病してくれているので、心配ないとは思うが・・・

 

 「まぁ十萌は星導館に入りたいらしいし、来年は生徒として参加できるだろ」

 

 「十萌ちゃん、クインヴェールに入ってくれないかなぁ・・・あの子のルックスなら、間違いなく合格だと思うんだけど」

 

 「言っとくけど、十萌にアイドル活動なんてさせないからな?悪い虫が付いたらどうしてくれるんだ」

 

 「あれ、シノンは良いの?」

 

 「四糸乃姉は男性恐怖症だから。悪い虫の付きようがない」

 

 「・・・確かに」

 

 苦笑するシルヴィ。

 

 「それより、そろそろ移動しようぜ」

 

 「そうだね。エスコートよろしく、ダーリン♪」

 

 「いや、ダーリンって・・・はいはい」

 

 俺はそう言うと、シルヴィの手を握って歩き出したのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 まず俺達がやってきたのは、アルルカント・アカデミーだった。

 

 感想としては・・・

 

 「・・・何処の研究所?」

 

 「アハハ・・・」

 

 学園らしさが微塵も感じられなかった。何だここ・・・

 

 「あれ?七瀬くん?」

 

 背後から声をかけられる。振り向いてみると・・・

 

 「お、エルネスタじゃん」

 

 「おひさ~」

 

 軽い感じで挨拶してくるエルネスタ。

 

 「一年ぶりぐらいだよね?」

 

 「そうだな。今さらだけど、《鳳凰星武祭》準優勝おめでとう」

 

 「にゃはは、ありがと。剣士くんとお姫様に負けちゃったけどね」

 

 エルネスタはそう言って笑うと、俺の隣のシルヴィを見た。

 

 「あら、七瀬くんの彼女さん?」

 

 「えぇ、こんにちは」

 

 挨拶するシルヴィ。いつも通り変装している為、エルネスタは気づいていないようだ。

 

 「どうも~。こんな可愛い彼女がいるなんて、七瀬くんも隅に置けないね~」

 

 「そういうエルネスタはどうなんだよ?彼氏いないの?」

 

 「にゃはは、残念ながらいないね。少なくともアルルカントの男なんて、基本的に根暗なヤツしかいないから。私の好みじゃないのよん♪」

 

 「何気に酷いこと言ってんなオイ・・・」

 

 俺が呆れていると、こちらに向かってカミラが歩いてきた。

 

 「ここにいたのか、エルネスタ・・・って、七瀬じゃないか。久しぶりだな」

 

 「おぉカミラ、久しぶり」

 

 握手を交わす俺達。と、カミラの後ろからやってきたのは・・・

 

 「マスター!探したのである!」

 

 「うるさいですよ木偶の坊。静かにして下さい」

 

 ごつごつしい擬形体と、女性の姿の擬形体だった。

 

 あぁ、コイツらが・・・

 

 「アルディとリムシィ・・・初めて生で見たわ」

 

 「むっ?そういう貴殿は・・・おぉ!星導館の《覇王》ではないか!」

 

 「その情報は古いです。現在は《雷帝》という二つ名が付けられています」

 

 アルディの言葉を訂正するリムシィ。

 

 俺は序列三位に返り咲き、新しく二つ名をもらっていた。俺が以前倒した三位だった人が、俺のいない間に三位に戻っており、何故かその人から再び挑まれたのだ。

 

 何かよく分かんないけど、『僕とオロロムントの愛の力、思い知らせてやる!』とか言ってたな・・・瞬殺したけど。完全にイタい人だった。

 

 「お前達とは、一度戦ってみたかったなぁ・・・」

 

 「我輩も貴殿とは戦ってみたかったぞ!是非とも拳で語り合いたいものだ!」

 

 「脳筋は黙ってなさい」

 

 リムシィはアルディに厳しいなぁ・・・

 

 「次の《獅鷲星武祭》には出ないのか?」

 

 「えぇ、出ません。ですがその次・・・《王竜星武祭》には、私は出場する予定です」

 

 「お、マジか。じゃあ戦うことになるかもな・・・その時はよろしく頼むよ」

 

 「・・・貴方は本当に、自然に私達と接するのですね」

 

 首を傾げるリムシィ。

 

 「初対面の人間は、大体が恐る恐るといった感じで接してくるのですが・・・」

 

 「別に大した理由は無いさ。お前らに心があるから、俺も普通に接することができる。ただそれだけだよ」

 

 「にゃははっ!やっぱり七瀬くんは最高だね!」

 

 嬉しそうに笑うエルネスタ。カミラも笑みを浮かべている。

 

 「どうだリムシィ、こういう人間もいるんだぞ」

 

 「・・・そのようですね」

 

 リムシィは苦笑すると、手を差し出してきた。

 

 「木偶の坊と同じ意見なのは癪ですが・・・私も貴方と戦ってみたいものです。機会があればよろしくお願いします、《雷帝》」

 

 「七瀬で良いよ。こっちこそよろしく、リムシィ」

 

 握手を交わす俺達。と、何故かアルディが目頭を押さえていた。

 

 「人間と擬形体の友情が生まれた瞬間・・・我輩は感動したのである!」

 

 「だから黙ってなさい。スクラップにしますよ」

 

 毒舌を吐くリムシィ。と、カミラが時計を見る。

 

 「おっと、もうこんな時間か。エルネスタ、そろそろ行くぞ」

 

 「え~、研究発表とかめんどくさいよ~」

 

 「わがままを言うな。お前も一応《彫刻派》の代表だろう」

 

 「ちぇー・・・仕方ないなぁ・・・」

 

 肩を落とすエルネスタ。よっぽど面倒なんだな・・・

 

 「では七瀬、また会おう。学園祭を楽しんでくれ」

 

 「おう、またなカミラ。エルネスタも頑張れよ」

 

 「ありがと七瀬くん!またねん♪」

 

 「フハハハハッ!《雷帝》、いや七瀬よ!また会える日を楽しみにしているのである!」

 

 「永遠の眠りにつかせますよ?七瀬、またお会いしましょう」

 

 「おう!アルディとリムシィもまたな!」

 

 四人と別れる俺達。いやー、良い出会いだったなー。

 

 「・・・ななくん、嬉しそうだね」

 

 シルヴィがジト目で俺の顔を覗き込む。

 

 「あんな美人さん達と知り合いだったなんて・・・しかもリムシィさんのこと、ちょっと口説いてなかった?」

 

 「口説いてないわ!」

 

 うちの彼女の嫉妬が激しい件について・・・

 

 「でもまぁ、アルディもリムシィも良いヤツらだったよな」

 

 「そうだね。ちょっとビックリしちゃった」

 

 俺の言葉に頷くシルヴィ。

 

 「最初は擬形体として見てたけど・・・ななくんが言ったように心があるもんね。私達と変わらないなって思ったよ」

 

 「まぁ、アイツらが擬形体なのは事実だしな。ただ・・・アイツらに心がある以上、俺はアイツらを『人形』だの『兵器』だのとしては見れないわ」

 

 「フフッ、ななくんらしいね」

 

 シルヴィは笑うと、俺の手を握った。

 

 「とりあえず、色々見て回ろうよ。せっかく来たんだし」

 

 「おう、そうだな」

 

 シルヴィの手を握り返す俺なのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「ハァ・・・ここは来たくなかったのに・・・」

 

 「アハハ、まぁせっかくだし良いじゃない」

 

 溜め息をつく俺と、苦笑するシルヴィ。

 

 俺達はアルルカントの後、レヴォルフ黒学院へとやってきていた。黒いスーツを着た強面のオッサン達がたくさんいて、明らかにヤバい雰囲気が醸し出されている。

 

 「レヴォルフの学園祭は、毎年カジノをやってるの。表向きは学園主催だけど、ほとんど《歓楽街》の人達に丸投げしてるみたいだよ」

 

 「・・・まぁこの学園の生徒なんて、大体はイレーネみたいなヤンキーだろうしな。イベントに積極的なヤツなんて少ないだろ」

 

 「ヤンキーで悪かったな」

 

 「うおっ!?」

 

 いつの間にか、近くにイレーネが立っていた。

 

 「久しぶりだな、七瀬。よくここに来たもんだ」

 

 「無理矢理連れてこられたんだよ。俺はブタの顔なんざ見たくないってのに・・・」

 

 「心配しなくても、ディルクは顔を出したりしねぇよ。アイツこういうの嫌いだし」

 

 イレーネは笑ってそう言うと、シルヴィを見た。

 

 「アンタとは初めまして、だな。《戦律の魔女》」

 

 「・・・やっぱりバレてたか。流石に貴方クラスの人間は騙せないよね、《吸血暴姫》」

 

 溜め息をつくシルヴィ。

 

 「やっぱり七瀬と付き合ってたか・・・さっさと交際宣言しちまえよ」

 

 「まぁ、そのうちな・・・そういや、プリシラは一緒じゃないのか?」

 

 「あぁ、プリシラならあそこだ」

 

 イレーネが指差した方向に、大きめの露店が出ていた。そこには・・・

 

 「いらっしゃいませー!パエリアはいかがですかー?」

 

 可愛らしいエプロン姿のプリシラが、呼び込みをやっていた。その姿に、俺は思わず感動してしまう。

 

 「オ、オアシスだ・・・この薄汚いクソみたいな場所に、見てるだけで心が癒されるオアシスがある・・・!」

 

 「酷い言いようだなオイ・・・まぁ事実だから何も言えねぇけど」

 

 呆れているイレーネ。

 

 「まぁいいや・・・プリシラー!客だぞー!」

 

 「あ、お姉ちゃん・・・って七瀬さん!?」

 

 プリシラが慌てて駆け寄ってくる。

 

 「お久しぶりです!」

 

 「久しぶり。元気してた?」

 

 「はい!この通りです!」

 

 ニッコリ笑うプリシラ。何この子、天使?

 

 「ところで、そちらの方は?」

 

 「七瀬の女だよ」

 

 俺が答えるより前に、イレーネが答えてしまう。すると、プリシラの顔がみるみる赤くなっていった。

 

 「えぇっ!?ご、ごめんなさい!私ったらお邪魔しちゃって・・・!」

 

 「大丈夫だよ」

 

 シルヴィが笑いながら手を振る。

 

 「それより、私お腹空いちゃった。ななくん、パエリア食べて行こうよ」

 

 「そうだな。久々にプリシラのパエリア食べたいし。良いかな?」

 

 「も、勿論です!どうぞ!」

 

 プリシラに案内され、俺達は席へと座った。っていうか・・・

 

 「プリシラ・・・ひょっとして身体を鍛えてるのか?」

 

 「え!?分かるんですか!?」

 

 「何となくだけどな。体幹がしっかりしてるなって」

 

 以前とは足運びも違うし、それなりにトレーニングを積んでいる証拠だろう。

 

 俺の指摘に、プリシラが照れ笑いを浮かべる。

 

 「・・・あの時、強くなるって宣言しましたから。お姉ちゃんに色々と教えてもらいながら、毎日トレーニングしてるんです。とは言っても、お姉ちゃんや七瀬さんのレベルに比べたらまだまだですけど」

 

 「・・・そっか。焦って無理なトレーニングはしようとするなよ。プリシラは地道な努力が出来るヤツだから、少しずつでも継続していけばきっと強くなれる。自分を信じて、これからも頑張ってな」

 

 「はい!ありがとうございます!」

 

 「プリシラ、今度七瀬に組み手の相手をしてもらったらどうだ?アタシとだけじゃどうしても偏っちまうだろうし」

 

 イレーネがそんなことを言い出す。組み手かぁ・・・良いな。

 

 「ちょっとお姉ちゃん!?それは七瀬さんのご迷惑に・・・」

 

 「いや、全然良いよ。俺なんかで良いなら、喜んで相手になるけど」

 

 「本当ですか!?」

 

 「うおっ!?」

 

 ずいっと顔を近付けてくるプリシラ。目がキラキラしている。

 

 「実は私、お姉ちゃんと七瀬さんの身体の使い方を参考にしてるんです!だから七瀬さんに相手していただけるなら、とてもありがたいです!」

 

 「お、おう・・・じゃあ今度一緒にトレーニングするか」

 

 「よろしくお願いします!あ、急いでパエリア作ってきますね!」

 

 プリシラは大きく頭を下げると、パエリアを作りに厨房へとダッシュしていった。

 

 「・・・真っ直ぐな子だねぇ」

 

 その様子を見て、シルヴィが笑っていた。

 

 「ああいう子は強くなるよ。これからが楽しみだね」

 

 「だな。イレーネ、抜かされないように頑張れよ」

 

 「はんっ、そう簡単に抜かされてたまるかっての」

 

 ニヤリと笑うイレーネ。

 

 「まぁ姉としては、妹が強くなっていくのを見るのは嬉しくもあり・・・少し寂しくもあるけどな」

 

 「それは分かる」

 

 俺も八重達が力をつけていくのを見た時は、少し寂しさを感じたっけな・・・

 

 俺が守らなきゃなんて思ってたけど、そのうち俺の力なんて必要なくなる時が来るのかなって思ったりして・・・

 

 「あんなに小さかったのに、すっかり大きくなっちゃって・・・」

 

 「だよなぁ・・・時が経つのは早いもんだ・・・」

 

 「二人とも年寄りくさいよ・・・」

 

 俺達の様子を見て、溜め息をつくシルヴィなのだった。

 




どうも~、ムッティです。

シャノン「風邪は大丈夫なの?」

うん、普通に元気だよ。

咳が出て喉が痛くて鼻水と鼻詰まりが酷いけど元気だよ。

シャノン「いや、全然元気そうじゃないんだけど。風邪の症状のオンパレードなんだけど」

そうなんだけど、別に熱があるわけでもないのよね。

だから元気は元気なのよ。

シャノン「なるほど・・・読者の皆さんも風邪には気を付けてね」

ホントそれ。日中は暑いですが、朝晩は冷えるのでお気を付けて。

それではまた次回!以上、ムッティでした!

シャノン「またね~!」

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