・・・といっても、《獅鷲星武祭》には入りません。
その前の段階の話でございます。
それではいってみよー!
停学明け
「うぅ・・・緊張する・・・」
俺は教室の前で、入ることを躊躇していた。
今日が冬期休暇明け、そして停学明け初となる登校日だ。《鳳凰星武祭》ではあんなことになってしまった為、俺としてはクラスの皆から怖がられているのではないかという不安が拭えない。
だが、いつまでもここで立ってるわけにもいかないしな・・・よし。
「今日は帰ろう」
「待たんかいいいいいいいいいいっ!」
「ぐえっ!?」
踵を返した瞬間、勢いよく襟首を掴まれる。振り向くと、ユリスが鬼のような形相でこちらを見ていた。
「何で帰ろうとしているのだお前は!?今日が復帰初日だろうが!」
「体調不良なので休みます」
「嘘つけ!」
「七瀬、大丈夫だって」
ユリスの後ろで、綾斗が苦笑していた。
「皆ずっと七瀬の帰りを待ってたんだから。そんなに心配する必要ないよ」
「嘘だ!この扉を開けたら、『おめーの席ねぇから!』とか言って俺の机と椅子が窓の外に投げ捨てられるんだろ!」
「どこのラ●フ!?どんだけ疑心暗鬼になってんの!?」
「ほら、いいから早く入るぞ!」
「はーなーせーっ!」
ユリスに引きずられるようにして教室へ入る。すると・・・
「「「「「「「「「「七瀬っ!復帰おめでとうっ!」」」」」」」」」」
「・・・え?」
クラスメイト達の声とともに、クラッカーの音が次々と鳴り響く。思いがけない出来事に、俺は呆然としてしまった。
「み、皆・・・?」
「お、ななっち驚いてるねー!」
笑いながらこちらへやってきたのは、シャノンだった。
「っていうか来るの遅いよ!早く来て待ってたのに!」
「待ってた・・・?俺を・・・?」
「当たり前じゃん!七瀬の復帰初日だよ?」
凛香が笑みを浮かべながら肩を叩いてくる。
「この日が来るのを、皆待ってたんだから。やっぱり七瀬がいないとつまんないしさ」
「そうだぞ七瀬!」
「七瀬くんお帰り!」
「《鳳凰星武祭》観てたぞ!惜しかったな!」
「《獅鷲星武祭》も出るんでしょ!?応援してるからね!」
温かい言葉をかけてくれるクラスメイト達。お前ら・・・
「ハハッ、どうだ七瀬?俺達からのサプライズは?」
夜吹が笑いながら肩を叩いてくる。
「わざわざクラッカーまで用意したんだぜ?ビックリしただろ?」
「・・・誰だっけ?」
「嘘だろオイ!?夜吹英士朗だよっ!」
「あぁ、マスゴミの」
「そういう覚え方されてんの!?」
爆笑しているクラスメイト達。あぁ、この感じ・・・懐かしいな。
「だから大丈夫だって言っただろう?」
綾斗も笑っている。
「七瀬のこと、皆待ってたんだよ?」
「そうだぞ七瀬」
頭を撫でてくるユリス。
「お前はもう少し、クラスメイトを信用しろ」
「え、お姫様がそれを言っちゃうの?」
「どういう意味だシャノン!?」
「ずっと周りに冷たい態度をとってたの、何処の誰だっけなぁ・・・」
「うぐっ!?」
言葉に詰まるユリス。あー、そういやそうだったな・・・
「前はお姫様もツンツンしてたっけなぁ・・・」
「俺達に対しては今もツンツンだけどな」
「だね。七瀬にはデレデレだけど」
「だ、誰がデレデレだっ!」
凛香と夜吹の会話に、ユリスが赤面している。その時・・・
「お前ら席つけー」
懐かしい声が聞こえる。振り向くと、谷津崎先生がやってきていた。
相変わらず釘バットを持ち、威圧感たっぷりのオーラだ。
「おう、星野か。今日から復帰か?」
「え、えぇ・・・ご迷惑をおかけしました」
「ふん、全くだ。四ヶ月も停学くらいやがって」
鼻を鳴らす先生。
「でも、まぁ・・・よく帰ってきたな」
「っ・・・」
頭をポンッと軽く叩かれる。先生・・・
「さぁ、座った座った!ホームルーム始めんぞ!」
「「「「「「「「「「はーい!」」」」」」」」」」
皆それぞれ席に戻っていく。あっ・・・
「み、皆!」
俺の声に、皆がこちらを見る。
「えっと、その・・・ありがとう。またよろしくな」
精一杯の感謝の言葉を口にする俺。すると・・・
「おう!よろしく!」
「よろしくね!」
笑ってそう返してくれるクラスメイト達。
「おら星野、早く席着け。自分の席、忘れちゃいないだろうな?」
「・・・勿論です」
涙ぐみそうなのを堪え、自分の席に着く。
皆、本当にありがとう・・・
「よーし、んじゃあ全員揃ったところで・・・ってオイ、沙々宮はどうした?」
「「「「「「「「「「あっ・・・」」」」」」」」」」
この後寝坊して遅刻した紗夜が、谷津崎先生にこってり絞られたのは言うまでもない。
*****
「あ、頭が・・・」
呻きながら床に突っ伏す紗夜。放課後、俺達はクローディア専用のトレーニングルームへと集まっていた。
「よっぽど痛いんだな、谷津崎先生の拳骨って・・・」
「あれを見ると、できることなら食らいたくないよね・・・」
「紗夜は何故懲りずに寝坊するのだ・・・」
「ア、 アハハ・・・」
そんな会話をしていると、クローディアがパンッと手を叩いた。
「さて、私達はこのメンバーで《獅鷲星武祭》へと臨むわけですが・・・まずは重要なことを決めましょう」
「重要なこと?」
「えぇ、チーム名です」
「・・・それは重要なのか?」
呆れているユリス。いやいやいや・・・
「チーム名は重要だろ。全世界にその名前で紹介されるんだぞ?」
「それはそうだが・・・何でも良くないか?」
「おっ、言ったな?じゃあチーム名は、『ツンデレ姫と愉快な仲間達』で・・・」
「私が悪かったっ!ちゃんとしたチーム名を考えようっ!」
ユリスもチーム名の重要性を分かってくれたところで・・・
「じゃあ・・・『ロリ巨乳と一緒に頑張り隊』とか?」
「私のことですよねそれ!?誰がロリですかっ!」
「あ、巨乳はいいんだ・・・じゃあ『寝坊したっていいん会』は?」
「勘弁してくれ七瀬・・・谷津崎先生に殺される・・・」
「じゃあ寝坊すんなよ・・・んー、『腹黒女とその手駒達』?」
「七瀬は私を何だと思ってるんですか・・・」
俺の意見が全て却下される。何故だ。
「ちなみにだけどクローディア、チーム名が未登録の場合はどうなるんだ?」
「その場合は、代表者の名前がチーム名になります。田中さんが代表者なら、チーム・田中といった感じですね」
「じゃあ、チーム・エンフィールドで良くね?代表はクローディアだし、『エンフィールド』ってカッコいいし」
「それもそうだね」
「一番無難だろうな」
「私もそれで良いと思います」
「異議なし」
綾斗達が賛成してくれる。よし、決まりだな。
「ところでクローディア、一つ聞いておきたいことがある」
真剣な表情でそう切り出すユリス。
「何でしょう?」
「お前の願いとは何なのだ?銀河を敵に回すほどの願いなのだろう?」
「・・・そうですね。少し話しておきましょうか」
溜め息をつくクローディア。
「私の願いは・・・現在拘留されているラディスラフ・バルトシーク教授から、話を聞くことです」
「ラディスラフ・バルトシーク教授って・・・え、あの人って今捕まってんの!?」
驚く俺。マジか・・・
「七瀬さん、その方のことをご存知なんですか?」
「あぁ、煌式武装や純星煌式武装の開発研究で有名な科学者だよ。前に純星煌式武装について調べていた時、教授の書いた純星煌式武装に関しての論文を読んだことがあってさ。行方不明って聞いてたけど、まさか捕まってるなんて・・・」
「えぇ、本来なら面会すら難しいのです。何故なら教授は・・・《翡翠の黄昏》を起こした犯行グループの、思想的指導者と目されている方なので」
「・・・嘘だろオイ」
唖然としてしまう俺。それってつまり・・・
「《翡翠の黄昏》の黒幕ってことかよ・・・」
「えぇ。彼は以前、星導館の大学部で教鞭をとっていました。つまり星導館の関係者なんですよ。だからこそ、彼は行方不明という扱いになりました」
「なるほど・・・つまり銀河は事実を公にしたくないから、お前を狙ってんのか?」
「フフッ、かもしれませんね」
はぐらかすように笑うクローディア。まだ他に理由があるってことか・・・?
「それでクローディアは、その人と会って何を聞くつもりなの?」
「それはお答えできません。皆さんに危険が及ぶ可能性がありますので」
綾斗の質問に、首を横に振るクローディア。
「ですが、一つだけ言っておくと・・・この《パン=ドラ》を作ったのは教授です」
そう言って、《パン=ドラ》を取り出すクローディア。これを教授が・・・
「《パン=ドラ》の能力は未来視・・・今現在私が予知できるのは、三百秒ほどです」
「・・・最早チート」
呆れている紗夜。まぁ確かに、五分も未来予知できるならチートだけど・・・
「・・・その三百秒っていうのは、ストックなんじゃないか?」
「ストック?」
「要は使い切り・・・無限に使えるわけじゃないってことさ」
「ご名答です」
クローディアが拍手してくれる。
「だからこそ私は、なるべくストックを温存してきました。ストックが尽きてしまったら、この子はただの双剣ですから」
「なるほどな・・・そのストックは、使わなきゃ徐々に増えていくのか?」
「えぇ、三日で一秒といったところです」
「ッ!?」
三日で・・・たったの一秒・・・?
「・・・ふざけんなよ」
「七瀬さん?」
「どうしたの?」
綺凛と綾斗が訝しげに尋ねてくる。俺の中で、怒りがふつふつと湧いてきていた。
「クローディアにあんなに辛い思いさせといて・・・それだけなのかよ・・・」
《パン=ドラ》を睨みつける俺。怒りに身体を震わせていると・・・
「・・・大丈夫ですよ」
クローディアが《パン=ドラ》をしまい、俺を優しく抱き締めてくる。
「私は大丈夫ですから・・・落ち着いて下さい、七瀬」
その温もりに、段々と気持ちが落ち着いていく。
「・・・ゴメン。ちょっと冷静じゃなかった」
「フフッ、落ち着いたようですね」
俺から離れるクローディア。
「・・・ありがとうございます。私の為に怒ってくださって」
「七瀬、クローディア、どういうことだ?」
「説明求む」
ユリスと紗夜が尋ねてくる。
「《パン=ドラ》の代償は、『いつか来る自分の死を夢の中で体験すること』なんです」
「「「「ッ!?」」」」
息を呑む皆。
「そ、それはあまりにも酷すぎじゃ・・・」
「・・・惨い」
今にも泣きそうな綺凛と紗夜。口元を手で押さえている。
「強力な能力には、大きな代償が必要ということか・・・」
「でも、それにしたって・・・」
ユリスと綾斗も沈痛な面持ちをしていた。だが、クローディアは・・・
「ご心配ありがとうございます。ですが、私は大丈夫です」
穏やかに微笑んでいた。皆が心配してくれたことが、嬉しいんだろうな・・・
「願いを叶える為なら、私はどんなことにでも耐えられますから」
「クローディア・・・」
そこまでして叶えたい願い・・・教授に聞きたいことって、一体何なんだろう・・・
「さて、では今後のスケジュールを確認しておきましょう」
クローディアが真剣な表情になる。
「今年度内・・・あと三ヶ月程度は、個々の連携強化に努めましょう。まずはどのメンバーともタッグとして連携がとれるようにならないと、チームとして動くことは難しいですからね。その後状況を見て、チーム戦の練習をスタートさせたいと思います」
「個々の連携か・・・」
綺凛以外とタッグを組んだことがないからな・・・ユリス達ともしっかり連携がとれるようにならないと。
「ではそれぞれタッグを組んで、模擬戦をやりましょうか。まずは・・・」
こうして俺達の訓練が始まり、時間が過ぎていくのだった。
どうも~、ムッティです。
シャノン「私の出番キターッ!」
ついでに凛香も出してみました。
シャノン「正直、凛香のこと覚えてる人いるのかな?」
凛香「酷いな!?皆、私のこと覚えてるよね!?」
あれでしょ?ツンデレスナイパーの・・・
凛香「それ暗●教室の速●凛香だから!」
シャノン「凛香は私と同じで、アスタリスクのゲームのキャラクターなんだよね」
凛香「そうそう!この作品では、《鳳凰星武祭》でシャノンのタッグパートナーとして戦ってるよ!」
なお、イレーネに負けてから出番が皆無だった模様。
凛香「それはアンタのせいでしょうが!」
さて、前書きでも述べましたが・・・
この章では《獅鷲星武祭》に入りません。
《学園祭》の話がメインになりますのでお楽しみに。
それではまた次回!以上、ムッティでした!
シャノン「またね~!」
凛香「私の出番を増やせえええええっ!」