学戦都市アスタリスク ~六花の星野七瀬~   作:ムッティ

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第六章《故郷帰省》編、ここに完結ッ!


大切

 「お世話になりました」

 

 万理華さんに頭を下げるシルヴィ。

 

 結局俺達は、休暇が終わる前日まで滞在していた。一織姉・二葉姉・三咲姉・四糸乃姉・五和姉・六月姉・ユリスは、先にアスタリスクへと戻った。

 

 本当はユリスも一緒に戻る予定だったのだが、『彼女と二人でゆっくり戻ってこい』とのことで、四糸乃姉と一緒に一足先に戻ってしまったのだ。

 

 どうやら気を遣わせてしまったみたいだな・・・

 

 「またいつでも来い。待ってるからな」

 

 微笑む万理華さん。あれから傷も癒え、すっかり元気になっていた。

 

 一方・・・

 

 「うぅ・・・お兄ちゃん・・・」

 

 十萌は泣きそうな顔で俺に抱きついていた。

 

 恥ずかしがりやの十萌が、人前で俺に抱きつくとは・・・よっぽど寂しがってくれてるんだな。

 

 「そんな顔すんなって。また帰ってくるから」

 

 俺は笑いながら十萌の頭を撫でた。

 

 「ってか、アスタリスクまで遊びに来いよ。いつでも大歓迎だから」

 

 「聞いたか十萌?これで気兼ねなく遊びに行けるな!」

 

 「あ、万理華さんは却下で」

 

 「何故だ!?」

 

 「酔っ払いの相手が面倒。以上」

 

 「うぅ・・・私にだけ冷たい件について・・・」

 

 「アハハ・・」

 

 苦笑する十萌。と・・・

 

 「七瀬お兄様、今度はアスタリスクでお会いしましょう」

 

 「すぐにそちらへ行きますからね!」

 

 笑顔の八重と九美。

 

 二人は三月で中学を卒業し、四月からアスタリスクへ来ることが決まっている。八重は界龍、九美はクインヴェールに内定しているそうだ。

 

 「おう。それにしても界龍かぁ・・・八重、ドンマイ」

 

 「え、何でですか!?」

 

 「あそこには戦闘狂、もしくは性格の悪いヤツしかいないから」

 

 「・・・急に行きたくなくなってきました」

 

 「まぁとりあえず、困ったら虎峰を頼れ。アイツは信頼できるヤツだし、話もしっかり通しておくから」

 

 「了解です。ありがとうございます」

 

 恐らく星露のことだから、俺の妹である八重を放ってはおかないだろうな・・・

 

 戻ったら釘を刺しておかないと。

 

 「九美ちゃん、楽しみにしてるからね」

 

 「はい!四月からお世話になります!」

 

 シルヴィにぺこりと頭を下げる九美。クインヴェールにはシルヴィや四糸乃姉もいるから、とりあえず大丈夫そうかな。

 

 「そういや、十萌はどこの学園を志望してるんだ?」

 

 「星導館だよ」

 

 笑顔で答える十萌。

 

 「私には、一番合ってる学園かなって。それに・・・」

 

 「それに・・・?」

 

 「・・・お兄ちゃんと一緒の学園に通いたいから」

 

 「十萌、今すぐ星導館に行こう。クローディアに頼んで今すぐ入学させてもらうから」

 

 「落ち着けシスコン」

 

 万理華さんがチョップしてくる。

 

 「そもそも十萌がいなくなったら私が困る。誰がご飯を作ってくれるんだ」

 

 「いや、自分で作ってよ」

 

 十萌のツッコミ。俺はひとしきり笑うと、皆を見回した。

 

 「それじゃ、行ってくる」

 

 「あぁ、行ってこい」

 

 「行ってらっしゃいませ!」

 

 「お気をつけて!」

 

 「連絡ちょうだいね!」

 

 万理華さん・八重・九美・十萌に見送られ、俺とシルヴィはアスタリスクへと・・・

 

 

 

 「あ、忘れ物」

 

 

 

 「「「「「ええええええええええっ!?」」」」」

 

 皆が揃ってずっこける。

 

 「ちょ、おま・・・何か色々と台無しだぞ!?」

 

 「ゴメンゴメン」

 

 俺は笑いながら謝ると・・・そのまま万理華さんを抱き締めた。

 

 「な、七瀬・・・?」

 

 「肝心なこと、ちゃんと言ってなかったなって思って」

 

 「肝心なこと・・・?」

 

 「・・・産んでくれてありがとう」

 

 「っ・・・」

 

 思い返してみると、俺を産んだのが万理華さんだと分かってから・・・ちゃんとこの言葉を伝えていなかったことに気付いたのだ。

 

 「万理華さんが俺を産んでくれたから・・・俺は家族に、仲間に、恋人に恵まれた。だから・・・本当にありがとう。俺は今、最高に幸せだよ」

 

 「・・・バカ。何でこのタイミングで・・・」

 

 万理華さんの目から涙が溢れる。

 

 「あぁ、もう・・・歳はとるもんじゃないな・・・涙腺が緩くて仕方ない・・・」

 

 「・・・身体は大事にしろよ。万理華さん一人の身体じゃないんだから」

 

 「あぁ・・・分かってるさ」

 

 抱き締め返してくる万理華さん。

 

 「七瀬こそ、身体に気を付けてな・・・《獅鷲星武祭》、応援してるぞ」

 

 「あぁ、優勝してみせるよ・・・仲間達と一緒に」

 

 俺は万理華さんから離れ、拳を突き出した。

 

 「じゃあ・・・行ってくる」

 

 「あぁ・・・行ってこい!」

 

 万理華さんと拳を合わせ、俺は今度こそアスタリスクへの道を歩き出した。

 

 「八重ー!九美ー!待ってるからなー!十萌ー!万理華さんをよろしくなー!」

 

 「はい!またアスタリスクで!」

 

 「絶対会いに行きますからね!」

 

 「万理華さんのことは任せて!」

 

 八重・九美・十萌が笑顔で手を振ってくれる。俺とシルヴィは、同じように笑顔で手を振り返すのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「ななくん、コーヒー買ってきたよ」

 

 「お、サンキュー」

 

 帰りのフェリーの中で、俺はシルヴィとまったり過ごしていた。先程の船内放送によると、あと一時間ほどでアスタリスクに到着するそうだ。

 

 「・・・ありがとな、シルヴィ」

 

 「え、何が?」

 

 「ユリスから聞いたよ。俺が部屋から出て行った後、皆に『これで良いのか』って問いかけてくれたって」

 

 「あー、そのことね」

 

 苦笑するシルヴィ。

 

 「私が発言しなくても、きっと皆は同じ結論を出したと思う。だってななくん、とっても愛されてるもん」

 

 「・・・それは改めて感じたよ」

 

 皆で抱き合いながら泣いたあの日・・・俺は改めて、家族の絆を感じることができた。

 

 だからこそ、独りよがりになるのをやめたんだけどな。

 

 「・・・あれから、皆で話し合ったんだ。零香姉のこと」

 

 「・・・うん」

 

 「やっぱり、どんな罪を犯したとしても・・・零香姉は家族だから。俺達で捕まえて、罪を償わせようっていう結論になった」

 

 「・・・そっか」

 

 「まぁ、言うほど簡単じゃないけどな・・・」

 

 溜め息をつく俺。

 

 「恐らく零香姉は、何かを企んでるんだと思う。だからこそ、俺を勧誘にきたんじゃないかな・・・お仲間もいるようだし」

 

 「ウルスラ・・・今は『ヴァルダ』だっけ?零香さんはそう呼んでたんでしょ?」

 

 「あぁ、恐らくそれが純星煌式武装の名前だと思う。ただ、そんな名前の純星煌式武装に聞き覚えがないんだよな・・・」

 

 純星煌式武装に関しては、《神の拳》のこともあって色々と調べたが・・・人体を乗っ取って日常生活を送る純星煌式武装など、聞いたことがない。

 

 「それにヴァルダは、オーフェリアの名前を出していた。あの《孤毒の魔女》が仲間だとするなら・・・厄介なんてもんじゃない」

 

 「一体何を企んでるんだろう・・・よく分からないけど、嫌な予感がする・・・」

 

 「・・・俺もだ」

 

 ただ、次に零香姉が現れたら・・・力ずくで捕まえる。それだけだ。

 

 「まぁとりあえず、今は《獅鷲星武祭》に集中しないと・・・強敵揃いだしな」

 

 「《獅鷲星武祭》かぁ・・・ルサールカは出場するはずだから、シノンと戦うことになるかもしれないね」

 

 「だよなぁ・・・ガラードワースからは、ランスロットとトリスタンも出てくるだろうし・・・四糸乃姉だけじゃなくて、三咲姉達まで相手にすることになるかもな」

 

 「だね。ひょっとすると、八重ちゃんや九美ちゃんも参加するかもよ?」

 

 「それは勘弁してほしいなぁ・・・」

 

 あまり家族同士で戦いたくないんだけど・・・と、シルヴィが面白そうに笑っていた。

 

 「どうした?」

 

 「いや、何て言うか・・・ななくんがどれほど家族を大切に思ってるか、表情を見てると分かりやすいなって思ってさ」

 

 「・・・勘弁してくれ」

 

 全く・・・すぐからかおうとするもんな、コイツは・・・

 

 「・・・心配しなくても、シルヴィのことも大切に思ってるよ」

 

 「フフッ、心配なんかしてないよ」

 

 俺の手を握り、肩に寄りかかってくるシルヴィ。

 

 「・・・ちゃんと分かってるから。私だって、ななくんのこと大切に思ってるし」

 

 「・・・あぁ、分かってるよ」

 

 シルヴィの手を握り返す。こうしてると、何だか安心するな・・・

 

 「・・・ゴメン、ちょっと眠くなってきたわ」

 

 「アハハ、実は私も・・・ちょっと寝よっか?」

 

 「だな・・・おやすみ・・・」

 

 「おやすみ・・・ふあぁ・・・」

 

 俺とシルヴィは身体を寄せ合い、手を握りあったまま眠りについたのだった。

 

 お互いの温もりを感じ、安らかな寝息を立てながら・・・

 




三話連続投稿となります。

シャノン「次回からは新章?」

そうそう。ただ、次の投稿は来週の半ばになりそう。

シャノン「え、ストック尽きた!?」

いや、ストックはあるんだけど。

ちょっと忙しくなるから。

シャノン「あ、なるほど・・・」

これからも頑張って投稿していきますので、よろしくお願い致します!

それではまた次回!以上、ムッティでした!

シャノン「またね~!」

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