一瞬自分の目を疑いました(笑)
皆さん、本当にありがとうございます!
それではいってみよー!
「この方も姉上なのだな?」
ユリスはそう言うと、挨拶をしようと一歩前へ踏み出した。
「初めまして。私はユリス・・・」
「下がってろユリス」
俺はユリスを手で制する。一方、ユリスは怪訝そうな表情を浮かべていた。
「どうした七瀬?何故そんな怖い表情を・・・」
「ユリスちゃん」
四糸乃姉がユリスを後ろへ下がらせる。いつもの優しい表情は消え、険しい表情となっていた。
それを見た女性が寂しげに笑う。
「四糸乃・・・貴方までそんな顔をするのね」
「・・・笑顔でいられるわけないでしょ?」
女性を睨みつける四糸乃姉。
「あの時のこと・・・忘れたなんて言わせないよ?」
「おい、そろそろ説明してくれないか」
話についていけず、困惑しているユリス。
「その女性は、七瀬達の姉上でいいのか?」
「えぇ、そうよ」
俺達が答える前に、女性が微笑みながら頷く。
「初めまして、《華焔の魔女》さん。私の名前は星野零香・・・星野家の長女よ」
「長女・・・?長女は一織さんではなかったのか・・・?」
「・・・一織姉は次女だよ」
女性・・・零香姉から目を逸らさず、俺は続きを説明した。
「俺達の名前には、必ず数字が入ってるだろ?だから『一』が付いてる一織姉が長女だと思われがちなんだけど・・・俺達の場合、『一』の前に『零』がいるんだよ。それがこの人・・・零香姉ってわけさ」
「なるほど・・・それで?何故そこまでこの人を警戒するのだ?」
「その女がとんでもない罪を犯したからよ」
背後から一織姉の声がした。後ろを振り向くと・・・
「・・・何で姉さん達がここに?」
一織姉だけじゃない。二葉姉、三咲姉、五和姉、六月姉・・・
零香姉と四糸乃姉を含めて、俺の姉さん達が勢揃いである。
「年も明けたし、皆で改めてお墓参りしようってことになってね」
二葉姉が説明してくれる。
「万理華さん達は家に残って、夕飯の準備をしてくれてるわ。七瀬達が帰って来たら、一緒に来てくれる予定だったの。それで私達だけ、一足先にここへ来てみたら・・・」
「まさかこの女がいるとは・・・」
三咲姉が、鋭い眼差しで零香姉を睨んでいた。
「何をしに来たのですか?」
「顔が怖いわよ、三咲」
溜め息をつく零香姉。
「全く・・・私もずいぶん嫌われたものね」
「嫌い?それはちょっと違うかな」
五和姉の全身から、とてつもない殺気が溢れ出ていた。
「私達はアンタが嫌いなんじゃない・・・憎いんだよ」
「首肯。その通りです」
同じく六月姉も、殺気を出しながらレイピアを構えていた。
「少なくとも・・・今この場で斬り殺したいくらいには憎いです」
「ちょ、ちょっと待って下さい!」
殺伐とした空気に、ユリスが慌てふためいている。
「皆さんは家族でしょう!?何故自分達の家族を目の敵にしているのですか!?」
「言ったでしょう。その女がとんでもない罪を犯したからよ」
淡々と述べる一織姉。いつもと違い、とてつもなく冷たい目で零香姉を睨んでいた。
「と、とんでもない罪・・・?」
「えぇ、そうよ」
頷く一織姉。
「その女は、私達にとって家族なんかじゃない・・・親の仇なのよ」
「・・・は?」
唖然としているユリス。
「そ、それはどういう・・・」
「・・・言葉通りの意味だよ」
俺はユリスに事実を告げた。
「父さんと母さんは殺されたんだ・・・零香姉にな」
辺りが静寂に包まれる。重苦しい雰囲気が、この場を支配していた。
「こ、殺された・・・だと・・・?」
ユリスが信じられないといった表情で零香姉を見る。
「この人が・・・殺した・・・?」
「・・・えぇ、そうよ」
瞑目する零香姉。
「私は・・・父さんと母さんを・・・この手にかけたの」
「「ッ!」」
もう我慢できなかったのか、五和姉と六月姉が同時に飛び出す。
だが・・・
「止めろ」
俺が両手から雷を放ち、二人の行く手を阻んだ。
「っ!?七瀬!?」
「何故邪魔をするのですか!?」
「・・・俺に勝てない二人が、零香姉に勝てるわけないだろ」
冷たく言い放つ俺。
「相手との力量差が分からないほど、五和姉と六月姉も鈍くないよな?」
その言葉に何も言えなくなる二人。
久しぶりに会って、二人とも分かったはずだ。二人がかりで挑んでも、今の俺には勝てないということが。
そして今の零香姉の力量は・・・俺よりも上だ。
「へぇ・・・《魔術師》の力、上手く使いこなしているじゃない」
感心している零香姉。
「界龍での修行は、相当に有意義だったみたいね」
「まぁな」
俺は素っ気無くそう返すと、零香姉を睨んだ。
「それより・・・何しに来た?殺人事件の容疑者として指名手配されてるってこと、忘れたわけじゃないよな?」
「勿論。私がここに来た理由はね・・・」
零香姉が俺を見た。
「七瀬・・・貴方に会う為よ」
「・・・理由は?」
「あら、弟に会いに来るのに理由が要るのかしら?」
悪戯っぽく笑う零香姉。俺は手を前に突き出し、すぐに雷を放てるようにした。
「くだらない戯言は要らない。もう一度聞くけど・・・理由は?」
「勧誘よ」
笑みを消し、真剣な表情になる零香姉。
「七瀬、貴方・・・私と一緒に来ない?」
「ふざけるなッ!」
俺が何かを言う前に、三咲姉が激昂する。
「貴方は自分が何を言ってるか分かってるんですか!?」
「当然じゃない。何か問題でもあるのかしら?」
「大アリよッ!」
二葉姉が声を荒げた。
「封印されていた《神の拳》を七瀬に与えたのはアンタでしょ!?そのせいで七瀬がどれほど苦しんできたと思ってんのよッ!」
そう、俺が《神の拳》を手にすることになったキッカケ・・・
それこそが、目の前にいる零香姉なのだ。
「それが今になって一緒に来いですって!?ふざけるのも大概にしなさいッ!」
怒りで震えている一織姉。そんな姉さん達の様子を見て、零香姉が嘆息する。
「貴方達、ずいぶん七瀬を大事にしているのね・・・その割には七瀬が苦しんでいた時に、何の力にもなれてなかった気がするんだけど?」
その言葉に、姉さん達の表情が歪む。零香姉はさらに続けた。
「七瀬が《鳳凰星武祭》で暴走した時もそう・・・一織と二葉は七瀬を止められず、三咲も四糸乃も見てるだけだった。五和と六月なんて、純星煌式武装に頼ってまで七瀬に勝とうとするし・・・特に五和は、七瀬を痛ぶった挙句ずいぶん酷いこと言ってたわよね?臆病者だの何だのって」
拳を握りしめたまま、何も言えなくなる姉さん達。特に五和姉は、血が滲むほど強く唇を噛んでいた。
「そんな情けない貴方達に、七瀬のことをどうこう言う資格があるとは思えないわ。正直に言って、貴方達に七瀬は任せられない」
「そんなのお前も同じだ」
別の声が割り込んでくる。振り向くと、万理華さんが立っていた。
「万理華さん・・・」
「七瀬・・・無事で良かった」
俺の頭を撫でた万理華さんは、零香姉を睨みつけた。
「久しぶりね、万理華さん。夕飯の支度は良いのかしら?」
「八重達に任せてきた。七瀬達の帰りが遅いから、様子を見に来たんだが・・・まさかお前がいるとはな」
俺の前に立つ万理華さん。
「七瀬は渡さん。お前は一織達に、七瀬のことを任せられないと言ったが・・・私としてはむしろ、お前にだけは七瀬のことを任せられない。七瀬を苦しめて放置した挙句、千里と百愛を手にかけたお前を・・・私は絶対に許さない」
「・・・許さない、ですって?」
その瞬間・・・零香姉の身体から、とてつもないプレッシャーが放たれる。
このプレッシャーのレベルは・・・
「バカな・・・オーフェリアクラスだと・・・?」
震えているユリス。そう、アスタリスク最強の《魔女》である《孤毒の魔女》クラスのプレッシャーだった。
これほどまでの強さなのか・・・ッ!
「・・・許さないのは私の方よ、万理華さん」
「何・・・?」
最大限に警戒しながら、万理華さんが聞き返す。
「私が何も知らないとでも思ったの?私には・・・父さんとも母さんとも、血の繋がりが無いのよね?」
「なっ・・・」
言葉を失う万理華さん。
えっ・・・今何て・・・
「私は皆と血が繋がっていない・・・たった一人を除いて」
零香姉の視線の先には・・・俺がいたのだった。
「私と七瀬は・・・父さんと母さんの本当の子供じゃないのよ」
どうも~、ムッティです。
シャノン「ねぇ作者っち、何か流れがシリアスなんだけど・・・」
いやー・・・どうしよう。
シャノン「これ書いてるの作者っちだよねぇ!?」
七瀬の両親が亡くなっている設定は、執筆を始めた当初から決めてたのよ。
何者かの手によって殺された、という設定も決めてました。
そこで登場させたのが零香なんだよね。
シャノン「しかも零香さんとななっちは、本当は星野家の子供じゃなかったと・・・」
この設定はちょっと悩んだけどねー。
正直、風呂敷を広げすぎた感は否めない・・・
とりあえず今後の展開を見守ってほしいと思います。
それではまた次回!以上、ムッティでした!
シャノン「またね~!」