学戦都市アスタリスク ~六花の星野七瀬~   作:ムッティ

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藍井エイルさんの曲を、ヘビロテして聴く今日この頃・・・


第二章《姫焔襲撃》
パートナー


 星導館に入学して、早くも二ヶ月が経とうとしていた。

 

 俺は相変わらず、序列九位のままだ。いや、維持しているというべきか。序列上位者には挑まず、公式序列戦の挑戦者には勝っているといった状況だ。《冒頭の十二人》の座に執着は無いが、戦いに負けるのは癪に障るからな。

 

 そんなこんなで、今日も平和な朝を・・・

 

 「夜吹いいいいいッ!」

 

 「助けてえええええっ!」

 

 迎えられなかった。登校してくると、何故か夜吹がユリスに追い掛け回されていた。

 

 夜吹の奴、今日は早めに登校するとか言ってたけど・・・何をやらかしたんだ?

 

 「あ、ななっち!おはよー!」

 

 クラスメイトの一人、シャノン・ソールズベリーが挨拶してくれる。俺とユリスの関係に興味津々だった、あの赤髪の女の子である。

 

 「おはようシャノン。何があったんだ?」

 

 「んー、夜吹くんの自業自得だね」

 

 苦笑するシャノン。

 

 「夜吹くん、また学内新聞でお姫様の記事を書いたんだよ。それがお姫様の不興を買っちゃったの」

 

 「どんな記事なんだ?」

 

 「これだよ」

 

 シャノンが空間ウィンドウを開く。そこには・・・

 

 『丸くなった《華焔の魔女》、これも《覇王》との愛の影響か!?』

 

 なるほど、こりゃユリスも怒るわ・・・ちなみに《覇王》とは、いつの間にか付いていた俺の二つ名である。

 

 ってか夜吹の奴、余計なこと書きやがって・・・

 

 「・・・シャノン、残念なお知らせだ。今日限りでクラスメイトが一人この世を去る」

 

 「それ絶対夜吹くんのことだよね!?」

 

 「さて、消すか・・・」

 

 「止めたげてよぉ!」

 

 シャノンが必死で俺を止めようとしている中、夜吹はユリスに追い詰められていた。

 

 「・・・夜吹、覚悟はいいな?」

 

 「ま、待ってくれ!これに訳があるんだ!」

 

 「訳だと?」

 

 怒り心頭のユリスに、夜吹が必死で言い訳していた。

 

 「俺はただ、お姫様が七瀬と出会ってから変わったって書いただけなんだよ!でも部長が『面白みに欠けるわね』とか言い出して、見出しと内容をいじったんだ!これは俺のせいじゃない!」

 

 「・・・その部長とやら、ろくな奴じゃないな」

 

 「ごもっとも」

 

 苦笑する夜吹。

 

 「これで分かってくれたか?俺は何も悪く・・・」

 

 「いや、お前が悪い」

 

 「何で!?」

 

 「そもそも二ヶ月前、私と七瀬が恋人だという嘘の記事を書いたのはお前だ!お前に非があるだろう!」

 

 「うっ・・・」

 

 言葉に詰まる夜吹。一方、ユリスは身体から炎を迸らせていた。

 

 「さて・・・覚悟はいいな?」

 

 「ヒィッ!?」

 

 「・・・うるさい」

 

 机に突っ伏して寝ていた紗夜が、むくりと起き上がった。

 

 あ、ヤバい・・・睡眠を妨害された時の紗夜は、メッチャ機嫌が悪くなるんだよな・・・

 

 「・・・三十八式煌型擲弾銃ヘルネクラウム」

 

 自分より巨大な銃を展開し、ユリスと夜吹に銃口を向ける紗夜。星辰力が急速に高まっていき、マナダイトが輝きを増す。

 

 「マズい!?シャノン、逃げるぞ!」

 

 「え・・・きゃっ!?」

 

 シャノンを抱えて教室を飛び出す。その瞬間、耳をつんざくような轟音が響き渡った。

 

 あー、やっちゃった・・・

 

 「・・・クラスメイト、何人いなくなったかな」

 

 「怖いこと言わないでよ!?」

 

 シャノンのツッコミ。結局クラスメイト達は無事だったが、主犯の紗夜と元凶のユリス&夜吹は谷津崎先生の怒りを買い、無事では済まなかったのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「全く・・・今日は酷い目に遭った・・・」

 

 「お疲れ」

 

 肩を落とすユリスに、苦笑しながら労いの言葉をかける俺。授業も終わり、俺達は寮へ帰る途中である。

 

 「おのれ夜吹、沙々宮・・・許さんぞ」

 

 「まぁまぁ、そう怒んなって」

 

 「ハッ、相変わらずだな」

 

 そんな声が聞こえる。振り向くと、レスターが呆れ顔で立っていた。後ろには、ランディとサイラスもいる。

 

 「おぉ、レスターじゃん!聞いたぞ、もうすぐ《冒頭の十二人》復帰だって?」

 

 「あぁ、ようやく序列十七位まできたぜ」

 

 俺との決闘に負けたレスターは、《冒頭の十二人》から一気に序列外となった。

 

 だが、そんなことで凹むレスターではない。決闘や公式序列戦を利用し、遂に序列十七位となったらしい。

 

 凄いな・・・

 

 「今月の公式序列戦で《冒頭の十二人》に挑戦するつもりだ」

 

 「そうか・・・私を指名できない以上、七瀬を指名するつもりか?」

 

 ユリスの質問に、レスターは首を横に振った。

 

 「いや、七瀬は指名しねぇ。戦うなら同じ土俵に立ってから・・・《冒頭の十二人》に返り咲いてからだ」

 

 「そっか・・・次に戦えるのを楽しみにしてるよ」

 

 「そうやって余裕をかましてられるのも今のうちだぞ、七瀬!」

 

 ランディが前に出てくる。

 

 「次こそはレスターが、お前をコテンパンにするんだからな!覚悟しとけ!」

 

 「あ、序列外になったランディじゃん」

 

 「それを言うなあああああっ!」

 

 頭を抱えるランディ。ランディも序列七十二位で《在名祭祀書》入りしていたのだが、先日の決闘で挑戦者に敗れてしまった。結果、序列外になってしまったのである。

 

 「ドントマインド」

 

 「普通にドンマイって言えよ!逆に腹立つわ!」

 

 ランディのツッコミ。

 

 「ってか、サイラスは決闘とかやらないのか?」

 

 「ぼ、僕はそういうのはちょっと・・・弱いですし」

 

 「でも《魔術師》なんだろ?」

 

 「僕の場合、能力が弱いので・・・」

 

 小さい声でボソボソと話すサイラス。確かに、戦闘向きって感じじゃないな。

 

 「じゃ、俺達はもう行くぜ。訓練があるからな」

 

 「熱心だなぁ」

 

 レスターの言葉に感心する俺。

 

 「もうすぐ《鳳凰星武祭》だからな。俺はランディと組んで出場するつもりだ」

 

 「なるほど、道理で気合いが入ってるわけだ」

 

 「嫌でも気合いは入るさ。だが、まずは今月の公式序列戦だ。《冒頭の十二人》なら、トーナメントで比較的楽な場所に配置される可能性が高いからな」

 

 「あー、そういうことか」

 

 一回戦から潰し合いにならないよう、有力な選手は分散されるからな。《冒頭の十二人》なら尚更だ。

 

 「お前らもコンビを組んで出るのか?」

 

 「んー、ユリスと一緒なら出ても良いかなって思ったんだけど・・・どうやらユリス、俺をご所望じゃないみたいなんだ」

 

 「は・・・?」

 

 「だ、誰もそんなことは言ってないぞ!?」

 

 慌てて否定するユリス。

 

 「私はただ、お前に甘えたくないだけだ!きちんと自分でパートナーを探して、自分の力で出場したいのだ!」

 

 「ハイハイ、分かってるって」

 

 俺は苦笑した。ユリスはホント不器用だなぁ・・・

 

 「・・・まぁ気持ちは分かったが、急いだ方が良いぞ。《鳳凰星武祭》のエントリー締め切りは今月いっぱいだしな」

 

 「わ、分かっている!必ず間に合わせる!」

 

 「それなら良いが・・・じゃ、またな」

 

 そう言って、レスター達は去っていった。

 

 「・・・なぁユリス」

 

 「な、なんだ?」

 

 「真面目な話、どうしてもパートナーが見つからなかったら・・・その時は諦めて俺と出よう。出場できない事態だけは避けたいだろ?」

 

 「うっ・・・それはそうだが・・・」

 

 言葉に詰まるユリス。

 

 以前話してくれたのだが、ユリスは母国の孤児院を救いたいらしい。その孤児院は年々孤児が増える一方、資金繰りが厳しくなっているそうだ。孤児院を救えるだけのお金を手に入れる為、ユリスはどうしても《鳳凰星武祭》で優勝したいのだという。

 

 それなら、《鳳凰星武祭》に出場できないと話にならない。

 

 「ユリスは甘えたくないって言うけど、俺は前に言ったろ?もう一人で頑張るな、いつだって頼ってくれて良いって」

 

 「七瀬・・・」

 

 「だから約束だ。もしパートナーが見つからなかったら、その時は俺と出よう。俺なんかじゃ頼りないかもしれないけど、出れなくなるよりマシだろ?」

 

 「た、頼りなくなんかない!私は誰よりもお前のことを頼りにしている!」

 

 赤面しながら叫ぶユリス。

 

 「ただ・・・お前だって、《鳳凰星武祭》に出るなら早くパートナーを見つけないといけないだろう?私を待ってくれるのはありがたいが、申し訳ないというか・・・」

 

 「心配すんな。俺は元々、《鳳凰星武祭》に出るつもりはなかったんだ。ただ、ユリスと一緒なら出ても良いかなって思った。だから、ユリス以外の奴と出るつもりは無いさ」

 

 「そ、そうなのか・・・?」

 

 「あぁ、だからお前は安心してパートナーを探せ。最悪見つからなくても俺がいるんだから、焦ったり妥協したりする必要は無い。コイツとだったら出たい・・・そう思えるパートナーを探すんだぞ」

 

 「う、うむ!頑張るぞ!」

 

 「そうそう、その意気だ」

 

 ユリスの頭を撫でる俺。

 

 「・・・ありがとう、七瀬」

 

 頬を赤く染めつつ、小さく呟くユリスなのだった。

 




こんにちは、ムッティです。

昨日、藍井エイルさんの活動休止前最後のライブに行ってきました。

楽しくて、盛り上がって、感動して・・・

エイルさん、ありがとう。

復帰してくれる日を、いつまでも待っています。

・・・小説と全く関係無い話でスミマセン(笑)

それではまた次回!

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