今回で《懐国凱戦》編は終了です。
それではいってみよー!
「本当に申し訳ありませんでした」
深々と頭を下げるクローディア。俺達は今、クローディアから事の顛末を聞かされたところだった。
「クローディアのお父さんが・・・」
「娘を守る為か・・・分からなくもないが・・・」
複雑そうな表情の綾斗とユリス。あの後王宮に運び込まれた二人は、すぐに意識を取り戻した。
幸いそこまで大きな怪我も無かったが、少し安静にするようにと医師に言われていたのだった。
「七瀬さんはご存知だったんですか?」
「昨日の夜に聞いたよ。本当なら今日、クローディアが全員に説明するはずだったんだけど・・・」
綺凛の問いに苦笑する俺。まさか説明する前に解決できるとは・・・
「エンフィールド、お前は本気なのか?」
紗夜がクローディアに尋ねる。
「本気で銀河を敵に回す気なのか?」
「えぇ」
頷くクローディア。
「私には、どうしても叶えたい願いがあります。それを譲るつもりはありません」
「とまぁ、あのクローディアがこうも頑固に主張してるわけなんだよ」
俺は溜め息をつくと、皆へと視線を向けた。
「《獅鷲星武祭》は、六対六のチーム戦だ。クローディアの望みとしては、ここにいる六人でチームを組みたいらしい。でも今の話を聞いての通り、クローディアのチームに入ると銀河を敵に回すことになる。そんなリスクを背負いたくないヤツは、今この場で名乗り出た方が良い。クローディアも恨んだりしないってよ」
顔を見合せる他の四人。と、綺凛が俺を見た。
「七瀬さんは・・・参加しますよね」
「勿論」
「即答ですか」
苦笑する綺凛。
「でしたら、私の答えも決まりです。今度こそ優勝しようって、約束しましたから」
「おう、よろしく相棒」
笑顔で綺凛と拳を合わせる。と、そこにユリスも拳を突き出してきた。
「背景はどうであれ、戦力としてこのメンバーは魅力的だ。私も参加させてもらおう」
「勿論、俺も参加するよ」
綾斗の拳が加わる。
「このメンバーでチームが組めるなんて、これが最初で最後だと思う。こんなチャンスを、みすみす逃すつもりはないよ」
「私も参加する」
拳を突き出す紗夜。
「《鳳凰星武祭》では優勝できなかったから。今回は優勝したい」
「決まりだな」
俺はクローディアを見てニヤリと笑った。
「チーム名どうする?『アンチ銀河』とかにしようか?」
「そんなチーム名、通るわけないでしょう」
呆れたように言いながら、どこか嬉しそうなクローディア。
そしてクローディアも拳を突き出し、六人の拳が合わさった。
「では皆さん、よろしくお願いします」
「了解!」
「こちらこそ!」
「当然だ」
「よろしく!」
「頑張る」
気合いを入れる俺達。その時、綾斗の携帯端末が鳴った。
「あれ?メール?」
端末を操作する綾斗。そして何かを確認した途端、顔が驚愕に染まる。
「えっ・・・」
「どうした綾斗?」
俺が尋ねると、綾斗が信じられないという表情で衝撃の事実を口にしたのだった。
「姉さんが・・・見つかったって・・・」
*****
「ルーズベルトさん、色々とお世話になりました」
「ツッコミを入れてくれる綾斗はもういないぞ」
ヨルベルトさんに頭を下げる俺に対して、ユリスがジト目を向けてくる。
お姉さんが見つかったという連絡を受けた綾斗は、既にアスタリスクへと発っていた。一人で行かせるのは心配ということで紗夜も同行しており、クローディアも父親と話をつけるべく帰国している。
俺・ユリス・綺凛の三人はそのまま留まり、今日リーゼルタニアを発つことになったのだ。
「そのボケをもう聞けないなんて、ちょっと寂しいねぇ」
「また遊びに来ますよ。タダ飯を食らいに」
「七瀬さん、こんなボンクラな方でも一応は国王ですからね?」
「いや、刀藤さんが一番酷いこと言ってるから」
ヨルベルトさんのツッコミ。と、ユリスが真剣な表情でヨルベルトさんの前に立った。
「兄上、話がある」
「どうしたんだい?」
「私は《獅鷲星武祭》で優勝したら・・・願いとして、この国における国王の権利の拡大を要求しようと思う」
「なっ・・・」
絶句するヨルベルトさん。こんな表情、初めて見たな・・・
「・・・正気かいユリス?確かに《星武祭》の褒賞なら可能だろうし、その手の前例が無いわけじゃけど・・・」
「いたって正気だ。いくら賞金を稼いで孤児院が救えたとしても、それは一時しのぎにしかならない。この国を変える為には、もっと根本的な部分に手を加える必要がある」
まぁ確かにな・・・
リーゼルタニアが統合企業財体の傀儡国家である限り、この国の状況が変わることはない。国王の権利を拡大してもらうのが、一番効果的な方法だろう。
だが、もしそれが叶ったら・・・
「もし国王の権利が拡大されたら・・・兄上には、負担と迷惑をかけることになるだろう。統合企業財体としては、自分達の箱庭の国王が出しゃばるなど面白くないはずだからな。だがそれでも・・・頼む。私に力を貸してほしい」
頭を下げるユリス。と、その頭に優しく手が置かれた。
「・・・君は変わったね、ユリス。以前の君なら、こんな風に僕を頼ってくれなかっただろう」
嬉しそうに笑うヨルベルトさん。
「約束しよう。君が《獅鷲星武祭》で優勝したら、僕もボンクラは卒業する。この国を変える為に、微力ながら力を貸そうじゃないか」
「兄上・・・ありがとう」
ユリスが涙ぐむ。と、ヨルベルトさんが俺達の方を見た。
「七瀬くん、刀藤さん、ユリスのことを頼んだよ」
「任せて下さい」
「勿論です!」
頷く俺達。最初からそのつもりだったしな。
「それから七瀬くん」
「何ですか?」
「ユリスとの結婚の件、いつでも心変わりしてくれたまえ」
「なっ、兄上!?」
途端に顔が真っ赤になるユリス。
「やっぱり、ユリスは満更でもないみたいだね」
「そ、そんなわけあるか!」
「え、ユリス・・・あの夜のことを忘れたのか・・・?」
「あの夜ってどの夜だ!?」
「そっか・・・共に過ごした夜が多すぎて分からないか・・・」
「誤解を生む言い方は止めろ・・・って、このくだり二回目だからな!?」
「いやぁ、ユリスは面白いなぁ」
「な~な~せ~っ!」
「いふぁいいふぁい(痛い痛い)!」
両頬を思いっきり引っ張られる。何か懐かしいなこの感じ。
「・・・あんなユリスは初めて見るよ。よほど七瀬くんに気を許してるんだね」
「お二人は、いつもあんな感じですよ」
感心しているヨルベルトさんと、苦笑している綺凛。
こうして、俺達はリーゼルタニアを後にしたのだった。
はいどうも、ムッティです。
とりあえず、これで《懐国凱戦》編はおしまいでございます。
シャノン「次回からは新章?」
そうそう。七瀬の実家に帰ります。
新キャラも出るよ。
シャノン「そういや、ななっちの彼女が全然出てこないんだけど・・・」
あぁ、シルヴィね。次の章では出てくるよ。
ただ早いところ、ソフィアとか柚陽とか冬香とか出したいんだよねー。
シャノン「相変わらず見境ないね・・・」
まぁぼちぼち執筆していきますので、これからもよろしくお願いします。
現在、綺凛・凛綺さんの作品である『刀藤綺凛の兄の日常記』とコラボさせていただいております!
もう一つの作品である『刀藤綺凛の兄の日常記~外伝~』共々、是非チェックしていただければと思います!
それではまた次回!以上、ムッティでした!
シャノン「またね~!」