学戦都市アスタリスク ~六花の星野七瀬~   作:ムッティ

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みんな~っ!ムッティが帰ってきたよ~っ!

シャノン「遅いわああああああああああっ!」

ちょ、止め・・・ギャアアアアアアアアアアッ!?

シャノン「それでは本編再開、張り切っていってみよー!」


孤毒の魔女

 「へぇ、じゃあユリスはまた五位に戻ったんだ?」

 

 「えぇ、マクフェイルくんも九位まで戻りました」

 

 ヨルベルトさんとの話を終えた俺は、部屋でクローディアや綺凛と談笑していた。ちなみに、紗夜はベッドで気持ち良さそうに眠っている。

 

 「そっかぁ、ユリスもレスターも頑張ったんだな」

 

 「えぇ。ですが、七瀬の序列は・・・」

 

 「そんな暗い顔すんなって。別に気にしてないから」

 

 俯くクローディアの頭を、ポンポンと優しく叩く。

 

 停学中だった俺は、当然のことながら公式序列戦へは参加できなかった。よって序列三位の座を剥奪され、再び序列外となってしまったのだ。

 

 この事は事前にクローディアから聞かされていた為、俺としてはすんなり受け入れられた。元々序列に興味も無かったしな。

 

 「でも七瀬さん、せっかく三位にまでなったのに・・・」

 

 「それを言ったら、綺凛なんて元一位だろ」

 

 綺凛の言葉に苦笑する俺。

 

 「あ、でも《冒頭の十二人》じゃなくなったってことは・・・クローディアの部屋には住めなくなるのか?」

 

 「それは大丈夫です。男子寮に空き部屋が無い以上、七瀬を移動させることは出来ませんから」

 

 「それなら良いけど・・・ってか、増設工事っていつ終わるんだ?新入生が入ってくるまでに間に合うのか?」

 

 「えぇ、来年の三月には終了する予定です。七瀬にも別の部屋が与えられると思いますよ」

 

 「そっか・・・俺は別に、このままクローディアの部屋で生活しても良いんだけどな」

 

 そんなことを言うと、綺凛がジト目で俺を見てきた。

 

 「彼女さんがいながら今の発言・・・浮気ですか?」

 

 「違うわ!邪推すんなマセガキ!」

 

 「なっ!?誰がマセガキですか!」

 

 ギャーギャー騒ぐ俺と綺凛。クローディアがクスクス笑っている。

 

 「フフッ・・・ところで七瀬、ユリスの所へ行かなくてよろしいんですか?」

 

 「綾斗が行ってくれてるし、大丈夫だろ」

 

 「でもビックリですよね。まさかユリスさんと結婚してくれだなんて」

 

 「全くだよ」

 

 溜め息をつく俺。

 

 クローディアと綺凛には、先程のヨルベルトさんとの会話の内容を話してある。二人とも驚いていたが、事情を聞いて複雑そうな顔をしていた。

 

 「そもそも、何でリーゼルタニアは統合企業財体の傀儡国家になってるんだ?」

 

 「リーゼルタニアは元々、統合企業財体が復活させた国なんですよ」

 

 クローディアが説明してくれる。

 

 「そもそものきっかけは《落星雨》の後、この土地から特一等級のベルティス隕石が発見されたことでした」

 

 「ベルティス隕石って、確かマナダイトを含んでる隕石のことだよな?」

 

 「えぇ。特一等級というのは、マナダイトの含有率が九十五%・・・つまりほぼ丸々マナダイトということになります」

 

 「マジで!?メッチャ価値あるじゃん!」

 

 驚く俺。

 

 現代では、人工的にマナダイトを作る技術は既に確立されている。しかしそのほとんどが、本物の質には及ばないのが現状だ。

 

 ましてその技術さえ無かった時代においては、天然のマナダイトの価値など計り知れないだろう。統合企業財体の垂涎の的になることなど、容易に想像できる。

 

 「そうなんです。ところが、見つかった場所に問題がありまして」

 

 「と言うと?」

 

 「この場所は当時、ドイツとオーストリアの国境線になっていたんですよ。ドイツはレヴォルフの運営母体・・・ソルネージュの影響が強く、オーストリアはアルルカントの運営母体・・・フラウエンロープの影響が強かったんです。当然両者はぶつかることになったんですが、他の統合企業財体が仲介に入ったことで武力衝突は免れました」

 

 「・・・危うく戦争じゃないですか」

 

 綺凛の表情が引きつっている。恐るべしベルティス隕石・・・

 

 「そんなわけで、各統合企業財体が利益配分の協定を結ぶことになったんです。それと同時に、『どうせ分割するんだ。自分達がもっと好き勝手できる箱庭を作ってしまおう』という考えに至りました。その結果、かつてここに存在していた国を復活させることになりまして。その国というのが・・・」

 

 「リーゼルタニアってわけか・・・」

 

 統合企業財体も、決して何から何まで自由というわけではない。あくまでも既存国家の枠組みを利用している存在なので、当然その国の法律などには縛られる。

 

 だからリーゼルタニアを復活させ、枠組みすら自分達で決められる国家を作ったってことか・・・

 

 「そんなわけでリーゼルタニアは、政策や税率等も統合企業財体に都合が良いようになっています。各統合企業財体の研究施設も目白押しです」

 

 「なるほどな・・・ボンクラを演じているヨルベルトさんが好かれるわけだ」

 

 「あら、よく演じていると分かりましたね?」

 

 「さっきヨルベルトさんと会話してみて分かったよ。雰囲気が違ったし」

 

 そんな会話をしていた時だった。突然、とてつもなく禍々しい力を感じた。

 

 「ッ!?」

 

 思わずソファから勢いよく立ち上がる。

 

 何だこの恐ろしい程の力は・・・!

 

 「七瀬・・・?」

 

 「どうかしましたか・・・?」

 

 クローディアと綺凛が訝しげに声をかけてくる。俺は急いで窓の側へと駆け寄り、外を見て力を感じる方角を確認する。

 

 恐らくこれは、《魔術師》か《魔女》の力・・・そして俺の頭には、二葉姉が《王竜星武祭》終了後に語っていた時のセリフが浮かんでいた。

 

 

 

 

 

 『あんな禍々しくて圧倒的な力、今まで見たことが無いわ。一目見た瞬間、本能的にヤバいと思ったもの。どうやったらあんな力が得られるのかしら・・・』

 

 

 

 

 

 「・・・まさか」

 

 俺が呟いた瞬間・・・遠目にだが、火球が弾けるのが確認できた。

 

 「ッ!ユリス!?」

 

 間違いない。ユリスが誰かと戦っている。そしてその相手は恐らく・・・

 

 「綺凛!今すぐ紗夜を叩き起こせ!」

 

 「ふぇっ!?は、はいっ!」

 

 「七瀬、何事ですか!?」

 

 「ユリスが戦闘中だ!」

 

 「ッ!?まさかギュスターヴ・マルローと!?」

 

 「いや・・・」

 

 表情が歪む俺。そして出来ることなら、当たってほしくない想像を口にするのだった。

 

 「恐らくだが、ユリスの戦っている相手は・・・」

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

 《綾斗視点》

 

 「ユリスッ!」

 

 「うぅ・・・っ」

 

 ユリスを抱き起こして呼びかけるも、弱々しい呻き声を上げるだけだった。ユリスの服には腐食した跡がいくつもあり、顔色も酷く悪かった。

 

 ユリスがこうなってしまった原因となった人物は、俺達を哀しげな表情で見つめていた。

 

 「《孤毒の魔女》・・・」

 

 苦々しくその名を呟く。

 

 《孤毒の魔女》ことオーフェリア・ランドルーフェンは、相当に有名な人物だ。レヴォルフ黒学院の序列一位で、前々回と前回の《王竜星武祭》を制した実力者。アスタリスク史上最強の《魔女》との呼び声も高い。

 

 そんな人物が、どうしてこんなところに・・・

 

 「・・・貴方が天霧綾斗?」

 

 長い純白の髪を揺らしながら、紅玉のような赤い双眸でこちらを見る《孤毒の魔女》。

 

 本能が叫んでいる・・・この少女は危険だ。

 

 「・・・あぁ、そうだよ。それより、これ以上は止めてくれ。もう決着はついただろう」

 

 元々はユリスが挑んだ戦いだった。どういう関係性なのかは分からないが、この二人は旧知の仲らしい。ユリスの『戻ってこい』という呼びかけを《孤毒の魔女》が拒否した結果、ユリスが《孤毒の魔女》に戦いを挑んだのだ。

 

 しかし結果は見ての通り、ユリスの敗北・・・圧倒的なまでの実力差がそこにはあった。

 

 「・・・哀しいけれど、一度動き出した運命は私にも止められないわ」

 

 《孤毒の魔女》が哀しげに呟いた瞬間、彼女の身体から瘴気が湧き上がった。

 

 これが彼女の《魔女》としての能力・・・その瘴気は触れただけで他者を蝕むという噂だったが、誇張でも何でもなくその通りだった。

 

 「・・・死にたくなかったら逃げなさい」

 

 「悪いけど、それは無理な相談かな・・・ユリスを見捨てて逃げたりしたら、七瀬に顔向けできないからね」

 

 「七瀬・・・?」

 

 首を傾げる《孤毒の魔女》。俺は《黒炉の魔剣》を起動させ、刃先を《孤毒の魔女》へと向けた。

 

 「それに・・・友達を見捨てるなんていう選択肢、俺には無いよ」

 

 「・・・そう。残念だわ」

 

 沈痛な面持ちの《孤毒の魔女》。彼女の身体から溢れ出た瘴気が、無数の腕のような形となって襲い掛かってくる。

 

 「天霧辰明流剣術中伝・・・矢汰烏!」

 

 全ての瘴気の腕を両断する。それを見た《孤毒の魔女》が、眉をピクリと動かした。

 

 「あぁ、それが《黒炉の魔剣》・・・なるほど、だから私の瘴気を斬れたのね」

 

 《黒炉の魔剣》は、万物を焼き斬ることが出来る。普通の武器なら間違いなく彼女の正気に対応できないが、この純星煌式武装なら話は別だ。

 

 とはいえ、状況が悪いことに変わりはない。正直な話、今の俺では彼女には勝てないだろう。一人で逃げるなら何とかなるかもしれないが、ユリスを守りながら逃げ切れるとは到底思えない。

 

 何とかこの状況を突破できる方法を考えていた時・・・

 

 「・・・ッ!?」

 

 突如として足から力が抜ける。手は震え始め、喉に何か詰まったかのように息苦しい。

 

 慌てて識の境地で周囲を探ると・・・空気の流れが明らかに不自然だった。

 

 「・・・君の仕業か」

 

 「・・・ごめんなさい」

 

 恐らく周囲に、瘴気を張り巡らせたんだろう。それも俺が気付かないよう、無味無臭の無色透明な瘴気を。

 

 「本当に・・・とんでもないな・・・君は・・・」

 

 意識が段々と遠のいていく。薄れゆく景色の中、瘴気の腕が形成されるのが見えた。

 

 「・・・すぐ楽にしてあげる」

 

 《孤毒の魔女》が、瘴気の腕を俺達に向けた時だった。

 

 「ッ!?」

 

 何かに反応したかのように、《孤毒の魔女》が上空を見上げる。

 

 次の瞬間、轟音と共に彼女を雷が襲った。咄嗟に瘴気の腕を盾代わりにしたものの、雷が瘴気の腕を貫く。凄まじい爆発が起き、彼女の立っていた辺りは煙に包まれた。

 

 今の雷は・・・まさか・・・

 

 「・・・おい」

 

 上からドスの利いた低い声がした。俺が最後の力で上空を見ると、そこには・・・

 

 「俺のダチに何してくれてんだ・・・《孤毒の魔女》」

 

 怒りに表情を歪ませた七瀬がいたのだった。

 




どうも~、ムッティで~す・・・

うぅ、酷い目に遭ったぜ・・・

シャノン「自業自得でしょうが!二度目の《七ヶ月の空白》だよ!?」

本当にすまないと思っている(キリッ)

シャノン「・・・・・」

ちょ、そんな目で見ないで!?

シャノン「やれやれ・・・あ、そういえば先月コラボ作品を投稿してたよね?」

そうそう!綺凛・凛綺さんの作品である『刀藤綺凛の兄の日常記』とコラボさせていただきました!

その結果、何と日刊ランキングにランクインしてたという・・・

『刀藤綺凛の兄の日常記』の人気って凄いね。

シャノン「そりゃ日刊ランキングで2位に入るほどの人気作品だもん。よく私達とコラボしてくれたよね」

ホントそれな。

綺凛・凛綺さん、ありがとうございます!是非またコラボしましょう!

さて、本編も再開しましたが・・・

以前よりは投稿ペース落ちるかも・・・

とりあえずリーゼルタニアでの話は早めに終わらせて、七瀬の実家に帰省する話に入りたいと思います。

シャノン「お、遂にななっちの妹達が出てくるの?」

うん、ようやく出せるよね。是非お楽しみに。

それではまた次回!以上、ムッティでした!

シャノン「またね~!」

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