大丈夫かな・・・
「七瀬様ーっ!」
翌日。リーゼルタニアの空港に到着した俺を、フローラが出迎えてくれた。
俺を見るなりブンブン手を振って駆け寄ってきたかと思うと、勢いよく抱きついてくる。
「久しぶりだな、フローラ。元気してた?」
「あいっ!」
満面の笑みで頷くフローラ。何この子、超絶可愛いんだけど。
「もっと早く来れたら良かったんだけど・・・遅くなってゴメンな」
フローラに詫びる俺。アスタリスクからリーゼルタニアは思ったより遠く、来るまでに時間がかかってしまったのだ。
その為、今はもう日が沈みそうな時間となっている。
「大丈夫です!七瀬様の為なら、どんな時間でも迎えに来ます!」
笑顔でそう言ってくれるフローラ。天使や・・・
「ユリス達はもう着いてるよな?」
「あい!お昼過ぎにはお着きになられました!姫様や他の皆様は、今頃パーティーに参加されている頃です!」
「パーティー?」
「あい!大勢の来賓の方々をお招きした、姫様の帰国を祝うパーティーです!」
「大勢の来賓!?」
え、結構大規模なやつじゃね!?全く聞いてないんだけど!?
「あい!国王様が姫様の帰国をお祝いしたいとのことで、姫様には内緒で準備が進められていたのです!今この国では、姫様の話題で持ちきりなのです!」
「・・・ユリスが嫌がりそうな展開だな」
嫌でも目立つ上に、それが自分に内緒にされたとなると・・・
「・・・七瀬様の仰る通り、姫様は国王様に怒っていたのです」
「・・・やっぱり」
国王ってユリスのお兄さんらしいし、ユリスの性格はよく知ってるはずだけど・・・
何か狙いでもあるのか・・・?
「そんなわけで七瀬様、早速王宮に向かいましょう!」
「・・・ユリスじゃないけど、俺も気乗りしないわぁ」
俺は溜め息をつきながら、フローラに手を引かれるのだった。
*****
「じゃあ、もう孤児院の経営は大丈夫なのか?」
「あい!姫様のおかげです!」
俺とフローラは、車で王宮へと向かっていた。車はリムジン、しかも運転手付き・・・
ユリスって、マジで姫だったんだな・・・
「良かった・・・ユリスのやつ、孤児院を守る為に頑張ってたしな」
「姫様には感謝してもしきれないのです!」
笑顔のフローラ。
例の孤児院は、ユリスが優勝の願いで得た賞金で何とかなったらしい。赤字続きで経営難だったようだが、もう大丈夫とのことだ。
「でもユリスの目標って、グランドスラムだよな?他に叶えたい願いがあるのか?」
「あ、それはですね・・・」
フローラが言いかけた途端、遠くから爆発音が聞こえた。運転手さんもビックリしたのか、車が急停車する。
「すっ、すいません!」
「いえ、大丈夫です。それより、今の爆発音は・・・」
車の外に出て周りを見回すと、ここから少し離れた大きな建物から煙が上がっていた。
「・・・ちょっと待て。あれって・・・」
「お、王宮です!王宮から煙が!」
焦ったように叫ぶフローラ。やっぱりか・・・!
「運転手さん、フローラを連れて車で安全な場所に避難して下さい。あと、警察と消防への通報をお願いします」
「わ、分かりました!」
「な、七瀬様は!?」
「様子を見てくる。安全が確認できたら連絡するから。運転手さん、お願いします」
「は、はい!」
運転手さんとフローラを乗せた車が、元来た道を引き返す。
さっきの爆発音からして、ただの火事だなんてことは有り得ない。何者かの襲撃だとするなら、フローラと運転手さんを王宮に連れて行くのは危険だ。
「・・・無事でいろよ、お前ら」
王宮へと向かう俺なのだった。
*****
≪ユリス視点≫
「おいおい、何だアレは・・・」
騒ぎを聞きつけて王宮のバルコニーに出た私は、綾斗が戦っている獣を見て驚愕していた。
顔と胴体はライオンのようだが、翼が生えていて尻尾は蛇・・・いわゆる合成獣というやつか・・・?
「何故あんなものが王宮に・・・?」
「変な男が召喚した」
側にいた紗夜が説明してくれる。
「私達がエンフィールドのチームの一員として《獅鷲星武祭》に出るのかという質問をしてきた後、すぐにあの獣を召喚してきた」
「何ですって・・・?」
後からやってきたクローディアが、険しい表情になる。
「その男の特徴は?」
「白髪の老人。スーツにシルクハットを被っていて、メガネをかけていた」
「おいクローディア、覚えはあるか?」
「・・・いえ、特には」
考え込むクローディア。と・・・
「綾斗先輩!」
「ぐっ!?」
綺凛の叫び声で綾斗の方を見ると、獣の攻撃をかわしているところだった。
パーティー会場には、武器の持ち込みが禁止されていたからな・・・素手であの獣を相手取るには、少し厳しいものがあるだろう。
というか・・・
「紗夜、何故お前は銃を持っているのだ・・・」
「護身用。丸腰は無用心」
「いや、それはそうだが・・・」
ヘルネクラウムを構えている紗夜を見て、思わず溜め息を漏らす。当然コイツも武器の持ち込みは禁止だったはずなんだが・・・まぁいい。
「私は綾斗の援護に行く。紗夜は援護射撃を頼む」
「了解」
「咲き誇れ!《極楽鳥の燈翼》!」
焔の翼を展開し、私は綾斗の下へ飛んだ。
「綾斗!」
「ユリス!」
綾斗の手を掴み、空中へと持ち上げる。
「よく時間を稼いでくれた。パーティー会場の人々は避難したぞ」
「良かった・・・でもアイツ、素手でやり合うにはキツいかもね・・・」
そんな会話をしていると、獣が翼をはためかせてこちらへ飛んできた。
「厄介だな・・・!」
綾斗を抱えたまま飛ぶ。だが獣の飛ぶスピードも速かった。時折攻撃するものの、それを全て避けてしまう。
「あの巨体でこの速さか・・・!」
「ユリス、俺を一旦下ろしてくれ!空中戦じゃ俺が戦えない!」
「分かった!」
そう返事をして地上への降下を始めた瞬間・・・獣が炎を吐いた。
「っ!?マズい!?」
避けきれず、私の焔の翼を貫いた。翼を失った私達は、そのまま地面に落ちていく。
そんな私達に、獣が口を開けて向かってきた。
「くっ!?」
私は咄嗟に、綾斗をバルコニーの方へと投げた。紗夜達がいる以上、どうにかして受け止めてくれるだろう。
獣が私を目掛けて飛んでくる。
「っ!?ユリスっ!?」
綾斗の叫び声が聞こえる中、私は獣に手を向けた。
まだアイツと再会してもいないのに、ここでやられるわけには・・・!
「・・・ったく、相変わらず無茶するよな」
そんな声が聞こえた瞬間、私は獣から離れたところで浮いていた。
いや・・・誰かに抱きかかえられていた。
「このお転婆お姫様。身体を張りすぎなんだよ」
「・・・やかましい。お前こそ来るのが遅いぞ・・・七瀬」
黒いロングコートを着込んだ男・・・アスタリスクで最も信頼している友人を見て、思わず笑みを浮かべる私なのだった。
*****
「ふぅ・・・間に合ったな・・・」
ホッと一息つく俺。ユリスが獣に襲われそうになっているのを見た時は、一瞬肝を冷やしたわ・・・
「ってかユリス、リーゼルタニア遠くね?もっと近くに作れよ」
「それを私に言うか!?」
「次の《獅鷲星武祭》で優勝したら、リーゼルタニアを陸ごとアスタリスクに持ってこようぜ。それで万事解決だ」
「無理だわ!」
そんなやり取りをしていると、獣が再び俺達の方へ飛んできていた。
「っ!?七瀬ッ!」
「大丈夫だ。問題ない」
キリッとドヤ顔で言う七瀬にイラッとくるが・・・次の瞬間、獣が爆発した。
「・・・はっ?」
「引っ掛かったな」
ニヤリと笑う七瀬。獣が焦げ付いた状態で地面に落下していく。
「さて、俺達も降りよう」
「あ、あぁ・・・って七瀬、その翼は!?」
「ん?あぁ、コレ?」
背中に生えた黄金色の翼を見る俺。一応これも、修行の成果だったりする。
「ユリスの《極楽鳥の燈翼》を参考にした。空中戦も出来るようにな」
「ではこれは、お前の雷で・・・?」
「まぁな」
翼をはためかせ、王宮のバルコニーに降りる俺達。
「七瀬っ!」
「七瀬さんっ!」
綾斗・クローディア・紗夜・綺凛が駆け寄ってくる。
「おー、お前ら久しぶり。元気してた?」
「七瀬、そんな悠長な挨拶をしている場合では・・・」
「クローディア、そのドレス似合ってるじゃん。凄く色っぽいぞ」
「・・・ありがとうございます///」
「いや、思いっきり照れてるし・・・」
綾斗が呆れている。っていうか・・・
「皆ドレスかー。綺凛、お前メッチャ大人っぽいじゃん」
「はうっ!?あ、ありがとうございますぅ・・・///」
「紗夜もそのドレス似合ってるぞ。やっぱり可愛いな、お前」
「えっへん。流石は七瀬、よく分かっている」
「ユリスも。いつにも増して綺麗だぞ」
「は、恥ずかしいから止めろっ・・・///」
「いや皆!?今そんな状況じゃないよね!?」
綾斗の言葉で、ハッとなる女性陣。
「そ、そうだ!早くあの獣を何とかしないと・・・」
ユリスが慌てて獣の方を見ると、起き上がった獣がこちらを見て唸り声を上げているところだった。
そして勢いよくこちらへダッシュ・・・したところで、またしても爆発に巻き込まれる。後ろへ吹き飛んだ獣がまた爆発し、次々に獣の周りで誘爆が起きる。
全ての爆発が終わった時、獣は地面に倒れていた。
「おい、アレって・・・」
「・・・うん、間違いない」
ユリスと綾斗が驚いている。
「あれは、黎兄妹が使っていた技だ・・・」
「そうだよ」
頷く俺。
「さっき札をばら撒いておいたからな。見えなくなるように術もかけておいたし、上手く引っ掛かってくれたみたいだ」
「では、先ほどの空中での爆発も・・・」
「そうそう、札を設置しといたんだよ。いやー、沈雲と沈華に感謝しないとな」
俺の言葉に、唖然としている一同。と、尚も獣が起き上がろうとしていた。
「しぶといなぁ・・・あの二人と違って、俺に相手を痛ぶる趣味は無いんだけど」
俺は溜め息をつくと、ポケットからコインを取り出した。そして手に雷を迸らせると・・・
「《超電磁砲》」
コインを指で弾いて撃ち出す。コインが凄まじい勢いで発射され、獣の頭から尾までを一瞬で貫いた。
次の瞬間、凄まじい爆発が巻き起こる。煙が晴れた後、獣の姿は跡形も無く消えていた。
「・・・ふぅ」
一息つく俺。振り向くと、皆が固まっていた。
「どうしたお前ら?」
話しかけるが、全員呆然としている。と、綺凛が口を開いた。
「な・・・」
「な・・・?」
「なんですか今のはああああああああああっ!?」
「うおっ!?」
突然の大声にビックリしてしまう。
「ど、どうした?」
「どうしたじゃないでしょう!?何ですか今の!?獣が消し飛びましたけど!?」
「何って・・・《超電磁砲》だけど?」
「それが何なのかって聞いてるんですよおおおおおっ!?」
「綺凛、少し落ち着け」
隣のユリスが宥める。と、クローディアがおずおずと手を上げた。
「あのー・・・七瀬?」
「ん?どうした?」
「あれは《魔術師》としての力・・・雷の力ですよね?」
「そうそう」
頷く俺。
「物体に電磁加速を加えて放つことで、攻撃力と貫通力が凄まじいものになるんだよ。今はコインで撃ったけど、他の物でも可能だぞ」
「なるほど・・・興味深い」
感心したように頷いている紗夜。
「まぁもっとも、今のは全力で撃たなかったけど」
「・・・え?」
呆気に取られている綾斗。
「い、今のが全力じゃないの・・・?」
「いや、今のは三割ってとこかな。全力で撃ったら、あの一帯が消えちゃうし」
爆発が起こった方を指差す俺。それを聞いて、綾斗がドン引きしていた。
「七瀬・・・どんだけ強くなってんの・・・?」
「力が制御出来るようになっただけだよ。体術では未だに星露や暁慧には勝てないし、ようやく虎峰と互角にやり合えるようになったくらいだ」
「あの《天苛武葬》と互角!?」
驚愕するクローディア。と、一人の男性がこちらへ走ってきた。
「ユリス!」
「兄上!?」
走ってきた男性を見て、ユリスが驚いている。
え、兄上って・・・
「避難したはずじゃ!?」
「音がしなくなったから、様子を見に来たんだよ・・・無事で良かった」
「あぁ、獣は七瀬が倒してくれた」
俺の方を見るユリス。
「兄上、友人の星野七瀬だ」
「君が七瀬くんか!初めまして、ユリスの兄のヨルベルトだ。一応この国の国王をやっている。妹を助けてくれて感謝するよ、ありがとう」
「いえいえ。お礼を言われるようなことはしてませんよ、アルベルトさん」
「ヨルベルトさんね」
綾斗の冷静なツッコミが入る。
「この度はお招きありがとうございます。到着が遅れてしまい、申し訳ありません」
「ハハッ、気にしないでくれ。君とは一度、是非会いたいと思っていたんだ」
笑っているヨルベルトさん。
「君にもパーティーに出席してもらいたかったんだが・・・残念ながら中止だね」
「まぁこんな状況ですからね」
窓ガラスは粉々に割れ、奥のパーティー会場だったと思われる大広間はグチャグチャだった。
と、クローディアが険しい表情をしていた。
「クローディア?どうした?」
「・・・いえ、何でもありません」
すぐに微笑んでそう言うクローディアだったが、少し気になる俺なのだった。
どうも~、ムッティです。
放て!こ~ころ~にき~ざん~だゆ~めを、未来さえ置~き~去~り~に~し~て~♪
シャノン「限界など~知ら~ない~意味~ない!この能力が~、光散ら~す~そ~の~さ~きに、は~る~かな~お~も~いを~♪」
あ~るいてきた~、この道を~、振り返ることしか~♪
シャノン「もういいよ!?どんだけ歌うの!?」
いやー、良い歌だよね。
久々に『とある科学の超電磁砲』が観たくなったわ。
シャノン「それより、執筆活動は進んでるの?」
・・・出~来ないなら~、今ここで~す~べてを壊~せる~♪
シャノン「歌で誤魔化さないでくれる!?さては進んでないな!?」
それではまた次回~♪
シャノン「逃げるなあああああっ!?」