「七瀬さんっ!」
「おー、お疲れ」
集合場所で待っていると、綺凛達がやって来た。と、紗夜がタックルしてくる。
「ごふっ!?ちょ、紗夜!?」
「・・・心配した」
そのまま抱きついてくる紗夜。俺は紗夜の頭を撫でた。
「心配かけてゴメンな。ありがとう」
「・・・ん」
「ったく、やっとお前の顔が見れたぜ」
溜め息をつくレスター。
「医療院に行っても面会謝絶だし、相当な重傷だと思ってたが・・・どうやら本当に大丈夫そうだな」
「あぁ、もう大丈夫。悪かったな」
ホント友達に恵まれたな、俺は・・・
と、綺凛が目の前の建物を見た。
「ここにフローラちゃんが・・・?」
「あぁ、間違いない。アイツの能力は正確だから」
「アイツ?」
「後で話すよ」
俺はそう言うと、入り口に向かって歩き出した。
「おい七瀬、天霧やユリスはどうした?連絡してないのか?」
「クローディアには連絡しておいた。あの二人をここに来させるなとも頼んでおいた」
「は?何でだよ?」
「直に決勝が始まるんだぞ?休息無しじゃ《黒炉の魔剣》があっても勝てやしない。あの二人には、無理矢理にでも身体を休めてもらわないと困るんだよ」
「・・・確かに」
レスターが納得する。
「ってことは、この四人で潜入するってことか・・・」
「応援は呼んでおいた。まぁ何とかなるだろ」
「応援?」
「すぐ来るさ。七海、準備は良いか?」
【いつでも大丈夫です、マスター】
《神の拳》が装着される。よし・・・
「じゃ、行くぞ・・・《断罪の一撃》!」
入り口を盛大に吹き飛ばす。轟音が響き渡り、巨大な穴が空いた。
「おらぁっ!フローラ返せバカヤロー!」
「何してるんですかああああああああああっ!」
綺凛の盛大なツッコミが入る。
「何で正面突破!?普通敵に気付かれないように侵入するでしょうが!」
「自分、不器用ッスから」
「不器用っていうかバカでしょう!?バカなんでしょう!?」
「バカって言った奴がバカなんですぅ」
「子供ですか!?」
「まぁ冗談はさておき・・・既に敵にはバレてたからな」
話しながら中に入る俺。
「この建物の周辺の影から、特殊な力を感じた。俺達も既に気付かれてるよ」
「影・・・?特殊な力・・・?」
俺の後をついてきながら、紗夜が首を傾げる。
「あぁ、恐らく犯人は・・・《魔術師》、あるいは《魔女》だ。その証拠に・・・」
俺が前方に目をやると、地面から黒い人形の何かが次々と現れるところだった。あれも影の能力かな?
「なっ、設置型の罠!?」
「侵入者に反応するようになってんだろうな。流石はレヴォルフの諜報機関というか、結構な実力者みたいだな」
襲い掛かってくる影人形達。
「《断罪の一撃》!」
影人形達がまとめて吹き飛ぶ。だが、すぐに新しい影人形が湧き出てきた。
「おおう、マジか」
「これじゃキリがねぇぞ!」
レスターが影人形達を蹴散らしながら叫ぶ。
「こうなったら、隙を作って突破するしか・・・!」
綺凛が刀を構えるが、俺は手で制した。
「いや、その必要は無い」
「え・・・?」
綺凛が首を傾げた時・・・俺達の横を、二つの風が疾った。
そして・・・
「はぁっ!」
「やぁっ!」
たくさんの影人形が消える。俺達の前に立っていたのは・・・
「来てくれてありがとな。五和姉、六月姉」
「言ったでしょ?全力で七瀬を守るって」
「首肯。可愛い弟の頼みを、断る理由などありません」
レイピアを構える五和姉と六月姉だった。
「な、何でお二人がここに!?」
「七瀬から頼まれてねー。急いで来たってわけよ」
五和姉が楽しげに笑う。
「ま、私達だけじゃないけどね」
「え?」
「全く・・・私を置いて突入しないで下さい」
後ろからゆっくりやって来たのは、三咲姉だった。
「ゴメンな、三咲姉。忙しいのに手間かけさせちゃって」
「良いんですよ。七瀬の為ですから」
優しく微笑む三咲姉。
「それに私も、《悪辣の王》には不快な思いをさせられてますから。彼の邪魔が出来るのなら、私に出来ることは何でもします」
「・・・メッチャ嫌われてんなぁ、あのブタ」
三咲姉がここまで言うって、滅多に無いことだぞ・・・
「とりあえず三人は、影人形の相手をしてもらって良い?俺達はその隙にここを突破して、フローラを探すから」
「オッケー!」
「了解」
「分かりました」
俺達が走り出すと、影人形達が立ち塞がってくる。
だが・・・
「そこ、空けてねー」
「邪魔。退いて下さい」
五和姉と六月姉が道を開いてくれる。真っ直ぐ突き進む俺達。
「七瀬、行って下さい!」
「サンキュー!」
そのまま進むと、階段があった。どうやら上と下、両方に行けるようだ。
「七瀬、どうする?」
「下だ」
紗夜の問いに即答する俺。
「下から力の波動を感じる。影人形より全然強い力だし、恐らく影を操ってる張本人だろう。それに《星辰力》の流れも二つ感じる。一つはフローラのもので間違いない」
「そこまで詳しく読み取れるようになったんですか?」
驚いている綺凛。
「あぁ、どうやら《魔術師》の力のおかげみたいだな。他の《魔術師》や《魔女》の力の反応が分かるし、《星辰力》の流れもより詳しく分かるようになってる。俺の力が雷っていうのも関係してるのかもな」
「なるほど・・・身体能力を上げるだけじゃなく、そういった知覚能力まで上げることが出来るのか・・・」
呆れたような表情のレスター。
「ある意味チートじゃねぇか、それ」
「まるで綾斗みたい」
紗夜までそんなこと言ってくる。そうかな・・・?
「とりあえず行くぞ」
そう言って階段を下り、真っ直ぐ廊下を進んでいく。
そして・・・
「・・・ここだな」
一つの部屋の前で立ち止まる俺。
「正面突破だ。俺がドアを破壊するから、レスターと綺凛で突入してくれ。俺もすぐ突入する。レスターはフローラの救出優先、綺凛は敵の迎撃優先で頼むな」
「了解」
「分かりました」
「紗夜はここで待機して、援護射撃を頼む」
「任された」
作戦を確認すると、俺は拳を構えた。
そして・・・
「《断罪の一撃》!」
盛大にドアをぶっ壊す。即座に綺凛とレスターが突入した。俺もその後に続いて突入する。
広い部屋の中で最初に目に入ったのは、柱に縛り付けられたフローラだった。猿轡を咬まされ、口を塞がれている。
「フローラちゃん!」
「助けに来たぜ!」
「んー!んー!」
綺凛とレスターの呼びかけに、必死で何かを訴えるフローラ。俺はすぐに気付いた。
「二人とも後ろに下がれッ!」
「「っ!?」」
既にフローラのすぐ側まで近付いていた二人が、咄嗟に後方へ跳ぶ。
次の瞬間、柱の影から剣山が飛び出してくる。俺は二人の横を通り過ぎ、剣山を拳で叩き割った。すぐさまフローラに近寄り、ロープを引きちぎる。
そのままフローラを抱えたところで、殺気を感じてジャンプする。俺のすぐ下から、またしても剣山が飛び出てきた。
「レスター!」
「うおっ!?」
レスター目掛けてフローラをぶん投げる俺。慌ててレスターがキャッチする。
と、紗夜がヘルネクラウムを構えているのが見えた。
「どーん」
凄まじい威力の射撃が、剣山を粉々に砕く。ナイス紗夜!
俺はその場に着地すると、大声で指示を飛ばした。
「レスターはそのままフローラを連れて逃げろ!綺凛はレスターとフローラを守れ!紗夜、早急にクローディアへの連絡を頼む!」
その瞬間、レスター目掛けて影の剣山が襲いかかってくる。
やっぱりそうきたか・・・
「綺凛!」
「はぁっ!」
剣山をぶった斬る綺凛。レスターがフローラを抱え、部屋を飛び出す。
綺凛も出口のところまで辿り着き、俺の方を振り返った。
「七瀬さん、早く逃げましょう!」
「そうしたいのは山々なんだけどな・・・」
俺の視線の先には、影の中から這い出てくる男の姿があった。
アイツが《黒猫機関》の《魔術師》か・・・
「綺凛、先に行け。お前はレスターとフローラを守れ」
「なっ!?一人で残るつもりですか!?」
「じゃないとアイツ、間違いなく追ってくるだろ」
俺は綺凛を振り返った。
「レスターはフローラを抱えてるから戦えないし、紗夜も近接戦闘は得意じゃない。となると、お前しか護衛出来る奴がいないんだよ。分かってくれ」
「で、でもっ・・・」
「今はフローラの安全確保と、クローディアへの報告が先決だ。早くしないと、綾斗が《黒炉の魔剣》無しで決勝に挑むことになる。急いでくれ」
「っ・・・」
綺凛は悔しそうに唇を噛み締めると、くるりと背を向けた。
「・・・無茶だけはしないで下さい。待ってますから」
「おう、後は頼んだぜ・・・相棒」
俺の言葉を聞き、綺凛が走り出す。まぁアイツがいれば安心だろう。
「・・・お前が来るとは予想外だったな、《覇王》」
目の前の男が、低い声で話しかけてくる。
「あれほど暴走したにも関わらず、もうピンピンしてるとは・・・ずいぶんタフだな」
「それが売りなんでね。フローラを誘拐した罪は償ってもらうぞ」
「お前が俺に勝てるのか?」
男が嘲笑する。
「悪いが人質を追わせてもらう。お前は安らかに逝け」
「ハッ、させるかバカ。お前こそ地獄に落ちろ」
俺達は睨み合うと同時に、勢いよく地面を蹴ったのだった。
どうも~、ムッティです。
アスタリスク最新巻を買いました。
シャノン「おっ?どうだった?」
八薙草朱莉さんが可愛かった!
シャノン「そこ!?」
いや、マジ美人だよあの人。
アスタリスクの女性キャラのビジュアル好きだわぁ・・・
シャノン「見境無いね、作者っち・・・」
フハハハ、可愛いは正義だ!
それにしても、続きが気になるわ・・・
早く新巻出ないかな。
シャノン「気が早くない!?」
楽しみにしながら待ちたいと思います。
それではまた次回!
シャノン「またねー!」