学戦都市アスタリスク ~六花の星野七瀬~   作:ムッティ

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藍井エイルさん、本日ラストライブ・・・

寂しい・・・


ユリスの涙

 「お前、どうしてここに・・・」

 

 驚いているユリス。

 

 「近くを通りかかったら、やたらデカい怒鳴り声が聞こえてな。来てみたら、このゴリラがお前に絡んでる現場に遭遇したわけだ」

 

 「誰がゴリラだ!バカにしてんのかテメェ!」

 

 「よく分かったな、バカのくせに」

 

 「この野郎・・・ッ!」

 

 怒りに表情を歪めるレスター。俺はレスターを睨みつけた。

 

 「お前だってユリスをバカにしただろうが。人のこと言えねぇだろ」

 

 「事実を言っただけだ!道楽気分の姫様がいたって、ただ迷惑なだけだろうが!コイツにいてほしいと思ってる奴なんざ、この学校に一人もいねぇよ!」

 

 「貴様・・・!」

 

 身体から炎を迸らせるユリス。そんなユリスを、俺は手で制した。

 

 「止めとけ。お前がコイツと決闘する必要は無い」

 

 「邪魔をするな!お前には関係無いだろう!」

 

 「あるね。俺はお前の友達なんだから」

 

 「誰が友達だ!私は友達だと思ってないぞ!」

 

 「何を基準に友達とするのかは、人それぞれなんだろ?お前が言ったんだぞ」

 

 「ぐっ・・・」

 

 言葉に詰まるユリス。俺はユリスの目を真っ直ぐ見た。

 

 「お前が俺のことをどう思おうが、俺はお前を友達だと思ってる。それを否定される筋合いは無い」

 

 「お、お前・・・」

 

 恥ずかしさからか、ユリスが頬を赤く染めていた。俺は再びレスターを睨みつけた。

 

 「おいゴリラ、お前言ったよな?ユリスにいてほしいと思ってる奴なんて、この学校にはいないって」

 

 「それがどうした?事実だろうが」

 

 「事実じゃねぇよハゲ。お前の勝手な妄想を押し付けんな」

 

 「なっ・・・テメェ!」

 

 憤るレスターに、俺はハッキリ言ってやった。

 

 「ユリスにいてほしいと思ってる奴なら、ここにいるんだよ」

 

 自分自身を指差す俺。

 

 「ユリスに謝れ。これ以上、俺の友達を侮辱するな」

 

 「・・・ハッ。ユリス、テメェにもこんなこと言ってくれる奴がいたんだな。だが生憎と、俺も謝るつもりは微塵もねぇ。そこでだ・・・」

 

 俺を見るレスター。

 

 「テメェ、俺と決闘しろ」

 

 「な、何を言っているのだレスター!」

 

 抗議するユリス。

 

 「ここのルールに則るだけだろうが。コイツが勝ったら、俺はお前に謝ってやるよ。ただし俺が勝ったら、次の公式序列戦でお前は俺を指名しろ。公式序列戦の場で、正々堂々とお前を打ち負かしてやるよ」

 

 レスターはそう言うと、俺に向かって指差した。

 

 「テメェ、名前は?」

 

 「・・・星野七瀬だ」

 

 「了解・・・不撓の証たる赤蓮の名の下に、我レスター・マクフェイルは汝星野七瀬への決闘を申請する!」

 

 レスターの言葉に応じて、俺の制服の胸の校章が赤く発光した。

 

 「受けるな!お前が決闘をする必要など・・・!」

 

 決闘を止めようとするユリス。俺は右手で、ユリスの口を塞いだ。

 

 「むぐっ!?むぐぐぐっ!?」

 

 「大丈夫だよ、ユリス。すぐに終わらせる・・・我星野七瀬は、汝レスター・マクフェイルの決闘申請を受諾する」

 

 受諾の証として、再び校章が赤く煌いた。ユリスの口から手を離す俺。

 

 「下がってろユリス」

 

 「し、しかし・・・!」

 

 「良いから。これは俺と、あのゴリラとの決闘だ」

 

 「そういうこった!いくぜ!《ヴァルディッシュ=レオ》!」

 

 レスターが煌式武装の発動体を取り出す。レスターに負けないサイズの斧が出現した。

 

 「コイツが俺の煌式武装《ヴァルディッシュ・レオ》だ。テメェも早く煌式武装を出しやがれ」

 

 「必要無い」

 

 「は・・・?」

 

 「必要無いと言ったんだ。さっさとかかってこいよ」

 

 「テ、テメェ・・・!」

 

 表情が憤怒に染まるレスター。

 

 「調子乗ってんじゃねぇッ!」

 

 レスターがダッシュしてくる。そのまま斧を振り上げ、俺を目掛けて思いっきり振り下ろしてきたが・・・

 

 俺はそれを左手で受け止めた。

 

 『なっ!?』

 

 驚愕する一同。

 

 「レ、レスターの斧を片手で!?」

 

 「嘘でしょう!?」

 

 信じられない表情をしているランディとサイラス。ってか、お前らまだいたのな。サイラスに関してはこれが初ゼリフじゃね?

 

 一方レスターは、両手でより一層強く斧に力を込めていた。だが、そんなことをしても無駄だ。

 

 「クソッ!?斧が全く動かねぇ!?」

 

 「お前の負けだよ、ゴリラ」

 

 俺は右手で拳を作り、レスターのがら空きの校章目掛けて拳を放つ。校章は粉々に砕け散り、レスターは吹き飛んで後ろの噴水に直撃した。

 

 

 

 『決闘決着!勝者、星野七瀬!』

 

 

 

 俺の校章から機械音が鳴り響く。

 

 「レスター!?」

 

 「レスターさん!?」

 

 ランディとサイラスが、吹き飛んだレスターの安否を確かめに走っていく。

 

 「お、お前は一体・・・」

 

 「言っただろ?すぐに終わらせるって」

 

 唖然とするユリスに、俺はニヤリと笑ってみせたのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 俺とユリスは、倒れているレスターの元へと歩み寄った。

 

 「俺の勝ちだな、ゴリラ」

 

 「・・・テメェ、何しやがった」

 

 弱々しく言うレスター。どうやら、結構なダメージを受けたようだ。

 

 「特別なことは何もしてねぇよ。左手に星辰力を集めて斧を受け止め、同じく右手に星辰力を集めて殴っただけだ。戦闘の基本だろ?」

 

 「そ、そんなバカな!?あのレスターの攻撃を、無傷で受け止めたんだぞ!?」

 

 「俺が拳に集めた星辰力が、ゴリラの斧の星辰力を上回ってただけの話だろ」

 

 喚くランディの言葉に、素っ気無く返す俺。

 

 「つまりあなたとレスターさんとの間に、それほどの星辰力の差があったということですか・・・あのレスターさんの直接攻撃を左手だけで受け止めるなんて、どれほどの星辰力を持っていたら可能なんです・・・?」

 

 呆然としているサイラス。お、どうやらコイツは頭が回るみたいだな。

 

 「まぁそういうわけだ。お前の敗因は得体のしれない相手に、よく考えもせず突っ込んできたことだな。そんな戦い方しかしないから、ユリスに三回も負けるんだよ」

 

 「う、うるせぇ!余計なお世話だ!」

 

 「やれやれ・・・ま、俺が勝ったんだ。約束は果たしてもらうぞ」

 

 俺の言葉に、レスターが苦い顔をした。そして・・・

 

 「・・・悪かったよ。熱くなってたとはいえ、流石に言い過ぎた」

 

 「・・・別に」

 

 「お前はエリカ様か。いや、ユリス様か」

 

 「やかましい!」

 

 俺のツッコミに、顔を赤くして怒鳴るユリス。

 

 と、ランディとサイラスがレスターに肩を貸して立ち上がらせる。

 

 「行こう、レスター」

 

 「念の為、医務室で診てもらった方が・・・」

 

 「そんな必要ねぇよ」

 

 レスターはサイラスの言葉を一蹴する。そして俺の方を見た。

 

 「星野七瀬・・・今回は俺の負けだ」

 

 「おっ、素直に認めるのな」

 

 「あぁ、完敗だ。だが、俺は負けたまま終わるつもりはねぇ。ユリスと同じく、テメェにもリベンジしてやるからな」

 

 「なら、ユリスより前に俺にリベンジするんだな。俺に勝ったら、ユリスが決闘を受けてくれるってよ」

 

 「おい!?私はそんなこと一言も言ってないぞ!?」

 

 「安心しろ、ゴリラに負けるつもりは無い」

 

 「言ってくれるじゃねぇか。絶対ギャフンと言わせてやるよ」

 

 「そうかい。なら、せいぜい頑張れよ・・・レスター」

 

 初めてレスターの名前を呼ぶ。ニヤリと笑うレスター。

 

 「ハッ、覚悟しとけよ・・・七瀬」

 

 そう言うとレスターは、ランディとサイラスに連れられて去って行った。

 

 「いやー、すごいな七瀬!」

 

 草むらの陰から、野生の夜吹が飛び出してきた。

 

 「夜吹!?お前もいたのか!?」

 

 「よぉ、お姫様」

 

 「あれ、二人とも知り合いか?」

 

 「去年お姫様が転入してきたクラスが、俺のクラスだったんだよ」

 

 「へぇ・・・ユリスも災難だったな」

 

 「何でだよ!?」

 

 「全くだ。我ながら不運だったと思う」

 

 「ねぇ、何で俺の扱いってこんなに酷いの!?」

 

 『夜吹だから』

 

 「ハモった!?」

 

 ガックリと崩れ落ちる夜吹。

 

 「それはそうと夜吹、悪かったな。折角の《冒頭の十二人》同士の決闘を邪魔しちまって。大スクープだって言ってたもんな」

 

 「構わねぇよ。もっとデカいスクープが撮れたしな」

 

 満面の笑みを浮かべる夜吹。

 

 「入学初日にして序列九位になった男、星野七瀬!これは最高のスクープだぜ!」

 

 「・・・あ、俺《冒頭の十二人》になったのか」

 

 「今更か!?」

 

 ユリスのツッコミ。

 

 「正直全く意識してなかったわ。ユリスを侮辱されたことに腹が立っただけだし」

 

 「なっ・・・!」

 

 顔を赤くするユリス。夜吹がニヤニヤしている。

 

 「おやぁ?これは恋の予感かぁ?特ダネの匂いがするなぁ?」

 

 「だ、誰が恋だ!貴様のカメラを燃やしてやろうか!?」

 

 「ちょ、止めてえええええ!?」

 

 そのまま走って逃げて行く夜吹。全くアイツは・・・

 

 と、ユリスがチラチラと俺の方を見ていた。

 

 「ん?どうしたユリス?」

 

 「いや、その・・・ほ、本気なのか・・・?」

 

 「何が?」

 

 「私のことを・・・と、友達だと思っているというのは・・・」

 

 「当たり前だろ」

 

 言い切る俺。ユリスは驚いていた。

 

 「な、何故だ!?私は今日、お前にあんな冷たい態度をとったというのに!」

 

 「あ、冷たい態度っていう自覚はあったんだ」

 

 「バ、バカにするな!私にだってそれくらいの自覚はあるぞ!」

 

 「だったらもうちょっと愛想よくしろや」

 

 「うぐっ・・・」

 

 言葉に詰まるユリス。

 

 「・・・私だって、好きであんな態度をとっているわけではない。ただでさえ私には、一国の姫という肩書きが付いて回る。簡単に心を許すことなど出来ないのだ」

 

 「何で?」

 

 「私が王族だから近づいてくる者も少なくないからだ。興味津々で質問攻めにしてくる者、何とか取り入ろうと媚を売ってくる者・・・正直ウンザリなのだ。皆は私を、ユリス個人としては見てくれない。それが嫌で、私は周りから距離を置いているのだ・・・」

 

 「ユリス・・・」

 

 「・・・レスターの言う通りだ。私にいてほしい者など、この学校には一人もいない」

 

 自嘲気味に笑うユリス。なるほど、今のコイツに必要なのは・・・

 

 「・・・ユリス」

 

 「え・・・?」

 

 ユリスをそっと抱きしめる俺。ユリスは一瞬驚き、すぐに顔を赤面させた。

 

 「な、な、な・・・・・!」

 

 「・・・お前はもっと、人の温かさに触れるべきだ」

 

 俺の言葉に、暴れていたユリスが動きを止めた。

 

 「初めての場所に来て、周りには知らない奴しかいなくて・・・そんなの誰だって心細いさ。特にユリスは一国のお姫様だからな。周りに気を許せないのも、今の話を聞いてよく分かった。だけどな・・・」

 

 俺はユリスを見つめた。

 

 「そんな奴しかいないわけじゃない。俺はユリスと仲良くなりたいと思ってる。王族だの何だのを抜きにしてな。クローディアだって、本気でお前のことを心配してた。お前は友達じゃないなんて言ってたけど・・・それでもクローディアにとって、お前は大切な友達なんだよ」

 

 ユリスの目に、みるみると涙が浮かんでいく。

 

 「そういう奴もいるんだよ。皆がお前の敵なわけじゃないんだ。周りに気を許せ、距離を置くななんて簡単には言わないけどさ・・・それでも・・・」

 

 俺はユリスに笑顔を向けた。

 

 「もう一人で頑張るなよ。辛い時は、いつだって頼ってくれて良いんだから」

 

 「・・・ッ!」

 

 ユリスの目から、とめどなく涙が溢れる。それでも嗚咽を必死に堪えるユリス。

 

 俺はユリスの背中に回した両手に、そっと力を込めた。

 

 「今ここには、俺達以外誰もいない。我慢しなくて良いんだぞ」

 

 右手をユリスの頭に持っていき、そのまま撫でる。

 

 「今までよく頑張ったな」

 

 「・・・ッ!七瀬・・・ッ!」

 

 限界だったようだ。初めて俺の名前を呼んでくれたユリスは、そのまま俺の胸に顔を埋めながら号泣した。

 

 俺はユリスが泣き止むまで抱きしめつつ、頭を撫で続けたのだった。

 




こんにちは、ムッティです。

今回、主人公が決闘しています。

一瞬だけですが(笑)

個人的には、ユリスが七瀬に心を開くシーンを描きたかったんです。

今までがツンツンしてたので、これからデレさせたい!(願望)

それではまた次回!

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