勝つのはどちらだ!?
・・・こんな感じの前フリでいいかな(笑)
「七海っ!」
【はいっ!】
俺が右手を前に向けると、瞬時に雷がユリスと綾斗に襲いかかる。二人が左右それぞれに避ける。
よし・・・
「やぁっ!」
「くっ!?」
ユリスの避けた先には、綺凛が先回りしていた。刀で斬りかかられ、咄嗟にレイピアで受け止めるユリス。
「ユリスっ!」
綾斗が急いで加勢しようとするが・・・
「はぁっ!」
「ぐっ!?」
綾斗との間合いを詰めていた俺は、綾斗目掛けて拳を放った。《黒炉の魔剣》で防ぐ綾斗だったが、構わず力で押し込んで吹き飛ばす。
空中で一回転し、そのまま着地する綾斗。
「おいおい、人を無視すんなよ。それとも俺みたいな雑魚より、綺凛みたいな実力者と戦いたかったか?」
「・・・どの口が自分を雑魚だなんて言うんだい?」
苦笑する綾斗。
「星導館の序列三位が、雑魚なわけないだろ」
「一位に比べたら雑魚だろうよ」
溜め息をつく俺。
「三位だなんて聞こえは良いが、綺凛みたいに俺より強い奴はたくさんいる。二位のクローディアとも大きな差があるし、俺の実力なんて大したこと無いさ」
「ベスト八まで勝ち上がってきて、何を言ってるのさ」
「それも綺凛と七海のおかげだ。俺は俺に出来ることをやっただけさ」
「・・・謙虚だね、七瀬は」
何処か呆れた表情の綾斗。
「じゃあ俺の相手も、七瀬に出来ることの一つなのかい?」
「相手をするだけなら、な」
そう、俺の狙いは綾斗を倒すことじゃない。綾斗を足止めしておくことだ。
「一対一じゃ、俺はお前には勝てない。綺凛でさえ五分五分ってところだろう。なら、俺達が取るべき戦法は一つだ」
「・・・ユリスを倒し、二対一に持ち込むこと」
綾斗は既に察していたようだ。まぁ、気付いていても邪魔をさせるつもりは無いが。
「あぁ。だがお前がいる以上、二人でユリスを集中攻撃は出来ない。どちらかがユリスを攻撃し、どちらかがお前を足止めしないといけないんだよ。そしてユリスとタイマンで戦って、勝てる可能性が高いのは・・・」
「綺凛ちゃんだね・・・近接戦闘なら、間違いなく彼女に分がある」
「そうだ。それに綺凛の《千羽切》じゃ、《黒炉の魔剣》とまともに打ち合えない。純星煌式武装とまともに打ち合えるのは、同じ純星煌式武装だけだしな」
「なるほど・・・それで《神の拳》を持つ七瀬が、俺の相手ってわけか」
《黒炉の魔剣》を構える綾斗。
「なら俺は七瀬を倒して、ユリスの助太刀に向かうだけだよ」
「意地でも通さん。綺凛がユリスを倒すまでの時間だけは、絶対に稼ぐ」
睨み合う俺達。そして・・・
「はぁっ!」
「らぁっ!」
剣と拳がぶつかり合った。激しく火花を散らす。
『タ、タイマンだーっ!星導館の序列一位と序列三位が、真っ向からぶつかり合っているーっ!チャムさん、熱い展開ですね!?』
『激アツッス!これは目が離せないッスね!』
興奮した様子の実況と解説。俺は綾斗へ膝蹴りを放った。
「がっ!?」
少しバランスを崩したところで、力ずくで拳を振りぬく。拮抗状態はすぐに崩れ、俺は綾斗を押し切った。
吹き飛んだ綾斗を追撃する為、一瞬で差を詰める。が・・・
「ふんっ!」
「ぐっ!?」
空中でバランスを崩した状態の綾斗が、《黒炉の魔剣》を振りぬいた。右肩を切られてしまうが、構わず拳を放つ。
「はぁっ!」
「がはっ!?」
吹き飛んだ綾斗がフィールドの壁に叩きつけられる・・・と思いきや。
「はあああああっ!」
壁に足場に、そのまま跳躍する綾斗。《黒炉の魔剣》の切っ先を俺に向け、そのままの勢いで突きを放ってくる。
急いで拳で迎え撃つも、勢いで押され今度は俺が吹き飛ぶ。
「ぐあっ!?」
勢いよくフィールドを転がる俺。
「ユリス!」
その隙に綾斗がユリスの下へ行こうとするが・・・
「七海!」
【お任せを!】
右手から雷が迸る。今度はジャンプして避ける綾斗。
だが・・・
「空中で逃げ場は無いぞ」
「ッ!?がぁっ!?」
同時に構えていた左手からも雷が迸り、綾斗を直撃する。
地面に落下した綾斗を見て、俺はよろよろと立ち上がった。
「意地でも通さんと言ったはずだ。綺凛の邪魔はさせない」
「・・・俺には勝てないって言ってなかった?押されてるんだけど、俺・・・」
綾斗もよろよろと立ち上がる。あぁ、勝てないさ・・・
「単独ならな。でも今の俺には、七海がついていてくれる」
《神の拳》を撫でる俺。
「それでも勝てはしないだろうが・・・今のところ互角か。マジで七海のおかげだな」
【いえ、マスターが頑張っているからですよ】
「いやいや、七海が雷で俺の身体能力を上げてくれてるからだよ。じゃなきゃ、封印解除状態の綾斗に追いつけるはずがないし」
【元々はマスターの力ですから。もっと自信持って下さい】
「七海・・・」
【マスター・・・】
「二人の世界に入らないでよ!?こっちには七海さんの声聞こえないんだから!」
「あ、そうだった」
すっかり忘れてた・・・てへぺろっ。
「さて・・・続きをやろうか」
拳を構えた瞬間だった。
「咲き誇れ!呑竜の咬焔花!」
「なっ!?」
ユリスの出した巨大な焔の竜が、俺を目掛けて飛んでくる。
「くっ・・・《断罪の一撃》!」
俺の拳が竜とぶつかり、光の柱と共に竜が消滅する。
だが・・・
「はぁっ!」
「がっ!?」
その隙に間合いを詰めていた綾斗の攻撃を、まともに食らってしまう。勢いよく吹き飛び、フィールドの壁に激突する俺。
【マスター!?大丈夫ですか!?】
七海が心配してくれるが、痛くて返事すら出来なかった。
何とか顔を上げると、綺凛が綾斗と戦っているところだった。何だか、いつもより動きが鈍い気がする・・・
と、綺凛の身体の所々に火傷の跡があることに気付いた。ユリスに思ったより苦戦したってことか・・・?
『チャムさん、リースフェルト選手は刀藤選手とほぼ互角にやり合っていましたね?』
『えぇ、驚きッス。刀藤選手にあれだけ火傷を負わせるなんて、大会前じゃ出来なかったんじゃないッスかね』
チャムさんの解説が聞こえてくる。
『そして刀藤選手は火傷で動きが鈍り、リースフェルト選手はその隙をついて七瀬選手に攻撃・・・大会前の二人の力量差は明らかでしたが、リースフェルト選手はこの大会で腕を上げたッスね』
「・・・ッ!」
そういうことか・・・どうやら俺達は、ユリスの実力を見誤っていたらしい。
そうこうしているうちに、綺凛が綾斗に追い詰められていく。綺凛も何とかしようとしているが、いつも通りに動けない上にユリスの攻撃まで受けている。いくら綺凛といえど、あの二人同時には相手に出来ない。
急いで助太刀しようとするが・・・
「ッ・・・身体が・・・!?」
動いてくれなかった。くそっ、何でだ!?
【昨日の試合のダメージが残っているんだと思います】
七海が説明してくれる。
【昨日も今日も、マスターは雷の能力で身体を強化しています。本来以上に無理矢理身体能力を上げている為、力に慣れていないマスターの身体に限界が来たんでしょう。加えて昨日は五和さんの、今日は綾斗さんの攻撃をもろにくらっています。あれだけのダメージを受けながら、むしろよくここまで保った方です】
「くっ・・・!」
冗談じゃない。俺は綺凛と優勝するって約束したんだ。このままじゃ・・・
「七海!無理矢理で良い!雷で身体を動かせ!」
【無茶です!マスターの身体はもう限界なんですよ!?そんな状態で力を使ったら、マスターの身体が・・・!】
「構わない!綺凛が戦ってんだ!俺も一緒に・・・!」
その時、無情にも機械音声が流れた。
《刀藤綺凛、校章破壊》
「・・・え?」
見ると、その場に崩れ落ちる綺凛の姿があった。
綺凛が・・・負けた・・・?
【・・・ここまでです、マスター】
悔しそうな七海の声。
【マスターも綺凛さんも、本当に頑張りました。ですが・・・】
「・・・ふざけるな」
【マスター・・・?】
「俺はまだ戦える・・・ッ!」
無理矢理身体に力を込め、立ち上がろうとする俺。身体に雷が迸る。
【なっ!?力が勝手に!?ダメですマスター!それ以上は・・・ダメ・・・!】
七海の言葉が段々聞こえなくなる。だが、そんなことはどうでもいい。
今は・・・あの二人を倒すのが先決だ。
「があああああああああああああああッ!」
絶叫したのを最後に、俺の意識は黒く塗り潰されていったのだった。
二話続けての投稿になります。
シャノン「・・・最後ずいぶん不穏な感じなんだけど」
ねー。どうなるんだろうねー。
シャノン「他人事!?」
この展開は、前々から決めてたんだよね。
シャノン「そ、そうなんだ・・・ち、ちなみに私の出番は・・・」
え、出たいの?これからちょっとヤバい感じだけど・・・出たいの?
シャノン「スイマセンいいです!もう少し平和な流れになってからでお願いします!」
よろしい。まぁ、続きをお楽しみにということで。
次回は木曜日、もしくは金曜日の投稿になりそうです。
それではまた次回!
シャノン「またねー!」