他のタグ付けなくても大丈夫かな・・・?
「七瀬、この辺でいいよ」
「そう?」
食事終了後、俺は五和姉と六月姉をガラードワースの近くまで送っていた。
「感謝。送ってくれてありがとうございます」
「もう夜だしな。二人とも、『一応は』女の子だから」
「一応じゃないから!れっきとした女の子だから!」
五和姉のツッコミ。俺は笑った。
「ま、今日はゆっくり休みなよ。明日からは、俺達が二人の分まで戦うから」
「・・・次の相手、ユリスちゃんと綾斗くんでしょ?勝てるの?」
「・・・さぁな」
肩をすくめる俺。
俺はユリスに、綺凛は綾斗に勝ったことはあるが・・・俺の時は不慮の事故みたいなものだったし、綺凛も綾斗にリベンジされている。
何より今回はタッグ戦であり、一対一とはまるで違うのだ。
「・・・アイツらも、譲れない願いの為に戦ってる。でも綺凛の為に、俺も勝ちを譲るわけにはいかないからな」
「・・・質問。七瀬はどうなのですか?」
「え・・・?」
「七瀬は優勝したら、何を願うのですか?」
六月姉の問いに、俺は答えられなかった。
「・・・考えてなかったわ」
「そんなことだろうと思ったよ」
苦笑する五和姉。
「七瀬ったら、昔から自分のこと考えないもんね・・・いつも相手のこと考えて、自分のことは後回しだもん」
「そうだっけ?」
「そうだよ。だから・・・」
俺に抱きつく五和姉。
「・・・私達家族が、七瀬のことを考えてあげるの。七瀬のこと、全力で守るって決めてるんだから」
「首肯。全力で甘やかしちゃいます」
六月姉も抱きついてくる。
「だから七瀬、いつでも六月達を頼って下さいね」
「・・・ありがとな、二人とも」
二人の背中に手を回す。ホント、良い姉を持ったと思う。
「次の試合も頑張るから。応援してくれよな」
「勿論!見に行くからね!」
「約束。必ず行きます」
「おう。じゃ、またな」
五和姉と六月姉が俺から離れ、学園へと歩いていく。俺はそれを見送ると、踵を返して帰り道を歩き始めた。
俺の願い、か・・・正直、シルヴィアと戦うことしか考えてなかったしなぁ・・・
「シルヴィア・・・か」
【・・・会いたいですか?】
七海が話しかけてくる。
「・・・会いたいな。でも・・・会う勇気が無い」
【・・・怖いですか?】
「そりゃあな・・・怖いよ」
何せ殺しかけてしまったのだ。どんな顔をしたらいいのか、何を話したらいいのか、シルヴィアはどんな顔をするのか・・・まるで分からない。
「でも・・・いい加減、覚悟を決めないとな」
拳を強く握る俺。
「・・・よし。願い事が決まったぞ」
【何にするんですか?】
「シルヴィア・リューネハイムと、会って話す機会が欲しい・・・だな」
【・・・自分で会いに行ったら済む話なのでは?】
「優勝して会いに行きたいからな」
笑う俺。
「強くなったところを、頑張ったところを・・・少しでもアイツに見てもらいたい。そしたら、少しは会う勇気も出るだろ」
【チキンですね】
「なにおう!?」
クスクス笑っている七海。
【でも・・・マスターらしいです。優勝して、シルヴィアさんに会いましょう】
「おう。頼りにしてるぞ」
【お任せ下さい】
そんな会話をしながら、道を歩いていた時だった。奥の路地から、何やら大きな物音が聞こえた。
「ん?何だ?」
周りに意識を集中させる。すると・・・星辰力を持った人間が五人、奥の路地に集まっているのが分かった。
そして更に、地面に倒れているのが二人・・・おいおい・・・
「・・・リンチかよ」
【そのようですね。卑劣なことを・・・】
不愉快そうな声の七海。再開発エリアでもないのに、こんなことあるんだな・・・
【マスター、どうしますか?】
「・・・助けるか。ここで見ないフリするのは、ちょっと寝覚めが悪いし」
俺はそう答えると、路地へと足を踏み入れた。進んでいくと、少し開けた場所に男達が集まっていた。
物陰に隠れ、様子を窺う俺。ってか、アイツらが着てるのって・・・
「・・・界龍の制服じゃねーか」
【ですね・・・少々驚きです】
てっきりレヴォルフだと思ってたんだが・・・と、一人の男がバカにしたように笑う。
「ハッ、笑えるな。お前らが地べたに這い蹲る姿が見られるとは」
「まぁ手持ちの札は、今日の試合で全て使い果たしてたしな。ダメージも癒えてないみたいだし、《叢雲》と《華焔の魔女》に感謝しないとな」
もう一人の男も嘲笑する。
ちょっと待て、じゃあ倒れてる二人って・・・
「やかましい・・・ゴホッ・・・」
そう言って立ち上がったのは・・・黎沈雲だった。よく見ると、隣に倒れているのはその妹の黎沈華だ。
マジかよ・・・
「お前らみたいなゴミ・・・僕一人で十分だ・・・」
「ハッ、妹を庇おうってか?泣かせるねぇ」
ニヤニヤ笑っている男達。
「ま、今のお前じゃ無駄だろうけどな」
「黙れえええええっ!」
沈雲が術を唱えようとするが・・・
「無駄だっつーの」
三人の男達が、沈雲を取り押さえる。残りの二人も加わり、一方的なリンチが始まる。
「がはっ!?」
「オラオラァ!得意の星仙術はどうしたぁ!?」
「そんなもん、使うヒマなんざ与えねーよ!」
「・・・クズかアイツら」
思わず苦い顔になる。術を唱えるヒマも与えず、ひたすらリンチしてるのか・・・
「いつもいつも見下しやがって・・・人の気持ちが分かったか!?あぁ!?」
「ごふっ!?」
地面に突っ伏してしまう沈雲。と、倒れていた沈華がピクリと動いた。
「止めなさい・・・沈雲に・・・手を出すな・・・!」
「あぁ?」
沈華を睨む男。
「命令すんじゃねーよ、このクソアマ。おい、コイツ取り押さえろ。沈雲の方も取り押さえておけよ」
二人が沈雲を、二人が沈華を取り押さえる。リーダー格の男が、沈華の顎を持ち上げて顔を上げさせる。
「お前って、性格はマジで最悪だけどよぉ・・・良い身体してるよなぁ」
沈華の所々破けた制服姿を見て、男が舌なめずりをする。
「もっとよく見せてみろぉ!」
「ひっ!?」
男が沈華の制服を破っていく。必死に抵抗しようとする沈華だが、取り押さえられているので動くことが出来ない。
「へへっ・・・ホント良い身体してやがるぜぇ・・・」
上半身裸状態の沈華を見て、男が鼻息を荒くする。他の男達も興奮しているのか、息遣いが荒い。
「お前には、少し調教が必要だなぁ・・・」
「嫌っ・・・止めてっ・・・!」
「止めろ!沈華に手を出すな!」
涙を流す沈華と、必死に叫ぶ沈雲。だが、男は嘲笑するだけだ。
「さぁ・・・覚悟しろよ?」
「嫌ああああああああああっ!?」
「止めろおおおおおおおおおおっ!?」
二人の絶叫も虚しく、男が沈華の胸に手を伸ばし・・・
「はいそこまでー」
「ぐはっ!?」
一瞬で距離を詰め、男に回し蹴りを食らわす。建物の壁にめり込む男。
「は!?」
「な、何だお前!?」
「通りすがりの学生でーす」
「がっ・・・!?」
「ぐあっ・・・!?」
沈華を取り押さえていた二人をぶん殴る。二人とも、もの凄い勢いで吹き飛んでいった。
「ア、アンタ星導館の・・・」
「違いますー。人違いですー」
沈華の問いを、素早く否定する俺。
「僕の名前はモンキー・●・ルフィ、海賊王になる男ですー」
「思いっきり嘘でしょうが!?しかも何でそこを伏字にしたの!?」
「ナイスツッコミだけど、早く隠しなよ。まぁ眼福だけど」
「え・・・キャッ!?」
上半身裸状態なのを思い出し、慌てて両腕で胸を隠す沈華。
「どうもご馳走様でした」
「ッ!?この変態!」
「男は皆変態なのさ」
「何カッコつけてんの!?」
叫ぶ沈華に、俺の制服の上着を投げつける。
「ほら痴女、それ着てろよ」
「誰が痴女よ!?アンタ殺すわよ!?」
そう言いながらも、急いで制服を着る沈華。と・・・
「おい!俺達を無視すんじゃねぇ!」
沈雲を取り押さえている男が怒鳴る。
「テメェ、星導館の《覇王》だな!?コイツの命が惜しけりゃ、大人しくしろ!」
「七海、頼んだ」
【了解です、マスター】
俺が男達に手を向けると、手から雷が迸った。
「ギャアアアアアッ!?」
「ぐああああああっ!?」
煙を上げながら倒れる男達。
「おー、雷って便利だなー」
【今は私がサポートしてますが、ゆくゆくはマスターが自分で使いこなして下さいね】
「頑張るわ」
そんな会話をしていると、ふらふらと沈雲が立ち上がった。慌てて沈華が支える。
「《覇王》・・・何のつもりだい?」
「何が?」
「何で僕達を助けた?」
警戒しているのか、俺を睨んでくる沈雲。やれやれ・・・
「ただの自己満足だよ。別に恩に着せようなんて考えちゃいないから、安心しな」
「・・・分からないな。今日の試合で、僕達が《叢雲》と《華焔の魔女》に何をしたのか、知らないわけじゃないだろう?」
「・・・まぁな」
試合映像は少し見たが、酷いものだった。封印を破れない綾斗を執拗に責めたり、ユリスを捕らえてひたすら嬲ったり・・・
正直、腸が煮えくり返った。
「・・・お前らの戦い方は最低だ。ハッキリ言って・・・マジでクズだと思う」
二人を睨む俺。
「でも・・・だからと言って、お前らが同じ目に遭っていい理由にはならない。少なくとも俺はそう思ったから、お前らを助けた。それに・・・」
「・・・それに?」
続きを促してくる沈華。あー、これ言い辛いなー・・・
「お前らがお互いを庇おうとするのを見て・・・放っておけなかったんだよ。ついさっきまで、俺も姉さん達と会ってたから・・・家族が大切な気持ちは分かるし」
うわー、我ながら恥ずかしいこと言ってる・・・と、沈華が吹き出した。
「フフッ・・・アンタ、言ってて恥ずかしくないの?」
「恥ずかしいわ!だから言いたくなかったのに、お前が促すから!」
「だって・・・フフッ・・・」
「笑うなチクショー!」
沈華はひとしきり笑うと、沈雲を見た。
「・・・沈雲。コイツバカだけど、一応信用できそうよ?」
「・・・まぁ確かに」
俺を見つめる沈雲。
「《覇王》・・・君には借りができたね」
「言ったろ。借りだなんて思わなくて良い」
「人の好意は素直に受け取っておきなさい。貴重なんだから、ありがたく思うのね」
「何で偉そうなんだ痴女!」
「だから痴女じゃないって言ってるでしょうが!」
ギャーギャー言い合う俺達を見て、沈雲が苦笑する。
「悪いけど、言い争うのは後だ。正直身体中が痛くて、早く手当てを受けたいからね」
「・・・それもそうね。それに、倒れてる男達も何とかしないと」
辺りを見回す沈華。このまま放置・・・というわけにもいかないか。
「コイツらどうする?警備隊に身内がいるから、呼んだらすぐ来てくれると思うけど」
「いや、警備隊は避けたいな」
俺の提案に、首を横に振る沈雲。
「コイツらも一応、界龍の学生だからね。捕まったら、界龍の名に傷が付いてしまう。とりあえず師父に報告すべきだろうけど・・・この身体で界龍まで戻るのはキツいな」
表情を歪める沈雲。界龍に戻らずに星露に報告できて、二人を手当て出来る方法・・・
「あ、だったら・・・」
俺は二人に、ある提案をするのだった。
二話連続での投稿になります。
沈華って可愛いよね。
シャノン「いきなりだね・・・それでななっちと絡ませたの?」
まぁね。性格さえ良ければ、良いキャラなのになぁ・・・
というわけで、原作より少しマイルドな性格にしております。
あ、ついでに沈雲の方も。
シャノン「まぁ良いんじゃない?そういう部分があっても」
シャノンだって、本当は超性悪かもしれないもんな。
まぁゲームのキャラだから、詳しいことは分かんないけど。
シャノン「そ、そんなことないもん!女神のように慈悲深いキャラだよきっと!」
・・・フッ。
シャノン「また笑った!?」
それではまた次回・・・フッ。
シャノン「だから笑うなああああああああああっ!」