見事な粘りだった!
「それにしても、七瀬に《魔術師》としての力があったとはね・・・」
ひとしきり泣いた後、五和姉がそんなことを呟いた。
「俺もビックリしたわ。《神の拳》が、俺の為に作られたものだったとは・・・」
「初耳。父様も母様も、何も言っていませんでしたから」
六月姉が俺を見た。
「ですが・・・あの人は、全て知っていたのでしょうね・・・」
「六月ッ!」
五和姉が鋭い声で叫ぶ。ハッとする六月姉。
「・・・謝罪。七瀬、すみません」
「・・・謝ることないよ。多分、六月姉の言う通りだと思う」
力なく笑う俺。
綺凛が首を傾げているが・・・今は話す気になれないな。
「まぁとにかく、今はこの力を使いこなせるようにしないとな・・・星露も、力に呑まれるなって言ってたし」
もし星露の言う力がコレのことなら、この力に呑まれると暴走してしまうということだ。それは絶対に避けないとな・・・
と、またしてもチャイムが鳴った。
「来訪者多いな・・・って、ユリスと綾斗じゃん」
空間ウィンドウを見た俺は、ドアのロックを解除した。ユリスと綾斗が入ってくる。
「失礼するぞ・・・っと、七瀬の姉上方もいらしていたのですね」
「五和さん、六月さん、こんにちは」
「お邪魔してまーす」
「挨拶。こんにちは」
笑顔で手を振る二人。と、ユリスが俺と綺凛を見た。
「準々決勝進出、おめでとう」
「そっちもな。あの黎兄妹を負かすとは・・・流石だぜ」
「ギリギリだったけどね」
苦笑する綾斗。
「でも、これで約束は果たしたよ。次の試合、お互い全力で戦おう」
「勿論です」
笑顔で答える綺凛。遂にユリスと綾斗と戦う時が来たか・・・
「七瀬、必ずリベンジしてやるからな。覚悟しておけ」
「ユリス・・・また胸を揉まれたいのか?」
「何でそうなる!?」
赤面するユリス。五和姉と六月姉が慌てて身を乗り出した。
「え、二人ってそういう関係なの!?」
「ち、違います!あの時はたまたま・・・」
「質問。つまり身体だけの関係なのですか?」
「だから違いますって!?」
顔を真っ赤にしながら、全力で否定するユリス。
面白いなぁ・・・
「ユリス・・・あの夜のことを忘れたのか・・・?」
「あの夜ってどの夜だ!?」
「そっか・・・共に過ごした夜が多すぎて分からないか・・・」
「誤解を生む言い方は止めろ!何日か一緒のベッドで寝ただけだろうが!」
「「!?」」
口を開け、ポカンとしている五和姉と六月姉。ユリスがすぐに自分の失言に気付く。
「い、今のは違うんです!やましいことは一切無くてですね!?」
「・・・六月、七瀬は大人の階段を上ったみたいだね」
「・・・衝撃。先を越されました」
「ち、違いますからあああああっ!?」
叫ぶユリス。五和姉と六月姉は落ち込んだように俯いているが・・・
俺には分かる。あの二人は、必死に笑いを堪えているだけだ。最初から冗談だと分かっているのである。
「流石は我が姉・・・良い性格してるな」
「七瀬さんにそっくりですね・・・」
「ユリス・・・ドンマイ」
綺凛と綾斗は気付いていたらしく、共に苦笑していた。
と・・・
「はわわわ・・・とんでもないことを聞いてしまったのです・・・」
「ん・・・?」
今になって気付いたが、ドアのすぐ側に小さな女の子が立っていた。メイド服に猫耳カチューシャ姿という、何とも独特な格好の少女である。
おいおい・・・
「ユリス・・・お前子持ちだったのか。父親は・・・綾斗だな」
「違うわ!」
「何でそうなるの!?」
ユリスと綾斗のツッコミが入る。
「マジかぁ・・・怪しいとは思ってたけど、やっぱりねぇ・・・」
「驚愕。まだ若いのに、既に子持ちとは・・・」
「綾斗の奴、封印だけじゃなくて理性まで破っちゃったか・・・」
身を寄せ合い、ひそひそと話す俺達。ユリスがプルプル震えている。
「い、いい加減にしろおおおおおっ!?」
「ユリス!?落ち着いて!?」
「ここで暴れないで下さい!?」
綾斗と綺凛が、暴れるユリスを押さえつける。俺は女の子に近寄った。
「まぁ冗談はさておき・・・こんにちは。ユリスの知り合い、かな?」
「あい!フローラ・クレムです!」
丁寧にお辞儀するフローラ。すぐさま五和姉が抱きつく。
「可愛いいいいいっ!」
「ふぇっ!?」
「抗議。五和、ずるいです。六月も抱きつきたいです」
「ふえええええっ!?」
二人から抱きつかれ、動揺しているフローラ。俺はユリスを振り返った。
「ほらユリス、暴れてないで説明してくれよ」
「誰のせいだと思ってるのだ!?」
ユリスは叫びながらも、怒っても無駄だと悟ったのか溜め息をついた。
「・・・フローラは、私が支援している例の孤児院の子だ。今はリーゼルタニアの王宮で、メイドとして働いている」
「へぇ・・・まだ小さいのに、偉いなー」
「えへへ」
頭を撫でると、フローラが嬉しそうに目を細めた。
「ってことは、ユリスの応援に来たのかな?」
「あい!」
元気よく頷くフローラ。
「姫様は、フローラ達の為に戦ってくれています!そんな姫様を応援したくて、リーゼルタニアから来ちゃいました!」
「そっかー。フローラはユリスが大好きなんだなー」
「あい!フローラの憧れです!」
「お、おいフローラ・・・」
ユリスが赤くなっている。照れちゃって・・・可愛い奴め。
「でもゴメンな、フローラ。ユリスの次の相手、俺達なんだよ。俺達も負けたくないから、全力で勝ちにいかせてもらうな」
「あい!姫様のご友人のことも、フローラは応援しますから!全力で戦って下さい!」
「・・・良い子だなぁ」
何か涙が出そう・・・心が洗われるようだ・・・
「俺、星野七瀬っていうんだ。七瀬って呼んでくれ」
「あい!よろしくお願いします、七瀬様!」
「ユリス決めたぞ!俺はこの子を妹にする!」
フローラを肩車し、そのままグルグル回る。
「わーい!七瀬様、高いですー!」
「あ、七瀬ずるい!」
「確認。七瀬の妹ということは、六月達の妹ということでよろしいですか?」
はしゃぐ俺達を見て、ユリスが苦笑していた。
「全く・・・まぁ、仲良くなれたようで何よりだ」
「姫様ー!フローラは今、とても楽しいですー!」
「はいはい。良かったな、フローラ」
「よし、飯食いに行こう!綺凛、紗夜とレスターに連絡してくれ!」
「了解です」
「質問。七瀬、六月達も行って良いでしょうか?」
「勿論。五和姉の奢りだし」
「ちょ、何で私!?」
「可愛い弟を傷付けた罰だ」
「それ蒸し返しちゃう!?」
涙目の五和姉なのだった。
どうも~、ムッティです。
フローラは可愛いなぁ・・・
シャノン「作者っち、ロリコンなの?」
おい止めろ。むしろお姉さん好きだわ。
シャノン「いや、そんなことサラッと暴露しなくても・・・」
ってか、フローラと『NEW GAME!』のうみこさんが同じ声優さんとか・・・驚きだわ。
シャノン「全然違うもんねぇ」
ひふみ先輩マジ天使。
シャノン「そこはうみこさんじゃないんだね・・・ちなみに、私も天使?」
・・・フッ。
シャノン「鼻で笑われた!?」
それではまた次回・・・フッ。
シャノン「笑うなああああああああああっ!」