っていうか、三期やらないかな・・・
「おりゃあっ!」
「ぐっ・・・!?」
五和姉の一撃を受け止める俺。剣が《黒皇剣》に変わったことで、《神の拳》とまともに打ち合えるようになっているが・・・
それにしても、一撃が重過ぎる。
「ほらほらっ!さっきまでの威勢はどうした!?勝つんじゃなかったの!?」
「言われなくてもっ・・・!」
振り下ろされた剣を右手で掴み、左拳で攻撃しようとするが・・・
「ふんっ!」
「がっ・・・!?」
剣の柄を持ちながら後ろへ引いて避け、一気に前に出てきて顎に蹴りを入れられる。よろめいて剣を持つ力が抜けると同時、五和姉が突きを放ってきた。
「うおっ!?」
すんでのところでかわしたが、頬を掠めて血が流れる。そのまま殴りかかるが、バックステップで距離を取られた。
「チッ、やっぱり打ち合いになると分が悪いか・・・」
最初はレイピアだったから、五和姉も《神の拳》に触れさせないように気を遣っていた。
だが今は気を遣う必要が無い分、思いっきり踏み込んでくる。五和姉はパワータイプだから、全力で攻撃されるとかなりキツいのだ。
しかも今の五和姉は・・・
「どうしたの七瀬?これで終わりじゃないよね?」
目をギラギラさせ、獰猛な笑みを浮かべる五和姉。その様子は、まるで《覇潰の血鎌》を使っている時のイレーネのようだ。
どうやら五和姉は、《黒皇剣》の影響を受けているようだ。これが《黒皇剣》を使う代償・・・精神干渉か。
一方・・・
「くっ・・・!」
「質問。どうしました?先ほどから防戦一方ですが」
六月姉が《赫皇剣》で、綺凛に猛攻を仕掛けていた。綺凛の刀は普通の日本刀なので、純星煌式武装である《赫皇剣》と打ち合えない。
故にひたすら攻撃を避け、隙をついて攻撃するしかないのだが・・・
「宣言。攻撃する隙など与えません」
「ッ!?」
六月姉の猛攻に、綺凛も防御が精一杯みたいだ。と・・・
「余所見はいただけないなー」
「ッ!?」
再び攻撃してくる五和姉。俺は《黒皇剣》を受け止めた。
「あ、それとも六月と戦いたい?お姉ちゃん嫉妬しちゃうなー」
「・・・五和姉、そんな精神干渉受けて疲れない?」
「いや、逆に気分が良いね。清々しいよ」
笑う五和姉。だが、いつもとは違う怖い笑みだ。
「七瀬はどうなの?《神の拳》から精神干渉受けてるんでしょ?」
「今のところ大丈夫。無視できるレベルだから」
「へー・・・シルヴィの時も、無視できたら良かったのにね」
「ッ!?」
固まる俺。その一瞬を逃さず、五和姉が俺の腹部に膝蹴りをぶち込んできた。
「がはっ!?」
勢いよくフィールドを転がる俺。
「ハハッ、さっきの仕返し。ダメだよ、敵の言葉に動揺しちゃ」
笑顔の五和姉。
「でも七瀬、やっぱりシルヴィのこと引きずってるんだね・・・いつまでもうじうじしてないで、早くシルヴィに会ったら良いじゃん」
「・・・どの面下げて会えって言うんだよ」
ふらつきながら立ち上がる俺。
「俺はアイツを殺しかけた。下手したらアイツは死んでたんだ。そんな奴が、どんな顔してアイツと会ったら良いんだよ?アイツだって、俺なんかと会いたくないだろ」
「じゃあ何で七瀬はアスタリスクに来たの?」
「・・・それは」
「シルヴィと戦う為、だっけ?でもそれって、要はもう一度シルヴィに会いたいってことじゃないの?違う?」
五和姉の言葉に、俺は何も言えなかった。そんな俺を見て、五和姉が溜め息をつく。
「・・・臆病者」
「・・・ッ!」
「七瀬はさ、シルヴィに会うのが怖いんでしょ?ビビッてるんでしょ?」
「・・・黙れ」
「結局、七瀬はあの時から何も成長してないじゃん。何も変わってないじゃん」
「・・・黙れって言ってんだよ」
「全く、我が弟ながら情けないね。シルヴィもこんな奴のどこが良いんだか・・・」
「黙れクソアマアアアアアッ!」
怒りに身を任せ、五和姉に殴りかかる。だが・・・
「無駄だよ」
剣の切っ先で拳を逸らされる。五和姉の拳が、俺の顔面を捉えた。
「がっ・・・!?」
吹き飛ぶ俺。五和姉が《黒皇剣》を構えた。
「言いたいこと言ったし、これで終わらせようか・・・《黒皇永獄斬》!」
五和姉が《黒皇剣》を振りぬくと、漆黒の巨大な斬撃が俺を襲った。
「ぐあああああっ!?」
凄まじい衝撃が襲い、そのままフィールドの壁に叩きつけられる。力なく倒れこむ俺。
『な、七瀬選手がやられたッ!?起き上がることが出来ません!』
『意識消失はしてないみたいッスけど・・・勝負ありッスかね・・・』
実況と解説の声が遠くに聞こえる。
クソ、身体に力が入らない・・・気付くと、五和姉が側に立っていた。
「今のをくらって、意識消失してないとはね・・・大したもんだよ。でも、これで終わりにしよう」
剣の切っ先を、俺の校章に突きつける五和姉。校章を破壊するつもりらしい。
俺、ここで負けるのか・・・ゴメンな、綺凛・・・
敗北を受け入れ、目を閉じた時だった。
「はああああああああああっ!」
「ぐっ!?」
綺凛の叫び声が聞こえた。目を開けると、綺凛が五和姉の左肩を切りつけたところだった。五和姉の左肩から血が迸る。
尚も追撃する綺凛だったが、五和姉が避けて距離を取った。その後ろから、六月姉がやってくる。
「痛てて、切られた・・・ちょっと六月、しっかり綺凛ちゃん足止めしといてよ」
「謝罪。一瞬の隙を突かれてしまいました。面目ありません」
二人がそんな会話をしている中、綺凛が俺の側に駆け寄ってきた。
「七瀬さん!?大丈夫ですか!?」
「・・・悪いな、綺凛。身体に力が入らないんだわ」
力なく笑う俺。
「ったく、情けないよな・・・大切な後輩の力になるどころか、足を引っ張ってる。シルヴィアがこの試合を見てたら、間違いなく失望するだろうな・・・」
五和姉の言う通りだ。結局俺は、あの時から何も成長してない。
ホントに・・・
「バカだよな、俺・・・」
「・・・えぇ。バカですよ、七瀬さんは」
俺の額に、コツンと自分の額を当てる綺凛。
「失望なんてするわけないでしょう。ちゃんとシルヴィアさんの気持ち考えてます?」
「え・・・?」
「自分を殺しかけた相手のことを、普通簡単に許したり出来ませんよ。でも六花園会議の話を聞く限り、シルヴィアさんは本当に七瀬さんのことを許しています。その理由、ちゃんと分かってます?」
俺を見つめる綺凛。
「シルヴィアさんにとって・・・七瀬さんが大切な存在だからですよ」
「・・・ッ!」
「自分を殺しかけたことを、簡単に許してしまうほど大切に思われてるんですよ?だったら、こんなことで失望されるわけがありません。過去の過ちを忘れろとは言いませんけど、もっとシルヴィアさんを信じてあげて下さい。そうでないと、シルヴィアさんが報われません」
「綺凛・・・」
「それから・・・足を引っ張るなんて言い方は止めて下さい。私は七瀬さんにたくさん助けてもらいました。だから七瀬さんがピンチの時は、私が助けますから。安心して私に背中を預けて下さい」
屈託の無い笑顔で言う綺凛。そして俺に背を向け、五和姉と六月姉に向き直る。
「お二人の相手は私がします。これ以上、七瀬さんには指一本触れさせません」
「勇ましいねー、綺凛ちゃん」
笑みを浮かべる五和姉。
「でも、私達二人を相手に出来るかな?」
「七瀬さんが回復するまでの時間稼ぎくらい、やってみせますよ」
五和姉を睨む綺凛。
「それと五和さん・・・試合が終わったら、七瀬さんに謝罪して下さい。いくら純星煌式武装の精神干渉を受けているとはいえ、言って良いことと悪いことがあります」
「んー、正しいことを言ったつもりなんだけどねー」
「・・・良し悪しの区別さえつきませんか。重度の精神干渉ですね」
「釈明。五和はまだ、《黒皇剣》を完全には扱えていないのです」
六月姉が説明してくれる。
「ご存知の通り、五和の性格は真っ直ぐ過ぎます。その為、精神干渉の影響を人一倍受けやすいのです。先ほど五和が言った言葉の大体は、五和が本当に思っていることなのですが・・・精神干渉による言葉もありました。全てが五和の想いではありません」
「ちょっと六月、話が長いよ」
焦れったそうに前へ出てくる五和姉。
「綺凛ちゃん、早く戦おう」
《黒皇剣》を構える五和姉。六月姉も溜め息をつきながら、《赫皇剣》を構える。
「・・・いざ、参ります」
《千羽切》を構える綺凛。クソ、俺には何も出来ないのか!?
「力が・・・力が欲しいッ・・・!」
歯を食いしばる俺。
「今戦えるだけの力が、綺凛と共に戦える力が、あの二人を倒す力が欲しい・・・!」
心から願った、その時だった。
【力が欲しいですか?】
「ッ!?」
突然、頭の中に声が響いた。
【今一度問いましょう。力が欲しいですか?】
「・・・あぁ、欲しい!」
声に出して願う俺。すると・・・
【アナタの願い、叶えましょう】
その言葉が聞こえた瞬間、俺の目の前が真っ暗になったのだった。
三話続けての投稿となります。
シャノン「ストック大丈夫?」
まだ大丈夫。一応≪鳳凰星武祭≫が終わるまでは書けてるし。
シャノン「ホントに!?やるじゃん作者っち!」
まぁ面白いかどうかは保証できないけどねっ!
シャノン「そこは嘘でも面白いって言おうよ・・・」
いいんだよ。一人でも面白いって思ってくれる人がいれば、俺は幸せなんだから(キリッ)
シャノン「良いこと言ってるけど、この作品を七ヶ月も放置してたこと忘れてない?」
・・・スイマセンでした。
続けられるところまで続けたいと思っているので、これからも読んでいただけると幸いです。
シャノン「よろしくお願いします(ぺこり)」
それではまた次回!
シャノン「またねー!」