「んー、美味しい!」
幸せそうな顔でポテトを頬張る二葉姉。
今日は仕事が休みらしく、俺は二葉姉の買い物に付き合わされたのだった。この間の貸しのことを言われたら、断れるわけがない。
「はい七瀬、あ~ん」
「・・・あーん」
渋々開いた口に、ポテトが入れられる。
あ、美味い・・・
「ったく・・・折角の休日なのに、弟と買い物してて良いのかよ?」
「良いじゃない。アンタも今日はオフなんでしょ?」
「・・・まぁな」
俺と綺凛は三回戦も無事に突破し、本戦進出を決めた。今日は本戦の組み合わせ抽選会が行われるということで、束の間の休息日となっているのだ。
綺凛とも話し合い、今日は身体を休めようということになっている。
「今日は一日中ゴロゴロしてる予定だったんだけどなぁ・・・」
「だって七瀬と二人で出掛けたかったし。一緒に過ごすの、結構久しぶりじゃない?」
「まぁ確かにな・・・」
星猟警備隊に入ってからというもの、二葉姉はあまり実家に帰ってこない。なかなか顔を合わせる機会が無かったのだ。
「七瀬もアスタリスクに来たんだし、これからは前より会えるわね」
「二葉姉がもっと実家に帰省すりゃ済む話じゃん」
「あたしだって帰りたいわよ?でも仕事が忙しくて・・・警備隊は大変だわ」
ため息をつく二葉姉。
「ってか、それを言うなら姉さんの方が帰ってないじゃない」
「あー、確かに・・・」
一織姉は忙しいからなぁ・・・
「一織姉と四糸乃姉には、まだ会えてないんだよね」
「四糸乃も多忙の身だしねぇ・・・学生なのに大変よね」
「ホントそれな」
「あ、多忙で思い出したけど・・・」
真剣な表情で俺を見る二葉姉。
「七瀬、シルヴィには会ったの?」
「・・・多忙を極める世界の歌姫に、会えるわけないだろ。連絡先も知らないし」
「そんなの、四糸乃に聞いたら分かるじゃない」
「連絡を取るつもりも無いから」
きっぱりと言う俺。
「前にも言ったけど、俺にアイツの側にいる資格は無い。俺はもう一度、アイツと戦いたいだけなんだ。それが終わったら、もうアイツと会うつもりは無い」
「・・・アンタも頑固ねぇ」
呆れたような表情の二葉姉。
「七瀬がそう決めたなら、あたしは何も言わないわ。姉さんや三咲達だって、七瀬の意思を尊重すると思う。でもね・・・」
二葉姉が、俺を真っ直ぐ見つめる。
「戦う前でも、戦った後でも良い・・・シルヴィとちゃんと話をしなさい。戦うだけじゃ、シルヴィと向き合ったことにはならない。それじゃアンタ、前に進めないわよ」
「・・・分かってる」
正直、今はアイツと会う勇気が無い。でも、いずれ会わないといけないな・・・
と、俺の端末に着信が入る。空間ウィンドウを開くと、綾斗の顔が映った。
『七瀬、休みの日にゴメン・・・』
「おー、綾斗。どうした?」
『紗夜が迷子になっちゃって・・・七瀬、商業エリアにいるんだよね?見なかった?』
「いや、見てないけど・・・アイツまた迷子かよ」
方向音痴にも程があるだろ・・・ったく、仕方ないな。
「俺も探すの手伝うよ。合流しようぜ」
『ホントゴメン・・・じゃあ、広場で落ち合おう』
「了解。すぐ行く」
通信が切れる。俺は二葉姉の方を見た。
「ゴメン、二葉姉。行くわ」
「了解。買い物、付き合ってくれてありがとね」
「また付き合うよ。それじゃ」
俺は二葉姉に手を振り、広場へと向かったのだった。
*****
「見つからないなぁ・・・」
「あのバカ・・・何でこんなとこ来てんだよ」
綾斗と二人でため息をつく。紗夜に連絡を取ったところ、商業エリアの外れあたりにいることが判明したのだ。
この辺りは再開発エリアが近い・・・言い換えるとレヴォルフが近いので、柄の悪い連中が多かったりする。
正直、あまり来たいとは思わない場所だ。
「ゴメンね、七瀬。お姉さんと買い物してたんだろう?」
「別に良いよ。買い物も終わって、軽く昼食取ってたとこだったし。綾斗こそ、今日はクローディアと抽選会に行ってたんじゃなかったのか?」
「紗夜から電話がかかってきたから、途中で抜けてきたよ。クローディアの機嫌を損ねちゃったけどね・・・」
「あー・・・ドンマイ」
クローディアの奴、綾斗のこと気に入ってるからなぁ・・・
そんな会話をしていた時だった。先の方の物陰から、人の声が聞こえた。
「や、止めて下さい・・・!」
・・・穏やかじゃないな。
「・・・綾斗」
「分かってる」
二人で気配を消して、そっと様子を窺ってみる。一人の女の子が、五人の男達に取り囲まれていた。
ってか、あの女の子・・・プリシラじゃねーか。
「騒ぐんじゃねぇ」
「恨むなら、お前の姉貴を恨むんだな」
「んー!んんんー!」
口を押さえられるプリシラ。両手を掴まれ、身動きが取れないらしい。
おいおい・・・
「その辺にしとけYO!」
「ぐえっ!?」
「ガハッ!?」
プリシラの口と腕を押さえていた二人の男の後頭部に、飛び膝蹴りをぶちかます。自由になったプリシラの手を掴み、こちらへ引き寄せた。
「な、七瀬さん!」
「プリシラ、大丈夫か?」
「は、はいっ!」
「な、何だテメェ!?」
リーダー格の男が慌てている。と・・・
「グハッ!?」
「うぐっ!?」
もう二人が倒れた。綾斗が後ろから回り込み、二人を気絶させたのだ。
「さて・・・残りはアナタだけだね」
「くっ・・・!」
後ずさる男。
「テメェら・・・星導館の《覇王》と《叢雲》だな!?こんなマネして、ただで済むと思ってんのか!?」
「いや、こっちのセリフだわ」
呆れる俺。
「確かにプリシラは可愛いけど、イレーネにフラれたからって節操無さ過ぎじゃね?」
「何の話してんの!?」
「え?イレーネにフラれたから、妹のプリシラを口説こうって話じゃないの?」
「どんな解釈!?今の場面見てそう捉えたの!?」
「うん」
「アホかお前!?だったらこんな手荒なマネしねぇわ!」
「手荒って認めちゃったじゃん」
「ごふっ!?」
綾斗が手刀でツッコミを入れる。気絶する男。
やれやれ・・・
「プリシラ、ケガしてないか?」
「はい、大丈夫です。助けていただいて、ありがとうございました」
頭を下げるプリシラ。
「気にすんな。それより、何で襲われてたんだ?」
「・・・この人達は多分、歓楽街にあるカジノの人達だと思います」
「歓楽街って・・・再開発エリアにある、非合法の店が集まってる場所のことか?」
前にクローディアから聞いたことがあるな・・・プリシラが頷く。
「でも、何でそんな連中がプリシラを・・・?」
「少し前に、そこでお姉ちゃんが大暴れしたらしくて・・・壊滅に近い状況だったそうです・・・」
恥ずかしそうなプリシラ。あー、そういうことね・・・
「イレーネには敵わないから、プリシラを狙ったわけか・・・」
「情けない人達だね・・・」
綾斗と二人、ため息をつく。と・・・
「プリシラあああああっ!」
叫び声と共に、空からイレーネが降ってきた。
「きゃっ!?お姉ちゃん!?」
「何処行ってたんだよ!?心配したんだぞ!?」
「いや、その・・・襲われてて」
「襲われた!?」
驚愕しているイレーネ。
「何でお前が!?可愛いからか!?」
「お前のせいだわ!」
「ぐおっ!?」
イレーネの頭に拳骨をぶちかます。ようやくイレーネが俺達の存在に気付いた。
「いてて・・・え、七瀬!?《叢雲》まで!?何でここにいんだよ!?」
「襲われてたところを、お二人が助けてくれたの」
「マジか!?」
「マジだよ。ってかイレーネ、コイツらお前に恨みがあったみたいだぞ」
倒れている男達を指差す俺。イレーネがハッとした顔をする。
「あ、コイツら!カジノの連中じゃねーか!そうか、それでプリシラを・・・!」
「ってことだろうな」
「このクズ共・・・!」
男達を睨みつけるイレーネだったが、やがて深く息をついた。
「・・・すまねぇ、助かった。お前らには借りができちまったな」
「別に良いよ。困った時はお互い様だし」
笑いながら言う綾斗。イレーネは納得できない様子だった。
「いや、でもよ・・・」
「まぁ綾斗のお人好しは異常だから、気にすんなって」
「・・・七瀬、さりげなくディスってるよね?」
「ハハハ、何ノコトヤラ」
「嘘つくの下手すぎない!?」
綾斗のツッコミ。あれ、何か前にもこんなツッコミ入れられたような・・・
まぁそれはともかく。
「大体、俺がプリシラを放っておけるわけないだろ。それに俺も、お前には助けてもらったしな。お互い様だし、借りだなんて思うなよ」
「・・・ったく、お前もお人好しじゃねーか」
苦笑しているイレーネ。
「参ったな・・・これじゃやり辛くてしょうがねぇ」
「ん?何の話だ?」
「ついさっき、本戦の組み合わせが発表されたんだ」
空間ウィンドウを開くイレーネ。
「あ、もう発表されたんだな」
「あぁ。あたし達の次の相手は・・・《叢雲》、アンタと《華焔の魔女》だ」
「えぇっ!?」
驚く綾斗。あ、ホントだ・・・
「アンタに借りがあるままじゃ、あたしも全力で戦えねぇ。だから・・・今日の晩飯を奢らせろ」
「え、でも・・・」
「安心しろ、毒なんざ盛らねーよ。それと七瀬、お前も来い」
「いや、だから借りだなんて・・・」
「そうじゃねぇ。話があるんだ」
いつになく真剣な表情のイレーネ。
「お前はあたしの・・・ダチだからな。ちゃんと話しておかねぇと、筋が通せねぇ」
「・・・分かったよ。なら、遠慮なくご馳走になるわ」
「おう、そうしろ」
笑うイレーネなのだった。
こんにちは、ムッティです。
アニメって面白い!
シャノン「急にどうしたの!?」
いや、録っておいたアニメ観終わってさー。
凄く充実感を感じてるんだわ。
シャノン「アスタリスクも三期やってほしいよね」
それな。まぁシャノンはゲームのキャラだから、アニメでは出番無いだろうけど。
シャノン「それは言わないでぇ!」
それではまた次回!
シャノン「アニメでも出番が欲しいよおおおおおっ!」