今回は学戦都市アスタリスクとなります。
相変わらず文才は無いですが、お楽しみいただけたら幸いです。
入学初日
「ここが星導館かぁ・・・」
正門の前で、思わず感嘆の声をあげる俺。この水上学園都市・六花(通称・アスタリスク)には、六つの学校が存在する。
聖ガラードワース学園、界龍第七学院、アルルカント・アカデミー、レヴォルフ黒学院、クインヴェール女学園、そしてここ・・・星導館学園。
今日から俺が通うことになる学校である。さて・・・
「入学式って何処でやるんだ?」
キョロキョロと辺りを見回す。星導館には中等部・高等部・大学部があり、入学式は合同で行われるそうだ。
ちなみに、俺は高等部である。
「さて、どうしたもんかな・・・」
「お困りですか?」
「うわっ!?」
不意に隣から声がして、ビックリしてしまう俺。
いつの間にか、隣に金髪の女性が立っていた。星導館の制服を着ているので、恐らくここの生徒だろう。
かなりの美人である。
「あぁ、申し訳ありません。驚かせてしまいましたか」
「あ、いえ・・・考え事をしていたもので・・・」
「そうでしたか。驚かせてしまい、大変申し訳ありませんでした」
深々と頭を下げる女性。
「いえ、そんな!こちらこそスミマセン!」
俺も慌てて頭を下げた。元々、俺が必要以上に驚きすぎたせいだしな。
女性は顔を上げると、クスクスと笑った。
「初対面でお互い謝るというのも、何だか変な感じですね」
「確かに」
思わず俺も笑ってしまう。と、女性が手を差し出してくる。
「高等部一年、クローディア・エンフィールドと申します。以後お見知りおきを」
「高等部一年、星野七瀬です。こちらこそ、よろしくお願いします」
俺はその手を取り、握手を交わした。
「あら、同級生でしたか」
「みたいですね。てっきり先輩だと思ってました」
「・・・私、そんなに老けて見えますか?」
肩を落とすエンフィールドさん。やばい、傷付けた!?
「いや、そういう意味じゃなくて!エンフィールドさん、凄く大人びてるから!」
「フフッ、冗談ですよ」
可笑しそうに笑うエンフィールドさん。マジで勘弁してくれ・・・
「私達は同級生なんですから、そう気を遣わないで下さい。もっと砕けた喋り方で結構ですよ?私のことも、クローディアとお呼び下さい」
「そう?じゃあクローディアで。ってか、気を遣わせたのはクローディアだろ!?」
「さて、何のことやら」
恍けるクローディア。この性悪女め・・・
「ハァ・・・俺のことも七瀬でいいから」
「了解です、七瀬」
「敬語も使わなくて良いぞ?」
「いえ、これはただの習慣ですから」
「習慣?」
「えぇ。私はとても腹黒いので、せめて外面や人当たりは良くしておかないといけないんです。それが染み付いてしまいまして」
「あー・・・確かに腹黒そうだもんな」
「まぁ、酷い・・・七瀬には、私がそんな風に見えるんですね・・・」
「言っておくが、もうその演技には騙されないぞ」
「あら、残念」
悪戯っぽく舌を出すクローディア。何も知らない奴なら、今の仕草だけで簡単に落ちるんだろうなぁ・・・
「ところで七瀬、何やらお困りの様子でしたよね?」
「あ、そうだった!」
入学式の会場を探してることを、すっかり忘れてたな。
「クローディア、入学式の会場って分かるか?」
「えぇ、ちょうど私も向かう所でしたから。ご一緒しましょうか?」
「それは助かる!サンキュー!」
「いえいえ。では、行きましょうか」
歩き出す俺達なのだった。
*****
「まさかクローディアが生徒会長だったとは・・・ビックリしたわ」
「フフッ、言ってませんでした?」
「一言も聞いてねーわ」
入学式終了後、俺とクローディアは高等部の校舎の廊下を歩いていた。
入学式でクローディアが生徒会長として壇上に上がっている姿を見た時は、マジで呆気にとられたな・・・
「私は中等部からここの生徒ですので、生徒会長も中等部時代から務めているんです。今年で三期目になりますね」
「マジか・・・道理でよく道を知ってると思ったわ」
「ここに来て四年目になりますからね。学校の敷地内については熟知してますよ」
「だよなぁ」
そんな会話をしながら歩いていると、目的地である教室が見えてきた。
「あぁ、ここが七瀬のクラスの教室ですね」
「悪いな、わざわざ教室まで案内してもらっちゃって」
「いえいえ、これくらいお安い御用です」
微笑むクローディア。
「それにしても、クラスが別々で残念ですね・・・」
「それな。一緒のクラスが良かったんだけど・・・」
「まぁ、仕方ありませんね・・・またお会いしましょう、七瀬」
「おう、またな」
別れようとする俺達だったが、クローディアが何かを思い出したような顔をする。
「あぁ、七瀬」
「ん?どうした?」
「実は七瀬のクラスに、私の友人がいるのですが・・・少々心配でして」
「心配?何が?」
「彼女は気が強くて、周りと馴れ合おうとしないんです。ですから、周りから反感を買いやすくて・・・悪い子ではないので、仲良くしていただけると幸いです」
「なるほど・・・了解。クローディアの友達なら、俺も仲良くしたいしな」
「そう言っていただけると助かります。よろしくお願いしますね」
「おう、任せとけ」
俺が親指を立てると、クローディアは嬉しそうに笑って去っていった。
さて・・・
「教室に入りますか・・・」
ドアを開け、教室の中に入る。既に多くの生徒がおり、他の生徒達と談笑していた。
「えーっと、俺の席は・・・あった!」
黒板に貼られている座席表を見て、自分の席を見つける。どうやら俺の席は後ろから二列目、窓側から二列目の席らしい。
自分の席へ向かうと、既にその席には先客がいた。青みがかった綺麗な髪の女の子が、机に突っ伏して寝ている。
「あれ・・・席を間違ったか?」
再び座席表を確認するが、やっぱり間違っていない。つまり、この女の子が席を間違えているのだ。
と、女の子がむくりと顔を上げた。
「ふぁ・・・」
欠伸をする女の子。ちょうど良いタイミングなので、俺は話しかけた。
「スマン、そこ俺の席なんだけど・・・」
「・・・?」
首を傾げる女の子。そして再び机に突っ伏す。
「寝るんかいっ!」
初対面でどうかとも思ったが、思いっきり頭を引っぱたいた。女の子は頭を抑えて、再び顔を上げた。
「・・・痛い。暴力反対」
「人の話を無視するからだろ。そこは俺の席だ」
「・・・そんなバナナ」
「古いわ!」
何この子、天然?
「私が見た座席表では、この席だったはず」
「名前は?」
「沙々宮紗夜」
座席表を確認してみると・・・左隣の席だった。
「この席の左隣、窓側の席だぞ」
「・・・そんなバナナ」
「二回目!?いいから早く移動しろや!」
俺のツッコミに、大人しく隣の席に移動する沙々宮。
「・・・迷惑をかけた、ごめんなさい」
「いや、まぁ良いけどさ・・・」
変わった子だなぁ・・・いや、個性的と言うべきか。
「俺は星野七瀬。お隣同士よろしくな」
「私は沙々宮紗夜という」
「うん、さっき聞いたわ」
「沙々宮でも紗夜でもさっちゃんでも、好きに呼ぶといい」
「・・・じゃあ紗夜にしとくわ。俺のことも七瀬で良いから」
「了解、七瀬。私は寝るから、先生が来たら起こしてほしい」
「また寝んのかよ!?」
俺のツッコミも空しく、紗夜は机に突っ伏してしまった。やれやれ、何か面倒な奴が隣の席になったな・・・
俺がため息をついていると、今度は右隣の席に誰かが座った。振り向いてみると、一人の女子生徒が座っていた。薔薇色の長い髪を腰まで流した、気品溢れる美女である。
おー、クローディアに勝るとも劣らない・・・ん?もしかして、クローディアが言ってた友達って・・・
「あ、あのー・・・」
おずおずと声をかける。と、不機嫌そうな顔をこちらへ向ける女子生徒。
「・・・何か用か?」
ワー、メッチャ睨マレテルゥ・・・
「いや、隣同士だし挨拶しておこうと思って・・・」
「必要無い。貴様と仲良くするつもりなど無いからな」
あ、絶対この子だ・・・間違いない・・・
「クローディアの言ってた通りだな・・・」
俺の呟きに、女子生徒が反応する。
「クローディア・・・?貴様、クローディアの知り合いか?」
「あぁ、友達だけど」
「なるほど、そういうことか・・・大方、クローディアに頼まれたのだろう?私と仲良くしてやってくれと」
・・・悪いクローディア、一瞬にして看破されたわ。
「まぁ頼まれたけど・・・俺も仲良くしたいなって思ってさ。クローディアの友達なんだろ?」
「断じて違う」
「え、違うの!?」
「ウィーンのオペラ座舞踏会で、何度か顔を合わせた程度の昔馴染みだ。それ以上でもそれ以下でもない」
「それを言ったら、俺なんて今日初めてクローディアと会ったんだけど・・・」
「何を基準に友人とするのかは、人それぞれだろう。貴様にとってクローディアは友人かもしれないが、私にとっては違う。ただそれだけのことだ」
この子、ちょっとドライ過ぎないか・・・?
「・・・まぁそれはさておき、名前ぐらいは教えてもらえないか?」
「・・・まぁそれくらいなら良いだろう。ユリス=アレクシア・フォン・リースフェルトだ」
「ユリス=アレキサンダー・フォン・ルーズベルト?」
「聞き間違いにも程があるだろう!ユリス=アレクシア・フォン・リースフェルトだ!」
「・・・ユリスだな、よろしく」
「今明らかに名前を覚えることを諦めたな!?そうだな!?」
「ハハハ、何ノコトヤラ・・・」
「嘘つくの下手くそか!」
おぉ、この子ツッコミ上手いな・・・
「俺は星野七瀬。七瀬でいいから」
「ふん、貴様の名前など興味は無い」
鼻を鳴らすユリス。
「もう一度言っておくが、私は貴様と仲良くするつもりなど無い。それが分かったら、私には関わらないことだな」
あらら、宣言されちゃった。これは前途多難だな・・・
「おーい、お前ら席に着けー。ホームルーム始めんぞー」
担任と思われる先生がやってくる。よし、とりあえず・・・
「おい、起きろ紗夜。先生が来たぞ」
ユリスのことを考えるのは後にして、紗夜を起こしにかかる俺なのだった。
お久しぶりです、ムッティです。
いや、お前誰だよ!?と思った方は初めまして。
ムッティと申します。
以前、ソードアート・オンラインの小説を投稿させていただいたことがありまして。
約一年半ぶりの投稿となります。
ゆっくり投稿していきたいと思いますので、温かい目で見守っていただけると幸いです。
それではまた次回!