「ハァ・・・疲れるわぁ・・・」
再びソファに横たわり、綺凛に膝枕してもらう俺。
ただでさえ気分が悪いのに、姉さん達が来るとは想像もしてなかったわ・・・
「驚きました。七瀬さんのお姉様方がガラードワースにいらっしゃったとは・・・」
「別に隠してたわけじゃないんだけどな。言う機会が無かったんだよ」
綺凛の言葉に苦笑する俺。と、クローディアがため息をついた。
「私としたことが・・・彼女達の名前は知ってましたのに、七瀬のお姉様方とは気付きませんでした」
「あ、そっか。クローディアなら、三咲姉達のことは知ってるよな」
「どういうことですか?」
首を傾げる綺凛。クローディアが説明する。
「彼女達は全員、ガラードワースの銀翼騎士団のメンバーなのです」
「銀翼騎士団というと・・・ガラードワースの《冒頭の十二人》ですか!?」
「えぇ。中でも三咲さんは序列三位・・・前回と前々回の《獅鷲星武祭》で優勝した、チーム・ランスロットのメンバーです」
「えぇっ!?」
驚愕している綺凛。
「そういや前回の《獅鷲星武祭》で、クローディアのチームはランスロットに負けたんだっけ?」
「えぇ、完敗でした」
苦笑しているクローディア。
「レティシアの校章だけは何とか破壊出来ましたが・・・《聖騎士》と《絶剣》の剣技の前に、成す術もありませんでしたね」
「《絶剣》なんて仰々しいって、三咲姉は嫌がってるけどな」
まぁ、そんな二つ名も付けられるだろう。何せ三咲姉の剣の腕は、アーネストに匹敵すると言われてるぐらいだしな。
「五和さんと六月さんのことも、よく存じ上げていますよ。彼女達も、前回の《獅鷲星武祭》に出場していましたからね」
「あの二人はランスロットじゃなくて、トリスタンの方だけどな」
ガラードワースでは、序列一位から六位までがチーム・ランスロット、七位から十二位までがチーム・トリスタンとして《獅鷲星武祭》に出てくるからな。
「チーム・トリスタンって、前回の《獅鷲星武祭》の準優勝チームですよね!?」
「えぇ。中でも五和さん、六月さんのコンビネーションは抜群でした。あの二人を前衛として、他のメンバーがサポートするという戦術だったんですよ。決勝のランスロット戦こそ負けてしまいましたが、優勝してもおかしくないチームでしたね」
「二対一なら、三咲姉も苦戦したかもしれないけど・・・同じチームにアーネストがいるんだもんな。ましてやレティシアもいるんだから、そりゃランスロットが勝つだろうよ」
「ハァ・・・次回の《獅鷲星武祭》も苦戦しそうです」
ため息をつくクローディア。綺凛が呆然としていた。
「七瀬さんのお姉様方、凄いですね・・・」
「性格がちょっと残念だけどな。それにしても、五和姉と六月姉が《鳳凰星武祭》に出てくるとは・・・予想外だったわ」
三咲姉みたく、《獅鷲星武祭》だけかと思ってたんだけど・・・
「ったく、厄介なペアが出てきたな・・・」
「やはりお強いんでしょうね・・・」
「強いな。五和姉も六月姉も、俺は一対一でも勝てたことないし」
「七瀬さんがですか!?」
驚愕している綺凛。
「あぁ。ましてや二人同時なんて、俺一人じゃ手も足も出ないわ」
「・・・かなり手強いですね」
「まぁな。ただ、今回はタッグ戦だ。俺が一人で戦うわけじゃない」
綺凛の頬にそっと手を添える。
「綺凛が一緒ならチャンスはある。頑張ろうな」
「七瀬さん・・・はいっ!」
「おや、そろそろ第一試合が始まる時間ですね」
そう言って、クローディアが空間スクリーンを展開させる。
そこにはステージと、先ほどまでここにいた五和姉・六月姉の姿が映っていたのだった。
*****
『さて、いよいよ第一試合が始まります!実況は私、ABCアナウンサーの梁瀬ミーコが務めさせていただきます!解説には界龍第七学院OGで、現エグゼクティブ・アラドファル部隊長のファム・ティ・チャムさんにお越しいただきました!』
『ども、よろしくお願いするッス』
ふわふわした巻き毛の女性と、黒髪を短く切り揃えた女性が映る。
『さてさて、今更ですがルールの確認をしておきましょう。試合の決着としては、次の三つとなります。ペア両名の校章が破壊された場合、ペア両名が意識を消失した場合、ペアのどちらかがギブアップを宣言した場合です』
『その辺りが、リーダーがやられたら負けとなる《獅鷲星武祭》との違いッスね』
『さて、今回の《鳳凰星武祭》ではどのような戦いが見られるのでしょうか?それでは早速第一試合にまいりましょう!既に姿を現しているのは、ガラードワースの序列七位である星野五和選手と、同じく序列八位の星野六月選手であります!ご存知だとは思いますが、前回の《獅鷲星武祭》で準優勝を果たしたチーム・トリスタンのメンバーです!』
『初の《星武祭》出場ながら、大活躍で一躍脚光を浴びた二人ッスねー。《神速》の五和選手に、《閃光》の六月選手・・・今回の《鳳凰星武祭》でも、間違いなく優勝候補と言えるッス』
「・・・優勝候補、ですか」
「だろうな。俺は出場することさえ知らなかったけど」
「七瀬・・・もっと出場選手のことを調べて下さい」
そんな会話をしていた時だった。
『七瀬ー!見てるー!?』
『請願。六月達の晴れ姿、その目に焼き付けて下さい』
カメラに向けて話す五和姉と六月姉。実況と解説の女性がポカンとしていた。
『七瀬・・・?もしやこの後の第三試合で登場する、星導館の星野七瀬選手のことでしょうか・・・?』
『ひょっとして・・・七瀬選手は、お二人の弟さんってことッスか・・・?』
『イエス!』
『肯定。七瀬は六月達の可愛い弟です』
胸を張る二人。
『な、何ということでしょう!?七瀬選手は、星導館の序列三位・・・《覇王》として有名です!その七瀬選手が、五和選手と六月選手の弟だったとは!』
『しかもガラードワースには、五和選手と六月選手のお姉さん・・・《獅鷲星武祭》二連覇中のチーム・ランスロットのメンバーの、星野三咲選手がいるッス!つまり、三咲選手と七瀬選手も姉弟ということッスよね!?』
『こ、これはとんでもない繋がりが明らかになりましたーっ!』
「何バラしてくれてんだあああああっ!」
頭を抱える俺。
「まぁ、いずれ明らかになることだったと思いますよ?」
「そうだけどさぁ!何もこの場面でバラす必要無いじゃん!」
「・・・確かに」
苦笑しているクローディア。
と、来訪者を告げるチャイムが鳴った。空間ウィンドウを見た綺凛が、ロックを解除すると・・・
「おい七瀬!どういうことだ!?」
「あの二人、七瀬のお姉さん達なのかい!?」
「あの《絶剣》までお前の姉貴なのか!?」
「説明求む」
「詳しく聞かせてくれ!」
ユリス・綾斗・レスター・紗夜・夜吹が雪崩れ込んできた。
「お前ら落ち着け!ってか夜吹、何でお前までいんの!?」
「さっきまで天霧達の控え室にお邪魔してたんだよ!それより詳しく聞かせてくれ!」
「いや、詳しくって・・・事実としか言えないんだけど」
不本意ながら、とは言わなかった。
「うひょーっ!こりゃあスクープだぜ!」
嬉しそうな夜吹。このマスゴミ野郎・・・
「《絶剣》、《神速》、《閃光》・・・豪華なラインナップだな」
呆れているユリス。
「まさかお前が、三人の弟だったとは・・・」
「アハハ・・・」
苦笑する俺なのだった。
*****
「え!?じゃあさっきまで、ガラードワース三姉妹が揃ってたのか!?」
「まぁな」
「マジかよ!?こっちの控え室に来りゃあ良かったぜ!」
悔しそうな夜吹。結局、全員こっちの控え室で落ち着いていたのだった。
「しかも《聖騎士》に《光翼の魔女》までいたのか・・・面子が豪華すぎだろ」
「ネームバリューがハンパじゃない」
呆然としているレスターと紗夜。
と、実況アナウンサーが相手ペアの紹介をしていた。どうやら、アルルカントのペアらしい。
「お、そろそろ始まるみたいだね」
「《神速》と《閃光》のお手並み拝見といこうか」
綾斗とユリスがスクリーンに見入っている。実況の元気な声が響いた。
『それではいよいよ、本日の第一試合のスタートです!』
両ペアの胸の校章が発光した。が・・・
「あれ?」
不思議そうな声をあげる綺凛。
「ん?どうした?」
「い、いえ・・・五和さんも六月さんも、武器を出してませんけど・・・」
綺凛の言った通り、二人とも手に何も持っていない。
「あー・・・すぐ分かるさ」
「え・・・?」
綺凛が首を傾げたのと同時に、機械音声が試合開始を告げる。
『《鳳凰星武祭》Aブロック一回戦一組、試合開始!』
その直後、五和姉と六月姉が画面から消えた。そして・・・
『試合終了!勝者、星野五和&星野六月!』
アルルカントペアの校章が砕け散り、地面に落ちていた。
呆然としている二人の後ろでは、五和姉と六月姉が笑顔でハイタッチしている。片手には、細剣の煌式武装が握られていた。
シーンと静まり返っていた会場が、大歓声に包まれる。
『い、一体何が起きたのでしょうか!?私には何も見えませんでした!』
『いやー、速いッスねー』
解説の女性は、ちゃんと目で追えていたようだ。
『五和選手と六月選手が煌式武装を取り出して、起動させながら相手ペアに接近・・・そのまま相手ペアの校章を突いて破壊したッス』
『何と言う速さ!何と言う強さ!流石は優勝候補の一角!』
興奮している実況。一方、控え室は静まり返っていた。
「・・・速すぎだろ」
唖然としているレスター。
「沙々宮、追えたか・・・?」
「・・・全く」
首を横に振る紗夜。綾斗も険しい顔をしていた。
「剣の腕もかなりのものみたいだね。校章のみを狙って破壊してるし」
「あの剣・・・レイピアか?」
「そうだよ」
ユリスの問いに頷く俺。
「二人ともレイピアを愛用してる。威力より手数を重視してるんだ。あの二人の場合、威力は速さで補えるからな」
「確かに、あの速さでレイピアの突きを食らったら・・・受ける側の衝撃はかなりのものだろうな」
「あぁ、結構なダメージだぞ」
受けたことがあるので、あの威力はよく知っている。
「でも、何より警戒しないといけないのは・・・」
「コンビネーション、だな」
夜吹が言葉を引き継いでくれる。
「前回の《獅鷲星武祭》もチェックしてたけど・・・あれは厄介だぞ」
「えぇ。チーム・トリスタンを《獅鷲星武祭》の決勝まで導いた実力は、伊達ではないということです」
クローディアが頷く。険しい表情でスクリーンに見入る綺凛。
「・・・厳しい戦いになりそうですね」
「・・・あぁ」
試合を前に、気を引き締める俺達なのだった。
こんにちは、ムッティです。
最近ずっとポケモンやってます。
シャノン「いや、執筆活動しようよ!?」
大丈夫、まだストックあるから。
シャノン「それ去年も聞いたような・・・」
それではまた次回!
シャノン「ちょ、逃げるなー!」