学戦都市アスタリスク ~六花の星野七瀬~   作:ムッティ

37 / 149
鼻詰まりが治らない・・・


優勝候補

 「ハァ・・・疲れるわぁ・・・」

 

 再びソファに横たわり、綺凛に膝枕してもらう俺。

 

 ただでさえ気分が悪いのに、姉さん達が来るとは想像もしてなかったわ・・・

 

 「驚きました。七瀬さんのお姉様方がガラードワースにいらっしゃったとは・・・」

 

 「別に隠してたわけじゃないんだけどな。言う機会が無かったんだよ」

 

 綺凛の言葉に苦笑する俺。と、クローディアがため息をついた。

 

 「私としたことが・・・彼女達の名前は知ってましたのに、七瀬のお姉様方とは気付きませんでした」

 

 「あ、そっか。クローディアなら、三咲姉達のことは知ってるよな」

 

 「どういうことですか?」

 

 首を傾げる綺凛。クローディアが説明する。

 

 「彼女達は全員、ガラードワースの銀翼騎士団のメンバーなのです」

 

 「銀翼騎士団というと・・・ガラードワースの《冒頭の十二人》ですか!?」

 

 「えぇ。中でも三咲さんは序列三位・・・前回と前々回の《獅鷲星武祭》で優勝した、チーム・ランスロットのメンバーです」

 

 「えぇっ!?」

 

 驚愕している綺凛。

 

 「そういや前回の《獅鷲星武祭》で、クローディアのチームはランスロットに負けたんだっけ?」

 

 「えぇ、完敗でした」

 

 苦笑しているクローディア。

 

 「レティシアの校章だけは何とか破壊出来ましたが・・・《聖騎士》と《絶剣》の剣技の前に、成す術もありませんでしたね」

 

 「《絶剣》なんて仰々しいって、三咲姉は嫌がってるけどな」

 

 まぁ、そんな二つ名も付けられるだろう。何せ三咲姉の剣の腕は、アーネストに匹敵すると言われてるぐらいだしな。

 

 「五和さんと六月さんのことも、よく存じ上げていますよ。彼女達も、前回の《獅鷲星武祭》に出場していましたからね」

 

 「あの二人はランスロットじゃなくて、トリスタンの方だけどな」

 

 ガラードワースでは、序列一位から六位までがチーム・ランスロット、七位から十二位までがチーム・トリスタンとして《獅鷲星武祭》に出てくるからな。

 

 「チーム・トリスタンって、前回の《獅鷲星武祭》の準優勝チームですよね!?」

 

 「えぇ。中でも五和さん、六月さんのコンビネーションは抜群でした。あの二人を前衛として、他のメンバーがサポートするという戦術だったんですよ。決勝のランスロット戦こそ負けてしまいましたが、優勝してもおかしくないチームでしたね」

 

 「二対一なら、三咲姉も苦戦したかもしれないけど・・・同じチームにアーネストがいるんだもんな。ましてやレティシアもいるんだから、そりゃランスロットが勝つだろうよ」

 

 「ハァ・・・次回の《獅鷲星武祭》も苦戦しそうです」

 

 ため息をつくクローディア。綺凛が呆然としていた。

 

 「七瀬さんのお姉様方、凄いですね・・・」

 

 「性格がちょっと残念だけどな。それにしても、五和姉と六月姉が《鳳凰星武祭》に出てくるとは・・・予想外だったわ」

 

 三咲姉みたく、《獅鷲星武祭》だけかと思ってたんだけど・・・

 

 「ったく、厄介なペアが出てきたな・・・」

 

 「やはりお強いんでしょうね・・・」

 

 「強いな。五和姉も六月姉も、俺は一対一でも勝てたことないし」

 

 「七瀬さんがですか!?」

 

 驚愕している綺凛。

 

 「あぁ。ましてや二人同時なんて、俺一人じゃ手も足も出ないわ」

 

 「・・・かなり手強いですね」

 

 「まぁな。ただ、今回はタッグ戦だ。俺が一人で戦うわけじゃない」

 

 綺凛の頬にそっと手を添える。

 

 「綺凛が一緒ならチャンスはある。頑張ろうな」

 

 「七瀬さん・・・はいっ!」

 

 「おや、そろそろ第一試合が始まる時間ですね」

 

 そう言って、クローディアが空間スクリーンを展開させる。

 

 そこにはステージと、先ほどまでここにいた五和姉・六月姉の姿が映っていたのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 『さて、いよいよ第一試合が始まります!実況は私、ABCアナウンサーの梁瀬ミーコが務めさせていただきます!解説には界龍第七学院OGで、現エグゼクティブ・アラドファル部隊長のファム・ティ・チャムさんにお越しいただきました!』

 

 『ども、よろしくお願いするッス』

 

 ふわふわした巻き毛の女性と、黒髪を短く切り揃えた女性が映る。

 

 『さてさて、今更ですがルールの確認をしておきましょう。試合の決着としては、次の三つとなります。ペア両名の校章が破壊された場合、ペア両名が意識を消失した場合、ペアのどちらかがギブアップを宣言した場合です』

 

 『その辺りが、リーダーがやられたら負けとなる《獅鷲星武祭》との違いッスね』

 

 『さて、今回の《鳳凰星武祭》ではどのような戦いが見られるのでしょうか?それでは早速第一試合にまいりましょう!既に姿を現しているのは、ガラードワースの序列七位である星野五和選手と、同じく序列八位の星野六月選手であります!ご存知だとは思いますが、前回の《獅鷲星武祭》で準優勝を果たしたチーム・トリスタンのメンバーです!』

 

 『初の《星武祭》出場ながら、大活躍で一躍脚光を浴びた二人ッスねー。《神速》の五和選手に、《閃光》の六月選手・・・今回の《鳳凰星武祭》でも、間違いなく優勝候補と言えるッス』

 

 「・・・優勝候補、ですか」

 

 「だろうな。俺は出場することさえ知らなかったけど」

 

 「七瀬・・・もっと出場選手のことを調べて下さい」

 

 そんな会話をしていた時だった。

 

 『七瀬ー!見てるー!?』

 

 『請願。六月達の晴れ姿、その目に焼き付けて下さい』

 

 カメラに向けて話す五和姉と六月姉。実況と解説の女性がポカンとしていた。

 

 『七瀬・・・?もしやこの後の第三試合で登場する、星導館の星野七瀬選手のことでしょうか・・・?』

 

 『ひょっとして・・・七瀬選手は、お二人の弟さんってことッスか・・・?』

 

 『イエス!』

 

 『肯定。七瀬は六月達の可愛い弟です』

 

 胸を張る二人。

 

 『な、何ということでしょう!?七瀬選手は、星導館の序列三位・・・《覇王》として有名です!その七瀬選手が、五和選手と六月選手の弟だったとは!』

 

 『しかもガラードワースには、五和選手と六月選手のお姉さん・・・《獅鷲星武祭》二連覇中のチーム・ランスロットのメンバーの、星野三咲選手がいるッス!つまり、三咲選手と七瀬選手も姉弟ということッスよね!?』

 

 『こ、これはとんでもない繋がりが明らかになりましたーっ!』

 

 「何バラしてくれてんだあああああっ!」

 

 頭を抱える俺。

 

 「まぁ、いずれ明らかになることだったと思いますよ?」

 

 「そうだけどさぁ!何もこの場面でバラす必要無いじゃん!」

 

 「・・・確かに」

 

 苦笑しているクローディア。

 

 と、来訪者を告げるチャイムが鳴った。空間ウィンドウを見た綺凛が、ロックを解除すると・・・

 

 「おい七瀬!どういうことだ!?」

 

 「あの二人、七瀬のお姉さん達なのかい!?」

 

 「あの《絶剣》までお前の姉貴なのか!?」

 

 「説明求む」

 

 「詳しく聞かせてくれ!」

 

 ユリス・綾斗・レスター・紗夜・夜吹が雪崩れ込んできた。

 

 「お前ら落ち着け!ってか夜吹、何でお前までいんの!?」

 

 「さっきまで天霧達の控え室にお邪魔してたんだよ!それより詳しく聞かせてくれ!」

 

 「いや、詳しくって・・・事実としか言えないんだけど」

 

 不本意ながら、とは言わなかった。

 

 「うひょーっ!こりゃあスクープだぜ!」

 

 嬉しそうな夜吹。このマスゴミ野郎・・・

 

 「《絶剣》、《神速》、《閃光》・・・豪華なラインナップだな」

 

 呆れているユリス。

 

 「まさかお前が、三人の弟だったとは・・・」

 

 「アハハ・・・」

 

 苦笑する俺なのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「え!?じゃあさっきまで、ガラードワース三姉妹が揃ってたのか!?」

 

 「まぁな」

 

 「マジかよ!?こっちの控え室に来りゃあ良かったぜ!」

 

 悔しそうな夜吹。結局、全員こっちの控え室で落ち着いていたのだった。

 

 「しかも《聖騎士》に《光翼の魔女》までいたのか・・・面子が豪華すぎだろ」

 

 「ネームバリューがハンパじゃない」

 

 呆然としているレスターと紗夜。

 

 と、実況アナウンサーが相手ペアの紹介をしていた。どうやら、アルルカントのペアらしい。

 

 「お、そろそろ始まるみたいだね」

 

 「《神速》と《閃光》のお手並み拝見といこうか」

 

 綾斗とユリスがスクリーンに見入っている。実況の元気な声が響いた。

 

 『それではいよいよ、本日の第一試合のスタートです!』

 

 両ペアの胸の校章が発光した。が・・・

 

 「あれ?」

 

 不思議そうな声をあげる綺凛。

 

 「ん?どうした?」

 

 「い、いえ・・・五和さんも六月さんも、武器を出してませんけど・・・」

 

 綺凛の言った通り、二人とも手に何も持っていない。

 

 「あー・・・すぐ分かるさ」

 

 「え・・・?」

 

 綺凛が首を傾げたのと同時に、機械音声が試合開始を告げる。

 

 

 

 『《鳳凰星武祭》Aブロック一回戦一組、試合開始!』

 

 

 

 その直後、五和姉と六月姉が画面から消えた。そして・・・

 

 

 

 『試合終了!勝者、星野五和&星野六月!』

 

 

 

 アルルカントペアの校章が砕け散り、地面に落ちていた。

 

 呆然としている二人の後ろでは、五和姉と六月姉が笑顔でハイタッチしている。片手には、細剣の煌式武装が握られていた。

 

 シーンと静まり返っていた会場が、大歓声に包まれる。

 

 『い、一体何が起きたのでしょうか!?私には何も見えませんでした!』

 

 『いやー、速いッスねー』

 

 解説の女性は、ちゃんと目で追えていたようだ。

 

 『五和選手と六月選手が煌式武装を取り出して、起動させながら相手ペアに接近・・・そのまま相手ペアの校章を突いて破壊したッス』

 

 『何と言う速さ!何と言う強さ!流石は優勝候補の一角!』

 

 興奮している実況。一方、控え室は静まり返っていた。

 

 「・・・速すぎだろ」

 

 唖然としているレスター。

 

 「沙々宮、追えたか・・・?」

 

 「・・・全く」

 

 首を横に振る紗夜。綾斗も険しい顔をしていた。

 

 「剣の腕もかなりのものみたいだね。校章のみを狙って破壊してるし」

 

 「あの剣・・・レイピアか?」

 

 「そうだよ」

 

 ユリスの問いに頷く俺。

 

 「二人ともレイピアを愛用してる。威力より手数を重視してるんだ。あの二人の場合、威力は速さで補えるからな」

 

 「確かに、あの速さでレイピアの突きを食らったら・・・受ける側の衝撃はかなりのものだろうな」

 

 「あぁ、結構なダメージだぞ」

 

 受けたことがあるので、あの威力はよく知っている。

 

 「でも、何より警戒しないといけないのは・・・」

 

 「コンビネーション、だな」

 

 夜吹が言葉を引き継いでくれる。

 

 「前回の《獅鷲星武祭》もチェックしてたけど・・・あれは厄介だぞ」

 

 「えぇ。チーム・トリスタンを《獅鷲星武祭》の決勝まで導いた実力は、伊達ではないということです」

 

 クローディアが頷く。険しい表情でスクリーンに見入る綺凛。

 

 「・・・厳しい戦いになりそうですね」

 

 「・・・あぁ」

 

 試合を前に、気を引き締める俺達なのだった。

 




こんにちは、ムッティです。

最近ずっとポケモンやってます。

シャノン「いや、執筆活動しようよ!?」

大丈夫、まだストックあるから。

シャノン「それ去年も聞いたような・・・」

それではまた次回!

シャノン「ちょ、逃げるなー!」

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。