学戦都市アスタリスク ~六花の星野七瀬~   作:ムッティ

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劇場版『トリニティセブン』が楽しみすぎる。


明かされる事実

 「ったく、共同で煌式武装の開発とは・・・考えたもんだな」

 

 「フフッ、でしょう?」

 

 リビングでコーヒーを飲んでいる、俺とクローディア。

 

 サイラスが捕まったので、俺はユリスの部屋からクローディアの部屋へ戻ってきたのだった。

 

 「アルルカントのせいで、星導館は大変な被害を受けました。これくらいの旨味があっても良いでしょう?」

 

 「まぁな。ってか、サイラスはどうなったんだ?」

 

 「さぁ・・・後の処理は《影星》に一任しましたので」

 

 《影星》・・・星導館の特務機関の名前だ。一体どんな連中なのか・・・

 

 「ところで七瀬、例の件はユリス達に話していないでしょうね?」

 

 「安心しろ、話してないから」

 

 肩をすくめる俺。

 

 「アイツら、ビックリするだろうな・・・自律機動兵器が、《星武祭》へ代理出場することが認められるなんて」

 

 「結局、アルルカントの思い通りになってしまいましたね」

 

 ため息をつくクローディア。

 

 「アルルカントっていうか、エルネスタの思い通りって感じだな。まぁ、自立機動兵器を武器扱いするよりマシだろ」

 

 「ですね・・・武器扱いとなると、いくらでも持ち込めることになってしまいますし。代理出場ということなら、一体だけで済みますから」

 

 「ま、エルネスタとカミラは自信満々だったけどな。よっぽど良いのが作れたんだろ」

 

 「でしょうね・・・ところで七瀬」

 

 クローディアが思い出したように言う。

 

 「あの時、キューネさんの望みが分かるような気がすると仰っていましたが・・・彼女の望みとは一体・・・?」

 

 「あぁ、あれか?」

 

 俺は苦笑した。

 

 「多分だけど・・・自律機動兵器を学生として受け入れてもらうことだ」

 

 「・・・ッ!」

 

 息を呑むクローディア。

 

 「アイツ、自分の作った人形達に愛着があるみたいだったし。恐らくアイツの作った自律機動兵器っていうのも人型・・・擬形体なんだろうさ。まずは学生として受け入れてもらい、ゆくゆくは人間と擬形体の共存を目指すってところじゃないか?」

 

 「・・・つまり、人工知能との共存というわけですか」

 

 「あくまでも推測だけどな。六花園会議で左近さんの言ってたことが、エルネスタの意見だとすると・・・そういうことじゃないかと俺は思う」

 

 「なるほど・・・彼女は《彫刻派》ですし、擬形体に愛着があるのかもしれませんね」

 

 「《彫刻派》?」

 

 首を傾げる俺に、クローディアが説明してくれる。

 

 「アルルカントでは、研究の内容によって派閥が分かれているんです。キューネさんが代表を務める《彫刻派》は、擬形体の研究開発がメインなんですよ」

 

 「あ、なるほど」

 

 それであんな人形を作れたわけか・・・

 

 「ちなみにパレートさんが代表を務める《獅子派》は、煌式武装の研究開発がメインですね。その他にも様々な派閥が存在します」

 

 「マジか・・・内部の勢力争いとか激しそうだな」

 

 「まさにその通りで、研究費用や実戦クラスの有力生徒を取り合っているんですよ」

 

 苦笑するクローディア。

 

 「最大勢力は《獅子派》で、全体の約五割・・・およそ半分を占めています」

 

 「え、圧倒的じゃね?」

 

 「ところが大きい反面、まとまりに欠けているんです。アルルカントでは生徒会より、研究院の議会の方が力が強いのですが・・・議決には、三分の二以上の賛成票が必要とされています」

 

 「つまりそれを確保する為には、別の派閥と手を組む必要があるわけか・・・」

 

 何か政治みたいな話になってきたな・・・

 

 「えぇ。以前は《超人派》という派閥と手を組んでいたのですが、数年前に大きく勢力を減退させまして。少し前に新しく手を結んだのが、《彫刻派》というわけです」

 

 「それで両派閥の代表である、カミラとエルネスタが一緒だったのな」

 

 カミラが《獅子派》って言ってたから、エルネスタもそうだと思っていたが・・・

 

 「まぁ何はともあれ、あの二人には要注意ですね。《鳳凰星武祭》にどんな自律機動兵器を出してくるか分かりませんし」

 

 「だな。あの二人が作ったものなら、恐らくかなり手強いはずだ」

 

 ユリス達は大丈夫かなぁ・・・と、俺はふと綺凛のことを思い出した。

 

 「そうだクローディア、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」

 

 「何でしょう?」

 

 「刀藤綺凛って覚えてるか?ほら、ユリスと綾斗の決闘の時の・・・」

 

 「あぁ、刀藤さんですか?覚えてるも何も、彼女は有名人ですよ?」

 

 「え、有名人?」

 

 俺のキョトンとした様子を見て、クローディアが呆れていた。

 

 「あの時も気付いていないようでしたが・・・七瀬、本当に知らないんですか?」

 

 「全然」

 

 「ハァ・・・刀藤さんは、うちの序列一位ですよ?」

 

 一瞬、時が止まった。

 

 え、何?序列一位?ハハハ、そんなバカな・・・

 

 「ええええええええええ!?マジでええええええええええ!?」

 

 「マジですよ」

 

 ため息をつくクローディア。

 

 「入学初日に当時の序列十一位を決闘で下し、最初の公式序列戦で当時の序列一位を打ち負かした生徒・・・それが《疾風刃雷》の二つ名を持つ刀藤さんです

 

 「マジかよ・・・末恐ろしいな」

 

 「七瀬だって入学初日に、序列九位のマクフェイルくんを一撃で倒しているでしょう」

 

 苦笑するクローディア。

 

 「ユリスも打ち破り、今では序列五位・・・刀藤さんに負けず劣らずの有名人ですよ」

 

 「・・・そんな自覚一切ないんだけど」

 

 レスターは頭に血が上った状態だったから勝てただけだし、ユリスも勝ったっていうか胸を揉んだだけだしなぁ・・・

 

 「まぁそれはさておき、彼女は本当に強いですよ。序列一位ともなると、公式序列戦で指名されないことはまずありません。ですが彼女は三ヶ月間、ただの日本刀一本で一位の座を死守しています。対して他の学園の序列一位は、純星煌式武装の使い手か《魔女》のどちらかですからね。凄いとしか言えません」

 

 「確かに凄いな・・・」

 

 まさか序列一位だったとは・・・驚きだわ。

 

 「そういや、綺凛の伯父さんって学園関係者なのか?」

 

 「あぁ、刀藤鋼一郎氏ですね。彼は銀河の社員ですよ。極東エリアのスカウト関連部門を統括していて、かなり強い権限を持っています。銀河の幹部候補といったところですね」

 

 「幹部候補!?」

 

 銀河の幹部候補とか・・・ヤバいな。

 

 「ですが・・・彼が幹部になることはないでしょうね」

 

 あっさりと否定するクローディア。

 

 「え、何で?」

 

 「我が強すぎるんですよ」

 

 「は・・・?」

 

 キョトンとした顔の俺を見て、クスクス笑うクローディア。

 

 「彼はどうしても幹部の椅子に座りたいらしく、姪である刀藤さんを利用しようとしています。決闘相手やスケジュールなど、ほとんど彼が管理しているようです」

 

 「マジか・・・じゃあ綺凛は、伯父さんに無理矢理戦わされてるってことか?」

 

 「いえ、そうでもないようです。彼女は彼女で、何か目的があるみたいですよ」

 

 目的・・・?利用されてでも叶えたい望みがあるってことか・・・?

 

 「まぁそれはともかく・・・統合企業財体では、強すぎる我欲を持った方はある程度までしか出世できません。銀河に限らず、他の統合企業財体でも同様です」

 

 「へぇ・・・何か理由があるのか?」

 

 「えぇ。統合企業財体の幹部というのは、何段階もの精神調整プログラムを受ける必要があるんです。そうやって徹底的に我欲を排除された方のみ、幹部の椅子に座ることが出来るんですよ。だからこそ統合企業財体では、幹部以上の方々が関与するような不正はほとんど存在しません」

 

 「精神調整プログラム・・・」

 

 何だか嫌な響きだな・・・そんなものを受けなきゃいけないのか・・・

 

 「徹底的に我欲を排除って・・・それで人として生きていけるのか?まぁ欲が強すぎるのもどうかとは思うけど、欲があってこその人間だろ?」

 

 「本当にその通りだと思います」

 

 苦笑するクローディア。

 

 「ってかクローディア、ずいぶん詳しいな。統合企業財体の内部事情・・・特に幹部に関することは、基本的に極秘事項のはず・・・って、ご両親が銀河の上役なんだっけか」

 

 「あら、ご存知だったんですか?」

 

 「名前は言えないが、Y氏からの情報提供だ」

 

 「夜吹くんですね・・・」

 

 あ、即行でバレた・・・ため息をつくクローディア。

 

 「母は銀河の最高幹部です。父は母の補佐をしています」

 

 「・・・ッ!」

 

 あっさりと言ったクローディアの言葉に、俺は衝撃を受けた。最高幹部ということは、精神調整プログラムを受けたということだ。

 

 「・・・ゴメン、さっきのは失言だった。お前に言うべき言葉じゃなかった」

 

 「良いんですよ。私も七瀬の意見に同感ですから」

 

 笑っているクローディア。

 

 「幹部の方々が集まっているところは、なかなか面白いですよ。皆さん同じ人に見えてしまって、私もどれが母だか分からなかったくらいです」

 

 「クローディア・・・」

 

 「まぁそんなわけで、鋼一郎氏が幹部になるのは難しいでしょうね。彼はあまりにも我欲が強すぎますから」

 

 クローディアはそう言うと、ソファに座っていた俺の隣に移動してきた。そして、俺の肩にもたれかかってくる。

 

 「・・・本当に気になさらないで下さい。私も七瀬と同意見ですし、全然気にしていませんので」

 

 そう言って笑うクローディアの手を、俺はそっと握った。

 

 「・・・クローディアはさ、寂しいって思うこととか無いのか?」

 

 「フフッ、どうでしょうね。今は七瀬もいますし、綾斗やユリスもいますから」

 

 「そうだな・・・俺達が側にいる。だから、何かあったら頼ってくれよ」

 

 「勿論です。ノーマンくんの一件の時みたいに、顎で使っちゃいますからね」

 

 「・・・お手柔らかに頼むよ」

 

 苦笑する俺を見て、おかしそうにクスクス笑うクローディアなのだった。

 




二話続けての投稿となります。

シャノン「作者っち、ヒマなの?」

その言い方やめい!時間ができたの!

シャノン「じゃあ私の出番を・・・」

やだ。無理。余裕無い・・・・・めんどい(ボソッ)

シャノン「え、今めんどいって言った!?言ったよね!?」

それではまた次回!

シャノン「ちょ、無理矢理締めるなー!」

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