学戦都市アスタリスク ~六花の星野七瀬~   作:ムッティ

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案の定、投稿間隔が空いてしまった・・・


第三章《銀綺覚醒》
生徒会長代理


 サイラスが捕まってから一週間後。俺はクローディアに連れられて、六花園会議が行われるというホテルに来ていた。

 

 ってか、予想はしてたけど・・・

 

 「・・・超高級ホテルじゃん」

 

 「えぇ。各国のVIPや著名人が利用するホテルですから」

 

 クローディアが説明してくれる。六花園会議ってこんな場所でやるのかよ・・・

 

 「さて、最上階に行きましょうか」

 

 「最上階!?」

 

 この超高級ホテルの最上階って、どれほど豪華な部屋なんだろうか・・・

 

 わくわくしながら最上階へ上った俺は、着いた途端に唖然としてしまった。

 

 「・・・ここ、ホテルだよな?」

 

 「えぇ、そうですよ」

 

 俺の反応が面白かったのか、クスクス笑っているクローディア。

 

 最上階にあったのは、ドーム型の空中庭園だった。縦横に水路が張り巡らされ、色とりどりの花々が綺麗に咲いている。

 

 何だこの場所は・・・

 

 「おや、皆さん既にお揃いのようですよ」

 

 クローディアが呟く。見ると、庭園の中央部に洋風の四阿があった。六角形のテーブルが備えてあり、六つの椅子のうち四つが埋まっている。つまり、四人の生徒会長が座っていたのだ。

 

 クローディアが微笑む。

 

 「ごきげんよう、皆様。お元気そうで何よりです」

 

 「ようこそ、ミス・エンフィールド。相変わらず時間通りだね」

 

 柔らかな笑顔でクローディアを迎える、金髪の美男子。白を基調とした制服に、光輪の校章・・・ガラードワースの生徒会長か。

 

 と、金髪の美男子が俺を見て微笑む。

 

 「星野七瀬くんだね?聖ガラードワース学園の生徒会長、アーネスト・フェアクロフだ。以後、お見知りおきを」

 

 「初めまして、星野七瀬です。よろしくお願いします、フェアクロフさん」

 

 握手を交わす俺達。

 

 アーネスト・フェアクロフ・・・ガラードワースの序列一位で、生徒会長を務めている。《獅鷲星武祭》を二連覇中のチーム・ランスロットのリーダーでもあり、《獅鷲星武祭》を制覇する上で最大の壁だってクローディアが言ってたな・・・

 

 ちなみに、二つ名は《聖騎士》らしい。カッコいいなオイ。

 

 「アーネストで良いよ。君のことも七瀬と呼んで良いかな?」

 

 「勿論です」

 

 「おー、お主が《覇王》か!」

 

 「うおっ!?」

 

 いつの間にか、俺の隣に目をキラキラと輝かせた童女が立っていた。愛くるしい顔立ちと、蝶の羽のように丸く結わえた黒髪・・・そして胸には、黄龍の校章を付けている。

 

 ということは・・・

 

 「《万有天羅》・・・范星露さんですね?」

 

 「いかにも。気軽に星露と呼ぶが良いぞ、七瀬」

 

 楽しげに笑う童女・・・范星露。九歳にして界龍の序列一位であり、生徒会長を務めている。二つ名は《万有天羅》で、アスタリスク屈指の戦闘力を誇ると言われている。

 

 「よくぞ来てくれた。会いたかったぞ」

 

 「けっ、余計なマネしやがって」

 

 吐き捨てるように言う小太りの青年。色のくすんだ赤髪の持ち主で、胸には双剣の校章を付けている。

 

 あぁ、コイツがレヴォルフの生徒会長か・・・

 

 「初めまして、《悪辣の王》。お招きいただき、ありがとうございます」

 

 「別に好きで呼んだわけじゃねーよ。《万有天羅》たっての希望を断ると、色々と面倒なことになりそうだからな」

 

 そっぽを向く《悪辣の王》・・・ディルク・エーベルヴァイン。俺があまり関わりたくない人物の一人だ。

 

 ということは残りの一人、目の細い黒髪の青年が・・・

 

 「あなたがアルルカントの生徒会長さん・・・?」

 

 「は、はい・・・左近州馬といいます・・・」

 

 恐縮しながら名乗る青年。胸には、アルルカントの昏梟の校章を付けている。

 

 あのアルルカントの生徒会長がこの人か・・・思ってたのと違うな。

 

 「さて、これで全員揃ったね」

 

 アーネストさんが場を仕切る。

 

 「今回、クインヴェールは欠席だ。例によって委任状を預かっているよ。七瀬、悪いけど君はクインヴェールの席・・・ミス・クローディアの隣の席に座ってもらえるかな?」

 

 「了解です」

 

 俺はクローディアの隣の席に座った。

 

 「さて、改めて七瀬・・・よく来てくれたね」

 

 「いや、こっちこそ呼んでもらっちゃって・・・本当に良かったんですか?」

 

 「勿論だとも。我々も君には興味があったし、何より《万有天羅》の希望だからね」

 

 微笑むアーネストさん。と、星露さんがこっちをガン見していた。

 

 「んー、そそられるのう・・・」

 

 「・・・アーネストさん、星露さんの目がキラキラし過ぎてて怖いんですけど」

 

 「・・・気にしない方が良い。彼女はお気に入りを見つけるとああなるんだ」

 

 アーネストさんも苦笑している。と、《悪辣の王》が両足を机の上に放り投げた。

 

 うわ、態度悪いなコイツ・・・

 

 「それにしても、クインヴェールの小娘はこれで何度目の欠席だ?クソの役にも立ってねぇよ」

 

 「君は本当に口が悪いな・・・侮辱するような発言は止めたまえよ」

 

 アーネストさんが注意するが、《悪辣の王》は尚も言葉を続ける。

 

 「ま、見た目だけで選出された愚図共の代表だもんな。いなくて清々する・・・」

 

 そこまで言った瞬間、アーネストさんが剣の煌式武装を起動させる。そのまま剣を《悪辣の王》の喉元に突きつけようとしたところで、俺はその切っ先を掴んだ。

 

 「・・・ッ!」

 

 「その辺にしておきましょう、アーネストさん」

 

 驚いているアーネストさんに対し、微笑みかける俺。

 

 「寸止めのつもりだったとは思いますが、万が一という場合もありますし」

 

 「・・・そうだね。すまない、七瀬」

 

 剣をしまうアーネストさん。と、《悪辣の王》が嘲笑を浮かべていた。

 

 「ハッ、あの《聖騎士》殿が攻撃を止められるとはな。腕が落ちたんじゃねぇのか?まぁ、所詮はこの程度・・・」

 

 「・・・おい、黙れよブタ」

 

 俺の言葉に、その場の空気が凍った。

 

 「俺はお前を庇ったわけじゃない。お前如きのせいで、アーネストさんが処罰されるような事態を避ける為に止めたんだ。他人を侮辱することしか出来ないクズは黙ってろ」

 

 「テ、テメェ・・・」

 

 睨んでくる《悪辣の王》だが、俺が睨み返すと大人しく引き下がった。

 

 「さて、会議を始めましょうか?」

 

 「あ、あぁ。そうだね」

 

 気圧されていた感じのアーネストさんが、慌てて仕切り直した。

 

 「それじゃ、今日の案件だけど・・・」

 

 「あ、あのぉ・・・」

 

 おずおずと手を挙げたのは、左近さんだった。

 

 「急な話になりますが、今回の議題に上げさせていただきたい案件がありまして」

 

 「ほうほう、何事じゃ?」

 

 興味津々の星露さん。

 

 「今回皆さんに提案させていただきたいのは、人工知能の取り扱い及びその権利についてです」

 

 「人工知能・・・ですか?」

 

 クローディアが首を傾げる。

 

 「はい。落星工学が発展したことで、人間に近い自我を持った人工知能の誕生は間違いありません。ですが《星脈世代》がそうであったように、人工知能に対する法整備は難航することでしょう。そこでまずは我々が、モデルケースのような形で人工知能を受け入れる態勢を作れたらと・・・」

 

 「・・・それはつまり、アスタリスクの学生として受け入れるということかい?」

 

 呆れた表情のアーネストさん。

 

 「えぇ。《星武祭》にも参加を・・・」

 

 「アホか。論外だ」

 

 《悪辣の王》が左近さんの意見を切り捨てる。

 

 「アルルカントが機械を学生扱いしようと勝手だが、《星武祭》に出そうってんなら話は別だぞ」

 

 「そうですね、いくら何でも無理のある提案だと思います」

 

 「星武憲章の年齢規定に、自我の有無の判定・・・少し考えただけでも問題が多すぎるね。反対せざるを得ないな」

 

 クローディアとアーネストさんも反対する。星露さんだけが不満そうにしていた。

 

 「なんじゃ、ぬしらは皆反対か。つまらんのう」

 

 「星露さんは賛成なんですか?」

 

 「無論じゃ。その方が面白そうじゃからの」

 

 俺の質問に笑う星露さん。この人、マジで自由人だな・・・

 

 「さて七瀬、君の意見はどうだい?」

 

 俺に話を振ってくるアーネストさん。いやいやいや・・・

 

 「俺は生徒会長でもないですし、個人的な発言は出来ませんよ」

 

 「構わないさ。というより、してくれないと困るんだよ」

 

 苦笑するアーネストさん。

 

 「何しろ君は今、クインヴェール生徒会長の代理なんだからね」

 

 『は・・・?』

 

 アーネストさん以外の全員が、ポカンと口を開けている。え、今何て言った?

 

 「あ、あの・・・どういうことでしょう?七瀬は星導館の生徒のはずですが・・・」

 

 「あぁ、僕も驚いたんだけどね・・・」

 

 戸惑った表情のクローディアに、同じく戸惑った表情で返すアーネストさん。

 

 「預かった委任状には、こう書かれていたんだよ。『クインヴェール女学園・生徒会長の名の下に、シルヴィア・リューネハイムは《覇王》星野七瀬の意見を支持するものとする』ってね。つまり七瀬の意見が、ミス・リューネハイムの意見・・・ひいてはクインヴェールの意見そのものということだ。これを代理と言わずして何と言うんだい?」

 

 アーネストさんの言葉に、誰も何も言えなかった。おいおいマジかよ・・・

 

 「・・・おい、《覇王》」

 

 俺を睨んでくる《悪辣の王》。

 

 「テメェ、あの小娘とどういう関係だ?」

 

 「ちっちゃいことは気にすんな!それワカチコワカチコ~♪」

 

 「ちっちゃくねぇし気にするわ!あとネタが古いんだよ!」

 

 「まぁまぁディルクっち、クッキーでも食べようぜ」

 

 「誰がディルクっちだ!ってか、そのクッキー何処から取り出したんだ!?」

 

 「んー、美味いのう」

 

 「何でテメェは食ってんだクソガキ!」

 

 クッキーを頬張る星露さんにキレる《悪辣の王》。

 

 「七瀬、茶化さないで下さい」

 

 クローディアがたしなめてくる。そうは言ってもなぁ・・・

 

 「どういうつもりなのか、俺にも分からないんだよ。本人に直接聞いてくれ」

 

 「ふざけんな!そんな言い訳が通用するとでも・・・」

 

 「別に良いではないか」

 

 《悪辣の王》の言葉を、クッキーを食べていた星露さんが遮る。

 

 「二人がどんな関係であったとしても、それはプライベートなことじゃ。ここで問い質すのは野暮というものよ」

 

 「そうはいくか!そのプライベートな関係を、この場にまで持ち出されてんだぞ!?他学園の生徒を代理にしやがって!」

 

 「はて?話を聞く限り、代理とは一言も言っておらんかったぞ?あくまでも支持すると言っておっただけじゃ」

 

 「同じだろうが!コイツの意見がクインヴェールの意見ってことだぞ!?そんなの認められるわけ・・・」

 

 「・・・くどいぞ、小僧」

 

 星露さんの今までより低い声に、途中で黙る《悪辣の王》。何だこの威圧感・・・

 

 「クインヴェールの生徒会長が、『七瀬の意見を支持する』と言っておるのじゃ。なら七瀬に聞くべきは、この案件に対する七瀬の意見じゃろうが。くだらん詮索などよさんか、バカモノめ」

 

 あまりの威圧感に、誰も口を開くことが出来なかった。

 

 なるほど、流石は界龍の序列一位にして生徒会長・・・恐ろしいなんてもんじゃないな。

 

 「それで七瀬、ぬしは賛成か?それとも反対か?」

 

 星露さんが尋ねてくる。俺は素直な意見を言うことにした。

 

 「そもそも、この多数決に意味なんてありませんよ」

 

 「どういう意味だい・・・?」

 

 訝しげなアーネストさん。俺は左近さんを見た。

 

 「だってこの時点で、完全に左近さんの掌の上で踊らされてますし」

 

 「・・・ッ!?」

 

 驚愕している左近さん。やっぱりか・・・

 

 「おい、どういうことだ!?」

 

 「踊らされている・・・とは?」

 

 どうやら、皆分かっていないようだ。

 

 「この提案が蹴られることは、左近さんも分かってるんですよ。左近さんの目的は、皆さんにこの提案を否定させることなんですから」

 

 「何故否定させる必要があるのじゃ?」

 

 首を傾げる星露さん。

 

 「皆さんに散々否定させた後で、こう言う為ですよ。『自我の有無に関わらず、あくまでも武器として扱うということでよろしいですか?』ってね」

 

 『・・・ッ!』

 

 その場の全員が息を呑んだ。ようやく分かったか・・・

 

 「つまり《星武祭》に自立機動兵器をどれだけ持ち込もうが、それらはあくまでも武器として扱われるということです。星武憲章には、武器武装の形状を制限する項目はありませんからね。人工知能を学生扱いすることに反対したとはいえ、皆さんはこれを受け入れるわけにはいかない・・・これは皆さんに本腰を入れて話し合ってもらう為の、左近さんの作戦なんですよ。ね、左近さん?」

 

 「・・・まさか読まれていたとは。流石ですね・・・」

 

 感嘆のため息をつく左近さん。

 

 「まぁそういうわけなんで、本腰を入れて話し合ってみてはどうでしょう?って言うのが俺の意見です」

 

 「んー、七瀬はやっぱり面白いのう!」

 

 また目がキラキラしている星露さん。

 

 「七瀬、今からでも界龍に来る気はないかの!?」

 

 「ダメですよ、七瀬は渡しません」

 

 微笑むクローディア。

 

 「まぁ七瀬の言う通り、本腰を入れて話し合う必要がありそうですね」

 

 「そうせざるを得ないね。それがクインヴェールの意見でもあるんだから」

 

 苦笑しているアーネストさん。

 

 「チッ・・・仕方ねぇな」

 

 《悪辣の王》も舌打ちしつつ同意した。笑みを浮かべる左近さん。

 

 「ありがとうございます。これで僕も怒られずに済みそうですよ」

 

 怒られずに済む、か・・・つまりこの提案は、左近さんのものではないということだ。

 

 一体誰のものなのか、気になる俺なのだった。

 




こんにちは、ムッティです。

二週間ぶりですね!

・・・はい、スイマセン。

相変わらずドタバタしておりました。

引き続き、頑張って投稿していきたいと思います。

それではまた次回!

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