学戦都市アスタリスク ~六花の星野七瀬~   作:ムッティ

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ポケモン面白いわぁ・・・


本来の力

 「言ったろ?お前を守ってみせるって」

 

 泣いているユリスに、笑顔を向ける俺。と、サイラスが驚愕していた。

 

 「ど、どうしてここが分かったんです!?」

 

 「お前に説明してやる義理は無い」

 

 サイラスを睨みつける俺。右足に星辰力を集め、思いっきり人形を蹴りつける。人形は後ろに吹き飛び、サイラスに激突した。

 

 「ギャッ!?」

 

 そのまま吹き飛んでいくサイラスと人形。

 

 ユリスの方を振り向くと、綾斗がユリスを拘束していた人形を真っ二つに斬ったところだった。人形が倒れ、解放されるユリス。

 

 「ユリス、大丈夫かい?」

 

 「綾斗・・・ぐっ!」

 

 顔を歪め、地面に膝をつくユリス。太ももから血が流れている。

 

 「ユリス!?」

 

 「・・・足に力が入らん」

 

 弱々しく呟くユリス。俺は二人の側に歩み寄った。

 

 「ユリス、立てそうか?」

 

 「いや、無理そうだ・・・すまない・・・」

 

 「それを謝る前に、一人で突っ走ったことを謝れや」

 

 「うぐっ・・・」

 

 言葉に詰まるユリスの頭に、俺はポンッと手を置いた。

 

 「・・・ったく、どんだけ心配したと思ってんだ」

 

 「七瀬・・・」

 

 「帰ったらメイド服で、『お帰りなさいませ、ご主人様♪』って言ってもらうからな」

 

 「ハァッ!?」

 

 「あ、猫耳付けて語尾に『にゃんっ♪』って付けてくれる?」

 

 「どんな要望だ!?」

 

 「・・・面白いなぁ、七瀬は」

 

 綾斗が苦笑している。と・・・

 

 「・・・生かして帰すと・・・思ってるんですか・・・?」

 

 サイラスがボロボロの状態で立っていた。あ、生きてたんだ・・・

 

 「お前こそ、無事で済むと思ってないよな?」

 

 「もう既に無事ではないんですけど!?」

 

 「《星脈世代》なら、あれぐらいどうってことないだろ」

 

 「《星脈世代》でこれだけボロボロですからね!?普通の人間なら死んでますよ!?」

 

 「殺す気でやったからな」

 

 サイラスを睨みつける俺。

 

 「友達を殺そうとした奴に手加減してやれるほど、俺は大人じゃねぇんだよ。覚悟は出来てんだろうな・・・サイラス」

 

 「・・・あなたを相手にしたくはありませんでしたが、致し方ありません。まとめて始末して差し上げます!」

 

 サイラスが指を鳴らすと、吹き抜けから続々と人形が飛び降りてくる。それを見たユリスが驚いていた。

 

 「まだこんなにいたのか!?」

 

 「えぇ。ユリスさん相手なら、耐熱限界を上げた人形だけで十分でしたが・・・僕も本気でお相手しましょう。百体を超える人形軍団でね!」

 

 百体ねぇ・・・と、綾斗が前へ進み出た。

 

 「七瀬、コイツらの相手は任せてもらって良いかな?」

 

 「・・・ソイツを試したいってか?」

 

 「まぁね」

 

 綾斗の右手には、純白の大剣が握られていた。純星煌式武装《黒炉の魔剣》だ。綾斗は適合率検査を突破し、《黒炉の魔剣》の使い手になったらしい。

 

 俺もついさっき聞いたんだけどな。

 

 「コイツを受け取ってから、試す機会が全然無くて・・・相手が人形なら、思いっきりやれるからね」

 

 「・・・分かったよ。暴れてこい」

 

 「ありがとう」

 

 綾斗は笑うと、大剣を構えた。そして・・・

 

 「内なる剣を以って星牢を破獄し、我が虎威を解放す!」

 

 そう叫んだ瞬間、綾斗の星辰力が爆発的に高まった。

 

 「な、何だ!?」

 

 戸惑っているユリス。複数の魔方陣が綾斗の周囲に浮かび上がり、光の火花を散らしながら砕け散る。

 

 固く縛り付けていた鎖が外れたみたいだな・・・

 

 「なるほど・・・それが本当の力か」

 

 「そうとも言えるかな・・・じゃ、行ってくるね」

 

 次の瞬間、綾斗はその場から消えていた。次々と人形達がバラバラになっていく。

 

 「な、何だ!?何が起きている!?」

 

 サイラスは訳が分からないようだ。

 

 「アイツは何処に消えた!?」

 

 「ここだよ」

 

 「ヒッ!?」

 

 綾斗はサイラスの真後ろに立っていた。握っていた《黒炉の魔剣》の刀身には、いつの間にか黒い紋様が浮かんでいた。あれが本来の姿なんだろうな。

 

 それにしても・・・

 

 「えげつないなぁ・・・」

 

 レスターとランディを安全な場所へ移動させつつ、思わず呟く俺。既に人形軍団の三分の一はやられている。切り口が赤熱しており、刃物で切ったというより高熱で焼き切られたみたいだ。

 

 綾斗の速さと剣の腕に加え、《黒炉の魔剣》のこの威力・・・恐ろしいな・・・

 

 「つ、潰せっ!潰せえええええっ!」

 

 明らかに動揺しているサイラス。人形軍団が綾斗に襲いかかるが、綾斗は次々と人形を屠っていった。

 

 そして・・・

 

 「・・・もう終わりかい?」

 

 「そ、そんな・・・」

 

 愕然としているサイラス。百体を超える人形軍団は、一体残らず斬り伏せられた。綾斗一人の手によって。

 

 「す、凄いな・・・」

 

 ユリスも唖然としていた。と、綾斗がサイラスの方へ一歩踏み出した。

 

 「さて・・・サイラス、大人しく降伏するんだ」

 

 「くっ・・・こうなったら・・・!」

 

 サイラスが大きく腕を振ると、またしても吹き抜けから人形が飛び降りてきた。他の人形の五倍はある大きな身体で、人というよりゴリラのような体型だ。

 

 「頼んだぞ、僕のクイーン!」

 

 サイラスはそう叫ぶと、倒れていた人形の残骸に掴まった。残骸がふわりと浮き、そのままサイラスと共に吹き抜けを上っていく。

 

 「いや、逃げるんかい」

 

 「かっこ悪いなアイツ」

 

 呆れる俺とユリス。とりあえず追いかけたいけど・・・

 

 「あのゴリラが邪魔だよなぁ・・・」

 

 「話も通じないだろうしね」

 

 苦笑している綾斗。

 

 「俺がゴリラを倒すから、七瀬はサイラスを追ってくれ」

 

 「了解。って言っても、追いつけるか微妙だけど」

 

 「ふん、だったら私の出番だな」

 

 不敵に笑うユリス。そして高らかに叫んだ。

 

 「咲き誇れ!極楽鳥の燈翼!」

 

 ユリスの背中から、何枚もの焔の翼が広がった。

 

 「もしかして飛べるのか!?」

 

 「当然だ。行くぞ七瀬!」

 

 「うおっ!?」

 

 ユリスは俺を後ろから抱きかかえ、翼を羽ばたかせた。身体が宙に浮き、吹き抜けに向かって飛んでいく。

 

 そうはさせまいと、ゴリラが拳を放ってくるが・・・

 

 「天霧辰明流中伝・・・九牙太刀!」

 

 両手足が切断され、地響きを上げて倒れこむゴリラ。凄いな綾斗・・・

 

 「頼んだよ、二人とも!」

 

 「おう!」

 

 「任せろ!」

 

 俺とユリスはそう言うと、一直線に吹き抜けを上っていった。凄まじい加速で吹き抜けを飛び出し、サイラスを追い抜いてから反転する。

 

 「いっけえええええ!」

 

 そのままサイラス目掛けて加速。俺は右の拳に星辰力を集中させた。

 

 「や、やめろおおおおおおおおおおっ!?」

 

 絶叫するサイラスの顔面に、全力の右ストレートを叩き込む。サイラスはもの凄い勢いで吹っ飛び、隣のビルに激突した。

 

 ユリスの加速もあったし、かなりの威力だったな・・・

 

 「お、おい・・・アイツ死んでないよな・・・?」

 

 「《星脈世代》だし、多分大丈夫だろ」

 

 顔が引きつっているユリスに対し、呑気に答える俺。

 

 と、俺の端末に着信が入った。端末を操作して空間ウィンドウを開くと、呆れ顔のクローディアの姿が映った。

 

 『・・・七瀬、やりすぎです』

 

 「ゴメンゴメン。ってか、見てたのか?」

 

 『えぇ、ビルの周辺で待機していましたから。ノーマンくんが逃げられないよう、周りを固めていたんです』

 

 「ってことは、特務機関は動かせたのか?」

 

 『おかげさまで、ようやく動かすことが出来ました。これからノーマンくんの捕縛に向かいますので、後は我々にお任せ下さい』

 

 「頼んだ。あ、迎えを寄越してもらえるか?ユリスが足をケガしてて、レスターとランディもボロボロなんだ」

 

 『了解です。すぐに手配しますので、少々お待ち下さい』

 

 「よろしく」

 

 通信が終了する。俺はため息をついた。

 

 「やれやれ、とりあえず一段落だな」

 

 「そうだな」

 

 ユリスと笑い合う。それにしても・・・

 

 「良い眺めだなぁ・・・」

 

 上空から、美しい夜景を眺める俺達。何だか凄く幻想的だ。

 

 「美しいな・・・」

 

 呟くユリス。

 

 「学生同士を闘わせて、それに世界中が熱狂している・・・実に下劣でくだらない都市だと思っていたが、案外捨てたものではないかもしれんな・・・」

 

 「・・・そうだよ。確かにここは、あらゆる欲望が渦巻いている都市だけど・・・それだけじゃない。ここでしか出来ないこと、得られないものがたくさんある」

 

 俺はユリスに笑いかけた。

 

 「俺はここに来て良かったと思ってるよ。ユリスにも出会えたしな」

 

 「なっ・・・お、お前はまた恥ずかしいことを・・・!」

 

 「照れるなよユリちゃん♪」

 

 「だ、誰がユリちゃんだ!照れてなどいないからな!」

 

 そう言いつつ、顔が真っ赤なユリス。その時だった。

 

 「ああああああああああっ!?」

 

 綾斗の絶叫が聞こえた。かなり苦しそうな声だ。

 

 「ッ!ユリス、綾斗のところへ戻るぞ!」

 

 「わ、分かった!」

 

 ユリスが急降下し、吹き抜けを下っていく。そして先ほどの場所に戻ってくると・・・

 

 「な、何だ!?」

 

 ユリスが驚愕している。綾斗の周りを、複数の魔方陣が取り囲んでいた。さっき砕け散った魔方陣と同じものだ。そこから出現した光の鎖が、綾斗の身体を何重にも縛りつけていく。

 

 綾斗の身体から力が抜け、その場に倒れこんだ。

 

 「綾斗!?」

 

 急いで綾斗に駆け寄る。どうやら、意識を失っているようだ。

 

 「これが禁獄の力か・・・」

 

 「七瀬、一体どういうことなのだ!?」

 

 訳が分からないといった様子のユリス。

 

 「・・・綾斗は五年前、実の姉に《魔女》の能力で力を封印されたらしい。それ以来、本来の力を大きく制限されているんだとさ」

 

 「先ほどのあれが、綾斗の本当の実力ということか・・・?」

 

 「だろうな」

 

 さっきの綾斗は本当に強かった。《冒頭の十二人》入りどころか、序列一位になれるかもしれないほどだったし。

 

 「綾斗の力を封印した直後、お姉さんは失踪したらしい。だから綾斗も、どうしてお姉さんがこんなことをしたのか分からないんだと」

 

 「そうだったのか・・・それにしても、綾斗の姉はどうしてそんなマネを・・・」

 

 「ホントにな・・・」

 

 倒れている綾斗を見つめる、俺とユリスなのだった。

 




二話続けての投稿となります。

次話でユリス襲撃編は終わりですね。

早く綺凛ちゃんを出したいところです。

シャノン「作者っちー!私の出番をもっと増やしてよー!」

やだ。無理。余裕無い。

シャノン「メッチャ拒絶された!?」

それではまた次回!

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