学戦都市アスタリスク ~六花の星野七瀬~   作:ムッティ

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西沢幸奏さんの新曲『帰還』が良い曲すぎる・・・

もう一度劇場版『艦これ』を観に行きたい・・・


六花園会議

 「・・・なるほど。人形ですか・・・」

 

 俺・ユリス・綾斗の三人は、クローディアの部屋を訪れていた。ちなみに綾斗は女子寮へ入る許可が無いので、窓から侵入している。

 

 初めてユリスと出会った時のこともあり、本人はあまり乗り気ではなかったが。

 

 「あぁ、これで分かったことがある」

 

 自分の考えを述べる俺。

 

 「一連の事件の裏にいるのは・・・恐らくアルルカントだ」

 

 「だろうな。あれほどの人形を作ることが出来るのは、アルルカントしかあるまい」

 

 ユリスも同意する。アルルカント・アカデミー・・・他の学園の追随を許さない技術力を持つ学園だ。

 

 つまりアルルカントが黒幕で、うちの生徒を使って好き放題やってくれているというわけだ。

 

 「他の学園が絡んでいるとはね・・・」

 

 ため息をつく綾斗。綾斗にも事情を全て説明した。これだけ巻き込んでしまっている以上、説明しないと逆に危険だしな。

 

 「ところで、犯人が分かったというのは本当ですか?」

 

 「あぁ、恐らく間違いない」

 

 「誰ですか?」

 

 クローディアの質問に、俺は一拍置いてから答えた。

 

 「・・・サイラスだ」

 

 「・・・ッ!」

 

 息を呑むクローディア。

 

 「本当なんですか・・・?」

 

 「あぁ。アイツは、犯人しか知りえない情報を知っていたからな」

 

 「と言うと?」

 

 「今日、アイツはこう言ったんだ・・・三件の決闘、ってな」

 

 「・・・それが何か?」

 

 ピンときていない様子のクローディア。

 

 「クローディア、お前ともあろう奴が気付かないのか?」

 

 呆れているユリス。

 

 「公に知れ渡っているのは、二件目の決闘・・・私と七瀬の決闘時の襲撃のみだ。一件目の綾斗との決闘では、一般生徒は誰も襲撃に気付いていなかっただろう」

 

 ユリスの言葉にハッとするクローディア。綾斗も続ける。

 

 「そして三件目・・・ユリスと紗夜の決闘に関しては、ユリスが襲撃者を撃退したっていう点しか取り上げられなかった。紗夜がその場にいたことさえ報道されなかったのに、アイツは決闘のことを知っていた。まぁ、正しくは決闘未遂だけどね」

 

 「しかも、だ」

 

 俺は更に続けた。

 

 「アイツは《魔術師》で、能力は物体操作だったはずだ。つまり、人形を操ることが可能なんだよ。状況さえ分かるなら、襲撃の現場にいる必要は無いしな。それこそ、人形にカメラでも持たせたら良いわけだ」

 

 「なるほど・・・つまりアリバイがあってもおかしくない、ということですか・・・」

 

 考え込むクローディア。

 

 「分かりました、こちらでも調べてみましょう。もしかすると、特務機関を動かせるかもしれません」

 

 「頼んだ」

 

 ここまで掴んだ以上、動いてもらわないと困るしな・・・

 

 「ですが・・・気を付けて下さい。ノーマンくんが犯人だとして、今日の状況を見ていたのなら・・・人形に気付かれたことを知っているはずです。となると、強行手段に打って出てくる可能性があります」

 

 「そうだな・・・今までは私が標的だっただろうが、七瀬と綾斗も標的になってしまった可能性がある・・・」

 

 俯くユリス。

 

 「二人とも、すまない・・・」

 

 「謝んなよ。ボディーガードを引き受けた時点で、それぐらい覚悟してる」

 

 「俺も大丈夫だよ。ユリスが気にすることじゃないさ」

 

 笑う俺達。どの道、ここまで首を突っ込んだ以上は戻れないしな。

 

 「う、うむ・・・ありがとう」

 

 頬を赤く染めつつ、お礼を言うユリス。しかし何処か浮かない表情のユリスが、俺は気になっていたのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 話し合いも終わり、綾斗は男子寮へと帰った。俺はユリスを先に部屋へと帰し、クローディアの部屋に残ったのだった。

 

 「よろしかったんですか?ユリスと一緒に部屋に戻らなくて」

 

 「一緒に部屋に戻ると、途中で他の女子に会った場合マズいだろ。この間もシャノンに出くわして大変だったし」

 

 あの時はマジで焦った・・・誤魔化したけど、怪しんでたよなアイツ・・・

 

 クローディアがクスクス笑う。

 

 「あらあら、それは災難でしたね。ですが・・・本当にそれだけですか?何か私に話があるのでは?」

 

 「・・・敵わないなぁ、クローディアには」

 

 苦笑する俺。

 

 「・・・実は今日、レヴォルフの奴らに襲われてな」

 

 「レヴォルフに・・・?」

 

 険しい顔をするクローディア。

 

 「アルルカントだけでなく、レヴォルフも関与しているのですか・・・?」

 

 「いや、多分違うな。誰かに依頼されたって言ってたから、恐らくサイラスが金でも積んだんだろ。目的は・・・俺を潰すことだった」

 

 「・・・ッ!ではやはり、七瀬も標的に・・・」

 

 「されちまったみたいだな。ユリスを潰すのに俺が邪魔なのか、俺がユリスと《鳳凰星武祭》に出る可能性を考えたのか・・・」

 

 「・・・恐らく両方でしょうね。私がボディーガードを頼んだせいで、こんなことになってしまって・・・本当に申し訳・・・」

 

 「ていっ」

 

 「あうっ」

 

 謝ろうとするクローディアの頭に、勢いよくチョップをかます。頭を押さえ、涙目になるクローディア。

 

 「な、何をするんですか!?」

 

 「いや、何となく」

 

 「何となくで人の頭にチョップしないで下さい!」

 

 涙目で抗議してくるクローディア。俺はクローディアの頭を撫でた。

 

 「・・・クローディアに頼まれなくても、俺はユリスを守るつもりだったよ。どの道、狙われることになってたと思う。だから気にすんな。お前が謝ることじゃないんだから」

 

 「七瀬・・・」

 

 「ユリスにも話そうかと思ったけど、アイツはきっと気にするだろうから止めたんだ。クローディアも気にすると思ったけど、お前の耳に入れておかないのはマズいと思ったから話した。気を遣わせてゴメンな」

 

 謝る俺。クローディアは目を伏せ、俺に抱きついてきた。

 

 「・・・七瀬は優しいですね。その優しさが、ユリスの心を開いたんだと思います」

 

 「そうか・・・?」

 

 「そうです。あなたの優しさに、ユリスは救われているはずです。私もそうですから」

 

 「・・・なら良かった」

 

 俺はクローディアを優しく抱き締め返した。あ、そうだ・・・

 

 「クローディア、ちょっと聞きたいことがあるんだ」

 

 「何でしょう?」

 

 顔を上げるクローディア。

 

 「《吸血暴姫》・・・イレーネ・ウルサイスについてなんだけど」

 

 「・・・女性の身体を堪能している時に、別の女性の話題ですか?」

 

 「その言い方止めてくんない!?」

 

 確かに抱き合ってるけども!たわわに実った二つの果実が、俺の身体に押し付けられているけども!

 

 「フフッ、冗談ですよ。何故《吸血暴姫》について聞きたいんですか?」

 

 「レヴォルフの奴らに襲われた時、助けてもらってな。そのお陰で、早くユリス達と合流できたんだ」

 

 「あの《吸血暴姫》が助けてくれたんですか・・・?」

 

 驚いているクローディア。え、そんな驚くことなのか?

 

 「あぁ。で、連絡先とか聞く暇も無くてさ。ちゃんとお礼がしたいんだけど、連絡先とか知ってたりしないか?」

 

 「残念ながら存じ上げませんね・・・ですが、彼女と連絡を取れるかもしれない方法でしたらあります」

 

 「と言うと?」

 

 「近々、六花園会議が開かれるんです。六学園の生徒会長達が集まる場ですので、当然レヴォルフの生徒会長も出席されます。彼に直接聞いてみるのはいかがでしょう?」

 

 提案するクローディア。俺は顔をしかめた。レヴォルフの生徒会長ってことは・・・

 

 「・・・《悪辣の王》か」

 

 「えぇ、ディルク・エーベルヴァインです」

 

 ディルク・エーベルヴァイン・・・非《星脈世代》にして、レヴォルフの生徒会長の座についている男だ。他の学園について詳しくない俺ですら、奴については悪い噂しか聞いたことがない。

 

 まぁレヴォルフの生徒会長という時点で、印象としては最悪だが。

 

 「あまり関わりたくないんだけどなぁ・・・」

 

 「お気持ちは分かりますが・・・《吸血暴姫》と連絡を取りたいなら、今のところ彼に聞くしかないと思いますよ」

 

 「だよなぁ・・・ってか、そもそも六花園会議って俺が行っても良いのか?」

 

 「本来、六人の生徒会長しか出席を認められていないんですが・・・どうやら界龍の生徒会長が、七瀬に興味を示しているようでして」

 

 「界龍の生徒会長っていうと、確か最年少の・・・」

 

 「えぇ、三代目《万有天羅》・・・范星露です」

 

 「まだ九歳だっけ?それで界龍の序列一位ってヤバくね?」

 

 「あの方の強さは別次元ですからね」

 

 クローディアがそこまで言うってことは、相当なんだろうな・・・

 

 「その《万有天羅》が、何で俺に?」

 

 「ネットに流れている、七瀬の決闘動画を見たそうですよ。一度会ってみたいから、今度の六花園会議に連れてきてくれとのことです」

 

 「いやいや、他の学園の生徒会長達が許すわけ・・・」

 

 「全員が承知して下さいました」

 

 「嘘だろ!?」

 

 それで良いのか生徒会長達!?

 

 「まぁ《万有天羅》たってのご希望ですから。それに他の生徒会長達も、少なからず七瀬に興味を示しているようです。特にクインヴェールの生徒会長は、今度の六花園会議に出席できないみたいでして。《覇王》に会いたかった、と悔しがっていましたよ」

 

 「・・・そっか」

 

 「あら、嬉しくないんですか?至高の歌姫にして、世界最高のアイドル・・・あのシルヴィア・リューネハイムが、七瀬に会いたかったと言っているんですよ?」

 

 「・・・嬉しいけど、俺みたいな奴が会うなんて恐れ多いだろ。会うなら《星武祭》で優勝するとか、彼女と同じく序列一位になるとか・・・それぐらいの存在にならないと」

 

 「そうでしょうか・・・?」

 

 「そうだよ。で、話を戻すけど・・・つまり俺の知らないところで、俺が六花園会議に出席することが決まったわけ?」

 

 「そうなりますね。近々お伝えしようと思っていたところでしたので、手間が省けて良かったです」

 

 笑うクローディア。と、俺はあることに気付いた。

 

 「・・・なぁ、クローディア」

 

 「何でしょう?」

 

 「お前さっき言ったよな?全員が承知してくれたって」

 

 「言いましたよ?」

 

 「つまりお前、他の学園の生徒会長達と連絡取れるんだよな?」

 

 「取れますけど・・・それが何か?」

 

 「お前が《悪辣の王》に連絡して、イレーネの連絡先を聞いてくれたら良いんじゃね?俺が直接聞く必要無くね?」

 

 「・・・」

 

 無言で汗をダラダラ流すクローディア。

 

 「クローディア、まさかとは思うが・・・気付いてたな?」

 

 「わ、私だって嫌ですよ!《悪辣の王》とあまり関わりたくないんですから!」

 

 「認めたよコイツ!?」

 

 「そもそも、七瀬が助けてもらったんでしょう!?なら、七瀬が聞くのが礼儀というものでは!?そう、私は何も聞いていません!七瀬が《吸血暴姫》に助けてもらったなどという事実は聞いておりません!」

 

 「最低かお前!?何その政治家みたいなセリフ!?」

 

 「聞こえませーん!何も聞こえませーん!」

 

 言い合う俺とクローディアなのだった。

 




二話続けての投稿です。

また投稿日が空いてしまうかもしれませんが、ご容赦下さい。

七瀬「このダメ作者が」

・・・いっそ七瀬を殺して物語を終わらせるのもありか。

七瀬「すいませんでしたあああああっ!」

それではまた次回!

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