まぁ夏より冬派だからいいけど( ̄ー ̄)
「へぇ、ここが綾斗の実家かぁ・・・」
立派な平屋の日本家屋を前に、感嘆の声を上げる俺。
俺達は予定を変更し、綾斗の実家へとやって来ていた。
「わ、私っ!やっぱり手土産を買ってきますっ!」
「だからそんなの要らないって」
苦笑しながら綺凛を止める綾斗。
「父さんはそういうの気にしないし、逆に気を遣われるのを嫌がるから」
「ちなみに俺とクローディアは、バッチリ手土産を用意してるけどな」
「綺凛のご実家用に用意した手土産ですが、まぁ良いでしょう」
「私だけ用意してないとか、絶対失礼な娘だと思われますうううううっ!」
「いや、ホントそういうの気にしない人なんだって」
そう言いながら家の扉を開ける綾斗。
「ただいまー」
「あら、綾斗さん?」
「え・・・?」
固まってしまう綾斗。
あれ、今の声って・・・
「ゆ、柚陽ちゃん!?」
「お邪魔しております」
天霧家の居間で、柚陽がお茶を呑みながらまったりしていた。
「やっぱり柚陽じゃん」
「あら、七瀬さん!」
ニッコリ笑う柚陽。
「遊びにいらしたんですか?」
「まぁそんなところかな。クローディアと綺凛も一緒だぞ」
「ごきげんよう」
「こ、こんにちは!」
「エンフィールドさん、刀藤さん、ご無沙汰しております」
一礼する柚陽。
そういや《獅鷲星武祭》の開会式で紗夜が迷子になった時、柚陽は二人と顔を合わせてたっけか・・・
「っていうか、何で柚陽ちゃんがここに!?」
「冬季休暇に入ったので、実家へ帰省したのですが・・・家に誰もいなくて」
肩を落とす柚陽。
「お母様に連絡したところ、お父様と二人で旅行中とのことで・・・冬季休暇中は家にいないことを、私に伝えるのをすっかり忘れていたと・・・」
「あー・・・」
気まずそうな表情の綾斗。
顔には『あの人なら有り得そう・・・』と書いてあった。
「とはいえ、またアスタリスクへ戻るのも大変なので・・・正嗣さんのご厚意で、天霧家に泊めていただいているんです」
「そうだったんだ・・・大変だね」
「ご迷惑おかけします・・・」
同情する綾斗と、落ち込んだ様子で頭を下げる柚陽。
いたたまれないなぁ・・・
「ところで父さんは?」
「正嗣さんでしたら、道場にいらっしゃいます」
「了解。ちょっと挨拶してくるよ」
綾斗はそう言うと、俺達を道場へと案内してくれる。
「柚陽のお母さんって、もしかしておっとり天然系?」
「うん、のほほんとしてる人だね」
「・・・やっぱり親子って似るんだな」
「アハハ・・・」
苦笑する綾斗。
まぁそれはさておき・・・
「綾斗のお父さんって、天霧辰明流の宗家なんだろ?やっぱり門下生って結構いんの?」
「いや、今はいないよ。元々そんなにメジャーな流派でもないし」
「とはいえ、今話題沸騰中の流派でもありますけどね」
クローディアが口を挟む。
「綾斗が《鳳凰星武祭》と《獅鷲星武祭》を制したことで、天霧辰明流の門下生希望者が殺到したんですよ。まぁ綾斗のお父様のご意向や銀河の根回しもあって、全てお断りすることになりましたが」
「まぁ父さんは、たくさんの人に物を教えられるほど器用じゃないからね。それに静かな雰囲気を好む人だし、騒がしくなるのを嫌がったんでしょ・・・あっ、ここだよ」
綾斗はそう言って、開け放たれた扉の前で立ち止まる。
中には一人で正座し、静かに瞑想する男性が一人・・・
「・・・ただいま、父さん」
「・・・戻ったか、綾斗」
ゆっくりと目を開き、一切の音も無く立ち上がる男性。
鍛え上げられた体格、身体から滲み出る威圧感・・・
何より、まるで隙が無い。
この人が綾斗のお父さん・・・
「初めまして、星野七瀬です」
「クローディア・エンフィールドと申します」
「と、刀藤綺凛ですっ!」
三人揃って頭を下げる。
「天霧正嗣だ。いつも息子が世話になっているようで、感謝の言葉も無い。特にエンフィールドさんには、門下生の件で大変世話になった」
「いえいえ、お安い御用です」
笑顔で答えるクローディア。
次に綺凛へ視線を向ける正嗣さん。
「刀藤流のご息女か・・・まさか刀藤流ほどの一大流派のご息女と、こうして相見えることになろうとは・・・光栄だ」
「こ、こちらこそっ!お会い出来て光栄ですっ!」
緊張の面持ちの綺凛。
綺凛の様子に苦笑した正嗣さんは、俺の方を見て目尻を下げた。
「・・・・・」
「・・・?」
「父さん?」
じっと見つめてくるので首を傾げていると、綾斗も疑問に思ったのか声をかける。
ハッとした表情を浮かべる正嗣さん。
「あぁ、すまない・・・何故かは分からないが、君を見ているとどこか懐かしさを感じてしまってね・・・」
「・・・あれ、もしかして口説かれてる?」
「七瀬!?何言ってんの!?」
「そうですよ七瀬!それと綾斗のお父様!私の恋人を口説くマネは許しませんよ!?」
「クローディア!?何で本気にしてるの!?」
「大丈夫ですよ綾斗先輩。私はちゃんと分かってますから」
「綺凛ちゃん!?何でそんな離れたところに立ってるの!?」
「いや、私に息子の友人を口説く趣味は無いのだが」
「分かってるから!父さんはマジレスしないで!」
ツッコミの入れ過ぎで息切れしている綾斗。
まぁ冗談はさておき・・・
「何日かお世話になります。よろしくお願いします」
「あぁ。むさ苦しいところだが、ゆっくりしていきなさい」
正嗣さんはそう言うと、道場の出口へと歩き出す。
「そろそろ夕飯の支度をしよう。終わったら呼びに来るから、それまで休んでいなさい」
そう言って出て行く正嗣さん。
正嗣さんが道場を出たところで、俺は口を開いた。
「なぁ、綾斗・・・正嗣さんって《星脈世代》じゃないのか?」
「あぁ、言ってなかったっけ?そうだよ」
頷く綾斗。
「《星脈世代》なのは俺と姉さん、それと亡くなった母さんだね。父さんは常人なんだ」
「えっ、綾斗のお母さんって亡くなってるのか・・・?」
「あぁ、それも言ってなかったね」
苦笑する綾斗。
「母さんは俺が小さい頃に亡くなってるんだ。俺もほとんど覚えてないんだけど」
「マジか・・・」
ってことは普段、正嗣さんはこの家に一人きりなのか・・・
寂しいだろうな・・・
「ですが、常人であの隙の無い姿勢・・・凄まじいですね」
真剣な表情の綺凛。
「一体どれほどの鍛錬を積んできたのか・・・」
「うん。だから綺凛ちゃんの悩みについても、良いアドバイスをくれると思うよ」
「もしかして綾斗、行き先をここに変更したのは・・・」
「そういうこと」
クローディアの問いに頷く綾斗。
「俺が知る限り、最も剣の道を極めている人だから。自分の剣の道に迷っているなら、話を聞いてみて損は無いと思うよ」
「綾斗先輩・・・ありがとうございます!」
深々と頭を下げる綺凛なのだった。
どうも〜、ムッティです。
シャノン『作者っち、私の出番まだ?』
え、しばらくないけど。
シャノン『何で!?』
いや、ここから綺凛ちゃんの実家に行くんだよ?
次は七瀬の実家だよ?
モブキャラの出番があるとでも?
シャノン『モブキャラ言うな!そこを何とかして出すのが作者っちの仕事でしょうが!』
それではまた次回!以上、ムッティでした!
シャノン『話の途中で締めるなあああああ!!!!!』