学戦都市アスタリスク ~六花の星野七瀬~   作:ムッティ

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投稿間隔が空いてしまって、本当にすまないと思っている(キリッ)

七瀬「《断罪の一撃》」

ちょ、止め・・・ギャアアアアアッ!?


第十一章《刃心切磋》
クロエのやりたいこと


 「以上で手続きは終了となります」

 

 全ての空間ウィンドウを閉じ、俺へと視線を向けるペトラさん。

 

 クインヴェール女学園の理事長室にて、俺とペトラさんは向かい合う形で座っていた。

 

 「ただ今をもちまして、クロエの所有者は七瀬さんになります」

 

 「いや、所有者って・・・嫌な言い方しますね」

 

 「あら、事実じゃない」

 

 俺の隣に座っているクロエが、面白そうに笑う。

 

 チーム・エンフィールドが《獅鷲星武祭》を制してから、およそ一ヶ月・・・願いを叶えてもらえる権利を手にした俺は、すぐにクロエの購入を希望した。

 

 そして交渉の末、こうしてクロエの所有権を引き渡してもらうことに成功したのだった。

 

 「今日から七瀬のことを、『ご主人様』って呼ぼうかしら」

 

 「おい止めろ。俺にそんな趣味は無いから」

 

 「あら、七海には『マスター』って呼ばせてるじゃない」

 

 「呼ばせてるわけじゃねーよ。七海が自主的にそう呼んでんだよ」

 

 「じゃあ私も『ご主人様』で・・・」

 

 「お前の名前を『クロエ』から『メス豚』に変えてやろうか」

 

 「すいませんでした」

 

 そんなやり取りをしていると、ペトラさんが苦笑していた。

 

 「・・・変わりましたね、クロエ。いつも無表情で淡々と任務をこなしていた貴女が、そんな軽口を叩けるようになるなんて」

 

 「・・・えぇ、自分でもそう思います」

 

 微笑むクロエ。

 

 「美奈兎、柚陽、ソフィア先輩、ニーナ、九美・・・そして七瀬。かけがえのない仲間達に出会えて、私は本当に幸せです。これからは過去を振り返るのではなく、仲間達と今を生きていきたいと思います」

 

 「・・・そうですか」

 

 眩しそうに目を細めるペトラさん。

 

 「七瀬さん・・・クロエをよろしくお願いします」

 

 「勿論です」

 

 頷く俺。

 

 「クロエが自由に生きることが出来るように、全力でサポートするつもりです。なのでそちらも約束通り、サポートをよろしくお願いします」

 

 「承知しました」

 

 クロエの所有権がクインヴェールから俺に移ったことで、他の統合企業財体がクロエを引き込もうとする可能性は否定出来ない。《べネトナーシュ》の一員として活動していたクロエを、情報目的で狙う恐れがあるからだ。

 

 そこで交渉の結果、クロエは引き続きクインヴェールに所属することになった。ただし《べネトナーシュ》からは抜け、普通の学生として生活することになる。

 

 クインヴェールに所属している以上はW&Wに守られるので、他の統合企業財体が手を出すことは出来ない。こちらとしてはクロエの身の安全が保障されるし、W&Wとしては情報漏洩を阻止することが出来る。

 

 双方にメリットのある、まさにWin-Winの関係だ。

 

 「そういえば、先ほど名前の話が出ましたが・・・」

 

 クロエに視線を向けるペトラさん。

 

 「クロエ、本当に名前は今のままで良いのですか?」

 

 「えぇ、構いません」

 

 頷くクロエ。

 

 確か『クロエ・フロックハート』っていう名前は、ペトラさんが付けたんだっけ。PMC時代は、『ミネルヴィーユ』っていう名前だったんだよな。

 

 「引き続きこの学園に所属する以上、途中で名前が変わるとややこしいでしょうから。それに私、今の名前は結構気に入っているので」

 

 「まぁ確かに、いきなり名前が変わるとややこしいよな・・・昨日まで『クロエ』だったのに、いきなり『メス豚』に変わってたら周りは戸惑うわ」

 

 「それは違う意味で戸惑うでしょうね!どんなプレイだと思われるわよ!?」

 

 「普通に『メス豚』って呼ぶべきか、愛称で『メーちゃん』って呼ぶべきか・・・」

 

 「そこじゃない!悩むところはそこじゃない!」

 

 「そうだよな・・・呼び方なんで人それぞれだもんな」

 

 「違うわ!名前そのものがおかしいって言ってるのよ!」

 

 「確かに・・・おかしいよな、レティシアの髪」

 

 「何の話よ!?」

 

 ツッコミを入れるクロエを、苦笑しながら見つめるペトラさんなのだった。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「自由だああああああああああっ!」

 

 「おい美奈兎、犬井ヒ●シのモノマネは止めろよ」

 

 「そんなつもり無かったんだけど!?っていうか懐かしすぎない!?サバ●ナの高●さんが『エ●タの神様』でやってたキャラだよねぇ!?」

 

 「美奈兎、とりあえず静かにしなさい。周りに迷惑でしょう」

 

 「あっ、すいません・・・」

 

 何事かとこちらを見ている人達に頭を下げつつ、大人しく席に座る美奈兎。

 

 理事長室を後にした俺とクロエは、クインヴェール内にあるカフェへとやってきていた。そこで美奈兎・柚陽・ソフィア・ニーナと合流し、報告をしつつお茶を楽しんでいるところだった。

 

 「でも良かったですね、クロエさん」

 

 嬉しそうな笑みを浮かべる柚陽。

 

 「これで晴れて自由になれましたね」

 

 「本当に良かった・・・」

 

 涙ぐんでいるニーナ。

 

 「私達が棄権になっちゃった時は、どうなることかと思ったよ・・・」

 

 「・・・ありがとう」

 

 ニーナの涙を拭いつつ、柚陽に笑みを向けるクロエ。

 

 「皆と出会えたから、私は自由になりたいって思えた。皆に出会えていなかったら、今の私はいないわ。本当に・・・心から感謝してる」

 

 「うぅっ・・・クロエえええええっ・・・!」

 

 「いや、ソフィアは泣き過ぎだから」

 

 号泣しているソフィアの背中を、優しく擦ってやる。

 

 「とりあえず、ちょっと落ち着いて・・・」

 

 「七瀬さんっ!」

 

 ソフィアにガシッと手を掴まれる。

 

 「私は感動しましたわ!何とお礼を申し上げたら良いか!」

 

 「いや、お礼ならたくさん言ってもらったから」

 

 「私で力になれることがあったら、何なりとお申し付け下さいまし!」

 

 「うん、とりあえず落ち着いてほしいわ」

 

 「ソフィア先輩、周りの迷惑ですよ」

 

 「あっ、すいません・・・」

 

 周りの人達に頭を下げるソフィア。

 

 この人、美奈兎のポンコツがうつって・・・いや、元から結構ポンコツだったわ。

 

 「まぁそんな感じで、とりあえずクロエは自由の身になったから。今後もクインヴェールに所属することになったし、美奈兎達と一緒に学園生活を送れるよ」

 

 「やったぁ!」

 

 「美奈兎、暑苦しい」

 

 笑顔でクロエに抱きつく美奈兎。クロエも口ぶりとは裏腹に、満更でもない表情をしている。

 

 と、クロエが俺に視線を向けた。

 

 「・・・ありがとう、七瀬」

 

 姿勢を正し、深々とお辞儀をするクロエ。

 

 「貴方のおかげで、私は自由になれた。いくら感謝の言葉を述べても、言い足りないくらい感謝してる。本当にありがとう」

 

 「よせよ」

 

 そんな風に真面目にお礼を言われると、こちらも照れ臭くなってしまう。

 

 「お礼ならシルヴィやクローディア、それから一織姉達に言ってあげてくれ。俺は何もしてないよ」

 

 クロエの所有権についての交渉の際、シルヴィやクローディアには色々と相談に乗ってもらった。生徒会長という立場上、こういった交渉については二人の方が詳しいしな。

 

 購入の費用も一織姉達が《星武祭》で稼いだお金から出ているし、俺は本当に何もしていない。お礼を言われるような立場ではないのだ。

 

 「勿論、彼女達にもちゃんとお礼を言うつもりよ。でもね七瀬、私は貴方に一番感謝しているの」

 

 微笑むクロエ。

 

 「貴方は私を自由にする為に、《獅鷲星武祭》で優勝してくれた。どんな願いでも叶えてもらえる権利を、自分の為ではなく私の為に使ってくれた。それが本当に嬉しかったの」

 

 「クロエ・・・」

 

 「貴方には本当に、感謝してもしきれないわ。だから私は・・・貴方から受けたこの恩を少しでも返す為に、これからの人生を歩んでいこうと思う」

 

 真っ直ぐ俺を見つめるクロエ。

 

 「私の命は貴方のものよ、七瀬。私は貴方の為に・・・貴方の力になる為に生きる」

 

 「は・・・?」

 

 ポカンとしてしまう俺。いやいやいや・・・

 

 「ちょっと待てって。確かにクロエの所有権は俺が持ってるけど、だからって俺の為に生きる必要なんて無いぞ?」

 

 「所有権の問題じゃないの。私が七瀬に恩返ししたいだけよ」

 

 「いや、そんなこと考える必要無いって。俺はクロエに自由に生きてほしいんだよ」

 

 「だからこそよ。誰かから強要されたわけじゃなくて、私自身が七瀬に恩返ししたいと思ったの。貴方の為に生きることが、今私が最もやりたいことなのよ」

 

 真っ直ぐに言葉をぶつけられ、逆にこっちが言葉に詰まってしまった。

 

 美奈兎達はというと、そんな俺の様子を見て微笑んでいた。

 

 「まさかお前ら・・・知ってたのか?」

 

 「まぁね。クロエから聞いてたから」

 

 笑いながら言う美奈兎。

 

 「七瀬が思ってる以上に、クロエは七瀬に恩を感じてるよ。だから今度は自分がっていう気持ちが強いみたい」

 

 「受け入れてあげて下さい、七瀬さん。クロエさんは本気ですよ」

 

 「お願い七瀬。クロエのやりたいようにやらせてあげて」

 

 柚陽とニーナまでそんなことを言ってくる。マジでか・・・

 

 「いや、でも・・・」

 

 「七瀬さん」

 

 先ほどとは違う穏やかな表情で、ソフィアが俺を見ている。

 

 「クロエは義務感で動いているわけではありません。心からそうしたいと思っているから、七瀬さんに真っ直ぐな気持ちをぶつけているのです。クロエの気持ちを尊重してあげて下さい」

 

 「ソフィア・・・」

 

 そこまで言われてしまったら、もう何も言えないな・・・

 

 俺は溜め息をついた。

 

 「・・・自由に生きることが出来るように、全力でサポートするって約束したしな。クロエがそれで良いなら・・・よろしく頼むよ」

 

 「えぇ、こちらこそよろしく。全力で七瀬の力になることを誓うわ」

 

 「言っとくけど、俺はクロエに何かを強要するつもりは無いからな」

 

 「フフッ、分かってるわよ」

 

 笑うクロエ。

 

 「だからこそ、貴方の力になりたいと思うんじゃない」

 

 「・・・物好きなヤツだな、お前も」

 

 「あらご主人様、従者に対してその物言いは酷いんじゃないかしら?」

 

 「ご主人様言うな」

 

 「じゃあマスター?」

 

 「それも止めろ」

 

 「いっそのこと、七瀬の妹になるっていう選択肢も・・・」

 

 「無いわ!」

 

 俺とクロエのやりとりに、皆が笑っていた。全く・・・

 

 「妹って言えば、誰か九美の近況を知らないか?何かやたら忙しいって聞いてるけど」

 

 当然今日のお茶に九美も誘ったのだが、予定があるとのことで断られたのだ。

 

 『兄さんからのデートのお誘いなんて夢のようなんですが、どうしても外せない用事がありまして・・・!』って血涙を流してたけど・・・

 

 っていうかデートじゃねーし。

 

 「あれ?九美ちゃん話してないの?」

 

 首を傾げる美奈兎。

 

 「九美ちゃんのことだから、七瀬には真っ先に話してると思ったんだけど」

 

 「何を?」

 

 「恐らく、実際に見た方が早いと思います」

 

 「それもそうね。私が案内するわ」

 

 クロエが柚陽の言葉に頷き、椅子から立ち上がる。

 

 「じゃあ七瀬、行きましょうか」

 

 「何処に?」

 

 「決まっているでしょう。九美のところよ」

 

 微笑むクロエ。

 

 「貴方の愛しい妹が頑張っているところを、どうか見てあげてちょうだい」

 

 クロエの言葉の意味が分からず、首を傾げる俺なのだった。




どうも~、ムッティです・・・(ボロッ)

シャノン「作者っち、そんなにボロボロでどうしたの?」

大丈夫。ちょっと軽く死にかけただけだよ。

シャノン「それ大丈夫じゃないよねぇ!?」

まぁそんなことより、8ヶ月も失踪してすみませんでした・・・

シャノン「またずいぶんと失踪してたね・・・」

モチベーションも下がってたし、仕事も忙しかったし、『ラブライブ!サンシャイン!!』のssも書いてたし・・・

シャノン「おい最後」

『刀藤綺凛の兄の日常記』の作者である富嶽二十二景さんがハーメルンに復帰されたということで、自分も頑張らねばと思いまして。

不定期ではありますが、また投稿していこうと思った次第です。

投稿間隔が空くことも多々あると思いますが、頑張って細々とやっていきたいと思います。

シャノン「サンシャインの方は?」

勿論続けるよ。

なので皆様、これからも温かい目で見守っていただけると幸いでございます。

シャノン「よろしくお願いします(ぺこり)」

それではまた次回!以上、ムッティでした!

シャノン「またね~!」

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