「あー・・・何かドッと疲れたわ・・・」
「フフッ、お疲れ様です」
笑いながら労わってくれるクローディア。
治療院を退院した俺は星導館へと戻ってきており、今はクローディアと男子寮の俺の部屋でまったりしていた。
さっきまではそれどころじゃなかったからなぁ・・・
「ですが、皆さんが喜んでくださって何よりでしたね」
「・・・まぁな」
乾杯の後、一織姉・二葉姉・四糸乃姉・五和姉・六月姉・八重・九美が襲来してきた。
九美はチーム・赫夜の面々も連れてきており、あっという間に俺の病室は人でいっぱいになってしまった。そのままドンチャン騒ぎとなった結果、コルベル院長が怒鳴り込んできたことは言うまでもない。
まぁ退院する時、ボソッと『おめでとさん』って言ってくれたけど。何だかんだで優しい人である。
「あれで終わりだと思ったら・・・まだ続きがあったとはなぁ・・・」
「どうやら、七瀬の退院を待ち構えていたようですよ」
クスクス笑うクローディア。
星導館へと戻った俺を待っていたのは、クラスメイト達によるサプライズパーティーだった。夜吹・シャノン・凛香の三人が中心となって企画したらしく、教室に連行されてそのままパーティーがスタート。
それがつい先ほど終わり、俺はようやく部屋に戻ってくることが出来たのだ。
「っていうか、ちゃっかり谷津崎先生まで参加してたよな・・・シャンパンとかメッチャ飲んでたし」
「いつになくはっちゃけてましたね。よほど喜んでいただけたんでしょうか」
「まぁ、先生には特訓でお世話になったからなぁ」
豪快に笑いながら俺に抱きついてきた時は、『この人ホントに谷津崎先生?』と思ってしまったほどだ。
まぁ『流石はアタシの教え子!鼻が高いぜ!』とか言ってくれたし・・・喜んでもらえたなら何よりだけどな。
それよりも・・・
「ところでクローディア、部屋の修復はどんな感じなんだ?」
「明日には終わるそうですよ。先ほど連絡がありました」
俺の質問に答えるクローディア。
ナイトエミットの襲撃で、クローディアの部屋は悲惨な状態になってしまった。現在修復中の為、昨日からクローディアは俺の部屋に泊まっているのだ。
「私としては、このまま七瀬の部屋で生活したいところですけどね」
笑顔でそんなことを言うクローディア。全く、コイツときたら・・・
「そんなことを男子の前で言うんじゃありません。勘違いされるぞ」
「七瀬にしか言わないので大丈夫です」
「いや、全然大丈夫じゃないんだけど。俺も男なんだけど」
「七瀬なら勘違いしていただいて構わない、ということです。もっとも、私の本心的には『勘違い』ではないのですが」
堂々とそんなことを言われると、俺としては何も言えない。俺の様子を見て、クローディアが面白そうに笑う。
「フフッ・・・返事はいつまでも待つ、と申し上げたはずですよ?逆に言うと、それまで私は七瀬にアピールを続けますので。覚悟しておいて下さいね?」
「・・・覚悟、ねぇ」
確かに覚悟は必要だろう・・・俺が進もうとしている道は、誰にでも理解してもらえるものではないのだから。
「クローディア」
「何でしょう?」
真剣な表情で名前を呼ぶと、クローディアが不思議そうに首を傾げる。俺は一つ深呼吸すると、意を決して口を開いた。
「俺にはシルヴィア・リューネハイムという、大切な彼女がいる」
「・・・存じ上げています」
「もう何があっても、シルヴィの手を離すつもりはない」
「・・・でしょうね」
「それでも・・・俺についてきてくれるか?」
「はい・・・え?」
目を伏せていたクローディアが、驚いたように顔を上げる。
「それは・・・どういった意味で・・・?」
「・・・言っただろ?クローディアへの気持ちは、少し特別なものだって」
それが異性に対する『好き』なのかどうか、俺にはよく分からなかった。
一緒に暮らしていたことで、少し情が湧いただけなのかもしれない。家族みたいな情愛を持ってしまっただけかもしれない。
そんなことを色々考えたが・・・答えは至ってシンプルだった。
「俺はクローディアに・・・側にいてほしいと思ってる。何処へも行ってほしくない、俺の隣にいてほしいって・・・そう思ってるんだ」
「七瀬・・・」
「この気持ちは友達として、仲間としてじゃない。多分、一人の男として・・・クローディア・エンフィールドという、一人の女性に対する気持ちなんだと思う。だから、俺はきっと・・・」
俺はクローディアの目を見て、自身の想いをハッキリと口にした。
「クローディアのことが好きなんだ」
「っ・・・」
クローディアの目に、みるみる涙が溜まっていく。口元を両手で押さえ、『信じられない』といった表情をしていた。
「な、七瀬が・・・私を・・・?」
「・・・そうみたい」
苦笑する俺。
「・・・昨日の夜、シルヴィにも話したよ。クローディアが好きだって」
「彼女は何と・・・?」
「『今度きちんと顔合わせの機会を作ろう』ってさ。あと、『正妻の座は譲らない』とも言ってたな。そこさえキチンとしてくれるなら、後は俺に任せるって」
「・・・私を受け入れるというのですか?」
目を見開くクローディア。まぁ、普通そういう反応だよな・・・
「勿論、思うところはあるだろうけどな。それでも・・・シルヴィは受け入れてくれたんだよ。ホント、俺にはもったいないくらい良い女だと思う」
まぁ、クローディアの事情を知っているっていうのもあっただろうけど・・・
最悪、引っ叩かれても文句は言えなかったな・・・
「・・・クローディア」
再び名前を呼ぶ。
「答えを聞かせてほしい・・・俺についてきてくれるか?」
俺のことが好きだとは言ってくれたが・・・ついてきてくれるかは別の問題だ。
というか、普通ならお断りされるだろう。彼女がいるのに『ついてきてくれ』とか、百年の恋も醒めてしまうであろう最低の告白だと自覚している。
だが・・・
「・・・申し上げたはずですよ、七瀬」
クローディアは・・・泣きながら微笑んでいた。
「七瀬の彼女に対する想いが変わらないように、私の七瀬に対する想いも変わらないと・・・」
「クローディア・・・」
「大体、私がどれほど七瀬に会える日を待ちわびたと思っているのですか?あの夢を見た日から何年もの間、私は貴方に会いたくて仕方が無かったのですよ?」
俺の頬に、クローディアの手が添えられる。
「七瀬に恋人がいるとか、私が正妻になれないとか・・・言い方は悪いかもしれませんが、ハッキリ言ってどうでもいいです」
俺の目を見て、ニッコリと笑うクローディア。
「七瀬の隣にいられるのなら・・・私は何も望みません。私はただ、七瀬と一緒にいたい・・・それだけです」
「・・・良いのか?」
「当然です」
力強く頷くクローディア。
「何処までも貴方についていきます・・・お慕い申し上げております、七瀬」
我慢の限界だった。クローディアの背中へと手を回し、思いっきり抱き締める。クローディアの温かさが伝わってきた。
「・・・ありがとう、クローディア」
「・・・お礼を言うのは私の方です」
俺の胸に顔を埋め、肩を震わせるクローディア。
「まさかこんな日が来るなんて・・・生きてて良かった・・・あの時死ななくて、本当に良かった・・・!」
クローディアの頬を涙が伝う。
「私に・・・生きる価値を与えてくださって・・・ありがとうございます・・・!」
「・・・死ぬなんて許さないからな。生きて俺の隣にいて・・・一緒に歩んでくれ」
「っ・・・えぇ、いつまでも・・・!」
どちらからともなく顔が近づき・・・その距離がゼロになる。
唇に触れる柔らかな感触を感じながら、俺は幸せを噛み締めるのだった。
どうも~、ムッティです。
シャノン「ななっちと会長、無事に結ばれたね」
何とかここまで話を持ってこれたよね。
ヒロイン複数化には、賛否両論あったけども・・・
温かく見守っていただけると幸いでございます。
シャノン「次回からはオリキャラ紹介やるんだっけ?」
その予定だよ。
八重・九美・十萌・万理華あたりかな。
零香・零奈・千里・百愛は悩み中だけど。
シャノン「まだ謎が多いもんね」
そうそう。とりあえず上の四人はやると思う。
その後で新章に入る感じかな?
皆さん、これからもこの作品をよろしくお願い致します。
シャノン「お願い致します(ぺこり)」
それではまた次回!以上、ムッティでした!
シャノン「またね~!」