・・・まぁアニメ観たことないんですけど。
今度観ようっと。
《綾斗視点》
「・・・それが本当の貴方というわけですか、フェアクロフさん」
「あぁ。そして今の君が本当の天霧くんというわけだね」
睨み合う俺達。
先ほどまでと違い、フェアクロフさんは凶悪な笑みを浮かべていた。フェアクロフさんから放たれるプレッシャーも、禍々しさを感じさせるものだった。
「さぁ・・・戦おうか」
バスターソード型の煌式武装を起動させるフェアクロフさん。
俺は《黒炉の魔剣》を待機モードに戻し、予備のブレード型煌式武装を起動させた。
「・・・気を遣ってくれているのかい?」
「まさか。そんな余裕ありませんよ」
首を横に振る俺。
「《黒炉の魔剣》は大きすぎて、今の貴方のスピードについていけそうにないので」
「ハハッ、どうやら君は星辰力の細かい調整が苦手と見える」
「返す言葉もありません」
そんなやり取りをした後、俺達は互いに剣を構えた。
そして・・・
「はああああああああああっ!」
「うおおおおおおおおおおっ!」
お互いの剣がぶつかり合い、激しく火花を散らした。
『星導館の序列一位と、ガラードワースの序列一位!果たしてどちらに軍配が上がるのでしょうか!?』
実況の興奮した声が聞こえてくる中、何度もぶつかり合う俺達。フェアクロフさんは俺の剣を弾くと、すかさず足をかけて俺を引き倒してきた。
「うわっ!?」
背中から地面に倒れた俺の校章目掛けて、フェアクロフさんの剣が振り下ろされる。地面を転がってそれを避け、今度はフェアクロフさんへと突きをお見舞いする。
「ッ!?」
脇腹を掠っただけで、身を捻って避けられてしまう。そのままフェアクロフさんが剣を横に薙いできたので、反射的に身を屈めて何とかやり過ごした。
「ハハハッ!素晴らしい高揚感だッ!生を感じるよッ!」
「普段どれだけ厚い仮面を被ってるんですか貴方はッ!」
思わずそんなツッコミを入れてしまうほど、今のフェアクロフさんは完全に別人だ。二重人格を疑うレベルである。
「言っただろうッ!これが本当の僕だッ!」
「ぐあっ!?」
鍔迫り合いの最中、至近距離から顎に肘を打ち込んでくるフェアクロフさん。口の中の血を吐きたくなるが、こらえてフェアクロフさんの脇腹に膝蹴りをぶち込んだ。
「がはっ!?」
地面を転がっていくフェアクロフさん。俺はすかさず距離を詰め、フェアクロフさん目掛けて剣を振り下ろそうとする。
しかし・・・
「はっ!」
「ッ!?」
フェアクロフさんが突きを放ってきた。咄嗟に剣の腹で受け止めたが、その衝撃で剣が折れてしまう。
「しまっ・・・!?」
「終わりだッ!」
俺の校章目掛けて、剣を振り下ろすフェアクロフさん。
クソッ、ここまでか・・・!
「あぁ、終わりだな」
そんな声が聞こえた瞬間・・・俺とフェアクロフさんの間に、七瀬が立っていた。
「なっ!?」
「七瀬!?」
振り下ろされる剣を、右腕で受け止める七瀬。その瞬間、剣が粉々に砕け散った。
「何ッ!?」
「今の俺の身体は純星煌式武装と同じ・・・ただの煌式武装じゃ打ち合えない。《白濾の魔剣》を捨てたのは失敗だったな、アーネスト」
そう言いながら、拳を握る七瀬。
そして・・・
「《雷華崩拳》ッ!」
「ぐはっ!?」
校章を砕かれ、そのままステージの壁に衝突するフェアクロフさん。
『アーネスト・フェアクロフ、校章破損!』
『試合終了!勝者、チーム・エンフィールド!』
その機械音声が流れた瞬間・・・大歓声が沸き起こった。
『し、試合終了おおおおおおおおおおッ!見事優勝の栄光を手にしたのは、星導館学園のチーム・エンフィールドだああああああああああッ!』
大興奮していると思われる実況の絶叫が響き渡る。
俺達が、優勝したんだ・・・
「おいおい、何で固まってんだよ」
尻餅をついたまま呆然としていると、七瀬が手を差し伸べてくれた。
「いや、何か夢みたいで・・・」
「現実だって。ほっぺたぶん殴ってやろうか?」
「そこは普通つねるんじゃないの!?」
「いや、普通じゃつまんないかなって」
「そこで奇を衒うの止めてくんない!?」
そんなやり取りをしつつ、七瀬に起こしてもらう。
本当に夢じゃないんだな・・・
「七瀬ええええええええええっ!」
「うおっ!?」
クローディアが七瀬に駆け寄り、思いっきり抱きついた。
「優勝ですよ!?私達、優勝したんですよ!?」
「はいはい、分かってるよ」
苦笑しつつ、クローディアの頭を撫でる七瀬。
「それより・・・悪い・・・もう・・・限界・・・」
「え?」
首を傾げるクローディア。その瞬間、七瀬の身体から力が抜けた。
「七瀬!?」
慌てて七瀬を抱きとめるクローディア。
【気を失っただけですよ】
七海さんの声が響く。
【《雷神化》の反動なんです。ウルム=マナダイトによって力の限界を超える分、反動が大きくて・・・身体の疲弊も相当なものですし、星辰力も枯渇寸前です】
「っ・・・スミマセン!大至急救護をお願いします!」
「急いで下さい!」
大慌てで救護スタッフを呼ぶ俺とクローディアなのだった。
*****
「・・・ん」
目が覚めると、ベッドに横たわっていた。
この天井は見覚えがあるな・・・
「・・・治療院?」
「正解だよ」
すぐ側で声がする。ベッドの側の椅子に、シルヴィが腰掛けていた。
「気分はどう?」
「・・・身体がダルい」
「あれだけ身体を酷使したら、そうなるのも無理ないよね」
苦笑するシルヴィ。
「どれくらい寝てた?」
「そんなに寝てないよ?お昼に試合があって、今は夜だから」
立ち上がってカーテンを開けるシルヴィ。窓から月の光が差し込んできた。
「おっ、今夜は満月か・・・綺麗だね」
「シルヴィの方が綺麗だよ、とか言った方が良い?」
「うん、言い切ってくれたら百点だったかな」
「シルヴィの方が綺麗だよ」
「言い直さなくていいよ!?」
シルヴィのツッコミ。俺はベッドから出て、シルヴィの隣に並んだ。
「あっ、まだ起きない方が・・・」
「これくらい大丈夫だよ。それに・・・シルヴィの温もりを感じたいし」
「・・・バカ」
寄り添ってくるシルヴィ。俺もシルヴィの腰に手を回した。
「優勝おめでとう、ななくん」
「ありがとう。これで皆の願いを叶えられるよ」
「ななくんの願いも、ね」
「そうだな」
W&Wとの交渉次第だが、これでクロエが自由になる可能性は高まった。何とか約束を果たせそうだ。
「赫夜の皆、号泣しながら喜んでたよ。あのクロエでさえ、声を上げて泣いてたもん」
「・・・そっか」
それだけ喜んでくれたのなら、頑張った甲斐があったな・・・
「それにしても、ウルム=マナダイトと一体化とはねぇ・・・相変わらずななくんは無茶苦茶だなぁ」
「まぁ普通なら無理だよな。俺も七海とじゃなきゃ出来ないし」
「どういうこと?」
首を傾げるシルヴィ。
「七海は昔から、俺の《魔術師》の力を封印してくれてただろ?だからこそ、俺と七海のシンクロ率は百パーセント・・・逆に言うと、シンクロ率が百パーセントじゃなきゃ一体化なんてまず無理だ」
「まぁ確かに・・・しかも普通、シンクロ率百パーセントなんて有り得ないからね」
「だろ?しかも本来《魔術師》や《魔女》は、ウルム=マナダイトと相性が悪い。それでシンクロ率百パーセントっていうのは、ある意味奇跡に近いんだよ」
俺と七海だからこそ出来た芸当、というべきだろうな。
もっとも、同じことが出来そうな人に心当たりはあるのだが・・・
「でも、あんまり無理しちゃダメだよ?反動が大きいみたいだし・・・」
「分かってる。これはあくまでも切り札だからな」
シルヴィを抱き寄せる俺。
「・・・いつも心配かけてゴメン」
「全くだよ。本当に無茶苦茶な彼氏を持っちゃったなぁ」
「返す言葉もございません」
「・・・まぁ、そんな君に惚れたんだけどね」
柔らかな笑みを浮かべるシルヴィ。
「私はななくんを信じてる。だからななくんは、そのまま真っ直ぐ突き進んでほしい。私がずっと側で支えるから」
「・・・ありがとう」
そんな彼女の言葉を受け・・・俺は一つの決断を下した。
「シルヴィ」
俺はシルヴィの名前を呼ぶと、意を決して口を開いたのだった。
「クローディアのことなんだけど・・・」
どうも~、ムッティです。
シャノン「遂に《獅鷲星武祭》も終わったね」
ようやくだよね。
後はちょっと後日談的な話があって、《龍激聖覇》編は終了かな。
シャノン「そろそろ私の出番も・・・」
・・・考エテオクヨ、ハハハ。
シャノン「考える気無いよねぇ!?」
それではまた次回!以上、ムッティでした!
シャノン「逃げるなあああああっ!」