学戦都市アスタリスク ~六花の星野七瀬~   作:ムッティ

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早く夏終われええええええええええっ!!!!!!!!!!


処刑刀

 「悪い綾斗、遅くなったわ」

 

 「大丈夫だよ。俺もさっき終わったところだし」

 

 笑いながらそう言ってくれる綾斗。

 

 綾斗も遥さんの顔を見ておきたかったらしく、俺達は二人で治療院に来ていた。

 

 俺は四糸乃姉のところにも顔を出してきたので、先に面会を終えた綾斗を待たせてしまったのだ。

 

 「四糸乃さんや赫夜の皆はどうだった?」

 

 「すっかり元気になってたよ。明後日には退院できるってさ」

 

 「良かったね」

 

 そんな会話をしながら、綾斗と星導館への帰り道を歩く。

 

 「遥さんはどうだった?」

 

 「変わらないね。やっぱり封印を解かないと、目覚めさせることは出来ないみたいだ」

 

 「そっか・・・」

 

 遥さんは何を思って綾斗に、そして自らに封印を施したんだろうか・・・

 

 本人に聞いてみなきゃ分からないか・・・

 

 「そういや、綾斗の封印はどうなんだ?最後の封印は解けそうか?」

 

 「んー、もう少しって感じではあるんだけど・・・」

 

 もどかしそうな表情の綾斗。

 

 遥さんは三段階に分けて、綾斗の力を封印しているらしい。その内の二つ目までは解けているそうだが、最後の三つ目が解けないのだそうだ。

 

 何か条件があるんだろうか・・・

 

 「最後の封印が解けたら、もっと七瀬の力になれるのに・・・」

 

 「俺の力・・・?」

 

 首を傾げる俺。どういうことだ?

 

 「・・・俺達がここまで勝ち進んでこれたのは、七瀬のおかげだよ。準々決勝のルサールカ戦に、準決勝の黄龍戦・・・四糸乃さんも《覇軍星君》も、俺達じゃ倒せなかった。七瀬が二人を倒してくれたから、俺達は決勝までこれたんだ。俺達はずっと、七瀬におんぶに抱っこの状態なんだよ」

 

 綾斗が悔しそうな、申し訳なさそうな表情を見せる。

 

 「だからこそ、俺の最後の封印が解けたら・・・もっと七瀬の負担を減らせるんじゃないかって、そう思うんだ」

 

 「・・・バーカ」

 

 綾斗の肩を思いっきり叩く。

 

 「確かに、四糸乃姉と暁彗を倒したのは俺だ。でも二人を倒せたのは、間違いなくお前達のおかげなんだよ」

 

 「えっ・・・?」

 

 「ルサールカも黄龍も、全員手強いメンバーだった。そんな中で、俺がタイマンを張れるようにしてくれたのはお前達だ。俺一人だったら、まず間違いなく負けてるよ」

 

 綾斗、クローディア、ユリス、綺凛、紗夜・・・誰か一人でも欠けていたら、ここまで辿り着くことは有り得なかった。

 

 皆がいたからこそ、決勝まで勝ち進んでこれたのだ。

 

 「俺達は六人で一つだ。だから・・・六人で掴み取ろうぜ、優勝を」

 

 「っ・・・あぁ!」

 

 力強く頷く綾斗。と、その時だった。

 

 

 

 

 

 「フフッ・・・素敵な友情ね」

 

 

 

 

 

 突如として響いた声。声のした方を振り向くと・・・

 

 「流石は私の弟、良いこと言うわ」

 

 「零香姉・・・」

 

 長い黒髪をなびかせ、微笑んでいる零香姉が立っていた。

 

 このタイミングで現れるか・・・

 

 「っ・・・この人が・・・」

 

 「初めまして、天霧綾斗くん。いつも七瀬がお世話になってるわね」

 

 「・・・どうも」

 

 警戒している綾斗。それを見て、零香姉が溜め息をついた。

 

 「初対面なのにそんな反応しなくても・・・お姉さん傷付いちゃうわ」

 

 「零香姉がやったことを考えたら、当然の反応だろ」

 

 綾斗の前に出る俺。

 

 「それで?何の用?」

 

 「答えを聞かせてもらおうと思って」

 

 俺を見据える零香姉。

 

 「七瀬、私と来る気は無い?」

 

 「無い」

 

 俺は冷たく返した。

 

 「逆に聞きたいんだけど・・・大人しく自首する気は無いの?」

 

 「無いわ」

 

 即答する零香姉。

 

 「私にはやるべきことがあるの。捕まっている暇なんて無いのよ」

 

 「・・・交渉決裂だな」

 

 雷を迸らせる俺。

 

 「俺は零香姉についていくつもりは無いし、零香姉も自首するつもりは無い・・・これを解決する方法は、たった一つしかない」

 

 「相手に力ずくで言うことを聞かせる・・・分かりやすくて良いわね」

 

 零香姉も星辰力を練り込んでいく。

 

 「この間みたく、手加減なんてしないわよ?」

 

 「上等だよバカ姉。やれるもんならやってみろ」

 

 一触即発の空気が流れ、俺と零香姉が戦闘を始めようとした時だった。

 

 

 

 

 

 「落ち着きたまえよ、零香」

 

 

 

 

 

 何処かで聞いたことのあるような声が響いた。

 

 「・・・貴方が何故ここにいるのかしら?」

 

 零香姉が声のした方を睨み付ける。そこには・・・

 

 「そう怖い顔をしないでくれ。少し用があってね」

 

 仮面をつけた男が立っていた。その後ろに控えている女は、俺にも見覚えがあった。

 

 「っ・・・ヴァルダ・・・」

 

 「久しいな、零香の弟・・・七瀬といったか?」

 

 《ヴァルダ=ヴァオス》・・・シルヴィの恩人である、ウルスラ=スヴェントの身体を乗っ取っている人物・・・いや、純星煌式武装か。

 

 「ってことは、そこの仮面も仲間か・・・」

 

 「こんばんは、星野七瀬くん。そして天霧綾斗くん」

 

 笑みを浮かべる仮面の男。

 

 「私の名前は《処刑刀》・・・零香やヴァルダの同士だ」

 

 仮面の男・・・《処刑刀》はそう名乗ると、懐から煌式武装の発動体を取り出した。それを起動させると、巨大な真紅の刃が形成されていく。

 

 まさかアレって・・・

 

 「《赤霞の魔剣》ッ・・・!」

 

 「ほう、よく知っているね」

 

 感心している《処刑刀》。一方、綾斗は《黒炉の魔剣》の発動体を握り締めていた。

 

 「七瀬、アレは何だい?《黒炉の魔剣》が反応してるみたいなんだけど・・・」

 

 「《赤霞の魔剣》・・・《黒炉の魔剣》と同じ、四色の魔剣の一つだ」

 

 「ッ!?アレが!?」

 

 驚愕している綾斗。俺は《処刑刀》を睨み付けた。

 

 「《赤霞の魔剣》はレヴォルフの学有純星煌式武装で、今は凍結処理が施されているはず・・・何でお前がそれを持っている?」

 

 「色々あってね」

 

 俺の質問をかわす《処刑刀》。俺の脳裏に、あの憎きブタの顔がよぎった。

 

 まさか・・・

 

 「邪魔しないでもらえるかしら?」

 

 不機嫌オーラ全開の零香姉が、《処刑刀》に向けて殺気を放っている。

 

 「私は七瀬に用があるの。姉弟の時間に水を差さないでちょうだい」

 

 「私としてもそうしたいところなんだがね」

 

 溜め息をつく《処刑刀》。

 

 「零香、あまり独断行動は止めてくれないか。七瀬くんをこちら側に勧誘するなんて、何を考えているんだい?」

 

 「私の勝手でしょう?口出ししないでもらえるかしら?」

 

 「そうもいかないんだよ。計画に支障が出かねないからね」

 

 諭すような口ぶりの《処刑刀》。

 

 「勝手に故郷へ帰ったり、七瀬くんをこちら側に勧誘したり・・・あの時だって、君は遥を仕留め損ねただろう?そのせいでどうなったことか・・・」

 

 「ッ!?」

 

 それを聞いた瞬間、俺の頭に最悪のシナリオが浮かんだ。

 

 零香姉は《蝕武祭》の選任参加者だった・・・遥さんは《蝕武祭》に参加していた・・・

 

 そして今の《処刑刀》の言葉・・・零香姉が遥さんを仕留め損ねた・・・?

 

 「まさか・・・《蝕武祭》で遥さんを負かした相手って・・・」

 

 「・・・知っていたのね」

 

 力なく微笑む零香姉。そして綾斗へと視線を向け、驚愕の真実を口にするのだった。

 

 「六年前、貴方のお姉さん・・・天霧遥を斬ったのは、この私よ」




どうも~、ムッティです。

シャノン「天霧くんのお姉さんを斬ったのが、ななっちのお姉さんだったとは・・・」

この設定も前々から決めてました。

零香の過去はどんどん明らかになっていくので、お楽しみに。

シャノン「ねぇ作者っち、私の過去編とか無いの?」

モブキャラの過去編に需要があると思うなよ?

シャノン「酷い!?」

それではまた次回!以上、ムッティでした!

シャノン「きっと私にも涙の過去が・・・」

ありません。

シャノン「チクショオオオオオオオオオオッ!!!!!!!!!!」

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