学戦都市アスタリスク ~六花の星野七瀬~   作:ムッティ

132 / 149
久々に日刊ランキングにランクインしてました。

皆様、本当にありがとうございます。


渇き

 「はぁっ!」

 

 「破ッ!」

 

 俺と暁彗の拳がぶつかり合う。力が拮抗する中、俺は更に力を込めた。

 

 「はあああああっ!」

 

 「ぐぅっ・・・!」

 

 暁彗の表情が歪む。俺は拳を振り抜いた。

 

 「らぁっ!」

 

 「ぐあっ!?」

 

 吹き飛ぶ暁彗。俺は手に雷の槍を形成した。

 

 「《雷帝の閃槍》ッ!」

 

 暁彗に向かって投擲する。暁彗は体勢を崩しながらも、槍を足で蹴り上げた。

 

 「疾ッ!」

 

 槍が軌道を変え、暁彗の上を通過する。だが・・・

 

 「《放電》」

 

 俺が指を鳴らした瞬間、槍が爆発する。

 

 槍のすぐ側にいた暁彗は爆発に巻き込まれ、ステージの壁へと叩きつけられた。

 

 「がはっ・・・!?」

 

 「休憩してる暇は無いぞ」

 

 既に距離を詰めていた俺は、暁彗に向かって拳を突き出す。

 

 咄嗟に身を屈めて避けた暁彗が、すがさず俺の足を払いにくるが・・・

 

 「読めてるよ」

 

 「があっ!?」

 

 払いにきた足を全力で踏み潰す。痛みに苦悶の表情を浮かべる暁彗だったが、すぐさま懐から呪符を取り出した。

 

 「爆ッ!」

 

 「チッ・・・」

 

 呪符の爆発を避ける為、一度後方に跳んで距離を取る。爆発の煙が収まると、暁彗がよろよろと立ち上がるところだった。

 

 「なるほど、これが《雷帝化》・・・道理で八重が封じたがるわけだ」

 

 苦々しい表情の暁彗。

 

 「お前は俺をバケモノといったが・・・お前も十分バケモノだな」

 

 「否定はしないさ」

 

 肩をすくめる俺。

 

 「俺の勝ちたいヤツらって、お前を含めて全員がバケモノクラスなんだよ。倒そうと思ったら、俺もバケモノになるしかない」

 

 「・・・お前は本当に勝ちにこだわるのだな」

 

 暁彗が寂しそうに笑う。

 

 「俺にも勝利への執念があったら・・・師父の渇きを満たせたかもしれんな」

 

 「渇きねぇ・・・」

 

 星露が暁彗に満足しないのは、暁彗が星露の真似事しかしないからだ。自分の教えた技のみしか使わないヤツが相手では、あの戦闘狂が満足するわけがない。

 

 だからこそ星露は暁彗のことを、『儂の作り上げた最高の失敗作』と称しているのだ。

 

 「だったらアレマを見習え。星露を倒すことに挑戦してみたら良い」

 

 「師父を倒す・・・?」

 

 「あぁ。星露から教えてもらった技じゃなくて、自分で新しい技を身に付けて挑むんだよ。まぁ簡単に勝てる相手じゃないけど、だからこそ倒し甲斐があると思うぞ」

 

 「・・・それで師父は喜んでくれるのか?」

 

 「おいそこの師父コンプレックス、略して師父コン」

 

 ダメだコイツ、星露に喜んでもらうことしか考えてない・・・

 

 星露は暁彗に、もっと自分自身のことを考えてほしいって思ってるんだけどな・・・

 

 「・・・どうやらお前は、一度敗北を味わう必要があるらしいな」

 

 「ッ!?」

 

 俺の放つ殺気を感じ、暁彗が瞬時に身構える。

 

 「その後、何をどう感じるのか・・・それはお前次第だ。自分で答えを導き出せ」

 

 右手に雷のエネルギーを凝縮していく。やがてそれは、巨大な槍へと形を変えた。

 

 「いくぞ暁彗・・・《雷帝の閃槍》ッ!」

 

 極太の雷の槍を、暁彗へと投擲する。暁彗はそれを避け、俺との距離を詰めてきた。

 

 「そんなもの、当たらなければ・・・!」

 

 「どうってことはないよな」

 

 そう言いつつ指を鳴らすと、暁彗の足元に魔法陣が出現する。そこから現れた巨大な雷の蛇が、一気に暁彗を呑みこんだ。

 

 「ぐあああああっ!?」

 

 「《逆襲の雷蛇》・・・引っかかったな」

 

 《雷帝の閃槍》を放ったのは、暁彗に避けさせて進路をずらす為・・・

 

 そう、俺が仕掛けた罠へと誘導する為だ。

 

 「舐めるなぁッ!」

 

 雷の蛇の腹を蹴破り、暁彗が飛び出してくる。あちこちボロボロで、肩で息をしている状態だ。どうやら、相当なダメージを受けたらしい。

 

 「この程度で俺を倒せるなど・・・!」

 

 「思ってないさ、最初からな」

 

 俺が再び指を鳴らした瞬間・・・暁彗の背後から、雷の槍が突き刺さった。

 

 「がはっ!?」

 

 「《雷帝の閃槍》は、俺の意思で自在に操れるんだよ」

 

 この技は、ユリスの《鋭槍の白炎花》を参考にしてるからな。だからこそ、最初に雷のエネルギーを注ぎ込んでおいたのだ。

 

 「チェックメイトだ、暁彗・・・《放電》」

 

 指を鳴らし、雷の槍を爆発させる。濃密な雷のエネルギーが暁彗の身体に流れ込み、眩い光に呑み込まれた。

 

 「がああああああああああっ!?」

 

 暁彗の絶叫が響き渡る。光が収まった時、そこには・・・全身ズタボロの暁彗が仁王立ちしていた。

 

 「・・・まだ立てんのかい」

 

 「・・・俺の・・・意地だ・・・」

 

 息も絶え絶えの暁彗。どうやら、もう限界のようだ。

 

 「七瀬・・・優勝・・・しろ・・・よ・・・」

 

 「・・・あぁ、必ず」

 

 俺が頷くと、暁彗は笑みを浮かべ・・・そのまま倒れ込むのだった。

 

 『武暁彗、意識消失!』

 

 『勝者、チーム・エンフィールド!』

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 

 「大師兄ッ!」

 

 セシリー、沈雲、沈華が暁彗の元へ駆け寄ってくる。暁彗は、穏やかな表情で意識を失っていた。

 

 「・・・目が覚めたら、暁彗に伝えといてくれ。ナイスファイト、ってな」

 

 「七瀬」

 

 その場を去ろうとする俺を、セシリーが呼び止めた。

 

 「前々回の《鳳凰星武祭》のファイナリストとして、一つ忠告しといてあげる。決勝戦で負けて、相手が優勝する瞬間を見るのは・・・本当に悔しいよ。そんな思いをしたくなかったら、絶対に勝ちな」

 

 「・・・肝に銘じておくよ。ありがとな、セシリー」

 

 セシリーの頭に手を置く。

 

 「今の忠告に免じて、坊主の件は無かったことにしてやるよ」

 

 「アレ本気だったの!?」

 

 セシリーのツッコミをスルーして、八重と虎峰の方へと歩み寄る。

 

 気を失った虎峰を、八重が介抱しているところだった。

 

 「虎峰の様子はどうだ?」

 

 「直に目を覚ますと思いますよ。とても悔しがるでしょうけどね」

 

 苦笑している八重。

 

 「参りました、お兄様・・・やはり私がお兄様に勝つなど、まだ早かったようです」

 

 「作戦は良かったけどな。だいぶ苦戦させられたよ」

 

 溜め息をつく俺。

 

 「俺もまだまだだな・・・もっと強くならないと」

 

 「まだ強さを求めるのですか・・・?」

 

 「当たり前だろ」

 

 苦笑する俺。

 

 「今の俺じゃ勝てないヤツなんてたくさんいる。常に上を目指していかないとな」

 

 「・・・敵いませんね、お兄様には」

 

 八重が笑みを浮かべた。

 

 「お兄様が上を目指すのなら・・・私もお兄様の背中を追って、上を目指します」

 

 「俺の背中なんて追っても、しょうがないだろうに・・・」

 

 「お兄様だって、お姉様達の背中を追っているではありませんか」

 

 「・・・まぁな」

 

 俺は八重の頭を撫でた。

 

 「強くなろうな、お互いに」

 

 「はいっ」

 

 笑顔で頷いてくれる八重。と、俺はそこであることを思い出した。

 

 「そういや、叶えたい願いができたって言ってたけど・・・何だったんだ?」

 

 「・・・零香お姉様の捜索です」

 

 八重の表情が引き締まる。

 

 「零香お姉様が《蝕武祭》に参加していたことは、二葉お姉様から聞きました。指名手配されているとはいえ、六年経っても居場所が掴めないのなら・・・統合企業財体の力を借りようかと思いまして」

 

 「・・・なるほどな」

 

 八重らしいというか何というか、一人で考え込みやがって・・・

 

 「俺には一人で背負うなって言っておきながら、お前も一人で行動してんじゃん」

 

 「そ、それは・・・!」

 

 「全く・・・そんなところまで俺の背中を追わなくていいっつーの」

 

 優しく八重を抱き締める。

 

 「零香姉のことは、家族全員で何とかする・・・そう決めただろ?」

 

 「お兄様・・・」

 

 「・・・この大会が終わったら、一度皆で集まって話し合おう。現状を把握する為に」

 

 全員で情報を共有して、これからの方針を打ち出す。二葉姉のところに、新しい情報が入ってるかもしれないしな。

 

 「まぁ今はとりあえず・・・明日の決勝を見届けてほしい。三咲姉との戦いをな」

 

 「・・・分かりました」

 

 頷く八重。

 

 「私達の分も頑張って下さいね」

 

 「あぁ、勿論」

 

 拳を合わせる八重と俺なのだった。




どうも~、ムッティです。

シャノン「チーム・黄龍に勝利して、次はいよいよ決勝戦だね」

やっとここまできたよね。

っていうか、ちょっと聞いておくれよ。

シャノン「急にどうしたの?」

いや、ヒロイン複数化構想の話なんだけどさ。

あれから感想欄で、多くの反対の声があったのよ。

シャノン「アララ・・・」

まぁ仕方ないよなぁ、なんて思ったんだけどさ・・・

よく読み返してみたら、あることに気付いてしまったんだ。

シャノン「あることって?」

反対意見を書いている人の名前なんだけどさ・・・

どれも名前は違うんだけど、全部IDが一緒なんだよね。

シャノン「えっ、それって・・・」

そう、同一人物ってこと。

ログインユーザーじゃない人だと思うんだけど・・・

名前だけ変えて、毎日のように反対意見を書いてんのよ。

「七瀬を弱体化させろ」「シルヴィ以外の女性キャラを全員退場させろ」みたいな意見も書いてたり・・・

シャノン「それはヒロイン複数化が嫌っていうより、ただの嫌がらせなのでは・・・」

まぁ運営対応になって、今はその人の感想は見れなくなってるんだけどね。

最近は感想も書いてないみたいだし。

まさか同じ人だとは思わなかったから、気付いた時はビックリしたよね。

シャノン「それは確かにビックリするわ・・・」

勿論、その人以外の方々からも反対意見はあったんだけどね。

貴重なご意見、ありがとうございました。

シャノン「で、結局方針は変わらないってことで良いの?」

うん、ヒロイン複数化の方向で進めていくよ。

反対の方々には申し訳ありませんが、温かく見守っていただけると幸いです。

よろしくお願い致します。

シャノン「お願い致します(ぺこり)」

それではまた次回!以上、ムッティでした!

シャノン「またね~!」

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。