ホント勘弁してほしいわ・・・
「はぁっ!」
虎峰の回し蹴りが飛んでくる。
それをしゃがんで回避すると、今度は右側から八重の蹴りが飛んでくる。
「やぁっ!」
「おっと」
「そこです!」
背後へ転がって避けるが、虎峰が追撃で拳を放ってくる。
俺はそれを受け止めると、攻撃を仕掛けようとしてくる八重へ虎峰を投げ飛ばした。
「うわっ!?」
「きゃっ!?」
慌てて八重が避け、虎峰が空中で一回転して着地する。
「《断罪の流星》ッ!」
「ッ!?」
俺の拳から放たれた光線を、虎峰が《通天足》で防いだ。
チッ・・・
「やっぱり純星煌式武装には防がれるか・・・改良の余地ありだな」
【修行は主に、マスターの能力を制御する為のものでしたからね。私・・・《神の拳》で使える技も増えましたが、やはりまだまだといったところでしょうか】
「だな。《獅鷲星武祭》が終わったら、また修行すっか」
【ですね】
『七瀬選手、趙選手と八重選手を余裕で相手取っております!しかも試合の最中に純星煌式武装と会話しているーっ!?』
『《魔術師》の力が使えないというのに・・・大したものですな』
七海と会話していると、梁瀬さんと柊さんが何か言っていた。
いや、別に余裕ではないんだけども。
「・・・どうやら、七瀬の力量を見誤っていたようですね」
悔しそうな表情の虎峰。
「《通天足》を使っていてもダメージは与えられず、八重と共に戦って初めて互角に勝負出来るだなんて・・・『僕と同等』だなんて嘯いた自分が恥ずかしいです・・・」
「生憎、能力に頼った鍛え方はしてないんだよ」
そう、あくまでも《魔術師》の能力は付随したものだ。
俺の武器は己の肉体であり、それを磨き上げてこそ《神の拳》や《魔術師》の能力も生きてくる。
「俺は拳士じゃないから、純星煌式武装だって能力だってバンバン使うけど・・・そこはちゃんと分かってるつもりだよ」
「・・・参りますね、本当に」
苦笑する虎峰。
「身体を鍛える一方で、純星煌式武装や能力の訓練も怠らない・・・ずっと思っていましたが、七瀬は界龍の生徒に向いてますね」
「お兄様、今からでも遅くありません。転校しましょう」
「勘弁してくれよ・・・」
界龍なんかに行ったら、星露に何されるか分かったもんじゃないからな・・・
暁彗&アレマっていうバケモノも揃ってるし・・・
「何より・・・来年には星導館に十萌が入って来るんだぞ!?転校なんて出来るか!」
「そんな理由ですか!?」
「『そんな理由』とは何だ!俺にとっては何よりも大きな理由だわ!」
「・・・私が星導館に転校するのもアリですね」
「八重!?」
虎峰が焦っている。
「まぁ、無駄口はここまでにして・・・そろそろケリをつけようか。いい加減、ヘルプに入らないとマズそうだしな」
俺の視線の先には、ボロボロになった綾斗と綺凛がいた。
そして星導館の新旧序列一位を相手に、傷一つ負っていない暁彗・・・
やっぱりアイツはバケモノだ。
「舐めないでいただきたいですね」
構える虎峰。
「二対一で互角というのも喜べませんが・・・それでも状況は拮抗しています。ここから七瀬が、我々二人を倒せるとでも?」
「それに我々には大師兄以外にも、ウォン師姉・黎師兄・黎師姉がいらっしゃるということをお忘れですか?」
「八重、その見立ては甘いぞ?」
俺がそう言った瞬間・・・
『黎沈雲・黎沈華、校章破壊!』
機械音声が、黎兄妹の敗北を告げた。視線をやると、クローディアがにこやかに笑っていた。
「フフッ、七瀬の能力封じに力を使い過ぎたようですね」
「・・・だからといって、こうもアッサリ負けるとはね」
「流石は《千見の盟主》・・・恐れ入ったわ」
脱力して倒れこむ沈雲と沈華。そして・・・
『セシリー・ウォン、校章破壊!』
ユリス達の方も決着がついたようだ。セシリーが大の字で倒れている。
「あーあ、やられちゃった・・・」
「開幕から飛ばし過ぎたな」
ユリスがセシリーを見下ろしながら言う。
「途中から明らかにバテたのが分かったぞ。私達を舐めすぎだ」
「いやぁ、舐めたつもりは無かったんだけど・・・アンタ達に雷撃が全然通用しないもんだから、焦っちゃってさぁ」
「雷撃対策はバッチリしてきた」
グッと親指を立てる紗夜。
「七瀬の雷撃に比べたら、お前の雷撃は優しい方だ。模擬戦で食らった七瀬の雷撃といったら・・・摸擬戦なのに死ぬかと思ったくらいだ」
「あぁ、あれはゾッとしたな・・・」
心なしか身体が震えている二人。
あれ?手加減はしたんだけどな・・・
「ハハッ、完敗だね。アンタ達にも・・・七瀬にも」
力なく笑うセシリー。さて・・・
「俺も俺の仕事をしますかね」
「そんな・・・ウォン師姉達が・・・」
信じられないといった表情の八重。
「俺の仲間達を舐めるなよ?クローディアもユリスも紗夜も、星導館・・・いや、アスタリスクで指折りの実力者だ。力を使い過ぎたセシリー達じゃ、どうにも出来ないだろうさ」
俺はそう言うと、拳を構えた。
「虎峰、八重・・・行くぞ」
「望むところですッ!」
虎峰が飛び出してくる。《通天足》による蹴りを放ってくるが・・・
「はぁっ!」
拳を放ち、蹴りを受け止める。
それを待っていたかのように、八重が俺の校章を目掛けて拳を放ってくる。
「これで終わりですッ!」
「お前がな」
足で八重の拳を蹴り上げる。
受け止めていた虎峰の足を掴み、そのままバットを振るように虎峰を八重の校章へと叩き付けた。
「ぐあっ!?」
『星野八重、校章破壊!』
校章を破壊され、吹き飛んでいく八重。
そのまま虎峰も、ハンマー投げの要領でステージの壁へと投げ付けた。
「がはっ!?」
勢いよく激突した虎峰は、地面に倒れこんで動かなくなった。
『趙虎峰、意識消失!』
『八重選手と趙選手もやられたーっ!これでチーム・黄龍は、リーダーの武暁彗選手一人となってしまいましたーっ!』
『これは予想外の展開ですな・・・』
梁瀬さんと柊さんの声をよそに、俺は《神の拳》を暁彗に向けていた。
「《断罪の流星》ッ!」
「っ!」
綾斗と綺凛を相手取っていた暁彗は、後ろへ大きく飛び退いて距離をとった。
「・・・遂にお前と戦う時が来たか、七瀬」
嬉しそうに笑っている暁彗。
「この時を待ち望んでいたぞ」
「奇遇だな。俺もだ」
拳を構え、暁彗を見据える俺なのだった。
「絶対にお前を倒す。覚悟しろよ、暁彗」
どうも~、ムッティです。
いよいよ黄龍戦も大詰めを迎えております。
シャノン「これで六対一・・・普通に考えたら、ななっち達が有利だよね」
普通に考えたら、ね。
暁彗の兄貴はバケモノだから。
シャノン「確かに・・・どうなるか分かんないよね・・・」
そんなわけで、続きをお楽しみに。
それではまた次回!以上、ムッティでした!
シャノン「またね~!」